階級社会の愛憎と殺人事件を描く、製作、原案、監督ロバート・アルトマン、出演マギー・スミス、マイケル・ガンボン、クリスティン・スコット・トーマス、アラン・ベイツ、ヘレン・ミレン、デレク・ジャコビ他共演によるブラック・コメディ・タッチのミステリー・ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロバート・アルトマン
製作総指揮
ジェーン・バークレイ
シャロン・ハレル
ロバート・ジョーンズ
ハンナ・リーダー
製作
ロバート・アルトマン
ボブ・バラバン
デヴィッド・レヴィ
原案
ロバート・アルトマン
ボブ・バラバン
脚本:ジュリアン・フェロウズ
撮影:アンドリュー・ダン
美術・装置
スティーブン・アルトマン
アンナ・ピンコック
衣装デザイン:ジェニー・ビーヴァン
編集:ティム・スクイヤーズ
音楽:パトリック・ドイル
出演
・階上の人々
トレンサム伯爵夫人コンスタンス:マギー・スミス
ウィリアム・マッコードル:マイケル・ガンボン
シルヴィア・マッコードル:クリスティン・スコット・トーマス
イゾベル・マッコードル:カミーラ・ラザフォード
ストックブリッジ卿レイモンド:チャールズ・ダンス
ストックブリッジ卿夫人ルイーザ:ジェラルディン・ソマーヴィル
アンソニー・メレディス海軍少佐:トム・ホランダー
ラヴィニア・メレディス:ナターシャ・ワイトマン
フレディ・ネズビット:ジェームズ・ウィルビー
メイベル・ネズビット:クローディー・ブレイクリー
ルパート・スタンディッシュ卿:ローレンス・フォックス
ジェレミー・ブロンド:トレント・フォード
アイヴァー・ノヴェロ:ジェレミー・ノーサム
モリス・ワイズマン:ボブ・バラバン
・階下の人々
ジェニングス:アラン・ベイツ
ウィルソン夫人:ヘレン・ミレン
プロバート:デレク・ジャコビ
ルイス:メグ・ウィン・オーウェン
エルシー:エミリー・ワトソン
ジョージ:リチャード・E・グラント
アーサー:ジェレミー・スウィフト
クロフト夫人:アイリーン・アトキンス
ドロシー:ソフィー・トンプソン
バーサ:テレーサ・チャーチャー
メアリー・マキーシュラン:ケリー・マクドナルド
ロバート・パークス:クライヴ・オーウェン
レネー:ジョアンナ・モード
バーンズ:エイドリアン・スカーボロ
サラ:フランセス・ロー
ヘンリー・デントン:ライアン・フィリップ
・訪問者
トンプソン警部補:スティーヴン・フライ
デクスター巡査:ロン・ウェブスター
イギリス/アメリカ 映画
配給 USA Films
2002年製作 137分
公開
イギリス:2002年2月1日
北米:2002年1月4日
日本:2002年10月26日
製作費 $15,000,000
北米興行収入 $41,300,110
世界 $87,745,500
■ アカデミー賞 ■
第74回アカデミー賞
・受賞
脚本賞
・ノミネート
作品・監督
助演女優(ヘレン・ミレン/マギー・スミス)
美術・衣装デザイン賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1932年11月。
狩猟のためウィリアム・マッコードル卿(マイケル・ガンボン)の邸宅”ゴスフォード・パーク”に招待客が集まり始め、夫人のシルヴィア(クリスティン・スコット・トーマス)や娘イゾベル(カミーラ・ラザフォード)などがそれを迎える。
シルヴィアの叔母トレンサム伯爵夫人コンスタンス(マギー・スミス)は、メイドのメアリー・マキーシュラン(ケリー・マクドナルド)を伴い屋敷を訪れる。
伯爵夫人らは途中、ハリウッドの映画プロデューサーのモリス・ワイズマン(ボブ・バラバン)を伴い”ゴスフォード・パーク”に向かう、マッコードル卿の又従弟でエンターティナーのアイヴァー・ノヴェロ(ジェレミー・ノーサム)に出くわしていた。
ストックブリッジ卿レイモンド(チャールズ・ダンス)も到着し、シルヴィアの下の妹で夫人ルイーザ(ジェラルディン・ソマーヴィル)や海軍少佐のアンソニー・メレディス(トム・ホランダー)、夫人でシルヴィアの末の妹ラヴィニア(ナターシャ・ワイトマン)、道楽者のフレディ・ネズビット(ジェームズ・ウィルビー)とその妻メイベル(クローディー・ブレイクリー)などが和やかな会話を弾ませる。
階下では、メイド頭のエルシー(エミリー・ワトソン)らが、主人のマッコードル卿の財産に群がる、招待客を嘲り笑いながら、仕事をこなしていた。 トレンサム伯爵夫人は、ミステリー映画”チャーリー・チャン”シリーズの製作者ワイズマンや、平民の妻を伴って現れたネズビットを訝しく思う。 晩餐の準備も整ったところで、執事ジェニングス(アラン・ベイツ)が使用人を仕切り始め、来客の使用人達を主人の名前で呼び始める。 使用人達が、来客の晩餐を前に食事をとるが、シルヴィアがハウスキーパーのウィルソン夫人(ヘレン・ミレン)に、客の好みを把握しているかを確認する。 ウィルソン夫人は、全て手配済みだと言って完璧な返事をシルヴィアに返す。 そして晩餐が始り、トレンサム伯爵夫人はマッコードル卿と夕食後に密会しようとしていた。 メレディスは、マッコードル卿と裸足のスーダン軍にブーツを履かせるという大事業を始めることをイゾベルに語る。 使用人達は既に翌日の狩の準備を始め、そこにイゾベルの花婿候補ルパート・スタンディッシュ卿(ローレンス・フォックス)と、その友人ジェレミー・ブロンド(トレント・フォード)が到着する。 イゾベルはルパートに挨拶しようとするが、彼を嫌う母親シルヴィアは、ルパートとジェレミーをビリヤード・ルームに案内し、娘が席を立つことを許さない。 ルパートはそれを気にすることなく、イゾベルの両親、特に父親ウィリアムを落す秘策を練る。 晩餐が終わり、来客は客間に移るが、その頃、階下の調理場で銀のナイフが紛失したのがわかる。 来客も寝静まり、広い屋敷の中で迷ってしまったメアリーは、ワイズマンの従者ヘンリー・デントン(ライアン・フィリップ)に誘われ襲われそうになる。 その叫び声を聞いた、相部屋のストックブリッジ卿の従者のロバート・パークス(クライヴ・オーウェン)が部屋に戻り、メアリーは自分の部屋に帰る。 部屋に戻ったメアリーは、トレンサム伯爵夫人のブラウスを洗濯するのを忘れていたため洗濯場に向かう。 その帰り、ウィルソン夫人の部屋に現れたマッコードル卿を見かけ、彼が洗濯場の脇でメイドを抱いていたことに気づく。 そしてデントンは、ココアに入れるミルクをシルヴィアに頼まれていたため、彼女の部屋に向かう。 翌日、男達は狩にでかけ、その成果の獲物を携えて夫人達の元に向かう。 その間、屋敷に残ったメアリーは、メイド頭のエルシーから主人や来客の噂話を聞き、マッコードル卿がメレディスへの資金提供を止めたことなどを、主人のトレンサム伯爵夫人に話す。 晩餐の前、トレンサム伯爵夫人は、マッコードル卿が自分への送金を止めようとしているということを、シルヴィアに確認する。 シルヴィアは、夫マッコードル卿が機嫌が悪く、一触即発なのを伯爵夫人伝える。 晩餐が始り、シルヴィアがマッコードル卿を罵ったのを聞いたエルシーは、思わず彼を擁護し、シルヴィアに反論してしまい、主人との関係がばれてしまう。 エルシーはその場から立ち去り、使用人達の間では、彼女が今夜中にクビになると噂になる。 食後、来客は客間に移りくつろぎ、ノヴェロが歌い始めたため、使用人達も隠れてスターの歌に聞き惚れる。 そんな時、書斎にいたマッコードル卿が、何者かに刺殺されているのが発見される。 連絡を受けた警察は、トンプソン警部補(スティーヴン・フライ)とデクスター巡査(ロン・ウェブスター)を屋敷に向かわせる。 シルヴィアは、トンプソン警部補に来客を紹介し、使用人ではマッコードル卿の従者プロバート(デレク・ジャコビ)が警部補に呼ばれる。 夜が明け、料理長のクロフト夫人(アイリーン・アトキンス)がトンプソンに呼ばれ、エルシーは、父親を亡くしたイゾベルを起こし、警部補の尋問後に屋敷を去ろうとする。 デントンが役者だということがわかり、騙された使用人達から白い目で見られてしまう。 殺されたマッコードル卿の死因が毒殺で、既に死亡していたために、刺し傷の出血がなかったことも判明する。 トンプソンはメアリーを尋問し、マッコードル卿と主人のトレンサム伯爵夫人の間に、トラブルがあったかを聞かれる。 マッコードル卿との事業が中止になったメレディスも、トンプソンから厳しい尋問を受けて気が滅入る。 メアリーは、パークスがマッコードル卿を嫌っていたことを知っていた。 本人は気づいていなかったが、マッコードル卿がパークスの父親だったと聞かされる。 女好きのマッコードル卿は、パークスのような私生児を何人も工場の女行員などに生ませ、それを金で処理していたのだった。 パークスが、マッコードル卿に近づくためにストックブリッジ卿の従者になり、毒殺された彼を刺殺したのではないかと、メアリーは考える。 メアリーは、その件でパークスに言い寄るが、彼は真相は語らなかった。 住所を控えたトンプソンは、来客達が帰る許可を出して、デクスター巡査は、ジェニングスの所持していた毒薬を押収する。 屋敷の中で毒薬は他にも見つかるが、前科がある者で、それを所有していたのはジェニングスだけだった。 エルシーは、ワイズマンにロンドンまで送ってもらうことになり、見送るメアリーに別れを告げる。 メアリーは、かつてウィルソン夫人がマッコードル卿の工場の工員であるり、姓が”パークス”だったというシルヴィアの話を聞いてしまう。 ウィルソン夫人の部屋を訪ねたメアリーは、マッコードル卿を彼女が殺したかを確認する。 生まれた子を、良家の養子にすると約束したマッコードル卿の裏切りを許せなかったウィルソン夫人は、子供を手放した自分を許さない、姉クロフト夫人との不仲の原因も語る。 息子のパークスが、父親を殺そうとしていることをどうして知ったのかを、メアリーはウィルソン夫人に尋ねる。 ウィルソン夫人は、優れた召使の条件は先が読めることで、自分はそれを完璧にこなせると自負する。 そして、パークスに母親だと告げる必要はなく、子供が救えればいいことと、警察に知られようとも、召使には自分の人生などないと、ウィルソン夫人は言い放つ。 来客達を送り出したウィルソン夫人は、自分を母と知らずに生きる息子のことを思い涙し、それを姉クロフト夫人が慰め、二人の心は通い合う。 そして、最後の来客トレンサム伯爵夫人とメアリーを見送ったシルヴィアは、ジェニングスと共に屋敷内に戻る。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ウィリアム・マッコードル卿の邸宅”ゴスフォード・パーク”に、狩猟目的で親類縁者など多くの人々が招待される。
その後、マッコードル卿の財力に群がる者は画策を始める。
また、その従者達は、主人達の噂や不平を口にしながら手際よく仕事をこなす。
そんな中、多くの反感を持たれ始めた主人のマッコードル卿が、無惨な他殺体で発見されるのだが・・・。
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ロバート・アルトマンとボブ・バラバンの原案(製作兼)を、ジュリアン・フェロウズが脚本にした作品。
金づるの貴族に群がる者達と、彼らに従順に使えながらも、その滑稽さを嘲り笑う使用人達の姿を描く、製作、監督、原案を兼ねる、70代半ばのロバート・アルトマンの意欲作であり、メリハリある彼の演出が楽しめる、お得意の群像劇でもある。
30人にも及ぶ出演者それぞれを、主役を置かずに描いたまとまりのある演出は秀逸で、崩壊しつつあったイギリスの階級社会を皮肉った内容は中盤からはサスペンスに変わり、クライマックスのドラマチックな展開まで目が離せない。
第74回アカデミー賞では作品賞以下6部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
助演女優ヘレン・ミレン/マギー・スミス
美術・衣装デザイン賞
多くの出演者の中で目を引くのは、伯爵夫人のメイドとして、主人と使用人の間を行き来しながら、控えめで初々しい演技が印象的でもある、その後、問題作「ノーカントリー」(2007)などにも出演するケリー・マクドナルドだ。
また、色気のあるメイド頭を演ずるエミリー・ワトソンは、質素な役が多い中で、さすがに実力派らしい演技を見せてくれる。
事件の黒幕として、悲しい過去が暴露されるヘレン・ミレンは、終盤、一気に物語を動かす存在として、力強さと子を思う母親の感情表現も素晴らしい。
全編を通し、階級社会を皮肉る象徴のように描かれている、マギー・スミスのとぼけたキャラクターも、ドラマにアクセントを加えている。