アルフレッド・ヒッチコック(製作、監督)が祖国イギリスのロンドンを舞台に連続絞殺事件を描く、主演ジョン・フィンチ、バリー・フォスター、バーバラ・リー・ハント、アンナ・マッセイ他共演のサスペンス・スリラー。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:アルフレッド・ヒッチコック
原作:アーサー・ラ・バーン”Goodbye Piccadilly, Farewell Leicester Square”
脚本:アンソニー・シェーファー
撮影:ギルバート・テイラー
編集:ジョン・ジンプソン
音楽:ロン・グッドウィン
出演
リチャード・イアン”ディック”ブレイニー:ジョン・フィンチ
ロバート”ボブ”ラスク:バリー・フォスター
ブレンダ・マーガレット・ブレイニー:バーバラ・リー・ハント
バーバラ・ジェーン”バブス”ミリガン:アンナ・マッセイ
フェリックス・フォーサイス:バーナード・クリビンズ
オックスフォード警部:アレック・マッコーエン
オックスフォード夫人:ヴィヴィアン・マーチャント
ヘティ・ポーター:ビリー・ホワイトロー
モニカ・バーリング:ジーン・マーシュ
スピアマン巡査部長:マイケル・ベイツ
ジョニー・ポーター:クライヴ・スウィフト
イギリス 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1971年製作 116分
公開
イギリス:1972年5月25日
北米:1972年6月21日
日本:1972年7月29日
製作費 $2,000,000
世界 $16,000,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ロンドン、テムズ川。
ネクタイで首を絞められた、全裸の女性の死体が発見される。
連続で起きている殺人事件に、人々は警察の捜査の甘さを指摘する。
パブのバーテンダーである、リチャード・イアン”ディック”ブレイニー(ジョン・フィンチ)は、あることで店長フェリックス・フォーサイス(バーナード・クリビンズ)に言いがかりをつけられ、店をクビになる。
ブレイニーは、同僚で恋人のバーバラ・ジェーン”バブス”ミリガン(アンナ・マッセイ)に心配されながら、その場を去っていく。
その後、友人のロバート”ボブ”ラスク(バリー・フォスター)に愚痴をこぼしたブレイニーは彼に励まされ、競馬の確実な予想を知らされてパブに向かう。 客の”ネクタイ殺人”の噂話を聞き流しながら、有り金で酒を飲んだブレイニーは、別れた妻ブレンダ(バーバラ・リー・ハント)が経営する結婚相談所に向かおうとする。 途中、ラスクに競馬の予想が当たったことを知らされ、文無しのブレイニーは賭けることも出来ずに悔しがる。 ブレンダに会ったブレイニーは、彼女にツキのないことで八つ当たりしてしまうのだが、二人は夕食を共にすることになる。 食事中に再び声を荒げたブレイニーは、ブレンダの家に立ち寄り、その後、簡易宿泊施設で夜を過ごし、ポケットに10ポンド紙幣が2枚入っているのに気づく。 翌日、ラスクは”ロビンソン”と名乗り顧客としてブレンダのオフィスを訪ね、彼女を侮辱し欲情のままに襲い掛かる。 そして、ネクタイを外したラスクは、ブレンダを絞殺しバッグから現金を盗みその場を去る。 その直後、ブレンダのオフィスに現れたブレイニーは、ドアの鍵が閉まっていたために立ち去るが、昼食から戻った秘書のモニカ・バーリング(ジーン・マーシュ)が彼を目撃する。 オフィスに戻ったバーリングは、ブレンダの絞殺された死体を見つけ叫び声を上げ、付近にそれが響き渡る。 その後、ブレイニーはバーバラに電話をかけ、自分の荷物を届けてもらうおうとする。 やがて、ブレンダ殺害の捜査は始まり、オックスフォード警部(アレック・マッコーエン)とスピアマン巡査部長(マイケル・ベイツ)は、秘書バーリングの尋問を始める。 バーリングは、オフィスからブレイニーが出て行ったことと、彼が昨日ブレンダと揉めていたことや服装などを話し、犯人だと確信する。 バーバラと待ち合わせたブレイニーは、彼女に金が入ったことを伝えホテルに向かい、ダブルの部屋を取り愛し合う。 その頃、新聞に”ネクタイ殺人”の記事が大々的に掲載され、それを見たホテルのボーイは、クリーニングで預かっていたブレイニーの上着と、犯人と思われるものの特長とが一致したことに驚いてしまう。 早速ボーイは警察に連絡を入れ、到着した警官は部屋に押し入るのだが、ブレイニーらは新聞を見て事件を知り逃げ去った後だった。 ブレイニーは、自分が潔白だということをバーバラに説明し、彼女は一応それを信じる。 その後、公園で戦友のジョニー・ポーター(クライヴ・スウィフト)に出くわしたブレイニーは、彼の妻ヘティ(ビリー・ホワイトロー)にブレンダ殺しを疑われる。 ポーターは、パリにイギリス式のパブをオープンさせる予定があったため、事が静まるまで、そこで働くようブレイニーとバーバラを誘う。 ブレイニーはそれに飛びつき、バーバラもパブを辞めて同行することになる。 スコットランドヤード。 そこに、パブの店長フォーサイスから連絡が入り、新聞に掲載されていた犯人の特徴がブレイニーと一致することと、店で働くバーバラが現れないため、彼女に危険が迫っている可能性があることをオックスフォードに伝える。 その直後、店にバーバラが現れ、フォーサイスと口論になった彼女は店を飛び出す。 店にいたラスクがバーバラに話しかけ、出張するため彼女に部屋を貸すことを提案する。 そして、バーバラはブレイニーの親友のラスクを信用して彼の部屋を見に行く。 バーバラを絞殺したラスクは、彼女の死体をジャガイモ袋に詰めこみ市場のトラックに投げ込む。 しかし、ラスクは帰宅した後、バーバラを殺す際にネクタイピンを奪われたことに気づきトラックに戻る。 ラスクが、袋を確認している間にトラックが動き出してしまい、苦労しながら、ようやくバーバラの手に握られていたネクタイピンを取り戻す。 ドライブインで停車したトラックからラスクは降りるが、その後、トラックの異変に気づいたパトカーがそれを追跡し、荷台から落下したバーバラの絞殺死体が発見される。 その事件がラジオで放送され、ヘティはブレイニーを再び疑うが、ポーターは彼には自分達といたアリバイがあることを警察に話すことを提案する。 しかし、ヘティに反対されたポーターの気が変わってしまい、憤慨したブレイニーはその場から立ち去る。 行き場のなくなったブレイニーは、ラスクの元に向かい彼の部屋に匿ってもらうことになる。 しかし、ラスクはそれを警察に通報し、ブレイニーは逮捕されてしまう。 オックスフォードに罪状を告げられていたブレイニーは、バッグの中にバーバラの洋服が入っているのも確認され、彼はそれを見て犯人がラスクだと気づく。 その後、ブレイニーは有罪となり終身刑が言い渡されるが、彼は犯人はラスクだと叫びながら法廷から連れ出される。 それを聞いたオックスフォードは、何か気になるものがあった。 オックスフォードはラスクを調べ始め、彼が”ロビンソン”という名前でブレンダの結婚相談所に来ていて、性的異常者だということも秘書バーリングの証言で知ることになる。 その頃、刑務所のブレイニーは、わざと階段から転げ落ちて病院に運ばれる。 帰宅したオックスフォードは、ラスクが犯人だと確信する妻(ヴィヴィアン・マーチャント)の意見を、見るからにまずそうな料理に苦労しながら興味深く聞き入る。 そこに、スピアマンが現れ、犯人が乗っていたと思われるジャガイモを運ぶトラックが止まったドライブインで、当日ラスクが目撃されていたことをオックスフォードに知らせる。 さらに、ラスクは埃だらけの衣服をはらうために、その店でブラシを借り、それをスピアマンは回収したことも報告する。 オックスフォードは、ブレイニーを釈放させるために行動することを妻に伝える。 妻は、夫のミスだということを強調し、償いにブレイニーを食事に招待することを考える。 オックスフォードは、”何でも美味く感じるはずだ”と答えてしまい、妻は気分を害してしまう。 その夜、ブレイニーはラスクに復讐するため、病院を抜け出して彼の元に向かい、それがオックスフォードにも知らされる。 ラスクの部屋に侵入しようとしたブレイニーは、ドアの鍵が開いているのを不審に思いながらも、ベッドに寝ている彼を鉄棒で殴る。 しかし、ベッドには無残にもネクタイで絞殺された女性の死体が横たわっていた。 そこに、オックスフォードが現れ、続いて大きなトランクを運んできたラスクが部屋に入ってくる。 オックスフォードは、二人を見て驚くラスクに、ネクタイはどこかと尋ねる。 そして、観念したラスクは、支えていたトランクを床に倒す。
...全てを見る(結末あり)
オックスフォードとスピアマンは、ホテルで使われた紙幣に、被害者ブレンダのバッグにあったファンデーションが付着していたとの報告を受ける。
1966年に発表された、イギリス人作家アーサー・ラ・バーンの小説”Goodbye Piccadilly, Farewell Leicester Square”を基に製作された作品。
★ヒッチコック登場場面
上映開始後約3分、オープニング・クレジットの直後、演説を聞いている民衆の中の男性の一人がヒッチコック。
画面の中心で、シルクハットを被っているのでとても分かり易い。
その後、女性の死体が発見され、野次馬としてその場で人々の話を聞いている。
*(簡略ストー リー)
ロンドンで起きる連続考察事件が解決しないまま、人々は不安の日々を過ごしていた。
バーテンダーのブレイニーは、癇癪を起してパブをクビになり、結婚相談所を経営する元妻のブレンダに会いに行く。
しかし、翌日、ブレイニーの親友で、性的異常者のラスクは、顧客としてブレンダの元に向かい、実は絞殺魔だった彼は、彼女に襲い掛かり殺害してしまう。
ブレンダの秘書の証言などで、夫ブレイニーが容疑者となるが、彼は、パブの同僚で恋人のバーバラと、友人に誘われてパリに向かおうとする。
そんな時、ラスクの魔の手はバーバラに迫り、彼女も殺害されてしまう。
そして、行き場のなくなったブレイニーは、親友のラスクに助けを求めるのだが・・・。
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70歳になったアルフレッド・ヒッチコックが、久し振りに祖国イギリスのロンドンを舞台にして、連続絞殺事件を描いたサスペンス・スリラー。
ハリウッド製でなく、大物俳優が出演している作品でもないが、母国を舞台にしたアルフレッド・ヒッチコックのユーモアのセンスやカメラワーク、またイギリスの文化を見事に映し出した演出は、やや低調気味だった彼の復活を感じさせる作品として評価された。
ヒッチコックは衰えるどころか、食べ物をとんでもなくグロテスクに描写したり、相変わらずの”女性蔑視”とも取れる表現はエスカレートしていく一方という感じで、そんなシーンが、これでもかというほど挿入されている。
特に、警部オックスフォードがシンプルな料理を望むのに対し、凝り性の妻が、見るからにまずそうな料理を夫に振舞うシーンなどは、食事を拷問のように見せるという、ヒッチコックの真骨頂が見事に発揮されていて、何度見ても笑えてしまう。
オープニング・クレジットの、ロンドンの空撮から被害者発見現場となるテムズ川岸に至るショットは、明らかに「サイコ」(1960)のオープニングを意識している。
その他、犯行現場や犯行そのものを見せずに、その恐怖感を伝える長回しなど、ヒッチコックらしい手法が満載された見所の多い作品だ。
切羽詰り、焦った行動が全て犯行の裏付けになってしまい、ラスト1分前までそれが続いてしまうという不運な主人公ジョン・フィンチ、早々に犯人と分かるのだが、追われる容疑者を尻目に犯行を続けるバリー・フォスター、犠牲になる主人公の元妻役バーバラ・リー・ハントと、恋人アンナ・マッセイ(名優レイモンド・マッセイの娘)、パブの店長バーナード・クリビンズ、妻の料理に苦労する警部アレック・マッコーエン、その妻ヴィヴィアン・マーチャント、主人公を疑う女性ビリー・ホワイトロー、その夫役クライヴ・スウィフト、結婚相談所の秘書ジーン・マーシュ、巡査部長のマイケル・ベイツ等が共演している。