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フロスト×ニクソン Frost/Nixon (2008)

アメリカの現職大統領リチャード・ニクソンが”ウォーターゲート事件”の真相や国民への謝罪もないまま辞任したことに目をつけたイギリスのトーク・ショー司会者デヴィッド・フロストが、ニクソンとの独占インタビューを企画して歴史的な視聴率を上げたエピソードを基に上演された舞台劇の映画化。
製作、監督ロン・ハワード、主演フランク・ランジェラマイケル・シーンケヴィン・ベーコン他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督:ロン・ハワード

製作総指揮
ピーター・モーガン

デブラ・ヘイワード
ライザ・チェイシン
カレン・ケーラ・シャーウッド
デヴィッド・ベルナルディ
トッド・ハロウェル

製作
ロン・ハワード

ブライアン・グレイザー
ティム・ビーヴァン
エリック・フェルナー
脚本:ピーター・モーガン
撮影:サルヴァトーレ・トチノ
編集
マイク・ヒル

ダニエル・P・ハンリー
音楽:ハンス・ジマー

出演
リチャード・ニクソンフランク・ランジェラ

デヴィッド・フロストマイケル・シーン
ジャック・ブレナンケヴィン・ベーコン
ボブ・ゼルニックオリヴァー・プラット
ジェームズ・レストンサム・ロックウェル
キャロライン・クッシング:レベッカ・ホール
アーヴィング”スウィフティー”リザールトビー・ジョーンズ
ジョン・バードマシュー・マクファディン
パット・ニクソンパティ・マコーミック
ロイド・デイヴィス:クリント・ハワード

アメリカ/イギリス 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
2008年製作 122分
公開
北米:2008年12月5日
日本:2009年3月28日
製作費 $35,000,000
北米興行収入 $18,593,160
世界 $27,426,340


アカデミー賞 ■
第81回アカデミー賞

・ノミネート
作品・監督
主演男優(フランク・ランジェラ
脚色・編集賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1974年8月8日。
アメリカの第37代大統領リチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)が、1972年6月に起きた”ウォーターゲート事件”をきっかけに、建国史上初めて任期途中で辞任することになる。

2週間後、ロンドン
イギリスのTVトーク・ショーの人気司会者デヴィッド・フロスト(マイケル・シーン)は、事件について一切、沈黙したまま故郷カリフォルニアに帰った、ニクソンとの独占インタビュー番組を企画し、プロデューサーのジョン・バード(マシュー・マクファディン)に提案する。

政権を受け継いだジェラルド・フォードは、世論の反発を余所に、ニクソンに恩赦を与えてしまう。

3ヵ月後、カリフォルニア州、サン・クレメンテ
ニクソン邸に現れた、代理人アーヴィング・スウィフティー・リザール(トビー・ジョーンズ)は、ニクソン前大統領への多くのインタビュー依頼を受けていた。
...全てを見る(結末あり)

リザールはその中から、50万ドルという破格の出演料を提示したフロストの番組を選ぶ。

フロストを扱いやすい男だと判断したリザールは、出演料を上げるようにというニクソンの要求に従い、契約金20万ドル、さらに出演料を60万ドルに上げさせることに成功する。

キャリアに問題ないフロストが、なぜ冒険をするのか疑問を抱くバードに、フロストはアメリカでの成功の価値を語る。

二人はロサンゼルスに向かい、フロストは、キャロライン・クッシング(レベッカ・ホール)という女性と、飛行機内で意気投合する。

ロサンゼルスに到着後、自分のインタビューを各テレビ局に売り込んだフロストだったが、感触は良くなかった。

ラ・カーサ・パシフィカ”(ニクソン邸)。
バードとキャロラインを連れ立って屋敷を訪れたフロストは、補佐官ジャック・ブレナン(ケヴィン・ベーコン)とリザールを従えたニクソンに迎えられる。

ニクソンは、ソ連書記長ブレジネフと会談した部屋などにフロストらを案内し、彼に、インタビューが”決闘”になることを告げる。

そしてリザールは、フロストに契約金20万ドルの支払いを要求し、ブレナンは、インタビューがテレビにも売れない状況で、スポンサーも付いていないことから、この企画が流れるだろうとニクソンに伝える。

1週間後、ロサンゼルス国際空港
3大ネットワークへの売り込みに失敗したフロストは、仕方なく、自分達で番組を製作し放映権を売ることを考える。

1976年、ニューヨーク、”プラザホテル”。
ジャーナリストのボブ・ゼルニック(オリヴァー・プラット)と、ニクソンを批判をする作家のジェームズ・レストン(サム・ロックウェル)を調査員にするため、フロストは彼らと顔を合わせる。

しかし、レストンフロストのインタビューの目的に不満をぶつけたため、バードは彼を降ろすようにとフロストに忠告する。

フロストレストンが気に入り、彼もゼルニックに説得され、資金の調達も出来たフロストは、インタビューの準備を始める。

ブレナンは、扱いやすく自分のペースで進められるだろうフロストとのインタビューで、イメージと評価を変えられれば、政界に戻れるかも知れないことをニクソンに伝える。

ニクソンは”下調べ”をするために、フロストの宿泊先である”ビバリー・ヒルトン・ホテル”に、思わず、”CIAで訓練を受けたキューバ人工作員”をブレナンに紹介して、侵入させようとしてしまう。

困惑するブレナンに、ニクソンは”ジョークだ”と言ってそれを取り消す。

1977年の年明けから、フロストバードそしてゼルニックレストンは、インタビューへの入念な準備を始める。

3月22日、インタビュー前日。
ブレナンから連絡を受けたフロストは、ニクソンの功績を汚す、”ウォーターゲート事件”への過剰追求は契約違反になると事前に釘を刺される。

しかしフロストは、2000万ドルの損害賠償訴訟をちらつかせて、余裕を見せてキャロラインと共に、自分が出資している映画「シンデレラ」のプレミアに向かう。

1977年3月23日、インタビュー当日。
警備他の関係で、共和党員の実業家宅で行われることになったインタビュー会場にフロストらは向かう。

マスコミが詰め掛ける中、物々しい雰囲気でニクソンが車を連ねて現れる。

ニクソンフロストらに、撮影上の注文をつけながら本番を待つ。

そして、インタビューは始まり、フロストは”なぜテープを燃やさなかったのか?”という、”ウォーターゲート”関係の質問を、予定通りニクソンに浴びせる。

ニクソンは一瞬たじろぎ、契約では即答する問題ではないことを伝えるが、視聴者の関心事ということを考慮して質問に答える。

さらに、軽快な語り口でニクソンはマイクを独占し、フロストは完全に彼のペースに巻き込まれてしまう。

2時間の収録はたちまち終わってしまい、次回の対策を協議する間もなく、フロストはスポンサーの元に向かってしまう。

大企業がスポンサーから降り、資金調達もままならないことを知ったゼルニックレストンだったが、経費を背負っているフロストを刺激しないようバードに忠告される。

フロストは、ニクソンを相手にするインタビューで、間違いなく高視聴率を稼げることを強調しながら、スポンサーからの資金調達に奔走する。

3月25日、インタビュー2日目。
バードに、ニクソンに付け入る隙を与えるなと助言されたフロストは、”ベトナム戦争”や”カンボジア侵攻”についての質問を始めて攻勢に出る。

しかし、自信みなぎるニクソンの語り口に、フロストは初回をやや上回る程度の成果しか得られなかった。

次回が、ニクソンの得意とする外交政策ということもあり、ゼルニックバードレストンは肩を落とす。

3月28日、インタビュー3日目。
ニクソンの貫禄に圧倒されるフロストに、ゼルニックらは苛立ち不満をぶつけるが、彼は最終決戦に備え、何とかスタッフをまとめる。

しかし、今回のインタビューに全てを捧げているフロストに、オーストラリアの番組打ち切りの報せが入り、ロンドンでも同じような動きになるのが必至となる。

全財産を、この企画につぎ込んでいたフロストは絶望感さえ感じていた時、そこに電話が入る。

フロストは、ルームサービスだと思い”チーズ・バーガー”だと答えてしまうが、それはニクソンからだった。

ニクソンは、自分達を見下す権力を叩き潰すために協力し合い、インタビューを価値ある決闘の場に変えようという提案をフロストにする。

但し、勝つのはどちらか一人で、負けた者には非情な世界が待ち構えていると、ニクソンフロストに伝え電話を切る。

その電話で奮い立ったフロストは”戦い”に備え、大統領時代のニクソンと、特別補佐官のチャールズ・コルソンの録音テープなどの分析を始め、レストンにも協力を求める。

4月22日、インタビュー最終日。
戦闘体制のニクソンは、彼を迎えたフロストとの握手も交わさず会場に入り、インタビュー前に、電話のことを彼に聞かれて首を傾げる。

収録は始まり、司法妨害や隠ぺい工作に触れたフロストは、ニクソンチャールズ・コルソンの会話記録などに言及して、激しい論戦を繰り広げる。

そして、興奮したニクソンは、”大統領が行うことは非合法ではない”と発言してしまう。

フロストは追い討ちをかけるように、”隠ぺい工作に関与し、法律を犯したか”を追求する。

ニクソンが口篭るのを見たフロスト側が、ついに核心を突いたと思ったその時、ブレナンが窮地のニクソンを救おうとして収録を中断させようとする。

別室に下がったニクソンは、告白がどれだけのダメージを与えるかを知らせるブレナンに、否定し続けることはできないことを伝える。

ブレナンは、フロスト側にインタビューの続行を承諾して収録は再開する。

ニクソンは、大統領の価値を傷つける過ちを犯し、隠ぺいにも関与し、国民を失望させたことを認める。

そしてニクソンは、その重荷を背負って生きていくことと、政治生命が終わったことを、苦悩の表情を浮かべて淡々と語る。

放心状態に近い敗北感を味わいながら、ニクソンは会場を後にする。

インタビューは大成功に終わり、ニュース報道番組史上、最高の視聴率を上げ、フロストは各方面のジャーナリスト達に祝福され、時の人となる。

ロンドンに帰る前に、再びニクソン邸を訪れたフロストは、彼に別れの挨拶とイタリア製の靴を贈る。

ニクソンは、フロストが人に好かれていることを羨み、自分がホテルに本当に電話をしたのかを訪ねる。

何を話したかを思い出せないニクソンに、フロストは”チーズ・バーガーです”と答える。

怪訝そうな表情をしたニクソンに、フロストは笑みを浮かべ、別れの挨拶をして立ち去る。

フロストは各地で大歓迎され、ニクソンの政界へ復帰するという夢は叶わなかった。

その後のインタビューで、作家レストンは語る。

ニクソンの遺産の中で最も長続きしているものは、政治的な不正に、必ず付くようになった接尾語”・・・ゲート”だと。
__________

フロストはその後もトーク・ショーの司会を続け、彼の夏のパーティーには多くのセレブが集まる。

ニクソンは1978年に回顧録を発表して議論を呼び、民間人としてソ連中国を再訪問し、1994年に亡くなるまで公職に就くことは一度もなかった。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1974年8月8日。
第37代アメリカ大統領リチャード・ニクソンが、”ウォーターゲート事件”をきっかけに、建国史上初めて任期途中で辞任することになる。
イギリスのTVトーク・ショーの人気司会者デヴィッド・フロストは、事件について沈黙したままのニクソンへの、単独インタビュー番組を企画する。
数多くのインタビューの依頼を受けていたニクソンの代理人リザールは、50万ドルという破格の出演料を提示してきたフロストの番組を選ぶ。
ニクソンは、更に契約金と出演料の上乗せを要求し、フロスト側はそれを受け入れる。
フロストの暴走に、疑問を抱くプロデューサーのバードだったが、彼の目的は、アメリカでの成功に価値を見出そうとしていたのだった。
ロサンゼルス入りしたフロストは、その企画をテレビ局に売り込むものの感触は悪く、3大ネットワークへの売り込みにも失敗する。
仕方なくフロストは、自分達で番組を製作し、放映権を売ることを考えるのだが・・・。
__________

ロンドンウエスト・エンドニューヨークブロードウェイの舞台の主演者二人が、それぞれの役をそのまま映画でも演じている。

第81回アカデミー賞では、作品賞以下5部門にノミネートされた。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(フランク・ランジェラ
脚色・編集賞

対決する2人の主人公を中心にして、インタビューに関わった関係者の証言で進行するドキュメンタリー・タッチで描いた舞台劇がベースなだけに、無駄のない緊迫感溢れる、切れ味も鋭いロン・ハワードの演出は冴える。

主人公達の演技の妨げにならぬよう、メイクなどで本人に似過ぎない工夫が見られ、逆に見る者を惹きつける効果を上げている。

その物腰や髪型、浅黒い肌などでニクソンの”雰囲気”を出す程度に止めている、フランク・ランジェラの、クライマックスの苦悩の表情は、無理にニクソンに似せないことで見慣れた本人を新鮮な存在に感じさせる。

ニクソンの無骨なところや、ちょっとした間違いを知らずに犯してしまう、良く言えば”茶目っ気”を表現するような脚本も面白い。

また、フロストの出方を探ろうとしたニクソンが、側近ジャック・ブレナンに、真顔で”キューバ人工作員”の連絡先を教えようとするシーンは、アメリカの劇場なら大爆笑間違いなしと言ったところだろう。

舞台でも絶賛されて、トニー賞を受賞した主演のフランク・ランジェラは、70歳にして本作で初のアカデミー主演賞候補にもなり、傲慢さやユーモア、脇の甘さも感じさせる、人間味のある人物として、ニクソンを見事に演じている。

失脚したとは言え、世界の指導者でもあるニクソンを相手に、30代後半の若さと実行力とバイタリティーで世界を驚かせた、デヴィッド・フロスト演ずるマイケル・シーンの熱演も見逃せない。

前大統領を支え政界復帰をもくろむ補佐官のジャック・ブレナン役のケヴィン・ベーコンフロスト側の調査員役のボブ・ゼルニックオリヴァー・プラットジェームズ・レストンサム・ロックウェル、プロデューサーのジョン・バードマシュー・マクファディンフロストの恋人レベッカ・ホールニクソンの代理人アーヴィング”スウィフティー”リザール役のトビー・ジョーンズニクソン夫人パット役のパティ・マコーミック、撮影クルーでクリント・ワードなどが共演している。


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