フィリップ・バリーによる1939年のブロードウェイ舞台劇”The Philadelphia Story”の映画化「フィラデルフィア物語」(1940)のミュージカル版リメイク。 監督チャールズ・ウォルターズ、主演ビング・クロスビー、グレイス・ケリー、フランク・シナトラ、セレステ・ホルム、ルイ・アームストロング他共演のミュージカル・ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:チャールズ・ウォルターズ
製作:ソル・C・シーゲル
戯曲:フィリップ・バリー
脚本:ジョン・パトリック
撮影:ポール・ヴォーゲル
編集:ラルフ・E・ウィンターズ
音楽:コール・ポーター
出演
ビング・クロスビー:C・K・デクスター=ヘヴン
グレイス・ケリー:トレイシー・サマンサ・ロード
フランク・シナトラ:マコーレ”マイク”コナー
セレステ・ホルム:エリザベス”リズ”インブリー
ルイ・アームストロング:本人
ジョン・ランド:ジョージ・キトリッジ
ルイス・カルホーン:ウィリー伯父
シドニー・ブラックマー:セス・ロード
マルガーロ・ギルモア:マーガレット・ロード
リディア・リード:キャロライン・ロード
アメリカ 映画
配給 MGM
1956年製作 106分
公開
北米:1956年7月17日
日本:1956年10月3日
製作費 $2,700,000
北米興行収入 $13,000,000
■ アカデミー賞 ■
第29回アカデミー賞
・ノミネート
原案・音楽(ミュージカル)・歌曲賞”True Love”
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ロードアイランド州、ニューポート。
富豪C・K・デクスター=ヘヴン(ビング・クロスビー)邸に、今年のジャズ・フェスティバル出演のため、ルイ・アームストロング/サッチモとその楽団がやってくる。
デクスターと隣人の富豪ロード家の令嬢トレイシー・サマンサ・ロード(グレイス・ケリー)は、駈け落ちしてまで結婚した仲だった。
しかし、二人は離婚してしまい、トレイシーは上流出身ではない、ジョージ・キトリッジ(ジョン・ランド)と再婚することになっていた。
トレイシーの妹キャロライン(リディア・リード)は、デクスターを今でも気に入っていた。
キャロラインは、デクスターを度々話題にしてはトレイシーや母マーガレット(マルガーロ・ギルモア)を困らせる。 当のデクスターは、トレイシーに対して今でも未練が残っていた。 結婚式の準備が進んでいる中、マーガレットは兄ウィリー(ルイス・カルホーン)から連絡を受ける。 ゴシップ雑誌の”スパイ・マガジン”が、トレイシーの父親セス(シドニー・ブラックマー)のゴシップ記事を封印する交換条件に、記者を派遣して結婚式の取材をしたいということだった。 仕方なくそれを受け入れたマーガレットは、トレイシーにその件を話し、彼女は記者達をからかうことを企む。 やがて、記者のマコーレ”マイク”コナー(フランク・シナトラ)とカメラマンのエリザベス”リズ”インブリー(セレステ・ホルム)がロード邸を訪れ、トレイシーは彼らを”手厚く”迎える。 しばらくすると、昼食会にジョージ、デクスターそしてウィリーも現れ、トレイシーは伯父を父親だと偽り、彼をマイクとリズに紹介する。 真面目だけが取り得のジョージと、トレイシーが結婚しても間違いなくうまくいかないと、デクスターは考えていた。 デクスターは、トレイシーへのプレゼントに、二人が新婚旅行で乗ったヨットの”トゥルー・ラヴ”号の模型を贈る。 トレーシーは、ロマンチックな想い出に浸り、彼女の心乱れる。 その後、久し振りに姿を現した父セスを非難するトレイシーだったが、美しく上品な女性ではある娘に、彼は人を思いやる心が欠けていることを率直に指摘する。 苛立つトレイシーはマイクをドライブに誘い、ウィリーの所有する屋敷に向う。 トレイシーは屋敷内のバーで、マイクに気難しいことを指摘されながらも言い寄られてしまうが、そのまま何もなく屋敷に戻る。 その夜、結婚を祝うダンス・パーティーがあり、トレイシーは、デクスターの屋敷から聞こえる、自分を思う彼の歌を聴きながらその準備をする。 そしてパーティーは始まり、リズを気に入ってしまったウィリーは彼女に迫ろうとする。 ウィリーはトレイシーの父親だったはずなのだが、セスは自分が父親だとリズとマイクに伝え、家族を侮辱するような取材は許さないことも付け加える。 やがて、デクスターとルイ・アームストロング楽団の、陽気なパフォーマンスが始まる。 酔って心を落ち着かせようとするトレイシーは、デクスターに祝福のキスをされ、彼への気持ちが再燃する。 それを見たジョージは、トレイシーを部屋に閉じ込めてしまい、デクスターとマイクは隠しバーで酒を酌み交わす。 マイクはデクスターの気持ちを察し、トレイシーへの恋の後押しをする。 その後、トレイシーはマイクの助けで部屋を抜け出し、酔った二人は心通わせてしまう。 リズを送ったデクスターは、彼女がマイクに惹かれているのを知る。 そこに、酔ってプールに飛び込んだトレイシーとマイクが現れ、その場にいた、彼女を捜しに来たジョージは、デクスターに怒りをぶつける。 その直後、余計なことを言おうとしたマイクを、デクスターが殴ってしまう。 そして結婚式の当日、トレイシーは前日のことを思い出せず、マイクと何かあったのかと動揺してしまい、現れたデクスターは彼女の心を和ませようとする。 怒り心頭のジョージは、トレイシーの昨夜の行動を責めるが、マイクが誤解を解こうとする。 ジョージは一応納得するが、トレイシーの気持ちは冷めてしまい、彼は結婚を諦め立ち去ってしまう。 新郎がいないまま式が始まってしまうが、トレイシーは出席者に事情を話し始める。 デクスターが、自分との二度目の式を挙げるお膳立てをして、それを知ったトレイシーは喜びに満ち溢れ、父セスに今までの態度を謝罪する。 マイクは、自分を思ってくれていたリズの気持ちを受け止める。 そして、デクスターがトレイシーに寄り添い準備が整う。 やがて、二人を祝福するサッチモの演奏が始まり、結婚式は始まる。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ニューポートに住む楽天家の富豪C・K・デクスター=ヘヴンは、隣人のロード家の長女トレイシーが、自分との離婚後に再婚をすることで気を揉んでいた。
トレイシーは、父親セスの浮気がゴシップ誌に掲載を取り止める条件として、記者マイクとカメラマンのリズの取材を受けることになってしまう。
結婚式が迫る中、デクスターはトレイシーが必ず自分と寄りを戻すと信じながら、彼女への思いを伝えていく。
一方トレイシーは、父親から女性としての全てを備えながら、最も大切な人を思いやる心がないことを指摘されてショックを受けてしまう。
腹いせに誘った、記者マイクに言い寄られたトレイシーの心は揺れ動き、デクスターを再び思う気持ちも再燃し始めてしまう・・・。
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原題タイトルの通り、ニューポートの上流社会の雰囲気が良く出ていて、庶民的な登場人物は記者とバンドのみという、独特のムードの中、嫌味のないユーモアなど、ミュージカル仕立てで展開する実に楽しい作品。
第29回アカデミー賞では、原案、音楽(ミュージカル)、歌曲賞”True Love”にノミネートされた。
主題曲を含め、コール・ポーターの優雅で楽しい音楽も印象的だ。
その他、楽団と共に招待されたルイ・アームストロングが、波乱の物語の進行役のように登場するのも面白い。
前作と同じく、ロマンチック・コメディの面白味に加え、当代のエンタティナー、ビング・クロスビーとフランク・シナトラ、そしてルイ・アームストロングまで登場する顔合わせは、当時のMGM作品ならではの豪華さだ。
特にアカデミー賞候補になった主題歌”True Love”と、ビング・クロスビー、ルイ・アームストロングの”Now You Has Jazz”のパフォーマンスは必見だ。
2年前の「喝采」(1954)でも夫婦役を演じたビング・クロスビーとグレイス・ケリーは、その時とは全く違う能天気な大富豪令嬢を陽気に演じている。
*グレイス・ケリーは、本作がハリウッド最後の作品。
「地上より永遠に」(1953)で復活し、オスカーも受賞したフランク・シナトラも、ビング・クロスビー、グレイス・ケリーそれぞれとデュエットし、素晴しい歌声を披露してくれる。
また、「紳士協定」(1947)や「イヴの総て」(1950)等の演技派セレステ・ホルム、彼女に迫るヒロインの伯父役ルイス・カルホーンも、ひょうきんな演技を見せてくれる。
*ルイス・カルホーンは本作公開を前に他界している。
ヒロインの婚約者ジョン・ランド、父シドニー・ブラックマー、母マルガーロ・ギルモア、妹リディア・リードなどが共演している。