社会派のスタンリー・クレイマーが製作、監督し人種問題を直視した秀作。 主演スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン、シドニー・ポワチエ、キャサリン・ホートン、セシル・ケラウェイ共演。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:スタンリー・クレイマー
製作:スタンリー・クレイマー
脚本:ウィリアム・ローズ
撮影:サム・リーヴィット
編集:ロバート・C・ジョーンズ
美術・装置
ロバート・クラットワーシー
フランク・タトル
音楽:フランク・デ・ウォール
主題歌:”The Glory of Love“
出演
スペンサー・トレイシー:マット・ドレイトン
キャサリン・ヘプバーン:クリスティーナ・ドレイトン
シドニー・ポワチエ:ジョン・ウェード・プレンティス
キャサリン・ホートン:ジョーイ・ドレイトン
セシル・ケラウェイ:ライアン司教
ビア・リチャーズ:プレンティス夫人
ロイ・E・グレン:プレンティス
ヴァージニア・クリスティン:ヒラリー・セント・ジョージ
イザベル・サンフォード:マティルダ”ティリー”ビンクス
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1967年製作 108分
公開
北米:1967年12月12日
日本:1968年4月6日
製作費 $4,000,000
北米興行収入 $56,700,000
世界 $70,000,000
■ アカデミー賞 ■
第40回アカデミー賞
・受賞
主演女優(キャサリン・ヘプバーン)
脚本賞
・ノミネート
作品・監督
主演男優(スペンサー・トレイシー)
助演男優(セシル・ケラウェイ)
助演女優(ビア・リチャーズ)
美術・編集・音楽賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
サンフランシスコ国際空港に降り立つカップル、 アフリカ系の青年ジョン・ウェード・プレンティス(シドニー・ポワチエ)と白人女性ジョーイ・ドレイトン(キャサリン・ホートン)は、人目も気にせず幸せそうだった。
二人はハワイで知り合い10日間で結婚を決め、ジョーイの自宅に、両親の承諾を受けに立ち寄ったのだった。
ジョーイの母クリスティーナ(キャサリン・ヘプバーン)の画廊に立ち寄った二人だったが、彼女は不在だった。
しかし、クリスティーナの秘書ヒラリー・セント・ジョージ(ヴァージニア・クリスティン)は、二人の関係に気づく。
自宅に着いたジョーイは、ジョンをメイドのマティルダ”ティリー”ビンクス(イザベル・サンフォード)に紹介する。 ティリーは、ジョーイの相手が自分と同じアフリカ系の男性と知り、偏見とも取れる助言を彼女に始める。 ジョンは、父親に連絡を入れ、結婚を決めたことを伝えるが、相手が白人女性だとは言えなかった。 そこに、クリスティーナが帰宅し、ジョーイは著名な医師でもあるジョンのことを、目を輝かせながら語り始める。 ジョンが、8年前に列車事故で妻子を亡くしている事などをジョーイが話していると、そこに彼が現れる。 娘の相手がアフリカ系であることを知り、クリスティーナは驚くが、冷静さを取り戻して、二人の話を聞き始める。 やがて、ジョーイの父マット(スペンサー・トレイシー)も帰宅するが、ゴルフの約束で忙しい彼は、ジョーイとジョンに簡単な挨拶をして立ち去ろうとする。 その直後、ようやく事に気づいたマットは二人の元に戻り、ジョンがジョーイとのことを告白する。 時間をかけて考えてみたいマットだったが、ジョンは今夜中にニューヨークに行かねばならなかった。 マットはゴルフを中止し、新聞社社主である彼は、社に電話を入れジョンの身元を調べ始める。 思いもよらぬことに頭を抱えるマットだが、クリスティーナは、一応の理解を示す。 ジョンは、将来の問題や親子関係に影響する結婚は出来ないと、あくまで、マットとクリスティーナの承諾が前提だということを、ジョーイには内緒で二人に伝える。 マットとクリスティーナは、実直で思慮深いジョンの態度に敬服し、非の打ち所のない経歴なども知る。 そんな二人だったが、何よりもジョーイの幸せそうな様子に、喜びを感じるのだった。 しかし、メイドのティリーは、人権問題とこれは別問題だと嘆いてしまう。 マットは、新聞社社主の立場上、人種差別や社会問題には正面きって立ち向かってきた。 だが、いざ自分の身にそれが降りかかってみると、二人の結婚を許したとしても、子供のことなどを考えると、早急に結論を出すのは難しかった。 そこに、ジョンの両親がロサンゼルスからやってくることになり、ジョーイは二人を食事に招いてしまう。 ジョンは、父親がジョーイのことを白人だとは知らないために戸惑ってしまうが、彼女はそれを一向に気にしない。 マットは、堅実で正義感もあるジョンの抱く、医療に関する人生計画などにも感心し、間違いのない青年だということは認め、それをクリスティーナに話す。 そして、郵便配達だという父親からどうしてあんな優秀な息子が育ったのか疑問に思う。 しかし、クリスティーナから、ジョンの両親をジョーイが食事に招いたと知らされ驚いてしまう。 そんな時、マットの友人ライアン司教(セシル・ケラウェイ)が訪ねてくる。 ライアン司教は、異人種間の結婚を何組も見てきたのだが、かえってうまくいくケースの方が多く、二人を認めてあげる そんな時、ジョンとジョーイの関係が気になる画廊のヒラリーは、仕事の話をする振りをして、二人の偵察に現れる。 それを察したクリスティーナは、ヒラリーに解雇することを告げて追い払ってしまう。 クリスティーナはライアン司教の元に戻り、あれだけ愛し合っている二人には、幸せになる権利があると言われ、司教を夕食に招待する。 二人が破談になることを望む自分を情けなく思い、不機嫌になったマットは、クリスティーナを誘いドライブに出かける。 アイスクリームを食べに、レストランの駐車場に車を止めたマットは、以前食べて気に入ったものを注文する。 そのアイスクリームの味が違い苛立つマットだったが、新しい味もいいものだと気づく。 ドレイトン家では、メイドのティリーが、何が目的なのかをジョンに問い質し、捲くし立てて言いがかりをつける。 アイスクリームを平らげ帰ろうとしたマットは、アフリカ系の青年の車に衝突してしまう。 マットは誠意を持って青年に謝るが、彼が怒りをぶちまけたため、マットも憤慨して現金を渡して走り去ってしまう。 夕食前に友人と会ったジョーイとジョンだったが、ジョーイは、どうしてジョンと共に旅たたないのか問われ、彼と共に出発する気になってしまう。 帰宅したマットは、いずれにしても即答できるような問題ではなく、本心を隠してまで、笑顔を見せるようなこともできないことをクリスティーナに伝える。 それを聞いたクリスティーナは、サンフランシスコ湾の夕陽を見ながら涙する。 ジョンの父(ロイ・E・グレン)と母(ビア・リチャーズ)は、空港に迎えに来たジョンとジョーイを見て困惑する。 夕食の身支度をするクリスティーナは、思慮深いジョンは反対されても納得するだろうが、ジョーイは引き下がらないだろうとマットに告げる。 そしてクリスティーナは、父娘がそれによって争うことになれば、自分はジョーイの味方に付くとマットに言い放つ。 自宅に向かったジョーイの車の中で、ジョンの父親も、二人の結婚について考える時間が短すぎることを息子に伝える。 現れたライアン司教を迎えたクリスティーナは、マットが結婚に反対することを知らずに旅立つ、ジョーイのことを思うと、居たたまれないと司教に告げて涙する。 娘の幸せを考えていると言って、何でも受け入れてしまうクリスティーナに憤慨するマットに対し、ライアン司教は、目の前に現れた障害に怒っているだけだと反論する。 子供のいない司教には理解できないことだと、自分の立場での考えをマットは主張する。 二人の意見は平行線のまま、ジョンとジョーイと共に、彼の両親が訪れたことに気づく。 ジョンの両親を歓迎したクリスティーナは、夫のマットとライアン司教を紹介する。 ジョンとジョーイのことでは、少々せっかちな話になっていると話を切り出したマットに、ジョンの父プレンティスが同調したため、クリスティーナは夫人を連れて庭に出る。 クリスティーナと夫人も同じ意見で、二人はそれぞれの夫が反対しているのも、時間がないために仕方のないことだと言って苦悩する。 マットとプレンティスは書斎で話し合うが、ジョンはライアン司教から、マットが反対すれば、自分は諦めるだろうと思っていることを知らされる。 二人の意見が一致したマットは、それをジョンに話すようプレンティスに伝える。 ジョンの母は息子に、クリスティーナが結婚には賛成していることを告げ、自分も支えることを約束する。 しかし、父に呼ばれたジョンは、彼から結婚を許すことは出来きず、今まで育てた自分達のためにも、この結婚を諦めるようにと説得される。 マットと話し合ったプレンティス夫人は、彼と夫には愛し合う二人の悪い部分しか見えず、気持ちを分かってあげようとしていないことを伝える。 さらに夫人は、自分達にもあった愛に対する情熱を、マットは忘れてしまっていると付け加える。 ジョンは父親に対し、子供を育てるのは親の義務であり、どんな困難があろうと、自分はそう考えて実行すると言い返す。 そして、そういう考えを子供に押し付けるから、自由を勝ち取ることができないとまで主張する。 しかしジョンは、父親に対する愛情は変わらないことも伝えるのだった。 そんな家族同士の話し合いを全く気にせず、旅支度をするジョーイに、クリスティーナは、状況の悪さを説明しようとする。 心を決めたマットは、全員を集めて演説を始め、さらにメイドのティリーも呼び寄せる。 マットは、慌しい一日の経過と驚き、その場の人々からの手厳しい自分に対する意見などを述べる。 そして、情熱をなくした燃えカスのような男とまで言われた、プレンティス夫人の言葉で目が覚めたことをマットは語る。 確かに燃えカスではあるが、かつてクリスティーナを愛した時の記憶は決して薄れていない、同じ情熱で立ち向かえば、どんな困難にも打ち勝てると、マットは二人を祝福する。 クリスティーナやジョーイは、夫そして父の言葉に感激して涙する。 そして一同は、夕食のテーブルに着く。
...全てを見る(結末あり)
べきだとマットに助言する。
*(簡略ストー リー)
旅行先で知り合い、電撃的に結婚を決めた青年医師でアフリカ系のジョンと白人女性ジョーイは、彼女の両親マット・ドレイトンとクリスティーナに、それを報告しようして自宅に向う。
当然のごとく驚く両親を前に、若いジョーイは結論を急ぐが、妻子を失った経験を持つ思慮深いジョンは冷静に展開を見守る。
クリスティーナは、何よりも娘の幸せそうな様子に理解を示すが、マットは二人の将来が不幸になる可能性ばかりを気にして、考えをまとめられずに苛立つ。
やがて、ジョンの両親を夕食に招くことになり、楽天家のジョーイの意見だけで事を解決できない、もどかしい雰囲気の中で一同が顔を会わせることになるのだが・・・。
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ドラマの中でも再三言われるが、このような問題を数時間で結論付けなくてはならないという、その設定自体には難があるが、困難や問題に直面した時の、アメリカ人の良識や勇気を貫こうとする姿勢は非常によく伝わってくる。
第40回アカデミー賞では作品賞以下10部門にノミネートされ、主演女優(キャサリン・ヘプバーン)と脚本賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(スペンサー・トレイシー)
助演男優(セシル・ケラウェイ)
助演女優(ビア・リチャーズ)
美術・編集・音楽賞
反響を呼んだ本作は、北米興行収入約5700万ドル、全世界では約7000万ドルという大ヒットとなった。
主演のスペンサー・トレイシーは、作品の撮影終了の17日後に心臓マヒで亡くなり、本作が遺作になった。
67歳にしては随分やつれていたように感じるのは、体調が思わしくなかったのかもしれない。
また、クライマックスで、両家の前で演説をするスペンサー・トレイシーの姿を見つめる、キャサリン・ヘプバーンの表情が、彼への労わりの眼差しに見えてならない。
それらは気のせいかもしれないが、ユーモアを交えた彼独特のセリフ回しは説得力がある。
キャサリン・ヘプバーンとドライブに出かけて、アイスクリームの味が以前と違ったことに気づき、新しいことにチャレンジするのもいいものだと、茶目っ気たっぷりにそれを頬張る場面は、ラストの彼の決断を暗示させる、なかなか気の利いたエピソードだ。
スペンサー・トレイシーとは、本作を最後に9作で共演したキャサリン・ヘプバーンは2度目のアカデミー主演賞を受賞する。
*翌年も「冬のライオン」(1968)で連続受賞し、「黄昏」(1981)でも4回目の受賞を果たした。
彼女は本作で、娘の幸福な姿に目を潤ませてばかりいるが、上記のようにスペンサー・トレイシーの体調を案じ涙していたようにも見える。
彼女のような偉大な役者が、演技中に感傷にふけるとも思えないが・・・。
意地を張る夫に一喝され、言葉なくサンフランシスコ湾の夕陽を見つめて涙するシーンだけでも、オスカーの価値はある。
また、アフリカ系男優初のアカデミー主演賞を「野のユリ」(1963)で獲得したシドニー・ポワチエのための役だったと言えるほどエリート医師を好演している。
人種問題の考えなど存在しない主人公夫婦の娘キャサリン・ホートン(キャサリン・ヘプバーンの姪)、アカデミー助演賞にノミネートされた主人公の友人である司教セシル・ケラウェイとジョン(シドニー・ポワチエ)の母親ビア・リチャーズの、良識あるアメリカ人を演ずる2人の好演も印象に残る。
ほぼ納得はしたのだろうが、渋い顔を崩さずに終えるところが現実的でもあるジョンの父親ロイ・E・グレン、画廊の秘書ヴァージニア・クリスティン、ジョンの態度をアフリカ系の恥のように考えるメイドのイザベル・サンフォードなどが共演している。