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さよならミス・ワイコフ Good Luck, Miss Wyckoff (1979)

1970年に発表された、ウィリアム・インジの小説”Good Luck, Miss Wyckoff”を基に製作された作品。
恋愛経験がない35歳の女性教師の苦悩を描く、監督マーヴィン・J・チョムスキー、主演アン・ヘイウッドロバート・ヴォーンドナルド・プレザンスドロシー・マローンアール・ホリマン他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト
監督:マーヴィン・J・チョムスキー

製作:レイモンド・ストロス
原作:ウィリアム・インジ”Good Luck, Miss Wyckoff”
脚本:ポリー・プラット
撮影:アレックス・フィリップスJr.
編集:リタ・ローランド
音楽:アーネスト・ゴールド

出演
イヴリン・ワイコフ:アン・ヘイウッド
ニール医師:ロバート・ヴォーン
スタイナー医師:ドナルド・プレザンス
ミルドレッド:ドロシー・マローン
エド・エクルス:アール・ホリマン
レイフ・コリンズ:ジョン・ラファイエット
ハヴァーマイヤー:ダナ・エルカー
ベッツィー:ロニー・ブレイクリー
ベス:キャロリン・ジョーンズ
マリー:ドリス・ロバーツ
ヘミングス:R・G・アームストロング
ヘミングス夫人:ジョスリン・ブランド

アメリカ 映画
配給 Bel Air-Gradison Productions
1979年製作 105分
公開
北米:1979年4月13日
日本:1979年10月27日


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
1954年、カンザス州、フリーダム。
高校のラテン語の教師で、独身で35歳のイヴリン・ワイコフ(アン・ヘイウッド)は、タクシーで下宿に戻る。

歩道に”ミス・ワイコフは黒人と寝た”という落書きが書かれていることを確認したイヴリンは、ショックを受ける。
__________

イヴリンは、同僚教師のベス(キャロリン・ジョーンズ)と共に、ヘミングス夫妻(R・G・アームストロング/ジョスリン・ブランド)の家に下宿していた。

最近イヴリンは、授業中に考え事をしたりするようになっていた。

感謝祭の休暇を前に全校集会を開いた校長のハヴァーマイヤー(ダナ・エルカー)は、生徒によるピアノの演奏会を開く。
...全てを見る(結末あり)

穏やかな演奏の最中、イヴリンは突然、泣き出してしまい周囲を驚かせ、その場から立ち去る。

翌日、気分が悪いために学校を休むことをベスに伝えたイヴリンは、部屋に閉じこもり、夜になっても眠れずに取り乱してしまう。

うめき声を聴いたベスとヘミングスらは、部屋の外からイヴリンに声をかけるが、独りにしてほしいと言われる。

同級生だったニール医師(ロバート・ヴォーン)の診察を受けたイヴリンは、恋愛経験があるかを訊かれる。

恋愛で鬱状態が治るとは思えないと言うイヴリンは、ウィチタの精神科医スタイナー(ドナルド・プレザンス)をニールから紹介される。

睡眠薬とホルモン剤を処方されたイヴリンは、早期の更年期障害である可能性をニールから指摘される。

その後イヴリンは、ベスやミルドレッド(ドロシー・マローン)、ベッツィー(ロニー・ブレイクリー)、マリー(ドリス・ロバーツ)ら同僚と、いつものように食事をしていたが、気分が悪くなり、混乱して鏡を殴り割ってしまう。

バスの運転手エド・エクルス(アール・ホリマン)は、ウィチタに向かう乗客のイヴリンが気になる。

スタイナーの診察を受けたイヴリンは、話をする前に、いきなり泣き出してしまう。

辛そうなイヴリンの手の怪我が気になったスタイナーは、自分や仕事など全てが嫌いになっていくという彼女の話を聞く。

恋人やセックスのことをスタイナーから訊かれたイヴリンは、男性経験がないと答える。

その後もウィチタに通うイヴリンは、エドと親しくなり、運転する彼との会話を楽しむようになる。

スタイナーとの話もはずむようになったイヴリンは、クリスマス休暇中も診察を続けたいとスタイナーから言われる。

クリスマス。
実家に帰らないことを電話で母親に伝えてあったイヴリンは、ウィチタに向おうとするが、エドに妻子がいたことを知り心沈む。

誰もいない学校の教室に向かったイヴリンは、一人で考え込む。

その後、エドからコーヒーに誘われたイヴリンは、妻がいたことを謝罪され、好意を示す彼に求められるものの、それを断ってしまう。

その件をスタイナーに話したイヴリンは、エドと付き合うべきか迷っていることを伝える。

スタイナーは、人の指示を待つのではなく、自分の判断で行動するようにと助言する。

新年をミルドレッドらと迎え楽しむことができたイヴリンは、ランジェリーを買ってエドと過ごす準備をする。

ウィチタに向かうバスに乗ろうとしたイヴリンは、別の運転手だったために驚き、エドが妻を捨てて町を出たことを知りショックを受ける。

その件をスタイナーに話したイヴリンは、意外にも気落ちする様子もなく、両想いになれたことだけでも嬉しいと語る。

共産主義者の教師ローリンズのことが校内で問題になり、悩むハヴァーマイヤーは、イヴリンに相談してPTAの集会を開くことになる。

偏った考えで優秀な教師を排除しようとすることは正しくないと、ローリンズの解雇に反対するスピーチをしたイヴリンは、説得力のある内容をハヴァーマイヤーやベスらに称賛される。

町から追い出されそうになり孤独感を味わっていたローリンズは、イヴリンに感謝し励まされる。

下宿に戻ったイヴリンは、自分を共産主義者だと言うヘミングス夫人の言葉を気にもせず、その場にいたベスとヘミングスにジョークを言って笑わせる。

ある日の放課後、教室で採点をしていたイヴリンは、フットボールの奨学生であるバイトの黒人レイフ・コリンズ(ジョン・ラファイエット)から話しかけられ、彼が性器を見せたために驚く。

奨学生のレイフに対し、態度に気を付けるよう注意したイヴリンは、動揺してその場を去る。

ハヴァーマイヤーの元に向かったイヴリンは、以前の清掃員が戻る時期を確認しただけで、レイフのことは話さなかった。

翌日、授業を終えたイヴリンは、現れたレイフにレイプされてしまう。

スタイナーに電話をしたイヴリンだったが、彼が不在だったために下宿に戻り、ベスに声をかけられるものの、何も答えずに部屋に向かってしまう。

翌日、レイフを警戒するイヴリンは、授業が終わると同時に教室を離れる。

その後、再び現れたレイフを拒んだイヴリンだったが、気持ちを抑えられずに彼を求め、愛し合ってしまう。

レイフのフットボール・チームの同僚から、彼が嫌な奴で少年院にもいたことがあると聞いたイヴリンは、それを気にしない。

放課後が待ち遠しくなったイヴリンは、レイフの指示に従うようになる。

食堂でベスと話したイヴリンは、食器を洗っているレイフの自分に対する態度を批判するベスに、人種偏見をなくさないと人は滅びると伝える。

土曜の朝、レイフからの電話を受けたイヴリンは出かけるが、ヘミングス夫人は、相手は黒人の声だった思うとベスに話す。

教室でレイフと愛し合ったイヴリンは、仲間にこの件を話したらどうなるかと言う彼に、誰にも話さないでほしいと伝える。

どうでもいいという態度のレイフが、自分のこと以外は考えていないと言うため、イヴリンはそれを気にする。

下宿に戻ったイヴリンは、スタイナーから連絡が欲しいという電話があったことをヘミングス夫人から知らされる。

その後、仲間に話してしまったとレイフから冗談を言われたイヴリンは、彼と愛し合う。

生徒の間では、教室に閉じ篭っているイヴリンとレイフのことが噂になる。

愛し合いながらスチーム・ヒーターに押し付けられたイヴリンが叫び声をあげたため、教室に押入った生徒は二人を目撃してしまう。

ベスやミルドレッドから白い目で見られるようになったイヴリンは、教室の入り口に”ミス・ワイコフは黒人と寝ている”と貼り紙をされていたために驚く。

クラスを代わると他の教師から言われたイヴリンは、ハヴァーマイヤーに呼ばれ、報告があった内容は正しいかと訊かれる。

正しいと答えたイヴリンは、そうなった理由の説明を求められるが、それは重要ではないと伝える。

レイフが処分されると知ったイヴリンは、教育の機会は奪うべきではないと伝え、フットボールの試合で活躍すれば許されるだろうとハヴァーマイヤーから言われる。

自分や学校への抗議などがきていることをハヴァーマイヤーから知らされたイヴリンは、辞職を求められる。

指示に従うと言うイヴリンから、推薦状を書いてほしいと頼まれたハヴァーマイヤーは、ニュージャージーで高校の校長をしている友人に話してみると伝える。

但し、辞職の理由は話さなければならないと伝えたハヴァーマイヤーは、教師としては非常に優秀だと推薦することをイヴリンに約束する。

今回のような問題が二度と起きないように願うと言うハヴァーマイヤーに、イヴリンは感謝する。

別れを告げるハヴァーマイヤーは、再び起こしたことの理由を訊くが、イヴリンは、世話になったと言うだけで何も答えずにその場を去る。

ハヴァーマイヤーは、幸運を祈るとイヴリンに伝える。

ニール医師を訪ねたイヴリンは、旅行に出ることを伝え、眠れないために睡眠薬を処方してほしいと頼む。

それを承知したニールは、例の件は聞いていると言いながら、恋愛は勧めたが、あんなことをするとは思っていなかったと伝える。

自分のせいであると考えてもらいたくないと言うニールに、薬の処方だけを頼み、イヴリンはその場を去る。

薬を手に入れたイヴリンは下宿に戻り、家の前の歩道に、自分が黒人と寝たという落書きが書かれていることに気づく。

隣人の目を気にしながら落書きを消したイヴリンは、睡眠薬を持って部屋に向かう。

荷物がまとめられていることを知り驚いたイヴリンは、早急に部屋を開け渡すようにというヘミングスの置手紙を確認する。

憤慨したイヴリンは、薬を手のひらに出して投げ捨て、荷物を持って階下に向いタクシーを呼ぶ。

帰って来たベスに声をかけられ、出て行くことを伝えたイヴリンは、なぜあんなことをしたのかと訊かれ、話してくれれば力になれたと言われる。

後悔もしていないし、恥だとも思っていないと言われたベスは、イヴリンに別れを告げて部屋に向かう。

タクシーが到着して荷物を乗せたイヴリンは、二階の窓から顔を出したヘミングス夫人から、幸運を祈ると言われる。

イヴリンは、何も答えずにタクシーに乗り走り去る。

駅のホームで列車を待つイヴリンは、考えを巡らせる。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
1954年、カンザス州、フリーダム。
独身で35歳のイヴリン・ワイコフは、地元の高校のラテン語の教師だった。
教師としては優秀だったイヴリンは、授業中に考え込んだり不眠症で悩むようになる。
同じ下宿に住む同僚のベスやミルドレッドとは楽しく過ごせるものの、症状が悪化したイヴリンは、ニール医師の診察を受ける。
恋愛経験がないことをニールに伝えたイヴリンは、早期の更年期障害である可能性を指摘され、ウィチタの精神科医スタイナーを紹介される。
スタイナーの診察を受けたイヴリンは、男性経験がないことを正直に伝える。
その後、バスの運転手エドに心を寄せるようになったイヴリンは、親身になって話を聞いてくれるスタイナーのお陰で症状は改善していく。
そんな時イヴリンは、奨学生であるバイトで清掃をする黒人のレイフに迫られ、レイプされてしまう。
心に傷を負ったイヴリンは誰に相談することもできず、レイフに再び迫られ怯えるものの、彼を求めるようになってしまう・・・。
__________

ピクニック」(1955)や「バス停留所」(1956)も映画化されたウィリアム・インジの同名小説を基に製作された作品。

優秀な教師ではあるが、男性経験のない35歳の女性の苦悩と複雑な心理を描いた作品。

1970年代の作品にしては性描写がかなり露骨であり、話題になった問題作でもある。

また、舞台は1950年代のカンザス州の保守的な町であるため、人種問題や、”赤狩り”が終焉を迎える頃の社会情勢を考えながら観ると興味深く鑑賞できる。

重苦しい雰囲気にもなる内容と主人公の苦悩を表現する、力強さも感じさせるアーネスト・ゴールド音楽も印象に残る。

人生の転機を迎え苦悩する主人公を好演する主演のアン・ヘイウッドは、設定は35歳なのだが、実際は50歳手前であった彼女は美しく、また実に若々しい。

主人公を診察して、恋愛を勧める医師ロバート・ヴォーン、彼の紹介で主人公を診察する精神科医ドナルド・プレザンス、主人公の同僚教師ドロシー・マローン、主人公が惹かれるバスの運転手アール・ホリマン、主人公をレイプし支配しようとする黒人青年ジョン・ラファイエット、校長のダナ・エルカー、主人公の同僚教師キャロリン・ジョーンズロニー・ブレイクリードリス・ロバーツ、主人公の下宿の家主夫妻R・G・アームストロングジョスリン・ブランドなどが共演している。


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