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グレンとグレンダ Glen or Glenda (1953)

女装趣味の秘密を婚約者に隠す男性の苦悩を描く、監督、脚本、主演エドワード・D・ウッドJr.ティモシー・ファレルドロレス・フラーベラ・ルゴシ他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト
監督:エドワード・D・ウッドJr.
製作:ジョージ・ワイス
脚本:エドワード・D・ウッドJr.
撮影:ウィリアム・C・トンプソン
編集:バド・シェリング
音楽:ウィリアム・ラヴァ

出演
グレン/グレンダ:エド・ウッド/ダニエル・デイヴィス
オルトン博士/ナレーター:ティモシー・ファレル
バーバラ:ドロレス・フラー
科学者:ベラ・ルゴシ
アラン/アン:トミー・ヘインズ
ウォーレン警部:ライル・タルボット
ジョニー:チャールズ・クラフツ
銀行家/リポーター/女性を誘惑する男/顎髭を生やした男:コンラッド・ブルックス
悪魔/グレンの父親:キャプテン・デ・ギータ
パトリック/パトリシア(服装倒錯者の自殺者):ジョージ・ワイス

アメリカ 映画
配給 Screen Classics
1953年製作 65分/71分(1982年再編集)
公開
北米:1953年4月
日本:1995年9月30日
製作費 $20,000


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
科学者(ベラ・ルゴシ)は語り始める。
人類が常に未知のものを探し求めている結果、驚くようなことが明るみに出た。
しかし、これらの新しい発見のほとんどは、科学的に説明できない場合がある。
人には、それぞれの考えや価値観、個性があり正しいと思っている。
人は誕生し、そして人生は終わる・・・。
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女装して自殺したパトリック/パトリシア(ジョージ・ワイス)を調べたウォーレン警部(ライル・タルボット)は、女装したことで4回逮捕され、悩んだ末に死を選んだという内容の彼の遺書を確認する。

パトリック/パトリシアの考えを理解しようとしたウォーレンは、オルトン博士(ティモシー・ファレル)を訪ねる。

今回のようなことを防ぎたいウォーレンは、女装する男性”服装倒錯者”について語ろうとするオルトンに、性転換の効果について尋ねる。

場合によると言うオルトンは、性転換できる者はまだいいとして、違う性になりたいないのに叶わない、パトリックのような者にとっては非常に辛いことだと話す。

詳しく知ろうとするウォーレンに、オルトンは理解しにくい話しだと前置きして、生い立ちなどが同じ二つの例を語る。
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服装倒錯者のグレン/グレンダ(エド・ウッド/ダニエル・デイヴィス)は、ショウウィンドウの女性の服を見つめる。
...全てを見る(結末あり)

人々は、性転換は馬鹿げたことだと思うのだが、現代では必要不可欠な飛行機や車のことを、かつては同じように思った時代があった。

女装している方が落ち着くグレンだったが、バーバラ(ドロレス・フラー)という婚約者がいた。

グレンとグレンダは男女が半々ではなく、ひとつの身体に同居しているのだった。

妹シーラの服を借りたグレンは、仮装大会で優勝したこともあった。

グレンが女装して家でくつろぐ姿を見てしまったシーラは驚き、今後のことを考えて悩む。

グレンは服装倒錯者でありがホモセクシャルではなく、性生活は極めてノーマルだった。

世の中では、グレンと同じ境遇の者が苦悩していた。

性転換者に関する新聞記事を見たバーバラはグレンと話し、自分の身近にいたらどう思うか考える。

悩むグレンは、隠し事はしないという約束をしたバーバラから相談に乗ると言われ、何も話せないために、他に女性がいるのではないかと疑われる。

グレンは、結婚前にバーバラに打ち明けるべきか否かで悩む。

服装倒錯者である友人のジョニー(チャールズ・クラフツ)を訪ねたグレンは、結婚したい女性がいることを伝え、相手にはすべて話すことを勧められる。

2週間も女装するのを我慢していたグレンは、限界だとジョニーに伝えて悩み、ジョニーの体験談を聞く。

服装倒錯者だと妻に知られてしまったジョニーは、それで結婚生活は終わったことをグレンに話す。

相手には理解できないと言われたグレンは、結婚は諦めるしかないと思いつつ、幸せだった婚約した時のことを思い出す。
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バーバラに指輪を渡したグレンだったが、悩みが消えたわけではなかった。
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女装したグレンは家に戻り、雷の音と共に倒れて気を失う。

科学者は、”男の子や子犬のしっぽ、大きくて太ったカタツムリを食べてしまう、玄関先の緑の大きなドラゴンに注意しろ”と警告する。

夢を見るグレンは、グレンダの自分を見て戸惑うバーバラが木の下敷きになったため、それを持ち上げようとする。

グレンダのままでは木を持ち上げられないために、男に戻ったグレンはバーバラを助ける。

その後、グレンとバーバラは神父に祝福されて結婚するものの、付き添いの悪魔(キャプテン・デ・ギータ)は、不吉な笑みを浮かべて二人を見つめる。

科学者は、男の子や子犬のしっぽ、カタツムリを食べるかドラゴンに尋ねる。

男に鞭打たれる女性、男を誘う女性、服を引き裂く女性、拘束される女性、男に襲われる女性が現れる。

少女の声と共に男女が現れ、黒板には科学者などが話したことが書かれている。

何人もの異様な雰囲気の男女と悪魔が現れ、グレンに襲い掛かる。

グレンは女装してグレンダになり、悪魔らは姿を消す。

グレンダは、その場に現れたバーバラに近づく。

バーバラは悪魔に変身して再び戻り、同じ服を着ているグレンダをあざ笑う。

苛立つグレンダはバーバラの服を引き裂き、彼女が去った後、”注意しろ”という科学者の警告が聞こえる。

目覚めたグレンは鏡の前でカツラを外し、決心した彼は、バーバラに別人格の話を打ち明ける。

いつか着てみたいと思っていたバーバラのアンゴラのセーターに手を振れながら、グレンはすべてを話すものの彼女は混乱する。

暫くしてバーバラは、二人で困難を切り抜けられるとグレンに伝え、セーターを脱ぎ彼に差し出す。
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ウォーレンから話は終わりかと訊かれたオルトンは、別の話もあると答える。

幼少期に両親に愛されなかったグレンは、その代償としてグレンダを生み出したという結論に達したウォーレンは、オルトンから、アラン/アン(トミー・ヘインズ)の話を聞く。

アランの母親は女の子を望んでいて、父親は子供に興味がなかった。

家事が好きなアランは次第に女性的になり、第二次大戦が始まった1941年に徴兵され、週末になると女装することを楽しんだ。

戦地に向かったアランは、結局、終戦まで女装癖は気づかれず、2度勲章を授与されて除隊した。

アランは、戦地の病院で、海外の医師が性転換手術に成功したことを知り興味を持った。

診察の結果、アランは、男女どちらかの完全な性器と不完全な性器を持つ偽半陰陽だと分かり、どちらの性が誤りか選ぶことになった。

アランは女性を選び、2年後に地獄の苦しみを味わうものの、それに耐えて整形手術もして、ホルモン注射を続けた。

アランはアンになり、美しい女性に変身した。

それを知った新聞社が大々的に報道したために、性転換は世に知られた。

その後、アンは女性の振る舞いを習い、オルトンは彼女のケアを担当し、女性の性生活について説明した。

それらを楽しんだアンは、24歳で女性となったのだった。

ウォーレンから、グレンも性転換するべきか訊かれたオルトンは、違う方法が好ましかったと言って彼の話に戻る。

バーバラに告白したグレンはオルトンのカウンセリングを受け、彼女と共にアランの話も聞く。

グレンはアランと違い、完全な男の体だと言うオルトンは、服装倒錯者になったのは、幼少期の家庭環境が原因だと伝える。

グレンの父親(キャプテン・デ・ギータ)は息子に愛情注ぐことなく、フットボールか野球の選手にしたかった。

両親に愛されなかったのが服装倒錯者になった原因だと、オルトンはグレンとバーバラに話す。

夫を嫌っていた母親は、夫に似ていたグレンも嫌い、妹を溺愛する母を見たグレンは娘になればいいと考えたと、オルトンは二人に伝える。

グレンダを殺すしか方法はないと言われたグレンは、グレンダを殺し、その感情をバーバラに向けることが望ましいというオルトンの考えを理解する。

二人の要素が合っていることが前提であり、バーバラがグレンダの役目を果たすのは難しいが、愛があれば大丈夫だろうとオルトンは二人に伝える。

バーバラから、グレンの女装癖をそのままにしておくべきか訊かれたオルトンは、強制は逆効果であり、愛情を持って受け入れることが大切だと答える。

それが許せない場合の時についても訊こうとしたバーバラは、愛があれば問題ないことをグレンに認する。

その後、グレンとバーバラは結婚して幸せに暮らし、グレンダはグレンの中から消え去った。
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2つのケースを話したオルトンは、違うやり方だが、両者ともに幸せになったとウォーレンに伝える。

その両ケースは確かに成功したと思うウォーレンだったが、世界中にいる不幸な”グレン”のことを考える。

科学者もまた、同じ考えだった。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
服装倒錯者のグレンは、女装してグレンダになることに喜びを感じていた。
性転換手術のことが世間で話題になり、服装倒錯者の自殺者も出る中、事件を担当したウォーレン警部は、その分野の権威であるオルトン博士の意見を聞く。
そんな時グレンは、婚約者のバーバラと結婚する前に、秘密を話すべきか悩んでいた・・・。
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ティム・バートンが監督しジョニー・デップが主演した「エド・ウッド」(1994)が話題になったために一躍注目された作品でもあり、”最低の監督”と言われたエド・ウッドエドワード・D・ウッドJr.)のデビュー作。
監督と脚本を兼ねる主演のエド・ウッドは、”ダニエル・デイヴィス”の名前でクレジットされている。

1952年に、ジョージ・ウィリアム・ジョーゲンセンJr.が世界初の性別適合手術を受けてクリスティーン・ジョーゲンセンとなったことが話題になり、製作者ジョージ・ワイスが性転換を題材にしようとして製作されたのが本作で、ジョーゲンセンが映画への協力を拒んだために、エド・ウッドは、自身の服装倒錯者としての心の葛藤を描く内容に脚本を書き換えた。
それについては、事実とは多少異なるものの、「エド・ウッド」(1994)で紹介されている。
尚、ワイスは服装倒錯者の自殺者としてカメオ出演している。

性転換、服装倒錯、半陰陽性同一性障害などを題材にした、当時としてはかなりきわどい内容の”エクスプロイテーション映画”であり、メジャー作品でないために大きな問題にならなかったとも言える。

ベラ・ルゴシ演ずる異様な雰囲気の科学者が登場し、世で起きる人間の新しい発見などを語り、警告と共に始まる冒頭は興味深い。
しかし、自らも服装倒錯者であるエド・ウッドの自己陶酔的な演出は支離滅裂であり、性的な題材を問題にしていることが、一般の人々に受け入れられる要素がない。

上記のように、映画「エド・ウッド」(1994)により注目された本作のオープニングで登場するテーマ曲が、「エド・ウッド」の音楽を担当したハワード・ショアによりアレンジされ同作でも流れるために、それが”名曲”に聴こえてしまうのは私だけだろうか・・・。

演出と脚本を兼ね、主人公のグレン/グレンダを演ずるエド・ウッド/ダニエル・デイヴィスは、女装に喜びを感じるものの、婚約者との今後の人生を不安視して苦悩する男性を演じている。

主人公の婚約者役である、当時のエド・ウッドの恋人ドロレス・フラー、主人公のカウンセラーである博士とナレーターのティモシー・ファレル、異様な雰囲気の科学者として印象的な役柄を演ずるベラ・ルゴシ、主人公と同じ様な境遇で育ち女性になるトミー・ヘインズ、服装倒錯者の自殺者の事件を担当して、主人公について語る専門家の話を参考にする警部のライル・タルボット、主人公の友人である服装倒錯者チャールズ・クラフツ、銀行家/リポーター/女性を誘惑する男/顎髭を生やした男のコンラッド・ブルックス、悪魔/グレンの父親のキャプテン・デ・ギータなどが共演している。


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