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グラン・トリノ Gran Torino (2008)

異民族、特にアジア人に偏見を持つ頑固な老人と隣人のモン族一家との交流を描く、製作、監督、主演クリント・イーストウッドによるヒューマン・ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ヒューマン)

クリント・イーストウッド / Clint Eastwood 作品一覧
クリント・イーストウッド / Clint Eastwood / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:クリント・イーストウッド

製作総指揮
ジャネット・カーン

ティム・モーア
アダム・リッチマン
ブルース・バーマン
製作
クリント・イーストウッド

ビル・ガーバー
ロバート・ロレンツ
原案
デーヴ・ジョハンソン

ニック・シェンク
脚本:ニック・シェンク
撮影:トム・スターン
編集
ジョエル・コックス

グレイ・D・ローチ
音楽
カイル・イーストウッド

マイケル・スティーヴンズ

出演
クリント・イーストウッド:ウォルト・コワルスキー
ビー・ヴァン:タオ・ヴァン・ロー
アーニー・ハー:スー・ロー
クリストファー・カーリー:ヤノビッチ神父
コリー・ハードリクト:デューク
ブライアン・ヘイリー:ミッチ・コワルスキー
ブライアン・ハウ:スティーブ・コワルスキー
ジェラルディン・ヒューズ:カレン・コワルスキー
ドリーマ・ウォーカー:アシュリー・コワルスキー
ジョン・キャロル・リンチ:マーティン
ドゥー・モー:フォン”スパイダー”
スコット・イーストウッド:トレイ
ブルック・チア・タオ:ヴー

アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
2008年製作 116分
公開
北米:2008年12月12日
日本:2009年4月25日
製作費 $35,000,000
北米興行収入 $148,055,050
世界 $260,000,000


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ミシガン州デトロイトハイランド・パーク
妻に先立たれたポーランド系アメリカ人ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、長年フォードの自動車工場に勤め引退し、今は愛犬デイジーと暮らしていた。

朝鮮戦争陸軍第一騎兵師団”として戦った勇者でもあるウォルトだったが、その時の経験からくるアジア人への偏見と、敵兵を虐殺してしまった痛ましい記憶を50年以上も背負っていた。

ウォルトは妻の葬儀では、若い神父ヤノビッチ(クリストファー・カーリー)の弔辞を馬鹿にし、長男ミッチ(ブライアン・ヘイリー)と次男スティーブ(ブライアン・ハウ)とも溝ができてろくに口も聞かず、孫達の服装や無礼な態度も理解できずに許せなかった。
...全てを見る(結末あり)

それをあからさまに態度に示し、口にしてしまうウォルトは、葬儀後の会食に集また人々にまでも、冷たい視線を浴びせる。

ヤノビッチ神父は、ウォルトの妻に頼まれたと、彼に懺悔をさせようと説得するのだが、ウォルトは神父を相手にもしない。

息子達やその家族も、その頑固さに呆れ果てウォルトを避け、会食が終わると逃げるように去って行く。

そんなウォルトが最も気に触っていたのが、最近、隣に越してきたモン族(ミャオ族)の家族だった。

元々、彼らと同族の住民は近所にいたのだが、家の壁は剥げ庭や芝の手入れもしない彼らを、ウォルトは軽蔑の眼差しで見つめる。

その家族は、学校にも行かず仕事もしない内気な少年タオ・ヴァン・ロー(ビー・ヴァン)、勝気な姉スー(アーニー・ハー)そして母と祖母だった。

その後、ヤノビッチ神父が再びウォルトを訪ねるのだが、彼は神学校を出たばかりの神父を馬鹿にして追い払う。

ある日、タオはヒスパニック系のギャングにからかわれているところを、モン族のギャングでタオの従兄スパイダー(ドゥー・モー)らに助けられ、彼らのグループに誘われる。

数日後、スパイダーらはタオにウォルトの所有する1972年型のヴィンテージ・カー、フォードグラン・トリノ”を盗むよう強要する。

ウォルトは、酒場で再びヤノビッチ神父に話しかけられ、仕方なく席を共にして”生と死”について語り合う。

その夜、ウォルトは、ガレージの侵入者に気付きライフルで犯人タオを脅して追い払う。

数日後、スパイダーらはタオの家に現れ、スーは怯まずに彼らを罵倒するが、気の弱いタオはからかわれ、再度グラン・トリノを奪うよう言われる。

それを見ていたウォルトが、小銃”M1ガーランド”を持ち出し彼らに銃口を向け、自分の家の芝生から出て行くよう罵声を浴びせる。

タオの家族や近所のモン族の住民は、ウォルトの勇敢な行為を称え、彼には迷惑なことだったが、食べ物や植物を贈り届ける。

スーそして母親はウォルトに感謝し、グラン・トリノを盗もうとしたことをタオは謝罪する。

トラブルが起きたことを聞いたヤノビッチ神父は、警察に届けるべきだとウォルトに主張し、心の重荷を解くために彼に懺悔を勧める。

一部ヤノビッチ神父の言い分も認めたウォルトだったが、命令でなく、自ら率先して戦争で人を殺したことが、心から消え去ることはないことを神父に伝える。

スーが、3人の不良グループに絡まれたところに通りがかったウォルトは、彼らを”コルト”(M1911)で脅し、彼女を救い家に送り届ける。

ベトナム戦争から逃れ、アメリカに住み着いていたスーの家族のことなどを聞いたウォルトは、自分に臆することなく言葉を交わす彼女を気に入る。

ウォルトは、スーとは対照的なタオには、劣っている点があるのではないかと彼女に問う。

しかしスーは、タオは頭は良いのだが、順応性に欠けているだけだと説明する。

相変わらず庭の手入れや家の修繕、そしてポーチに座りタバコを吸ってビールを飲む、平凡な毎日を過ごしていたウォルトは、誕生日に長男のミッチの訪問を受ける。

ミッチと妻カレン(ジェラルディン・ヒューズ)は、ウォルトを老人扱いして養護施設に入れようとするが、彼の怒りを買い追い帰えされてしまう。

そんな時、ウォルトはスーに家族のパーティーに誘われ、手持ちのビールもなくなった彼は、その誘いを受けることにする。

ウォルトは、自分の好きな銘柄のビールがないなどとぼやき、モン族の風習に戸惑いながら、占い師に自分の心の中を言い当てられてしまう。

急に咳き込んだウォルトは、吐血したところをスーに見られてしまうが、平静を装う。

ウォルトは、嫌っていた異民族との接触の方が、意外にも、息子達と過ごすよりも心和むことに気付く。

スーの家族や一族と接し、旨い食事にありつけたウォルトは、機嫌よく時間を過ごす。

地下室の若者の集まりで、気に入った女性に声もかけられないタオを見たウォルトは、彼の不甲斐なさを嘆く。

スーと母親は、グラン・トリノの件の償いをしようと、タオをウォルトのために働かせると言い出すが、彼はそれを断る。

しかし、母親が一族の名誉が傷つくと言い張ったために、ウォルトは仕方なくそれを受け入れる。

翌日、現れたタオに、自分の手で何でもできると彼を邪魔者扱いするウォルトだったが、向かいの家の修繕をタオにさせることにする。

吐血が気になり、病院に出向いたウォルトは、医師や患者までもが、ほとんどアジア系他の人々だと気付き、世の中の変貌に改めて驚く。

診察の結果は悪く、ショックを受けたウオルトは珍しく長男ミッチに電話をかける。

ウオルトは何も語らなかったが、ミッチは父親の異変を察知する。

50年間かけてウオルトが集めた工具に、タオが興味を持ったため、ウオルトは一部の工具を与えるが、彼に吐血したところを見られてしまう。

そしてウオルトは、スパイダーらにそそのかされて、タオがグラン・トリノを盗もうとしたことを知る。

将来に夢も持たないタオを、アメリカ男性のように鍛え上げようとしたウオルトは、”男同士の会話”を教え込もうとする。

ウオルトは、口の悪い馴染みの床屋マーティン(ジョン・キャロル・リンチ)の所へタオを連れて行く。

ウオルトは、マーティンとタオを”教育”し、建設現場の知人に彼を紹介して雇ってもらう。

さらにウオルトは、仕事に必要なものと、自分の工具をタオに使わせることを約束する。

スパイダーらは、仕事帰りのタオをに言い掛かりをつけ、ウォルトの工具を壊わし、彼の頬にタバコを押し付けてヤキを入れる。

それを知ったウォルトは、スパイダーの仲間の一人を叩きのめし、タオに近づくなと銃を突きつけて脅迫する。

その後ウォルトは、タオが好意を持つ少女をバーベキューに誘い、二人をデートさせることに成功する。

そしてウォルトは、タオにグラン・トリノを貸すことを約束して友情を示す。

数日後、スパイダーらは報復のためタオの家を銃撃する。

ウォルトはタオの家の様子を見に行くが、タオは首を負傷し、親戚の家に行っていた、スーの行方がわからなくなってしまう。

やがてスーはレイプされて戻ってくるが、ウォルトの怒りは爆発し荒れ狂い涙する。

平静を取り戻したウォルトの元に、我慢強く彼に接触していたヤノビッチ神父が現れる。

卑劣なギャングの仕打ちに、神父はウォルトの気持ちを理解することを伝え、二人は酒を酌み交わす。

翌日、冷静さを欠くタオを見て、ウォルトは過ちを犯しかねない彼をなだめ、慎重に行動するよう説得する。

庭先の芝を刈り、入浴を済ませ、マーティンの店で散髪して、スーツを新調たウォルトは、教会でヤノビッチ神父に懺悔を申し出て自分の罪を告白する。

他愛もない罪を許されたウォルトは、自分が報復するだろうと思い込み安らぎを与えようとする神父に、既に安らぎを得ていると言い残し教会を去る。

ウォルトは自宅でタオを待ち、彼に朝鮮戦争で受けた勲章”シルバー・スター” を渡す。

そしてウォルトは、タオが殺人を犯さないよう地下室に閉じ込める。

愛犬デイジーをタオの祖母に託し、タオが地下室にいることを電話でスーに伝えたウォルトは、スパイダーらの元に向かう。

ヤノビッチ神父は、スパイダーの家でウォルトを待ち構えていたが、何時間も監視するわけにいかない警官と共にその場を去る。

その後、家の前に現れたウォルトに気付いたスパイダーらは、彼に銃口を向け威嚇する。

しかし、ウォルトは全く怯まず、ギャング達に罵声を浴びせ、近所の住民にそれを監視させる。

ウォルトはタバコを取り出し、ギャング達に”火を貸せ”と言う。

そしてウォルトは、”第一騎兵師団”の記章入りジッポーを取り出そうとして、胸元から拳銃を出すかのように見せかける。

ギャング達はそれを見てウォルトを銃撃し、彼は崩れ落ちて息絶える。

タオとスーは現場に駆けつけ、ウォルトが丸腰だったことと、ギャング達は目撃者多数により逮捕され、長期刑になるということを、同じモン族の警官から知らされる。

胸に”シルバー・スター”を付けたタオと、まだ傷の癒えないスーは、ウォルトの遺体を見つめ、連行されるギャング達を睨み返す。

数日後、ウォルトに敬意を表し、タオやスーはモン族の民族衣装で彼の葬儀に参列する。

ヤノビッチ神父は弔辞で、ウォルトから、生と死が何かを教わったことを述べる。

ウォルトの遺言状では、残された遺族の期待を裏切り、家や財産は教会に寄付され、そしてグラン・トリノはタオに譲渡される。

そしてタオは、グラン・トリノにウォルトの愛犬デイジーを乗せてドライブする。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
デトロイトハイランド・パーク
妻に先立たれた、ポーランド系アメリカ人のウォルト・コワルスキーは、長年フォードの自動車工場に勤め、引退して隠居生活を送っていた。
朝鮮戦争陸軍第一騎兵師団”として戦った勇者でもあるウォルトは、その経験から、アジア人への偏見を持ち、敵兵を虐殺した痛ましい記憶を背負っていた。
頑固一徹のウォルトは、息子達ともうまくいかず、教区の若い神父ヤノビッチのことも見下して相手にもしない。
そんな偏屈な男ウォルトは、隣に越してきたモン族(ミャオ族)の家族の存在が気に食わなかった。
その家族、学校にも行かず仕事もしない内気な少年タオ、勝気な姉スー、そして母と祖母を、ウォルトは軽蔑の眼差しで見つめる。
ウォルトは、妻との約束で懺悔をさせようとするヤノビッチ神父を馬鹿にして追い払ってしまう。
そんな時タオは、モン族のギャングに誘われ、ウォルトの所有する1972年型のヴィンテージ・カー、フォードグラン・トリノ”を盗むよう強要される。
タオは、ウォルトのガレージに忍び込むのだが、逆に彼に脅されてしまう。
翌日、タオはギャングにからかわれるのだが、ウォルトが彼らに銃を向けて罵声を浴びせる。
タオの家族やモン族の住民は、ウォルトの勇敢さを称え、彼との親交を深めようとするのだが・・・。
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スターに成り始めの頃から、イーストウッドをリアルタイムで見続けている者としては、1970年代の彼を思い起こさせてくれるような作品でもある。

世間では、イーストウッドが年齢的に過去の人になる可能性を示唆するような、”生涯最高のヒット作”、”集大成”などと騒ぎ立ててはいるが、私は意外なほどそうは思わない。
*「人生の特等席」(2012)でも主演している。

次回監督作「インビクタス」(2009)の公開を控え、モーガン・フリーマンマット・デイモン主演という顔ぶれを見れば、本作がどのような位置付けかが理解できる。

”ハリー・キャラハン”のような、悪に対し異常なまでに敵意を見せる偏屈な刑事、鬼軍曹のハイウェイを連想させる、イーストウッドらしい表情や仕草に、懐かしさや数々の思い出を甦らすのもいい。

イーストウッド独特の。”屈折”したユーモアセンスと、無名俳優などを使い、あっさりとこれだけの作品を作ってしまう、彼の技量は見事だ。

多分イーストウッド本人は、世間(日本)が騒いでいるほど大袈裟な気持ちで取り組んだ作品とは考えていないはずで、長年のファンとしては、今後も精力的に作品を世に送り出してもらいたい思いでいる。

なかなか馴染みのないモン族の文化や、それとは対照的な、いかにもアメリカ的な”汚い”会話のやり取りなども連発する、生活感の違いなども生々しく描かれている作品。

モン族の姉弟を演じた、タオ役のビー・ヴァンと姉スー役のアーニー・ハーも、新鮮な演技を見せ、結局は主人公と心が通じ合う、頑固老人にとても敵いそうもなく思えた若い神父役のクリストファー・カーリーの好演も光る。

余談だが、口の悪い床屋で登場するジョン・キャロル・リンチは、実はイーストウッドよりも33歳年下で193cmの巨漢、ここでどうしても気になるのがイーストウッドの身長で、彼も若かりし頃は長身(193cm)が売り物だった。
J・C・リンチより一回り小さく見える、明らかに、年のせいか背が低くなってしまったことなど、些細なことがファンとしてはどうしても気になってしまう。

主人公の長男ブライアン・ヘイリー、その妻役ジェラルディン・ヒューズ、次男ブライアン・ハウなどが共演している。


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