1981年に初演された、C・P・テイラーの舞台劇”Good”の映画化。 ヒトラーに著書を気に入られた大学教授が体制に順応しようとする苦悩と葛藤を描く、ヴィゴ・モーテンセン、ジェイソン・アイザックス、マーク・ストロング他共演、監督ヴィセンテ・アモリンによるドラマ。 |
・ドラマ
・マーク・ストロング / Mark Strong / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ヴィセンテ・アモリン
製作総指揮
ダニエル・ダジャーニ
サイモン・フォーセット他
製作
ミリアム・シーガル
セーラ・ブート他
戯曲:C・P・テイラー
脚本:ジョン・ラサール
撮影:アンドリュー・ダン
編集:ジョン・ウィルソン
音楽:サイモン・レイシー
出演
ジョン・ハルダー:ヴィゴ・モーテンセン
モーリス・イスラエル・グリュックシュタイン:ジェイソン・アイザックス
アン・ハートマン:ジョディ・ウィッテカー
フレディ・ドロビッシュ:スティーヴン・マッキントッシュ
フィリップ・ボウラー:マーク・ストロング
ジョンの母:ジェマ・ジョーンズ
ヘレン・ハルダー:アナスタシア・ヒル
イギリス/ドイツ/ハンガリー 映画
配給 Good Films
2008年製作 96分
公開
イギリス:2009年4月17日
北米:2008年12月31日
日本:2012年1月1日
製作費 $15,000,000
北米興行収入 $23,090
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1937年4月、ベルリン、総統官邸。
大学の文学教授ジョン・ハルダー(ヴィゴ・モーテンセン)は、ナチス党検閲委員長のフィリップ・ボウラー(マーク・ストロング)に呼ばれる。
ボウラーは、ハルダーの著書”生きる権利”にヒトラー総統が興味を示していることを、緊張する彼に伝える。
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1933年5月。
ハルダーは、病弱の母(ジェマ・ジョーンズ)と妻ヘレン(アナスタシア・ヒル)、そして二人の子供達と暮らしていた。
ナチスが政権を取り、ハルダーは、好ましくないとされる書籍が処分されることを学部長から知らされ、講義の内容を制限されてしまう。 自分の考えに興味を持ってくれた学生アン・ハートマン(ジョディ・ウィッテカー)に、執筆中の著書についての話をしたハルダーは、お互い惹かれ合うものを感じる。 ハルダーは、親友の精神分析医でユダヤ人のモーリス・イスラエル・グリュックシュタイン(ジェイソン・アイザックス)に、そのことを話す。 妻を夫が安楽死させる内容の著書を読んだヒトラーは、”人道的な死”を認める論文をハルダーに書かせようと決めた。 それをボウラーから知らされたハルダーは、高額な報酬を約束され、翌週までに草稿を書き上げることを伝える。 病気の母や家族を抱えたハルダーは、党の政策などに抵抗することはできなかったが、入党していない理由をボウラーに問われる。 アンと関係を持ってしまったハルダーは、それをモーリスに話す。 義父に、入党を拒めば失業すると言われて悩むハルダーは、そのことを妻ヘレンに相談し、彼女は、信念を貫き通すべきだと夫に助言する。 入党は健闘したものの、自分が行進などする姿を想像できないというハルダーは、それに納得したボウラーに、親衛隊少佐のフレディ・ドロビッシュ(スティーヴン・マッキントッシュ)を紹介される。 ハルダーはヘレンと別居し、仕事のために部屋を借りて、アンを妻の様にして連れ歩き、党のパーティーで出くわした義父に非難される。 その後ハルダーは、恨みのあるわけでもないヘレンに別れを告げ、家から連れ出した母親が、アナとの同居を拒むために独り住まいをさせる。 ハルダーは学部長になったのだが、彼が入党したことを知ったモーリスは非難する。 選挙権もなく人間として認められていないというモーリスが、物事を悲観的に考えているため、ハルダーは、国に愛着もない彼に、国外に行くべきだと助言する。 ユダヤ人ではあるが、この国で生まれたことを誇りに思うモーリスはそれを拒み、ナチスの思い通りにはならないことを伝えてその場を去る。 1938年10月。 ユダヤ人への圧力が高まる中、モーリスに呼ばれたハルダーは、出国の手助けを頼まれる。 仕方なくそれを引き受け、金を渡されたたハルダーは、駅で親衛隊員に出くわし、結局パリ行きの片道切符は買えずに、母親の元に向かう。 苦しむ母親を介抱したハルダーだったが、目を離した隙に、彼女は薬を大量に飲み自殺未遂を起こす。 モーリスは、できる限りのことはしたと言うハルダーから金を返され、逃亡が無理だと分かり諦める。 その後、母親は亡くなり、ハルダーは彼女を苦しめ家族を裏切ったことを悔やむが、ヘレンは、子供達は父親を誇りに思っていると言って慰める。 妻と共にハルダー家の夕食に招かれたドロビッシュは、子供ができないことで悩み相談する。 そこに、パリ在住の外交官エルンスト・フォム・ラートが、ユダヤ人に撃たれたという連絡が入り、ドロビッシュは本部へと向かう。 フォム・ラートが死ねば、反ユダヤ主義暴動が起きることは避けられなかった。 ハルダーは、ドロビッシュの出国許可証を盗み駅に向かい、モーリスのためにパリ行きの切符を手に入れる。 モーリスが留守だったために、ハルダーは、翌日、家に来るようにというメモを残す。 翌朝、フォム・ラート死亡の連絡が入り、親衛隊員は全員招集される。 制服を着たハルダーは、モーリスが自分で切り抜けられると言うアンに、出国許可証と切符を預け、モーリスが現れた場合に渡すよう伝える。 アンはハルダーの言葉を気にして、自分の姿を鏡で見るよう言われた彼は、取り締まりのために街に向かう。 ハルダーは、モーリスを捜すが見つけることができず、帰宅して、彼が来なかったことをアンに知らされる。 1942年4月。 ハルダーは、モーリスについて調べられるかを試して、彼がシレジアに移送されたことと、逮捕された日の情報を確認する。 取り締まりがあった日にモーリスが捕えられ、ハルダーはアンが彼を警察に引き渡したことを知り、それを彼女に問い詰める。 アンはそれを否定するが、ハルダーは、ゲシュタポに話したことは全て記録に残ると言って彼女の元を去る。 シレジアの収容所に向かったハルダーは、目的の人物を捜しだせるかを試験的に試みようとする。 しかし、3万人いる収容者の中からモーリスを捜しだすことは不可能であり、彼が死んだ可能性もあった。 しして、収容所の悲惨な状況に驚きながら、ハルダーはモーリスを捜し、これが現実かと目を疑う。
...全てを見る(結末あり)
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アンと結婚したハルダーは親衛隊大尉となり、著書が映画化されることになり、宣伝相のゲッペルスからも、その功績を称賛される。
*水晶の夜
ユダヤ人の大規模な移住計画が進められる中、収容所の受け入れ態勢についての正確な情報を入手する任務を任されたハルダーは、その膨大な記録システムを見せられる。
*(簡略ストー リー)
1937年4月、ベルリン。
大学の文学教授ジョン・ハルダーは、総統官邸のナチス党検閲委員長のボウラーに呼ばれる。
ヒトラー総統は、夫が妻を安楽死させるというハルダーの著書に興味を持ち、”人道的な死”を認める論文を書くことを指示する。
その件をボウラーから知らされたハルダーは、高額報酬を受けられることもありそれを引き受ける。
その後ハルダーは、女学生のアンと親交を持ち、妻ヘレンと別れ、病弱の母に一人暮らしをさせる。
親友のユダヤ人精神科医モーリスは、党に関わり入党までしたハルダーを非難する。
親衛隊大尉になったハルダーは、党の援助を受け不自由ない生活を送るのだが、家族とは別れ、母親は自殺未遂を起こし、迫害が迫る親友モーリスを助けられないことで苦悩する・・・。
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ドイツ、世界にとって激動の時代、ナチス政権下、ヒトラーに直接気に入られた、極端な思想を持つでもない見識もある主人公、時代の波に飲み込まれていく姿が、痛々しいほどリアルに描かれた作品。
総統官邸内部から始まる冒頭が実に興味深く、主人公ヴィゴ・モーテンセンと対面する党検閲委員長がマーク・ストロングということで、背後に総統がいる雰囲気を漂わせる、実力派の演技に引き込まれる。
ユダヤ人に対する迫害が、ゆっくりと進んでいく展開と、葛藤の末に、親友を助けようとする主人公が見る現実を描く描写、そのラストは深く考えさせられる。
終盤、主人公は妻に親衛隊の制服姿を誇りに思うよう言われるが、それが全くに似合わないように見えることでホッとする。
素晴らしいキャスティングなのだが、イギリス、北米なのでも、劇場公開されたと言えないほどの館数でしか上映されなかったのは残念だ。
党員としては認められ優遇されるものの、大切なものを失っていく、苦悩する主人公を好演するヴィゴ・モーテンセン、その親友で、ユダヤ人精神科医ジェイソン・アイザックス、主人公の妻になる女学生のジョディ・ウィッテカー、親衛隊少佐スティーヴン・マッキントッシュ、序盤しか登場しないものの、流石に印象深い演技を見せる党検閲委員長マーク・ストロング、主人公の母親役ジェマ・ジョーンズ、主人公の妻役のアナスタシア・ヒルなどが共演している。