1959年に発表された、フランスの作家フランソワーズ・サガンの小説”ブラームスはお好き”の映画化。 ごく普通の愛を求めていた中年女性の、ある青年の出現で揺れ動く女心を描く、製作、監督アナトール・リトヴァク、主演イングリッド・バーグマン、イヴ・モンタン、アンソニー・パーキンス他共演によるメロドラマ風ロマンスの秀作。 |
・イングリッド・バーグマン / Ingrid Bergman / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:アナトール・リトヴァク
製作:アナトール・リトヴァク
原作:フランソワーズ・サガン
脚本:サミュエル・A・テイラー
撮影:アルマン・ティラール
編集:バート・ベイテス
音楽
ジョルジュ・オーリック
ヨハネス・ブラームス
出演
ポーラ・テシエ:イングリッド・バーグマン
ロジェ・デマレ:イヴ・モンタン
フィリップ・ヴァン・デル・ベッシュ:アンソニー・パーキンス
テレサ・ヴァン・デル・ベッシュ夫人:ジェシー・ロイス・ランディス
歌手:ダイアン・キャロル
メイジーⅠ:ジョセリン・レイン
メイジーⅡ:ジーン・クラーク
メイジーⅢ:ミシェル・メルシェ
フランス/アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1961年製作 120分
公開
フランス:1961年5月
北米:1961年6月29日
日本:1961年10月25日
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
パリ。
室内装飾家のポーラ・テシエ(イングリッド・バーグマン)と、大型車両販売会社の重役ロジェ・デマレ(イヴ・モンタン)は、出会って5年の夜を祝おうとしていた。
しかし、ロジェに急用ができて、記念の夜の約束はなくなってしまう。
お互い離婚を経験した二人は、恋人同士の関係を保っていた。
翌日、埋め合わせをしたロジェは、ポーラを自宅に送り忙しなく帰宅する。
ロジェは、ポーラとの関係に飽きているわけでもないのだが、プレイボーイの彼は、街角の女性などが気にもなる。
数日後、ポーラはロジェに室内装飾の仕事を紹介されて、アメリカ人の富豪ヴァン・デル・ベッシュ邸に向かう。
屋敷に到着したポーラは、ヴァン・デル・ベッシュの1人息子フィリップ(アンソニー・パーキンス)に迎えられ、その後、彼の母親テレサ(ジェシー・ロイス・ランディス)と、仕事の打合せを始める。 フィリップは、年上の大人の女性ポーラに惹かれてしまい、彼女を車で送り届ける。 国際法を勉強中の、一応弁護士であるフィリップは、25歳という若さを持て余し、仕事に集中できないでいた。 その夜、クラブでロジェと過ごすポーラの前に、彼女を捜し回ったフィリップが、酔って現れる。 フィリップを子ども扱いする二人は、泥酔した彼を屋敷に送り届ける。 翌日、ポーラの店に現れたフィリップは、彼女をブローニュの森に誘い、ロジェが彼女の夫でないことを知る。 食事をした二人は別れるが、フィリップは夕方、再びポーラの前に現れる。 ポーラは、フィリップに週末のコンサートに誘われるのだが、それを断りその場を立ち去る。 その頃、ロジェは女性(ジョセリン・レイン)とベッドを共にし、彼女を”メイジーⅠ”と呼び、彼は特定な女性がいないことを告げる。 ポーラは、週末ロジェを誘い楽しもうとするが、彼は女性と出張に出かける予定を組んでしまう。 街角で、ロジェが女性・メイジーⅡ(ジーン・クラーク)と連れだって出かけるのを目撃したフィリップは、自宅で母テレサと仕事をしていたポーラを誘惑しようとする。 その場を立ち去り帰宅したポーラは、フィリップからの伝言を受けとり、彼と”ブラームス”のコンサートに行くことになる。 ポーラは、会場で演奏を聞きながら、5年前の”パリ祭”の日に、ロジェと出会った時のことを思い出す。 第一幕が終わり、カフェで休んでいたフィリップは、ポーラに、ロジェに愛されているかなどを問い、彼女に愛を告白する。 帰宅したポーラは、パリに戻り姿を現したロジェに、若くない自分に近寄るフィリップのことを話す。 ポーラはロジェが、若い女性との時間を楽しんでいるのを承知していて、彼もそれを隠しはしなかった。 自分への愛を語るロジェに一先ず安心し、食事に出かける仕度をしていたポーラは、会話の内容で彼が自分に嘘をついていることを悟る。 そこにフィリップからの手紙が届き、ポーラはそれをロジェに読ませる。 それは、ロンドンに出張するフィリップからの、”愛”を告げる手紙だった。 その後、ポーラからの返事を受け取ったフィリップは、パリに戻る。 ヴァン・デル・ベッシュ邸の室内装飾の仕事は終わり、夫人は、そのお披露目のパーティーを開く。 それに招待されたポーラとロジェだったが、そこに急遽帰国したフィリップが現れる。 ポーラに寄り添うフィリップを見て、ロジェは、デザイナーが屋敷の息子を誘惑したことが噂になると、皮肉を込めて彼女に語る。 家に着いたポーラはロジェと別れ、フィリップがその後を追って現れる。 そして、心乱れるポーラは、思わずフィリップにキスしてしまう。 自分を抑えられそうもないポーラは、出張で旅立つロジェに同行しようとするが、彼は昨夜のことを謝罪し、戻るまで待つように説得する。 ポーラはフィリップとの関係を絶とうとして、彼にそれを伝える。 ショックを受けたフィリップは、ナイトクラブの歌手(ダイアン・キャロル)に恋について語られ、ポーラの元に向かう。 そして二人は、ポーラのアパートで結ばれて一夜を過ごす。 翌朝、夕方に会うことを約束した二人だったが、ロジェが出張から戻りポーラに電話を入れる。 その夜は会えないというポーラの言葉を聞いて、ロジェは彼女がフィリップと関係を持ったことを察する。 翌日、フィリップが自分を愛いしてくれているというポーラと、浮気を正当化しようとするロジェはお互いを責め合う。 一旦は謝るものの、ポーラはロジェと距離を置くことを決めて立ち去る。 2ヶ月が過ぎ、能天気なメイジーⅢ(ミシェル・メルシェ)と付き合っていたロジェは、ポーラが恋しくなる。 一方、フィリップと同棲を始めたポーラは、仕事もせずに酒びたりの彼を突き放そうとするのだが、彼女はそれができないでいた。 そんなポーラは、ロジェから旅行に誘われるのだが、彼女はそれを断ってしまう。 フィリップと小旅行に出かけたポーラは、彼の知り合いに出くわし、白い目で見られて傷ついてしまう。 フィリップは、そんなポーラを見て求婚するが、彼女の心にロジェへの気持ちが残っていることを見抜き、更なる深い愛を告げる。 ヴァン・デル・ベッシュ夫人には、フィリップには年上がいいと言われるものの、ポーラはニューヨーク行きを断り、仕事を辞めてしまったフィリップに戸惑う。 フィリップと食事に出かけたポーラは、メイジーと踊るロジェを見かける。 ポーラを見つめるロジェは彼女に近づき、フィリップに気付かれないようにポーラの手を握る。 その後、フィリップはロジェの存在に気付き、気まずい時を過ごしてポーラと別れる。 翌日、ポーラの店を訪ねたロジェは、彼女に苦しい胸の内を告げて求婚し、ポーラもそれを受け入れる。 ポーラは、フィリップにニューヨークへ行くように説得し、二人には、年の差があり過ぎることを告げ別れる。 そして、ポーラとロジェは結婚するのだが、ポーラは、相変わらず懲りずに浮気をするロジェに気付き、それに納得しながら、彼との生活を続ける。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
結婚は考えずに、恋人関係を続ける中年のカップルのロジェ・デマレとポーラ・テシエの前に、年下の青年フィリップが現れる。
フィリップは、ポーラに惹かれてしまい、彼女に付きまとい愛を告げる。
浮気癖のあるロジェの、真の愛を感じられないままに、ポーラの心は徐々にフィリップに傾き始める。
しかしポーラは、切ない三角関係の果てに大人の愛を選ぼうとする・・・。
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美しく年齢を重ねたイングリッド・バーグマンの魅力と、初々しいアンソニー・パーキンスの組み合わせが絶妙で、”百戦錬磨”、どんな女性でも落とせる雰囲気のある、イヴ・モンタンのプレイボーイ振りも見逃せない。
パリの粋なムードを存分に生かした、映像的にも斬新な、アナトール・リトヴァクの演出も冴え渡る。
25歳の設定にしては、やや子供っぽいところがが気になるアンソニー・パーキンスだが、その新鮮な演技は高く評価されて、カンヌ映画祭で男優賞を受賞した。
*パルムドールにもノミネートされた。
原作の題名にも関係する、ブラームスの”交響曲第1番ハ短調作品68”と”交響曲第3番ヘ長調作品90”が編曲されて、随所で効果的に使われている。
ナイトクラブの歌手で登場するダイアン・キャロルが主題歌”Goodbye Again”を歌っている。
また、悲しみとユーモアの入り混じった、面白いシーンがある。
主人公が、浮気を正当化しようとする男性と距離を置く決心をして車で走り去り、しばらくして溢れる涙に気付かず、雨だと思い込み、車のワイパーを動かしてしまうシーンだ。
心乱れて動揺する女心と、その場面には必要ないはずのユーモアをマッチさせた見事な演出だ。
富豪夫人役のジェシー・ロイス・ランディス、ロジェ(Y・モンタン)の愛人ジョセリン・レイン、ジーン・クラーク、ミシェル・メルシェなどが共演している。
また、ユル・ブリンナーやジャン=ピエール・カッセル、そしてフランソワーズ・サガンなどもカメオ出演している。