正義を貫こうとする保安官の孤独な戦いを描く、製作スタンリー・クレイマー、監督フレッド・ジンネマン、主演ゲイリー・クーパー、トーマス・ミッチェル、ケティ・フラド、グレイス・ケリー、ロイド・ブリッジス共演による傑作ドラマにして映画史上に残る不休の名作。 |
・西部劇
■ スタッフ キャスト ■
監督:フレッド・ジンネマン
製作:スタンリー・クレイマー
原作:ジョン・W・カニンガム
脚本:カール・フォアマン
撮影:フロイド・クロスビー
編集:ハリー・W・ガースタッド
音楽:ディミトリ・ティオムキン
主題歌:テックス・リッター
”Do Not Forsake Me, Oh, My Darlin”
出演
ゲイリー・クーパー:ウィル・ケイン
トーマス・ミッチェル:ジョナス・ヘンダーソン町長
ケティ・フラド:ヘレン・ラミレス
グレイス・ケリー:エイミー・ファウラー・ケイン
ロイド・ブリッジス:ハーヴェイ・ペル
イアン・マクドナルド:フランク・ミラー
ロン・チェイニーJr.:マーティン・ハウ
ハリー・モーガン:サム・フラー
リー・ヴァン・クリーフ:ジャック・コルビー
シェブ・ウーリー:ベン・ミラー
ロバート・J・ウィルク:ジム・ピアース
オットー・クルーガー:パーシー・メトリック判事
ジョン・ドーセット:トランブル
ジャック・イーラム:チャーリー
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1952年製作 85分
公開
北米:1952年7月24日
日本:1952年9月17日
製作費 $750,000
■ アカデミー賞 ■
第25回アカデミー賞
・受賞
主演男優(ゲイリー・クーパー)
編集・作曲(ドラマ・コメディ映画)
歌曲賞 ”Do Not Forsake Me, Oh, My Darlin”
・ノミネート
作品・監督・脚本賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1870年、ハドリーヴィル。
連邦保安官のウィル・ケイン(ゲイリー・ クーパー)が、かつて逮捕して投獄されていたフランク・ミラー(イアン・マクドナルド)の仲間達、ジム・ピアース(ロバート・J・ウィルク)、ジャック・コルビー(リー・ヴァン・クリーフ)、そして、ベン・ミラー(シェブ・ウーリー)が町に現れる。
その頃、長年保安官を務めたケインは、若いエイミー・ファウラー(グレイス・ケリー)との結婚を機に、町を去ることを決意していた。
駅に向かったピアースらは、減刑になり、正午の汽車で町に着くはずのミラーを待つ。
町長のジョナス・ヘンダーソン(トーマス・ミッチェル)らに祝福され、式を済ませたケイントエイミーだったが、ケインは新任の保安官が来ないまま、バッジを外すことを気にする。 しかし、ヘンダーソンは、町の安全を保障しケインを旅立たせようとする。 そこに、ミラーが釈放されたという電報が入り、ケインは困惑してしまう。 ヘンダーソンらはケインに町を出るよう説得し、二人を馬車に乗せて旅立たせる。 保安官補のハーヴェイ・ペル(ロイド・ブリッジス)は、酒場の女経営者で、同棲するヘレン・ラミレス(ケティ・フラド)に、ケインが怖気付いて町を出たと伝える。 ペルは、自分を保安官に推薦しないケインを憎んでいた。 ケインは、争いごとを嫌う、クェーカー教徒のエイミーのために一旦は町を離れるが、正義感から町に戻り、無法者達を待ち構えようとする。 ヘレンはケインが戻ったことを知り、ペルの軽薄さを嘲り笑う。 エイミーに、ミラーとの経緯を話したケインだったが、彼女は無謀な争いを止めようとする。 逃げても追われる凶悪犯なだけに、ケインはこの場で決着を付けるしかないことをエイミーに伝える。 友人も多いケインは、自警団を作れば対抗できると考えるが、エイミーは、夫の生死を見届ける気になれずに、汽車で旅立とうとする。 自らが下した判決であり、報復を恐れたパーシー・メトリック判事(オットー・クルーガー)は町を離れる。 仕方なくケインは、早速、自警団を組織し始めようとして、現れたペルに協力を要請する。 しかしペルは、あくまで自分を推薦しょうとしないことでケインに不満をぶつけ、バッジを外してしまう。 それを聞いたヘレンは、未熟な考えのペルを再び軽蔑する。 かつて関係があった自分とケインのことで、彼がひがみ腹いせをしていると言うペルに憤慨し、ヘレンは彼を部屋から追い出してしまう。 ヘレンはミラーとも関係があったので、トラブルを避けるため、またケインが殺されるところを見たくないために、店を売り払い町を出ようとする。 ケインは、ヘレンにミラーの件を知らせにホテルに向かい、そこでエイミーに出くわして彼女を案ずる。 ミラーが現れることを知っていたヘレンは、ケインに逃げることを勧めるが、彼はそれを断る。 ケインが帰った後、エイミーは彼とヘレンやミラーの関係を知る。 酒場に現れたミラーの弟ベンが、駅に戻ろうとした際、彼と出くわしたケインは、酒場にいた男達に協力を求める。 しかし、ミラーの仲間までいる中で、誰もケインに手を貸そうとしない。 焦るケインは、友人サム・フラー(ハリー・モーガン)の家を訪ねるものの、彼には居留守を使われてしまう。 ヘレンの元に向かったペルは、彼女が町を出ようとしていることを知り、ケインと逃げるのかと言い寄るが、彼女はペルを見限る。 教会に向かったケインは、妻のエイミーがクェーカー教徒であるため、普段の不信心を詫び、その場にいた人々に協力を要請する。 即刻、加勢しようとする者と異議を唱える者で意見が分かれ、ヘンダーソン町長が話をまとめようとする。 話し合いはまとまらず、ヘンダーソンはケインの町への貢献は評価する。 しかし、ケインが街に戻らなければ、争いも起きなかったはずだと、彼に今すぐ町を出て行くよう告げる。 ヘンダーソンの言葉に、ショックを受けたケインは、元保安官で友人でもあるマーティン・ハウ(ロン・チェイニーJr.)の元に向かう。 ハウも、人の心は裏腹であり、ケインに戻るべきでなかったことを告げ、自分も、不自由な体での加勢は無理なことを伝える。 ヘレンがケインやミラーと関係していたことを聞いていたエイミーは、汽車を待つ間、ヘレンと話をすることにする。 ケインをなぜ見捨てるのかと聞くヘレンに対して、争いで父と兄を亡くし、クェーカー教徒になったことをエイミーは伝える。 それなのに、夫ケインが人殺しと対決しようとすることが、エイミーには理解できなかったのだ。 立ち去ろうとするエイミーを引きとめ、ヘレンは汽車を待つ間、彼女に部屋にいるようにと声をかける。 見殺しにしたくもないが、加勢する気にもなれない人々から孤立するケインを見て、ペルは彼を逃がそうとする。 一瞬、町を出る気にもなったケインは、納屋の愛馬の元に向かい、そこにペルが現れる。 ペルはケインを殴り馬に乗せようとするが、逆に彼に殴り倒されてしまう。 床屋で身なりを整えようとしたケインは、裏で葬儀屋が、棺桶を用意していることに気づく。 事務所に戻ったケインは、加勢する男に仲間がいないことを伝えると、男は怖気付き去っていく。 正午が迫り、仕方なくケインは単独で戦う覚悟を決めて遺書を書く。 人々の間に緊張の時間が流れ、そして定刻通りミラーを乗せた汽車が、汽笛を鳴らして到着する。 人影のない町の大通りに出たケインは、ヘレンと共に町を出ようとするエイミーの馬車を見つめる。 汽車は駅に到着し、ミラーは仲間に迎えられ、駅に着いたヘレンと、目を合わせただけのミラーは町に向かう。 大通りを独り歩くケインは、一味を見つけて、ミラーの弟ベンを撃ち殺す。 その銃声を聞いたエイミーは、汽車を降りて町に戻る。 ケインは納屋に逃げ込み、そこでジャックを殺すが、ミラーがその場に火を放つ。 馬を解放し、それに乗って通りに逃れたケインをミラーらは追う。 ケインは追い詰められるが、町に戻ったエイミーが、ジムを背後から撃ち殺す。 ミラーは、エイミーを人質に取り通りに出てくるが、彼女が抵抗した隙に、ケインの弾丸がミラーを捉える。 悪党が消えて、安心した人々は一斉に通りに出てくるのだが、ケインは無言のまま、人々を軽蔑の眼差しで見ながらバッジを捨てる。 そしてケインは、自分を見捨てなかったエイミーと共に馬車で町を去っていく。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
人々の祝福を受けた結婚を機に、任期を終えた連邦保安官ウィル・ケインは、結婚を機に若い妻エイミーと共に町を去ろうとする。
しかし、自分が投獄した極悪人ミラーが、正午に、汽車で復讐に現れることが分かる。
エイミーのことを考え、一旦は町を出ようとするケインだったが、彼は決着を付けるために町に戻る。
それを理解しない妻エイミーや、一転、加勢しようともしない住民との狭間で、苦悩するケインは、仕方なく単独で敵に立ち向かおうとする。
ケインが、遺書まで書いたその時、悪党を乗せた汽車は、定刻通りの正午、駅に到着し因縁の対決が始まる・・・。
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1947年に”Collier’s Weekly”に掲載された、ジョン・W・カニンガムの短編”The Tin Star”を基に製作された作品。
単に悪党との決闘を描く西部劇ではなく、正義を貫こうとする保安官の孤独な心理状況と、命に関ることが起きた場合の人々の複雑な心情などが描かれている。
1989年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
第25回アカデミー賞では作品賞以下7部門でノミネートされ、主演男優(ゲイリー・クーパー)、編集、作曲(ドラマ・コメディ映画)、歌曲賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督・脚本賞
正午に迫る時計の針が、刻一刻と時間をきざむ緊迫感、本作は、ドラマの経過時間と上映時間が一致するように作られていて、度々登場する時計を映すショットが効果を上げている。
誰もいない町の大通りを独り歩く、ゲイリー・クーパーの後ろ姿に、孤独な男の焦りが見える。
戦いを拒絶するクェーカー教徒の妻と、義務感の板挟みで苦悩するクーパーの演技は、正にオスカーに値する名演だ。
しかし、50歳のクーパーはかなり老けて見えるため、相手が20代前半のグレイス・ケリーでは夫婦として違和感がある。
タフガイとは言えない役柄でもあり、クーパーらしいとはいえ、勇敢だがやや弱々しい保安官役を私はあまり好きにはなれない。
アカデミー賞授賞式に欠席したクーパーに代わり、オスカーを受け取った彼の盟友ジョン・ウェインには絶対回ってこない役だろう。
本作がメジャーデビューと言っていいグレイス・ケリーは、健気な保安官の妻役を好演する。
しかも、クェーカー教徒にも拘らず、最後には夫を助けるために敵を射殺してしまうという驚きもある。
同年のアカデミー作品賞では、最有力とされた本作が無視された理由に、赤狩り旋風吹き荒れる中、自らのリベラルな立場を貫くフレッド・ジンネマンと、脚本のカール・フォアマンへの腹いせだという裏話もある。
本作で、アカデミー作曲賞と歌曲賞をダブル受賞するディミトリ・ティオムキンの主題曲と、テックス・リッターの歌う主題歌”Do Not Forsake Me,Oh, My Darlin”も効果的に挿入されている。
良き理解者、友人でありながら、町を去る助言しかできない町長のトーマス・ミッチェル、思慮深く全てを見据える酒場の女主人ケティ・フラド、反対に、自分の若さや無能さに気づこうとしない保安官補ロイド・ブリッジス、敵役イアン・マクドナルド、シェブ・ウーリー、ロバート・J・ウィルク、本作がデビュー作となるリー・ヴァン・クリーフ、元保安官で主人公の友人ロン・チェイニーJr.、同じく友人のハリー・モーガン、判事オットー・クルーガー、町民のジョン・ドーセット、そして、牢屋に入っていた飲んだくれジャック・イーラムなどが共演している。