古代ローマ帝国の政略に巻き込まれた軍司令官の闘いを描く、監督リドリー・スコット、主演ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、オリヴァー・リード、リチャード・ハリス、ジャイモン・フンスゥ共演の壮大なスケールで描く歴史劇。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:リドリー・スコット
製作総指揮
ローリー・マクドナルド
ウォルター・F・パークス
製作
デヴィッド・フランゾーニ
ブランコ・ラスティグ
ダグラス・ウィック
脚本
デヴィッド・フランゾーニ
ジョン・ローガン
ウィリアム・ニコルソン
撮影:ジョン・マシソン
編集:ピエトロ・スカリア
衣装デザイン:ジャンティ・イエーツ
美術・装置
アーサー・マックス
クリスピアン・サリス
音楽
ハンス・ジマー
リサ・ジェラルド
出演
マキシマス・デシマス・メリディウス:ラッセル・クロウ
ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス・アントニヌス:ホアキン・フェニックス
アニア・オーレリア・ガレリラ・ルッシラ:コニー・ニールセン
アントニウス・プロキシモ:オリヴァー・リード
マルクス・アウレリウス:リチャード・ハリス
ジュバ:ジャイモン・フンスゥ
クイントゥス:トーマス・アラナ
ハーゲン:ラルフ・モーラー
グラックス:デレク・ジャコビ
ガイアス:ジョン・シュラプネル
ファルコ:デヴィッド・スコフィールド
ルシアス・ウェルス:スペンサー・トリート・クラーク
カシウス:デヴィッド・ヘミングス
シセロ:トミー・フラナガン
奴隷商人:オミッド・ジャリリ
ヴェレリウス:ジョン・クウィン
ティグリス:スヴェン=オリ・トールセン
アメリカ 映画
配給
ドリームワークス(北米)
ユニバーサル・ピクチャーズ(世界)
2000年製作 155分(完全版172分)公開
北米:2000年5月5日
日本:2000年6月17日
製作費 $103,000,000
北米興行収入 $187,670,870
世界 $457,640,430
■ アカデミー賞 ■
第73回アカデミー賞
・受賞
作品賞
主演男優賞(ラッセル・クロウ)
衣装デザイン賞・視覚効果賞・音響賞
・ノミネート
監督賞
助演男優賞(ホアキン・フェニックス)
脚本賞・撮影賞・作曲賞・美術賞・編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
紀元180年、冬。
ローマ皇帝・マルクス・アウレリウス(リチャード・ハリス)は、ゲルマニアで激しい戦いを続けていた。
そして、マキシマス・デシマス・メリディウス将軍(ラッセル・クロウ)率いるローマ軍は、遂に勝利を手に入れる。
アウレリウスと兵士がマキシマスを称える中、戦地に呼ばれた息子ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス・アントニヌス(ホアキン・フェニックス)と姉のアニア・オーレリア・ガレリラ・ルッシラ(コニー・ニールセン)が父の元に到着する。
コモドゥスは、後継指名のためにアウレリウスが自分を呼んだものと思い込み、父に歩み寄る。
元老院議員のガイアス(ジョン・シュラプネル)とファルコ(デヴィッド・スコフィールド)を伴ったコモドゥスは、マキシマスに対し、元老院を意のままに動かすための協力を要請する。
アウレリウスに呼ばれたマキシマスは、戦いの意味や故郷スペインのトルヒーリョについて聞かれる。 持病が悪化し、死期を悟ったアウレリウスは、 自身や兵から絶大な信頼を得ているマキシマスに、暫定的とした上で全権限を与えようとする。 マキシマスはそれを断るが、アウレリウスの説得で返事を保留する。 かつてマキシマスに心を寄せたルッシラは、思い悩む彼の心を読む。 そしてアウレリウスは、息子のコモドゥスに帝国を託す事を断念する。 コモドゥスは、父アウレリウスがマキシマスを後継にすることを知り、父を病死に見せかけて殺害してしまう。 しかし、自らを皇位敬称者と宣言するコモドゥスの企みは、マキシマスには見破られていた。 既に、マキシマスの腹心クイントゥス(トーマス・アラナ)はコモドゥスに忠誠を誓い、マキシマスを拘束して処刑する命令を出す。 処刑場で、マキシマスは兵士を倒し負傷しながらも逃亡し、コモドゥスが処刑命令を出した家族の元へ急ぐ。 しかし、マキシマスが故郷にたどり着いた時には、妻子は虐殺されていた。 絶望したマキシマスは妻子を埋葬するが、意識を失っている間に、奴隷商人(オミッド・ジャリリ)に連れ去られる。 ローマ属州、ズッカバール(現アルジェリア北西部)。 家族を失い、闘いや生きる意欲もなくなったマキシマスは、ローマに裏切られ、市民の証”SPQR”の腕の刺青を消す。 しかしマキシマスは、アフリカ人ジュバ(ジャイモン・フンスゥ)やゲルマン人ハーゲン(ラルフ・モーラー)らと共に剣闘士として闘う以外、生きる道はなかった。 一方、ローマに新皇帝として凱旋したコモドゥスは、市民の信頼を得られず、元老院議員のグラックス(デレク・ジャコビ)に、民を理解していると言う理由を追求されてしまう。 そこでコモドゥスは、市民を喜ばすために、禁止されていたコロッセオの剣闘試合を復活させる。 その頃、マキシマスは、”Spaniard”(スペイン人)と呼ばれ、無敵を誇る剣闘士として名を知られるようになっていた。 そしてマキシマスは、名を上げれば、ローマで皇帝(コモドゥス)に接近して復讐できる可能性を知る。 名のある剣闘士であったプロキシモが、先帝アウレリウスから自由の身を与えられたと聞いたマキシマスは、 彼の指示に従うことを決め、観客を驚かせるための闘いを見せることを約束する。 その後、コロッセオの復活を知ったプロキシモは、 元剣闘士の血が騒ぎ、マキシマスらを連れてローマへと向かう。 ローマに到着したマキシマスらは、今まで闘った闘技場とは比較にならない、巨大なコロッセオに圧倒される。 マキシマスらは、民衆の心を掴めというプロキシモの言葉に、闘志を奮い立たせる。 父アウレリウスの言葉通り、弟コモドゥスの監視役として傍に付き添うルッシラに、孤立しているコモドゥスは姉弟以上の関係を迫る。 ルッシラの息子ルシアス・ウェルス(スペンサー・トリート・クラーク)に、声をかけられたマキシマスは、自分の正体が知られないかと警戒する。 遂にコロッセオに姿を現したマキシマスらは、コモドゥス、ルッシラそしてルシアスらが見守る中、”ポエニ戦争”を再現して剣闘士達を殺すという見世物に登場させられる。 しかし、マキシマスは、軍隊式の統制が取れた戦法で闘いに挑み、それを仕組んだローマ側の鼻を明かし、敵を打ち破り民衆に喝采を浴びる。 そして、”スペイン人”(マキシマス)に興味を示したコモドゥスは、彼と対面することになる。 コモドゥスに名を名乗るよう命ぜられたマキシマスは、マスクのまま”グラディエーター” と答え、皇帝に背を向けて立ち去ろうとする。 侮辱されたコモドゥスは再び名乗るよう命じ、マキシマスは、真の皇帝”マルクス・アウレリウス”の臣下、”マキシマス・デシマス・メリディウス”、 現世と来世で妻子の仇を討つと答える。 兵士がマキシマスらを取り囲み、民衆の”殺すな”という声に、コモドゥスは親指を立てて、マキシマスを生かす指示を出す。 そして、民衆や剣闘士までもがマキシマスを称え、コロッセオは熱狂に包まれる。 その後、マキシマスの元に現れたルッシラは、彼の妻子の死を知らなかったことを告げる。 ルッシラは、 帝位継承権のある息子ルシアスの身を案じ、恐怖に怯える毎日を送っていることをマキシマスに伝える。 さらに、民衆を操れないコモドゥスより、民衆の心を掴み、皇帝に挑むマキシマスの力を信じたルッシラは、元老院議員の中にも協力者はいることを彼に告げる。 しかし、マキシマスは、自分はコモドゥスにより殺されたと言って、自分に尽くそうとするルッシラを突き放してしまう。 心沈むマキシマスは、自分の名声をコモドゥスが恐れているとジュバに助言され励まされたりもする。 コモドゥスは、マキシマスを暗殺する訳にもゆかず、引退していた伝説の剣闘士、ガリアのティグリス(スヴェン=オリ・トールセン)を彼と闘わせる。 地下からはトラが放たれ、さすがのマキシマスも苦しめられるが、ティグリスは力尽き、コモドゥスは息の根を止めるようマキシマスに指示を出す。 しかし、マキシマスはそれを拒み、民衆は再びマキシマスの慈悲深さを称えてしまう。 再びコモドゥスと対面したマキシマスだったが、挑発に乗ることなくその場を立ち去る。 完全に民衆の心を捉えているマキシマスの姿を見た元老院議員のグラックスは、ルッシラへの協力を決める。 コロッセオに来ていた、かつてのマキシマスの従者シセロ(トミー・フラナガン)は、オスティアに軍が終結していることをマキシマスに伝え、彼は自分が健在だということを軍に知らせるよう告げる。 シセロは、マキシマスが戦地で想い祈っていた、妻子に見立てた人形を彼に渡す。 ジュバは、それで家族と話せるのかとマキシマスに尋ね、彼は話せることを伝え心の安らぎを得る。 元老院議員ファルコは、動揺するコモドゥスに民衆を刺激しないマキシマスの暗殺方法を提案する。 マキシマスは、シセロをルッシラに接触させ、グラックスに会い、自分を軍の集結場所のオスティアに逃がすよう要望する。 グラックスは、100年もの間、ローマに軍が入ったことがないことを指摘する。 クーデター後に軍を元老院に委ね、全ローマを民衆に返すという、アウレリウスの意志を実行することを、マキシマスはグラックスに伝える。 そして、グラックスはマキシマスを信じ、彼を逃がすことを約束する。 マキシマスは、プロキシモにも協力を要請するのだが、彼はコモドゥスを殺すことが、商売人である自分には損になることを伝える。 しかしマキシマスは、プロキシモを自由の身にした、恩人であるアウレリウスを、コモドゥスが殺したことを伝える。 コモドゥスは陰謀に気づき、グラックスを捕らえてルッシラに探りを入れる。 ルッシラは、グラックスが捕らえられたことをマキシマスに伝え、彼への愛を告げて逃亡を即、決行しようとする。 ルッシラの裏切りも察したコモドゥスは、身内に暗殺されたとされるクラウディウス帝の物語を例にとり、ルシアスを傍らにルッシラに脅しをかける。 兵はマキシマスを捕らえる命令を受けるのだが、ジュバらの協力と、プロキシモやハーゲンらが犠牲となり、マキシマスを逃がすことに成功する。 しかし、シセロとの待ち合わせ場所で罠にはまったマキシマスは捕らえられてしまう。 陰謀を阻止したコモドゥスは、ルッシラに対し、ルシアスの命を奪わぬ代わりに、自分を愛し後継ぎを生むよう強要する。 その後、コロッセオでマキシマスを殺そうとするコモドゥスは、彼を傷つけてから民衆の前に現れ、止めをさ刺そうとする。 二人の壮絶な闘いは始まり、剣を失ったコモドゥスは、腹心クイントゥスに剣を渡すよう命ずるが彼はそれに従わない。 マキシマスは既に体力の限界に達していたが、コモドゥスが隠し持っていた短剣を抜いたため、渾身の力を込め彼の胸を貫く。 コモドゥスは息絶え、マキシマスは元腹心のクイントゥスに、囚人とグラックスの解放を約束させ、ローマを理想の姿にする、アウレリウスの意思を継ぐよう言い残す。 そしてマキシマスは、家族の待つ場所に旅立とうとする。 マキシマスは、寄り添ったルッシラの前で息を引き取り、彼女は、マキシマスが命を捧げたことに値するローマを取り戻す決意を表し、そして、ローマの戦士マキシマスを称える。 ジュバは、自分をアフリカの地に帰らせてくれたマキシマムの形見(妻子の人形)をコロッセオに埋め、いつの日か彼と再会する日が来ることを思いつつ、家族の待つ故郷に戻る。
...全てを見る(結末あり)
その後マキシマスは、奴隷商人のプロキシモ(オリヴァー・リード)に、剣闘士”グラディエーター”奴隷として買取られらる。
*(簡略ストー リー)
ローマ皇帝・マルクス・アウレリウスは、後継者にローマ軍の歴戦の勇士マキシマスを指名する。
当然、自分が指名されるものと考えていたアウレリウスの息子コモドゥスは、それに嫉妬して父を暗殺し新皇帝となることを宣言する。
そしてコモドゥスは、マキシマスの処刑と彼の家族の抹殺を命ずる。
処刑を逃れたマキシマスは家族の元に向かい、その悲惨な光景を見て絶望する。
奴隷商人に連れ去られたマキシマスは、剣闘士奴隷としてプロキシモに買い取られ、無敵の”グラディエーター”となり名を上げていく。
やがてマキシマスは、ローマのコロッセオに出場できれば、コモドゥスに復讐できる可能性知り都に向う。
その後、プロキシモらと共にローマに到着したマキシマスは、コモドゥスの姉ルッシラの協力を得て、復讐と理想のローマを取り戻すためために戦いに挑む・・・。
__________
全てにおいて、ハリウッドの英知を結集したハイレベルな作品で、壮大なスケールで描かれた、久々の本格的史劇の超大作。
同じ題材の「ローマ帝国の滅亡」(1964)を同時に観てみると、より本作が解り興味深いものになる。
第73回アカデミー賞では12部門にノミネートされ、作品、主演男優(ラッセル・クロウ)、衣装デザイン、視覚効果、音響賞を受賞した。
・ノミネート
監督
助演男優(ホアキン・フェニックス)
脚本、撮影、作曲、美術、編集賞
授賞式で見せた緊張した表情に、本作への意欲が感じられたリドリー・スコットの、重量感溢れる演出は見事だ。
クライマックスのコロッセオの決戦まで、全く飽きの来ないストーリーで、約2時間半があっという間に過ぎてしまう、キャスティングを含め切れのある脚本と編集も素晴らしい。
製作費1億ドルをかけた超大作で、北米興行収入は約1億8800万ドル弱、全世界では約4億5800万ドルを超える大ヒットとなった。
スペクタルの醍醐味と芸術的な美しさを兼ね備える映像、ドラマを大いに盛り上げるハンス・ジマーとリサ・ジェラルドの勇壮で美しい音楽、そして彼女自身が歌うエンディング曲”Now We Are Free”も心に沁みる。
名将故に信頼が厚く、家族の元に戻る事がままならないマキシマス。
コモドゥスに虐殺された妻子に再び会うためには、自らの死をもって宿敵コモドゥスを倒すしかなかった。
そして、傷ついたマキシマスは、家族の元へと旅立つ・・・
悲しい結末ながらも、孤立無援だった主人公のマキシマスに、周囲は次第に惹かれ、彼のために自らの命を懸ける者達の、勇気ある行動も感動を呼ぶ。
マキシマスの死の意味を称えて、民衆に訴えるルッシラ、そして、彼のおかげで解放され、故郷に帰ることができる剣闘士ジュバ(ジャイモン・ハンスゥ)が、コロッセオの地面に、マキシマムの形見を埋めながら見せる安堵の表情で、全てが救われる思いがするラストも素晴らしい演出だ。
歴戦の勇士、男気があり家族の愛を追い求める理想の男をラッセル・クロウは見事に演じ、当時2年連続でオスカー候補になっていた彼の受賞は誰もが納得した。
さらに翌年の「ビューティフル・マインド」(2000)も受賞に値する名演だった。
ファンとしては、スペンサー・トレーシーとトム・ハンクス以来の連続受賞を期待したのだが。
アカデミー賞は逃したものの、憎さ極まりないコモドゥス役のホアキン・フェニックスの名演が、本作を支えたのも違いない。
女性が権力を握る事が許されなかった時代、皇帝となった弟に従うしかないルッシラ役のコニー・ニールセンの、気品漂う皇女の好演も印象に残る。
マキシマスに自分の人生を重ね合わせ、彼に目をかけて手を差しのべる、人間味ある奴隷商人役のオリヴァー・リードの熱演は、彼のキャリアを締めくくる最高の演技だったとも言える。
オスカー候補にならなかったのは不思議なくらいだ。
(オリヴァー・リードは撮影中に亡くなる。)
パックス・ロマーナの一角を担った、五賢帝最後の皇帝マルクス・アウレリウスを演じたリチャード・ハリスも、出番は少ないが存在感を示している。
常に死を覚悟しながら、マキシマスと共に闘い、彼のおかげで解放される剣闘士ジャイモン・フンスゥ、マキシマスの腹心であったが、新皇帝に寝返り、最後にはマキシマスの遺志を継ごうとする将軍トーマス・アラナ、逞しいゲルマン人剣闘士役のラルフ・モーラー、反皇帝派元老院議員デレク・ジャコビ、皇位継承権が脅かされる、ルッシラの息子役のスペンサー・トリート・クラーク、マキシマスの忠実な従者役トミー・フラナガン、元老院議員役のジョン・シュラプネルとデヴィッド・スコフィールド、剣闘試合の進行役デヴィッド・ヘミングス、伝説の剣闘士スヴェン=オリ・トールセン等が共演している。
CGによる見事に甦ったコロッセオなどのセットは見事だが、1万5000人収容の戦車競技場を実際に作ってしまった「ベン・ハー」(1959)の本物の迫力にはかなわない。
参考:
当時ローマにあった戦車レース大競技場(チルコ・マッシモ)は十万人、コロッセオは5万人収容。
注:
チルコ・マッシモはラテン語ではキルクス・マクシマス(Circus Maximus)と言い、主人公の名と同じだ。
時代背景は、「ベン・ハー」(1959)が本作(紀元180年)より約150年前のキリストの生涯を、TVドラマ「ローマ」は、カエサルの時代から初代皇帝アウグストゥス誕生までを描いた本作から約200年以上前の物語。