写真家のダィアン・アーバスがファッション・フォトグラファーからフリークスに惹かれていく姿を描く、主演ニコール・キッドマン、ロバート・ダウニーJr.、タイ・バーレル、ハリス・ユーリン、ジェーン・アレクサンダー他共演のドラマ。 |
・ドラマ
・ニコール・キッドマン / Nicole Kidman 作品一覧
・ロバート・ダウニーJr. / Robert Downey Jr. 作品一覧
■ スタッフ キャスト ■
監督:スティーヴン・シャインバーグ
製作
ローラ・ビックフォード
パトリシア・ボズワース
アンドリュー・ファイアーバーグ
ウィリアム・ポーラッド
ボニー・ティマーマン
製作総指揮
アレサンドロ・キャモン
エドワード・R・プレスマン
マイケル・ロバン
原作:パトリシア・ボズワース
脚本:エリン・クレシダ・ウィルソン
撮影:ビル・ポープ
編集
クリスティーナ・ボーデン
出口景子
音楽:カーター・バーウェル
出演
ダィアン・アーバス:ニコール・キッドマン
ライオネル・スウィーニー:ロバート・ダウニーJr.
アラン・アーバス:タイ・バーレル
デヴィッド・ネメロフ:ハリス・ユーリン
ガートルード・ネメロフ:ジェーン・アレクサンダー
グレース・アーバス:エミー・クラーク
ソフィア・マッカーシー:ジュヌヴィエーヴ・マッカーシー
ジャック・ヘンリー:ボリス・マクギヴァー
ティッパ・ヘンリー:マルセリーヌ・ヒューゴ
アルシア:メアリー・ダフィー
アメリカ 映画
配給 ピクチャーハウス
2006年製作 122分
公開
北米:2006年11月10日
日本:2007年5月26日
製作費 $16,800,000
北米興行収入 $220,910
世界 $2,281,090
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
”キャンプ・ヴィーナス”(ヌーディスト・キャンプ)を訪れたダィアン・アーバス(ニコール・キッドマン)は、ジャック・ヘンリー(ボリス・マクギヴァー)に迎えられ、彼の妻ティッパ(マルセリーヌ・ヒューゴ)を紹介される。
二人と話をしたダィアンは、写真家は歓迎するが、同じように服を脱いでもらうと言われて戸惑う。
欲情せずに見つめないという条件を告げられたダィアンは、服を脱ぐようにと言われるが、心の準備をしたいと二人に伝える。
髪の毛が入っているペンダントを、ティッパに素敵だと言われたダィアンは、友人のものだと伝える。
3か月前、1958年、ニューヨーク。 5番街の有名なデパート”ラセックス”のオーナーである両親デヴィッド・ネメロフ(ハリス・ユーリン)とガートルード(ジェーン・アレクサンダー)が、自宅兼スタジオで毛皮ショーを開催してくれたため、ダィアンはその準備に追われていた。 ダィアンは、上階に越して来た住人の奇妙な荷物に興味を持つ。 ショーは始まり、カメラを交換してほしいとアランに言われたダィアンは、運送業者と話す上階の住人が覆面を被っていいることに気づく。 男性の異様な姿に見入ってしまったダィアンは、彼と目を合わせる。 ショーが終り、出席者をスタジオに案内したダィアンは、アランの仕事などを説明し、自分の写真についてを訊かれ、夫のアシスタントだと答える。 次々と質問されるダィアンは動揺し始めてその場を離れ、心配するアランに大丈夫だと伝える。 ポーチに出たダィアンは外の空気を吸いながら、胸をはだけて深呼吸し落ち着こうとする。 パーティーは終わり、ベッドに入ったダィアンは、アシスタントは雇えるので少し休んだ方がいいとアランに言われ、ポーチのことを彼に話す。 スタジオで動揺したことを気にするダィアンは、妻と母として失格だとアランに伝える。 アランを求めるものの、彼にその気がないことを知ったダィアンは、上階から聴こえてくる音楽に耳を澄ます。 2週間後。 ダィアンは、ゴミと共に鍵も捨ててしまう。 インターフォンで上階の住人に犬を洗ったかを尋ねたダィアンは、心当たりがないと答える彼から、地下を見てみるようにと言われる。 訪ねてきたスキンヘッドの男性が階段を上がることを気にしながら、ダィアンは地下に向う。 その場に現れた両腕のない女性アルシア(メアリー・ダフィー)から、上の住人がライオネルだと知らされたダィアンは、それ以上何も訊かずに戻る。 階段から下りてきた男性がかつらをつけていることに気づいたダィアンは、”ライオネルのウィッグ”という札を確認する。 その夜、アランが眠っている間にダィアンは、10年前に買ったものの使っていなかったカメラを持って階段を上る。 ライオネルの部屋のドアの穴を覗いたダィアンは、彼が現れたために驚く。 配水管は直したかと訊かれたダィアンは、ドアを開けたライオネル・スウィーニー(ロバート・ダウニーJr.)から、引っ越して来た日に自分を見ていたことを訊かれる。 それを認めたダィアンは、誘惑しに来たのかと言われたために、それを否定する。 夫妻の写真を撮らせてほしいと伝えたダィアンは、妻はいないとライオネルに言われる。 それならば一人でもいいと伝えたダィアンは、いつ撮りたいのかを訊かれて、今だと答える。 それを断ったライオネルは明晩の9時に約束して、その場を去ろうとするダィアンに、見知らぬ者を撮りたい理由を尋ねる。 眠れない日が多いと答えるダィアンに、鍵のことを伝えたライオネルはドアを閉める。 寝室に戻ったダィアンは、ベッドの下にカメラを隠して眠る。 翌朝、ゴミが回収される前に、ダィアンは例の鍵を拾い出す。 その夜、散歩をしてくるとアランに伝えたダィアンは、カメラを持ってライオネルの部屋に向かう。 部屋に入ったダィアンは、異様な雰囲気やおぞましいフィルムが流れる中、ヤカンのお湯が沸いたことに気づく。 ティーカップでお茶を入れるようにというメモを確認したダィアンは、その指示に従い、窓に向い、階下のアルシアの部屋を見つめる。 そこに現れたライオネルは、窓を向きカメラを置くようダィアンに指示して、目を閉じるようにと伝える。 そのまま服を脱ぐようにと言われたダィアンは、風呂を用意していたライオネルに、遠慮すると伝える。 振り向いたダィアンは、顔中が毛に覆われたライオネルを見て驚きながらも、お茶を飲んで話をする。 家柄のことを訊かれたダィアンは、恵まれた家庭環境などを話し、淫らな考えや行為もしたことをライオネルに話す。 自分のような人間を家に誘ったことがあるか訊かれたダィアンは、顔にアザのある少年に興味を抱いた時から、冒険に出たいと考えたとライオネルに話す。 人形病院、死体公示所、精神科病院など様々な場所に興味を持ちながら、結局は夫のアシスタントをしているというダィアンを、ライオネルは浴室に連れて行く。 靴と服を脱ぎ、肌着のままで浴槽に入ったダィアンは、”多毛症”だと言うライオネルから、目を閉じて目隠しをするようにと言われ、彼と共に浴槽に浸かり、アザのある少年のことなどを思い出す。 翌朝までその場で眠ってしまったダィアンは焦り、また来るかとライオネルに訊かれる。 来てほしいかとライオネルに尋ねたダィアンは、写真がまだだと言われる。 寝室に戻ったダィアンは、眠っているアランに気づかれなかった。 アランと共に買い物に出かけたダィアンは、仕事を休み近所の人々などの写真を撮る考えを伝える。 それにアランが賛成してくれたため、ダィアンはライオネルの部屋に通い始める。 ある日、ライオネルと出掛けたダィアンは、奇妙な男女がいる部屋や葬儀社などに向い、ダイナーで食事をする。 翌朝、帰宅したダィアンは、楽しんだことだけを確認するアランと愛し合う。 二人の喘ぐ声を排気口を通じて聴いていたライオネルは、アランに会いたいことをダィアンに伝える。 ためらいもなくライオネルをアランに紹介したダィアンは、子供達も彼の部屋に連れて行くようになる。 ダィアンは撮影したフィルムを隠し、グレースがそれを目撃していた。 その後ダィアンは、アリシアや小人、ゲイの男性などと親交を深め、この上ない喜びを感じる。 アランは、子供達の面倒も見ずに外出するダィアンの奇行が気になる。 スタジオの天井の扉とライオネルの部屋が通じていることに気づいたダィアンは、彼の仲間達をパーティーに招待する。 グレースはそれに反発し、アランはその場にいる気になれず外出する。 肺病で苦しむライオネルは、その件について友人達に手紙を書く。 家族とライオネルを伴うダィアンは、両親が開いてくれる誕生パーティーに向かう。 ダィアンからライオネルを紹介された両親は驚く。 一応、和やかな雰囲気の中、パーティーは行われ、ダィアンは自分の部屋にいたライオネルから、肺が壊れかけていることを知らされる。 悲しむダィアンはライオネルに寄り添いキスしかけるが、その姿をアランに見られてしまう。 帰宅してベッドに入ったダィアンから、ライオネルが死ぬことを知らされたアランは、自分の苦しみを伝える。 全てを終らせる決心をしたダィアンはライオネルの部屋に向い、全裸の彼が、体の毛を剃ろうとしていることに気づく。 剃ってほしいとライオネルに言われたダィアンは、それに従う。 隠してあったダィアンのフィルムを持ち出したグレースは、それをアランに渡す。 それを現像したアランだったが、階段やライオネルの部屋のドアなどしか写っていなかった。 全身を剃り終えたダィアンは、ライオネルの素顔を確認し、そして二人は愛し合う。 翌朝、ゴムボートを膨らませたライオネルは、なぜ剃らせたのかをダィアンに訊かれ、泳ぎ出るためだと答える。 それを見届けてほしいと言われたダィアンは戸惑い、ライオネルから愛を告げられる。 写真がまだだと言うダィアンは、彼撮影する。 二人は海に向かい、自分の毛で作ったコートをダィアンに渡したライオネルは、沖に向かって泳ぎ始める。 ライオネルを追ったダィアンは、独り浜辺に戻る。 帰宅したダィアンは入り口のドアを開けようとしてためらい、ライオネルの寝室に向い、彼を想いながら眠ってしまう。 目覚めたダィアンは、その場にいたライオネルの仲間達と過ごし、No.1から始まる”ライオネル”と題した写真を貼るアルバムを見せられる。 ゴムボートのライオネルの息を吸ったダィアンは部屋に戻り、眠っている娘達に待っていてほしいと伝えて旅立つ。 ”キャンプ・ヴィーナス” 自分を撮るのかと女性に訊かれたダィアンは、今はまだと答えてカメラを置き、彼女の秘密を尋ねる。 まず自分の秘密を聞かせてほしいと言われたダィアンは、自分の物語を語ろうとする。
ダィアンは、ファッション・フォトグラファーの夫アラン・アーバス(タイ・バーレル)のアシスタントをしながら、二人の娘グレース(エミー・クラーク)とソフィア(ジュヌヴィエーヴ・マッカーシー)を育てていた。
...全てを見る(結末あり)
洗面台の配水管が詰まっているとグレースに言われたダィアンは、配管の中の動物の毛のようなものと鍵を確認する。
全裸になったダィアンは、ベンチに座っている女性に話しかける。
■ 解説 評価 感想 ■
*(簡略ストー リー)
1958年、ニューヨーク。
ファッション・フォトグラファーの夫アラン・アーバスのアシスタントをしていたダィアンは、上階に引っ越してきた覆面の男性ライオネルが気になる存在となる。
ライオネルの写真を撮る気になったダィアンは、彼が全身毛で覆われた”多毛症”であることを知り驚く。
そんなライオネルに惹かれ親交を深めるダィアンは、彼やフリークスの世界にのめり込むのだが・・・。
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写真家ダィアン・アーバスの逸話をモチーフにした、パトリシア・ボズワースの著書を基に製作された作品。
裕福な恵まれた家庭環境に育ち人気ファッション・フォトグラファーの夫アラン・アーバスのアシスタントとして活躍していたダィアン・アーバスが、いかにしてフリークスに惹かれたかを描く作品。
*ダィアン・アーバスは、結局、心のバランスを崩し、1971年に自殺した。
本作は、伝記映画ではなくフィクションで、ダィアン・アーバスの考えの特異性やものを見る目を、象徴的に描いた作品である。
主人公ダィアン・アーバスの心の変化や彼女の考えを、独特の世界観で描くスティーヴン・シャインバーグの演出手腕が見所の作品でもあり、おぞましい描写も含め、その美術的センスの良さに注目したい。
また、平凡な生活から逸脱した世界を愛する主人公の心情が伝わる、カーター・バーウェルらしい音楽も印象に残る。
彼女自身が芸術品のような美しさのニコール・キッドマンは、独特の世界にのめり込む主人公ダィアン・アーバスを魅力的に演じている。
完全復活目前の時期であったロバート・ダウニーJr.は、終盤まで毛に覆われたメイクで表情を見せない役柄を演じ、主人公を魅了する男性を好演している。
妻の自由な生き方を認めながら、次第にその異常さに苦悩するアラン・アーバス役のタイ・バーレル、主人公の両親ハリス・ユーリンとジェーン・アレクサンダー、主人公の娘エミー・クラークとジュヌヴィエーヴ・マッカーシー、主人公を歓迎するヌーディスト・キャンプの夫妻ボリス・マクギヴァーとマルセリーヌ・ヒューゴなどが共演している。