知能犯による殺人事件に全力で取り組む警察の捜査を描く、監督アルフレッド・L・ワーカー、アンソニー・マン、主演リチャード・ベースハート、スコット・ブレイディ、ロイ・ロバーツ他共演の犯罪ドラマであるフィルム・ノワール。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督
アルフレッド・L・ワーカー
アンソニー・マン(クレジットなし)
製作
ブライアン・フォイ
ロバート・T・ケイン
脚本
クレイン・ウィルバー
ジョン・C・ヒギンズ
撮影:ジョン・アルトン
編集:アルフレッド・デガエターノ
音楽:レオニード・ラーブ
出演
ロイ・マーティン/ロイ・モーガン:リチャード・ベースハート
マーティ・ブレナン巡査部長:スコット・ブレイディ
ブリーン警部:ロイ・ロバーツ
ポール・リーヴス:ホイット・ビッセル
チャック・ジョーンズ巡査部長:ジェームズ・カードウェル
リー・ホワイティ:ジャック・ウェッブ
フレディ:バイロン・フォルガー
被害妄想の主婦:ドロシー・アダムス
ナレーター:リード・ハドリー
アメリカ 映画
配給 Eagle-Lion Films
1948年製作 79分
公開
北米:1948年11月24日
日本:1952年4月24日
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ロサンゼルス。
仕事帰りの市警のパトロール警官ロバート・ローリンズ巡査は、妻が待つ自宅に向かう。
ラジオ店に侵入しようとしたロイ・モーガン(リチャード・ベースハート)は、パトカーに気づきその場を離れ、開錠道具と手袋を捨てる。
不審な男ロイに気づき、彼を追い呼び止めたローリンズは、身分証の提示を求める。
財布を忘れたと言うロイは、隠し持っていた銃でローリンズを銃撃し、自分の車に乗り込み逃げようとするものの、エンジンがかからない。
瀕死のローリンズは、ロイの車に衝突して力尽きる。
付近の住人が騒ぎに気づく中、車を降りたロイは逃げ去る。
通報を受けた警察は現場に急行し、殺人課のブリーン警部(ロイ・ロバーツ)は、付近の不審者の検挙と、マーティ・ブレナン巡査部長(スコット・ブレイディ)とチャック・ジョーンズ巡査部長(ジェームズ・カードウェル)への連絡を本部に指示する。
現場の捜査を始めたブリーンは、到着したブレナンとジョーンズと共に目撃者から話を聞き、本部から、口ヒゲをはやした容疑者の容姿や特徴の情報を知らされる。 車を調べた鑑識のリー・ホワイティ(ジャック・ウェッブ)は、”ニトログリセリン”らしきものを見つけたことをブリーンに伝える。 トランクを開けさせたブリーンは、何丁もの銃と海軍の電気機器を見つけて調べさせる。 ラジオ店の付近からは、犯人が捨てたと思われる開錠道具と手袋が見つかり、ブリーンはそれを確認する。 署に戻るブレナンは、ローリンズが高校時代からの友人であることをブリーンに話し、事件の担当を希望して任される。 容疑者が大量に連行され、ブレナンらは取り調べを開始するものの、犯人は見つからなかった。 救急病院。 その頃、警察無線を傍受していたロイは、犯人の特徴などが知られていることを知りヒゲを剃る。 好青年風に見えるロイだったが、目的のためには邪魔者を容赦なく殺す男だった。 事件の証拠品を調べたホワイティは、現れたブレナンとジョーンズに、車で見つけたものがニトログリセリンであることを証明する。 ブリーンも現れ、車は盗難車であり持ち主が判明したことを知る。 更にブリーンは、開錠道具がラジオ店の錠前の跡と一致することをホワイティから知らされる。 ニトログリセリンを運ぶ手段も完璧で、指紋なども見つからないことから、犯人は科学の知識もあり、電気に詳しく発明家でもあるということが分かった。 盗難課に連絡したブリーンは、開錠道具を使った電気機器の盗難事件の情報を求める。 その情報を基に、ブレナンとジョーンズは捜査を始める。 警察無線の内容を聴いたロイは、車のナンバーを替え容疑者が釈放されたことを知る。 リーブス電子研究所。 それを断ったロイは、持ち込んだ機器をレンタルしてくれればいいとリーヴスに伝える。 リーヴスは、去ろうとするロイにテレビプロジェクターのレンタル予約が入っていることを伝える。 翌日、テレビプロジェクターを持参したロイはリーヴスに満足してもらい、客が来たことを知りその場を去る。 客にプロジェクターを見せたリーヴスは、自分が作ったものだと言う客が、警察の盗難課に電話をしたために驚く。 その情報をブリーンに知らせたブレナンとジョーンズは、リーブスに会うよう指示される。 リーヴスと話したブレナンとジョーンズは、盗難品を持ち込んだロイを信用する彼にロイの住所を訊く。 知らないと答えたリーヴスはロイからの電話を受け、プロジェクターは売れたことにして、金を取りに来るように伝えろとジョーンズに指示される。 8時半にロイと約束したリーヴスは、ブレナンとジョーンズに協力することになる。 7時前に研究所の裏口から侵入したロイは、警戒しながらリーヴスに話しかける。 1人だと言うリーヴスに金を持って来るようにと指示したロイは、裏口の人影(ジョーンズ)に気づき、内部に男(ブレナン)がいることを確認する。 ブレナン襲いかかり殴り倒したロイは、裏口から入ってきたジョーンズを銃撃する。 銃弾を受けたロイは逃げ去り、アパートに戻り銃弾を摘出する。 その後、リーヴスに容疑者の写真を見せたブリーンは、その中にロイはいないと言う彼から、軍の通信部隊のレーダー班にロイが所属していたことを知らされる。 病院から連絡を受けたブリーンは、重傷のジョーンズは下半身が麻痺し、歩行困難になるかも知れないとブレナンに伝える。 リーヴスを責めるブレナンを制止したブリーンは、ジョーンズのためなら協力を惜しまないと言うリーヴスを家に帰す。 盗品をレンタルしたリーヴスを疑うブレナンは、彼と研究所を監視することをブリーから指示される。 その後ロイは手口を変え、酒屋などの強盗を繰り返した。 ロイは巧妙な手口で犯行を続け、逃走方法も考え、地下の排水路に逃げ込み、その場に銃なども隠した。 ホワイティに呼ばれたブリーンは、ローリンズ殺害、ジョーンズの銃撃、酒屋強盗で使われた弾丸が一致すること知る。 盗難課に電話をしたブリーンは、ピストル強盗の被害者全員を集めるよう指示し、リーヴスの話が本当か確かめようとする。 ブリーンは、集まった強盗の被害者に協力してもらい、犯人の似顔絵を作成する。 出来上がった絵をリーヴスに見せたブリーンは、それをロイと確認したために、細部を修正して犯人の顔を完成させる。 似顔絵は印刷されて、全国の警察関機関や刑務所、郵便局、FBIなどに配布された。 その後、捜査の進展が見られないある夜、警官はリーヴスの自宅を監視していた。 帰宅したリーヴスの車に隠れていたロイは家に侵入し、身を隠しながら彼に声をかけ、警官が24時間監視していることを知らせる。 警官に気づかれないようにリーヴスを書斎に向かわせたロイは、警察の捜査状況を聞き、あまり進んでいないことを知る。 リーヴスに現金を要求したロイは、ないと言う彼に銃を向ける。 自首するようにと言われたロイは、また殺人を犯すことになると話すリーヴスの言葉が気になり、撃たれた警官の一人が死に、もう一人は瀕死の重傷だということを知る。 リーヴスを殴ったロイは、受け取った金額が少なかったために、また来ると伝えてその場を去る。 その件をブリーンに話したリーヴスは、警察に監視されたくないと伝えるものの、犯人逮捕のための餌だと言われたため、これ以上の協力を拒む。 ブリーンは、友人であるローリンズとジョーンズへの思い入れが、ブレナンの捜査の邪魔になっていると判断し、事件の担当を外し休暇を取るよう指示する。 ブレナンは、車椅子で治療を続けるものの回復したジョーンズを見舞いに行く。 ブリーンに担当から外されたことを知っていたジョーンズは、奮起を期待している警部の気持ちを察するようブレナンに伝える。 難事件に頭を抱えるブレナンは、犯人が警察関係者の可能性があるとジョーンズに指摘され、その線で独自の調査を始める。 各警察署を回ったブレナンは署員の写真を調べ、ある警察署の職員ブレディ(バイロン・フォルガー)から、犯人の似顔絵の男は、かつて司令部にいた無線技士だと言われ、資料として残っていた手紙を見せてもらう。 手紙のサインがロイ・マーティンの筆跡と一致していることを確認したブレナンは、ハリウッドの消印で住所が書かれていなかったために、郵便局に向かう。 ブレナンは、似ている男を知っていた局員の話を信じ、牛乳配達員に扮して彼の区域で会うことにする。 牛乳を買う振りをした局員は、ブレナンに男のアパートを教える。 牛乳の配達を始めたブレナンは、主婦(ドロシー・アダムス)に声をかけられ、被害妄想の彼女の話を聞く。 ロイの部屋の入り口で牛乳瓶を落として割ったブレナンは、ドアを開けた彼の顔を確認する。 ロイから自分で片付けると言われたブレナンは、その後も配達を続ける。 その件をブレナンから知らされたブリーンは、ロイを逮捕する計画を立てて実行する。 その夜ロイは、愛犬が外を気にするために警戒する。 ブレナンと共に現場に到着したブリーンは、ロイのアパートを包囲するよう部下に指示する。 愛犬が吠えたために外を見たロイは、警官らしき男を目撃し、屋根裏部屋に向かう。 ブリーンらは部屋に押し入り、ロイが逃げたことを知り捜索を始める。 厳戒態勢となり、屋根から飛び降りたロイが音を立てたために、警官がマシンガンで発砲する。 ロイは地下排水路に逃げ込み、それを知ったブリーンは、各排水口に人員を配置する。 ブレナンと車で移動するブリーンは、本部に連絡して催涙弾とガスマスクなどを用意させる。 排水口に警官がいることを知ったロイは、脱出を諦めてさらに奥に進む。 川への出口に先回りすることを考えたブリーンらは、排水路に入りロイを追う。 追っ手に気づいたロイは、隠してあったショットガンを発砲して襲撃戦になる。 マンホールから出ようとしたロイだったが、パトカーのタイヤで塞がれていた。 ブリーンは、ガスマスクを着けて催涙弾を撃つよう指示する。 ガスを吸い通路に出ようとしたロイは銃弾を受けて落下する。 ブリーンらは、ロイの死を確認する。
...全てを見る(結末あり)
夜を徹した医師たちの必死の治療にも拘らず、ローリンズ夫人は夫の死を知らされる。
”ロイ・マーティン”として所長のポール・リーヴス(ホイット・ビッセル)を訪ねたロイは、持参した機器を見せながら、研究員になることを勧められる。
*(簡略ストー リー)
ロサンゼルス。
市警のパトロール警官ローリンズ巡査が、不審者に射殺される。
犯人のロイ・モーガンは、軍で通信関係の部署に就いていた技術を利用し、盗品をリーヴスの研究所に持ち込みレンタルしていた。
捜査を始めた殺人課のブリーン警部は、犯人の車に銃と共に残されていた電子機器に目をつけ、盗品が持ち込まれたリーヴスの研究所と彼の監視を、部下のブレナンとジョーンズに任せる。
リーヴスに協力させて、盗品を持ち込んだロイをおびき寄せたブレナンとジョーンズは、彼に襲われる。
銃撃されたジョーンズは瀕死の重傷を負い、正体不明の犯人を逮捕するため、ブリーンは大規模な捜査を始めるのだが・・・。
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サイレント時代から活躍していたアルフレッド・L・ワーカーとアンソニー・マン(クレジットなし)の監督作品。
知能犯による殺人事件捜査に全力で取り組むロサンゼルス市警の行動を描く、フィルム・ノワールの名作。
1945年から1946年にかけて、ロサンゼルスで強盗、窃盗、銃撃戦などの犯罪を繰り返した、カリフォルニア州グレンデール市の元警察官で、第二次世界大戦の退役軍人でもあるアーウィン”マシンガン”ウォーカーの行動の新聞記事を基に製作された作品。
強盗の被害者の目撃証言を参考に、犯人の似顔絵を作成するという、当時としては画期的な捜査や鑑識の調査方法などが、緊迫感あふれるセミドキュメンタリー・タッチで描かれている。
モノクロ映像の効果を活かした、クライマックスの排水路の追跡劇は、映画史上に残る名シーンと言っても過言ではない。
このシーンは、「第三の男」(1949)のウィーンの下水道のシーンと似ていることで有名なのだが、撮影、公開共に本作の方が早いという事実だけで、その関連性などは明らかになっていない。
本作の撮影中に出演者のジャック・ウェッブは、警察のアドバイザーであるマーティ・ウィン刑事部長と親交を深め、テレビ番組”ドラグネット”が誕生したという経緯がある。
平凡な青年に見えるものの、残虐性もある知能犯を好演するリチャード・ベースハート、事件を担当する巡査部長のスコット・ブレイディ、その上司である警部で、捜査の指揮官ロイ・ロバーツ、犯人と関係する研究所の所長で警察に協力するホイット・ビッセル、事件を担当して犯人に撃たれる巡査部長のジェームズ・カードウェル、鑑識担当のジャック・ウェッブ、警察署の職員で犯人の情報を提供するバイロン・フォルガー、実生活で彼の妻である、被害妄想の主婦役ドロシー・アダムス、ナレーターはリード・ハドリーが担当している。