1950年代初頭、アメリカ国民を震え上がらせた”赤狩り”の暴挙に立ち向かったCBSの報道キャスター、エドワード・R・マーローとスタッフの闘いを描く、監督、脚本、出演ジョージ・クルーニー、デヴィッド・ストラザーンが主人公を熱演、ロバート・ダウニーJr.、パトリシア・クラークソン、フランク・ランジェラ、ジェフ・ダニエルズ共演の社会派ドラマの秀作。 |
・ジョージ・クルーニー / George Clooney 作品一覧
・ロバート・ダウニーJr. / Robert Downey Jr. 作品一覧
■ スタッフ キャスト ■
監督 ジョージ・クルーニー
製作総指揮
マーク・バダン
スティーブン・ソダーバーグ
製作 グラント・ヘスロヴ
脚本
ジョージ・クルーニー
グラント・ヘスロヴ
撮影 ロバート・エルスウィット
編集 スティーヴン・ミリオン
美術・装置
ジェームズ・D・ビッセル
ジャン・パスケール
音楽:ジム・パポウリス
出演者
デヴィッド・ストラザーン:エドワード・R・マーロー
ジョージ・クルーニー:フレッド・フレンドリー
ロバート・ダウニーJr.:ジョー・ウォシュバ
パトリシア・クラークソン:シャーリー・ウォシュバ
フランク・ランジェラ:ウィリアム・ペイリー
ジェフ・ダニエルズ:シグ・ミケルソン
レイ・ワイズ:ドン・ホレンベック
トム・マッカーシー:パーマー・ウィリアムス
アレックス・ボースタイン:ナタリー
アメリカ 映画
配給 ワーナー・インディペンデント・ピクチャーズ
2005年製作 93分
公開
北米:2005年10月7日
日本:2006年4月29日
製作費 $7,500,000
北米興行収入 $31,501,218
世界 $54,641,191
■ アカデミー賞 ■
第78回アカデミー賞
・ノミネート
作品・監督
主演男優(デヴィッド・ストラザーン)
脚本・撮影・美術賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1958年10月23日。
ラジオ・テレビ報道人協会が主催、”エドワード・R・マーローを称える会”に出席したエドワード・R・マーロー(デヴィッド・ストラザーン)は、儲けを度外視した報道のあり方を説く・・・。
1940年代から米ソ冷戦下の1950年代初頭、上院議員ジョセフ・マッカーシー・の共産主義者排斥運動”赤狩り”の嵐が、アメリカ中に吹き荒れていた。
公平な立場に立つべき報道機関の中にさえ、同調する者も出始めていた。
1953年10月14日、CBSスタジオ、ニューヨーク。 そんな中、”赤狩り”に脅える人々を見かねて、CBSの人気報道番組”See it Now”のスタッフと、メイン・キャスターのマーローは立ち上がる。 1953年10月19日。 重役のシグ・ミケルソン(ジェフ・ダニエルズ)は、スポンサーや社への影響を考え、当然それに反対する。 スポンサー料を、自分達で負担することをミケルソンに告げたマーローの決意は変わらなかったが、フレンドリーは軍からの圧力を受ける。 1953年10月20日。 番組を終えたマーローの表情はこわばるが、フレンドリーやスタッフらは達成感を味わい互いに称え合う。 そして、ミケルソンは複雑な表情で彼らを見つめる。 ワシントンD.C. CBSの会長ウィリアム・ペイリー(フランク・ランジェラ)に呼ばれたマーローは、マッカーシー自身への攻撃も始めたことを止めるように忠告される。 それに反論するマーローだったが、会社の危機に関る問題であったため、ペイリーは、番組には干渉しないことを約束するが、スタッフ全員の完璧な潔白を求める。 マーローはまともな返事も返さず、ペイリーの部屋を立ち去り、スタッフとのミーティングを始める。 1954年3月9日。 番組は抗議の電話もなく、スタッフは久し振りに羽目を外して祝杯を挙げる。 大きな反響を呼んだ番組は、その勇気と責任感を示し、報道精神の鏡だと賞賛される。 しかし、当然、批判的な意見もあり、マーローの同僚であるキャスターのドン・ホレンベック(レイ・ワイズ)は、かつて共産党系の出版社で、保守系新聞を批判したと名指しで攻撃され、彼はそれを気にする。 その後、ラドゥロヴィッチの除隊は撤回され、”See it Now”のスタッフは勢いづくが、ホレンベックは新聞記事を気にして、マーローに相談するが解決には至らない。 やがて、対するマッカーシーの反撃は始まり、食堂職員からペンタゴンの通信室でメッセージの送受信に関った、アニー・リー・モスを公聴会に呼び出し、FBIの捜査を基にして、彼女は共産党だと決め付けられる。 マーローはその件についても、疑いをかけられたモスの権利を主張し擁護する。 1954年4月6日。 マッカーシーは、全国民の前でマーローが20年前に共産党の宣伝に関っていたことを伝え、共産主義に怯まず、国を愛する国民と共に戦うことを誓う。 翌週、マーローは、マッカーシーが番組内容を否定しなかったことから、事実に反することがなかったという見解を示して、反対する者を共産主義と決め付けることを批判する。 さらにマーローは、マッカーシーの語った言葉を、噛み砕いて検証していく。 その後、マッカーシーが、陸軍に友人の優遇を要求していたことが発覚し、彼自身が公聴会に呼び出されることになる。 そんな時、ホレンベックが自殺したという報せが入り、マーローは彼から相談を受けていたことで、力になれなかったことを後悔する。 マーローは次の放送で、ホレンベックの死の事実だけを淡々と語る。 やがて、マッカーシーは公聴会に召喚され没落していく。 ミケルソンに呼び出されたウォシュバとシャーリーは、規定に反した社員同士で結婚していることが、周知の事実だということを伝えられる。 二人は、人員削減に伴う、他のスタッフの救済措置として、自らの処遇を検討してくれと、ミケルソンから穏やかに告げられ、退社を決意する。 マーローとフレンドリーは、娯楽を求める視聴者に反する番組が、頭痛の種だとペイリーに率直に指摘される。 しかしマーローは、報道こそがCBSの顔だと言い切り、一歩も引かなかった。 妥協案としてペイリーは、”See it Now”の時間枠の変更と人員削減を言い渡す。 1958年10月23日。 そして、マーローは締めくくる。
リポーターのジョー・ウォシュバ(ロバート・ダウニーJr.)は、国に忠誠を誓うという契約書のサインを迫られ、それを、結婚をスタッフに隠している妻シャーリー(パトリシア・クラークソン)と話し合うが、彼女はその信じ難い行為を疑問に思う。
...全てを見る(結末あり)
アメリカ空軍予備役のマイロ・ラドゥロヴィッチ中尉が、家族が共産主義者だと疑われ、軍を除隊させられた事件を不当として、マーローとプロデューサーのフレッド・フレンドリー(ジョージ・クルーニー)は、”See it Now”でこの問題を取り上げようとする。
番組オン・エア当日、スタッフ一同は覚悟を決め、マーローはマイクに向かい、今回の問題を徹底的に追及することを述べる。
ラドゥロヴィッチ事件の報道は、かなり好意的に見られたが、取材中のウォシュバは、マーローが、1930年代から共産主義者贔屓だったと中傷されていることを知る。
番組前にペイリーの支持を得たマーローは、マッカーシーの虚偽への痛烈な批判をする。
一月前の放送で、マッカーシーに反論の機会を与えたマーローは、彼と中継で相対することになる。
__________
マーローは、自らを称える会のスピーチで、情報と理念の重要性を認識した上での、報道の将来について語る。
”Good Night, and Good Luck.”
*(簡略ストー リー)
1954年。
上院議員ジョセフ・マッカーシーが唱える”赤狩り”の嵐が、アメリカ中に吹き荒れていた。
脅える国民を見かねて、CBSの人気報道番組”See it Now”のスタッフと、メイン・キャスターのエドワード・R・マーローは立ち上がる。
番組は大きな反響を呼び、多くは彼らに対し好意的な目で見る。
しかし、マッカーシーは徹底抗戦に出て、CBS及びマーローを激しく非難する・・・。
__________
ニュース・フィルム等を多用する、全編に渡るモノクロ映像、当時のスタジオや社内を再現した見事なセット、そして粋な音楽、リアリズムを追求した緊張感ある映像は秀逸だ。
マーローを英雄視していたジョージ・クルーニー自身による、脚本、監督そして出演を兼ねた野心作でもある。
第78回アカデミー賞では、作品、監督、主演男優(デヴィッド・ストラザーン)、脚本、撮影、美術賞にノミネートされた。
権力に立ち向かった、当時のジャーナリスト達の勇気は賞賛に値し、それが現代でも受け継がれているアメリカのテレビ界、特に報道を重視する姿勢は羨ましいばかりだ。
まともな報道番組が皆無で、キャスターも芸人に頼り、視聴者もそれを望む日本社会を思うと、その哀しい現状に言葉がない・・・。
名バイプレイヤーとして、多くの話題作に出演していた、主人公マーローを演ずるデヴィッド・ストラザーンの演技は、各方面で絶賛され、信念を貫くジャーナリストを見事に演じ切っている。
原題の、マーローが”See it Now”を締めくくる決まり文句”Everybody,Goodnight,and goodluck.”だが、時に、震えている様に見える口元のアップとモノクロ映像が、圧力に対する緊張感と、彼の信念を強調している。
マーローと共に闘う、”See it Now”のプロデューサー、フレッド・フレンドリーのジョージ・クルーニー、リポーターで、社員規則を破り同僚と結婚しているジョー・ウォシュバのロバート・ダウニーJr.、その妻役パトリシア・クラークソン、CBSの会長ウィリアム・ペイリーのフランク・ランジェラ、重役のジェフ・ダニエルズ、自殺する同僚キャスター、ドン・ホレンベック役のレイ・ワイズ、番組スタッフのトム・マッカーシー、アレックス・ボースタインなどが共演している。
ジョージ・クルーニーの父(ニック・クルーニー)は、ニュースキャスターであり、彼もその道を目指したことがある。
その思いを込めた、父親へのオマージュとも言える。
参考:
ジョージ・クルーニーは、芸能一家でもある。
叔母は大歌手で、映画「ホワイト・クリスマス」(1954))などでも有名なローズマリー・クルーニー。
その夫はアカデミー賞俳優ホセ・フェラー。
息子は「ロボコップ」(1987)や「トラフィック」(2000)の俳優ミゲル・フェラー。