妻そして母の死により心に傷を追う父子が現われた粗暴な青年に翻弄されながら生きる希望を手に入れるまでを描く、製作、監督、脚本、編集スペンサー・サッサー、主演ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、ナタリー・ポートマン、レイン・ウィルソン、デヴィン・ブロシュー、パイパー・ローリー他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:スペンサー・サッサー
製作
ナタリー・ポートマン
スペンサー・サッサー他
原作:ブライアン・チャールズ・フランク
脚本
スペンサー・サッサー
デヴィッド・ミショッド
撮影:モーガン・サッサー
編集
マイケル・マカスカー
スペンサー・サッサー
音楽:フランソワ・テータ
出演
ヘッシャー:ジョゼフ・ゴードン=レヴィット
ニコール:ナタリー・ポートマン
ポール・フォーニー:レイン・ウィルソン
T.J.フォーニー:デヴィン・ブロシュー
マデリン・フォーニー:パイパー・ローリー
ラリー:ジョン・キャロル・リンチ
ダスティン:ブレンダン・ヒル
T.J.の母親:モニカ・スタッグス
アメリカ 映画
配給 Wrekin Hill Entertainment
2011年製作 106分
公開
北米:2011年5月13日
日本:2011年6月25日
製作費 $7,000,000
北米興行収入 $382,950
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
少年T.J.フォーニー(デヴィン・ブロシュー)は、2ヶ月前に、自動車事故で母親(モニカ・スタッグス)を亡くしていた。
T.J.は、自動車修理工場に運ばれる母親の車を、必至に自転車で追う。
工場に着いた車に乗り込んだ、T.J.に気づいたオーナーのラリー(ジョン・キャロル・リンチ)は、バイトのダスティン(ブレンダン・ヒル)に、彼を追い払うよう言いつける。
T.J.は事故以来、祖母マデリン(パイパー・ローリー)の家で、父ポールと暮らしていた。
ポールは、事故のショックにより、薬に頼る心の病を抱え、塞ぎこむ毎日を送っていた。
ある日T.J.は、登校途中に、建設現場で自転車で転倒してしまい、憤慨して建物の窓ガラスを割る。
建物にいた、風変わりな青年ヘッシャー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)は、T.J.に脅しをかけるが、警官が現れたため、ダイナマイトを爆発させてその場から逃走する。 その後、学校にヘッシャーがいることに驚いたT.J.は、ダスティンに言いがかりを付けられる。 翌日も、ヘッシャーは学校に現われ、放課後、T.J.が車に落書きしたと思い込むダスティンは彼を追う。 しかし、スーパーマーケットの駐車場で、店員ニコール(ナタリー・ポートマン)に邪魔され、ダスティンはその場を去る。 ニコールに、車で家まで送ってもらったT.J.だったが、ヘッシャーの車に気づき慌ててしまう。 ヘッシャーは無断で家に入り、T.J.を脅して衣類の洗濯を始める。 ポールは帰宅して、ヘッシャーを不審に思うが、彼はそれを無視して、我が物顔で家に居座ろうとする。 ガレージに荷物を運んだヘッシャーは、好き勝手な行動を始めてギターを弾き、T.J.は、祖母マデリンの質問にも、彼のことを友達と答えるしかなかった。 再び自動車工場に向ったT.J.は、ラリーに車を買取ることを伝えるが、彼はそれは不可能だと答える。 その後、スーパーのニコールに会ったT.J.は、彼女にアイスクリームを渡して家に戻る。 T.J.は、祖母マデリンが、何の疑いもなくヘッシャーと雑談する姿を見て驚いてしまう。 その後も、T.J.は学校でダスティンの嫌がらせに遭い、それを目撃したヘッシャーだったが、彼はT.J.を助けなかった。 放課後、気が進まないまま、グループ・セラピーに参加したT.J.は、ポールと共に、同じように家族を亡くした人々の話を聞く。 帰宅したT.J.は、学校で助けてくれなかったヘッシャーに言い寄るが、彼に家から連れ出される。 ダスティンの家に向かったヘッシャーは、彼の車にガソリンを撒き、火を放ってしまう。 ドアをロックして、T.J.を置き去りにしたヘッシャーは、その後、車で彼を突き飛ばすが、逆に蹴りを入れられてしまう。 翌日、警官に連行されて、指紋などをとられたT.J.は、証拠が出なかったために釈放される。 ニコールに恋心を抱くようになったT.J.は、ヘッシャーにそれをからかわれる。 ヘッシャーはT.J.を車に乗せて、仕事を終えたニコールを追い、彼女が事故を起したのを目撃し、相手を脅して追い払う。 車が動かなくなったニコールを乗せたヘッシャーは、彼女や子供のT.J.の前で、かまわずに卑猥な話を始める。 その後ヘッシャーは、乱暴な運転をしたかと思うと、売り家に忍び込み、二人をプールに突き落として、意味不明な行動を始める。 ヘッシャーは、病院に行くといってニコールとT.J.を置き去りにしてしまい、二人は、彼女の車に戻るが、駐車違反のキップを切られていた。 何をやってもうまくいかないと嘆くニコールを見て、T.J.は、彼女を一層愛しく思うようになる。 その日の夕食で、セラピーに、ポールが独りで行ったことや、T.J.の言葉遣いなどで、二人は言い争いになってしまう。 傍観していたヘッシャーは、それを自分のせいだと言って涙するマデリンの気持を察し、彼女を気遣い、食事はうまいと言って慰める。 気分が悪いと言うマデリンが、医療大麻を吸うというので、ヘッシャーは、それを水パイプで吸いマデリンにも試させる。 マデリンと語り合ったヘッシャーは、翌日、彼女の趣味である、日課の散歩に付き合うことを約束する。 ヘッシャーはマデリンに思いやりを見せて、T.J.とポールが台無しにした、食事や割れた皿をを片付ける。 翌朝、ポールのクレジット・カードを持ち出し、現金を引き出したT.J.は、それを持ってラリーの元に向い、車を取り戻そうとする。 しかし、T.J.はラリーにそれを断られ、車が既にこの場にないことを知らされる。 散歩に行く予定だったヘッシャーは、マデリンに食事の用意をするが、彼女がクローゼットで倒れていることに気づく。 帰宅したT.J.もそれを知り、ショックを受けたヘッシャーは、家を飛び出す。 T.J.は、現金をニコールへの”駐禁キップ基金”にして、彼女に渡そうとする。 ニコールが電話に出なかったため、現金を持参したT.J.は、彼女のアパートに向う。 T.J.は、ニコールがヘッシャーと愛し合っているところを目撃してしまう。 憤慨したT.J.はヘッシャーの車を傷つけ、彼とニコールを罵倒する。 帰宅したT.J.は、ヘッシャーのギターなどを壊して、彼の切断バサミを持ち出し、ダスティンの家に向かおうとする。 T.J.は、戻って来たヘッシャーに呼び止められるが抵抗し、息子に手を出そうとする彼を止めようとするポールは殴られてしまう。 ヘッシャーはその場から去り、T.J.はダスティンの家に向かい、気づかれないように侵入する。 T.J.は、ダスティンの足の親指を、ハサミで切断すると言って脅し、母親の車がどこあるかを聞き出す。 隙を見てダスティンがT.J.に襲い掛かるが、ヘッシャーがその場に現われる。 ヘッシャーは、ダスティンの鼻をハサミで切り、T.J.はその場を去り、車のあるスクラップ場に向う。 車を見つけたT.J.は、その中で、母親が事故死した時のことを思い出して涙し、眠ってしまう。 夜を明かしたT.J.は、プレスされるために運ばれる車から振り落とされる。 自宅に戻ったT.J.は、祖母マデリンの葬儀のために着替えをする。 そこにニコールが現われてT.J.に謝罪し、彼が自分には大事な人物だということを伝え、友情を取り戻す。 T.J.も、ニコールを罵倒したことを謝罪し、彼は、うまく結べなかったネクタイを、母親がしてくれたようにニコールに直してもらう。 葬儀は始まり、マデリンの知り合いに続き、別れの言葉を贈ろうとしたT.J.は、それが出来ずに席に戻る。 そこに、酔ったヘッシャーが現われ、制止するポールや周囲にかまわず、彼はマデリンのために話し始める。 その場にそぐわない、意味不明な話を始めたヘッシャーだったが、やがてその話は、ポールやT.J.に生きる望みを与える。 ヘッシャーは、散歩の約束をしたと言って、マデリンの棺を押して道路に向かい、T.J.とポールもそれに続く。 翌朝、ポールは、事故以来伸ばしていたひげを剃り、ヘッシャーが姿を消し、見せたいものがあることをT.J.に伝える。 ガレージの前には、プレスされた母親の車が置かれ、家の屋根には、”ヘッシャーは、ここにありき”と書かれていた。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
母親を事故で亡くした少年T.J.フォーニーは、彼女の思い出が残る、壊れた事故車を取り戻そうとする。
事故以来、心を閉ざし塞ぎこむ父ポールと祖母マデリンとで暮らしていたT.J.の前に、ある日、異様な風貌の粗野で下品な青年ヘッシャーが現われる。
現実を受け入れられない、父子の苦悩も無視して、家に居座り始めたヘッシャーは、過激な方法で、T.J.の悩みや危機を救ったりもする。
しかし、今の自分には邪魔な存在のヘッシャーを、当然のごとくT.J.は迷惑に思う。
そんな時T.J.は、自分をいじめる少年を追い払ってくれた、スーパーマーケットの店員二コールと親交を深める。
やがて、T.J.はニコールに、ほのかな恋心も抱くようになるのだが、それをヘッシャーにからかわれてしまう。
そんなヘッシャーは、父子とは違い、自分を受け入れる祖母マデリンには、少なからず気遣いを見せるのだが・・・。
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出演も兼ねるナタリー・ポートマンが製作にも参加して、期待の新鋭スペンサー・サッサーの長編デビュー作ともなった。
スペンサー・サッサーは、殆ど端役しか演じたことのないデヴィン・ブロシューに、苦悩する少年役を見事に演じさせている。
映画製作が、演出家他によって、役者の技量をいかに引き出すかを証明する、正にプロの仕事ぶりを感じさせてくれる。
とてつもなく破天荒な登場人物が、実は人間味溢れる人物であり、やがて友情が芽生え・・・というような、単純でありふれた物語かと思いきや、悪党以上に迷惑な青年は、心に傷を負った父子に、同情する素振りなど全く見せずに、過激な方法で、現状の打破を試みていくところが、何とも型破りで痛快でもある。
とは言え、ややボケ気味の祖母の純朴さに、微妙に心を動かされる、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットの、時折見せる、人情を感じる表情が実に印象的でもある。
メイクで型破りな青年に見せているが、インパクトがある刺激的な役を、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットは魅力的に演じている。
主演はジョゼフ・ゴードン=レヴィットなのだが、物語の主人公は、亡くなった母への想いを追い求める少年を見事に演じたデヴィン・ブロシューであり、彼を中心に物語が展開する。
印象深い演技を見せるデヴィン・ブロシューは、妙に気になる少年だったのだが、彼は、「告発のとき」(2007)で、シャーリーズ・セロンの息子役を演じていた。
今後、どのような役者になるかが注目だ。
前年の「ブラック・スワン」(2010)でオスカーを獲得し、既に大スターの域に達しているナタリー・ポートマンは、目立ち過ぎないように、質素で控えめな役ながら存在感を発揮している。
苦難を乗り越える、少年の父親レイン・ウィルソン、60年以上のキャリアを誇る大ベテラン祖母役のパイパー・ローリー、自動車修理工場のオーナー、ジョン・キャロル・リンチ、少年をいじめるブレンダン・ヒル、少年の母親モニカ・スタッグスなどが共演している。