実在の高校教師エリン・グルーウェルが1999年に発表した”The Freedom Writers Diary”の映画化。 1992年のロス暴動以後、加熱する人種間の争いに巻き込まれる高校生達と新任教師との交流を描く、監督リチャード・ラグラヴェネーズ、主演ヒラリー・スワンク、パトリック・デンプシー、スコット・グレン、イメルダ・スタウントン他共演による実話を基にした社会派ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:リチャード・ラグラヴェネーズ
製作総指揮
ヒラリー・スワンク
トレイシー・ダーニング
ナン・モラレス
製作
ダニー・デヴィート
マイケル・シャンバーグ
ステイシー・シェア
原作:エリン・グルーウェル”The Freedom Writers Diary”
脚本:リチャード・ラグラヴェネーズ
撮影:ジム・デノールト
編集:デヴィッド・モルティス
音楽
マーク・アイシャム
ウィル・アイ・アム
出演
エリン・グルーウェル:ヒラリー・スワンク
スコット・ケーシー:パトリック・デンプシー
スティーヴ・グルーウェル:スコット・グレン
マーガレット・キャンベル:イメルダ・スタウントン
アンドレ:マリオ
エバ:エイプリル・リー・エルナンデス
マーカス:ジェイソン・フィン
ベン:ハンター・パリッシュ
グロリア:クリスティン・ヘレラ
ジャマル:ディーンス・ワイアット
ティト:ガブリエル・チャバリア
ブランディ:ヴァネッタ・スミス
コーン博士:ロバート・ウィズダム
ミープ・ヒース:パッツィー・キャロル
アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
2007年製作 122分
公開
北米:2007年1月5日
日本:2007年7月21日
製作費 $21,000,000
北米興行収入 $36,581,630
世界 $43,090,740
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1992年4月に起きたロス暴動は、アメリカ社会における人種問題の複雑さを浮き彫りにした。
1994年。
ロングビーチでは、一歩外に出れば肌の色の違いで抗争が始まり戦場と化していた。
その人種の集合体とも言える、ウィルソン高校に国語の新任教師にエリン・グルーウェル(ヒラリー・スワンク)が赴任する。
教科主任マーガレット・キャンベル(イメルダ・スタウントン)は、”1年生”教師のエリンの今後を心配する。
しかし、エリンは、真珠のネックレスを外すことを勧めたキャンベルの忠告に耳を貸さず、希望に燃えて初登校する。
生徒が教室に集まり、自己紹介を始めたエリンだったが、生徒達は彼女を無視して騒ぎ出し、争い始めてしまう。
人種ごとに徒党を組み、縄張り荒らしが現れるとたちまち死闘が繰り広げられた。
その光景にショックを受けたエリンは、夫スコット(パトリック・デンプシー)に支えられ、教師の仕事に反対する父親スティーヴ(スコット・グレン)の気苦労を心配しながら教師を続ける覚悟を決める。 心を決め授業に挑んだエリンだったが、生徒達を統率することが全くできずにいた。 ある日、生徒がコンビニで射殺される事件が起きて、エリンのクラスのエバ(エイプリル・リー・エルナンデス)が、犯人の目撃者となっていることがわかる。 教室内で、ティト(ガブリエル・チャバリア)がジャマル(ディーンス・ワイアット)を軽蔑した絵を描いたのをきっかけに、エリンと生徒達との口論が始まる。 生徒は、世の中の白人至上主義と教師への反発を、エリンに一斉に浴びせる。 エリンは、いきがってギャングになり殺されても、何も残らず忘れ去られるだけだと反論するが、殆どの生徒が銃で狙われたことのある現実も知り、子供達の置かれる実生活を知りショックを受ける。 生徒達にまともな本を読ませようとしたエリンに対し、生徒を全く信用しない教科主任や他の教師は、それが無駄だと言ってエリンを相手にしない。 エリンは教室でライン・ゲームを始め、生徒達の境遇を理解すると、全員のために用意してあった日記帳を差し出し、毎日思いついたことを書くように提案する。 それを自分に読んで欲しい者は、ロッカーに入れるよう指示したエリンは、日記帳を配り始める。 学校以外のことに、興味を見出せない今のエリンに、夫スコットは苛立ちを見せ始める。 ロッカーを確認したエリンは、殆どの生徒が日記帳を入れてあるのに驚きそれを読み始め、生徒達がいかに、悲惨な生活下に置かれているかを知り心を痛める。 父スティーヴは、学校以外の生徒の生活に干渉せず、授業に打ち込むようエリンに助言する。 生徒達に本を与えるために、エリンはアルバイトを始め、自費で行う課外授業の許可を、学区長のコーン博士(ロバート・ウィズダム)に直談判する。 夫フランクの怒りは収まらず、学校では教師の中で孤立してしまうエリンだったが、課外授業の許可が下りる。 エリンは、人種差別の象徴的な出来事を教え込むために、生徒達を”ホロコースト”資料館に連れて行く。 その後、エリンがアルバイトをしているホテルの夕食会で、生徒達はホロコーストの生存者の話を聞く。 生徒達は感動の日を過ごし、エリンに心を開き感謝した。 やがて彼らのクラス”203教室”は、人種の壁を越え仲間意識が芽生え、エリンは生徒達の”変化”に感激して喜ぶ。 生徒達が”アンネの日記”を読むようになった頃、エリンの情熱に反し、夫フランクの心は彼女から離れ、学校内では、教科主任キャンベルらの反感も増していく。 エリンは、”アンネの日記”の感想文を書く代わりに、アンネ・フランクら一家を匿った、ミープ・ヒースに手紙を書くことを提案する。 生徒らはエリンの提案をさらに発展させ、高齢でありながら存命の、ミープ・ヒースをアメリカに招待することを考え募金を始める。 ”変化”の名の下に始まった募金活動は、新聞などでも取り上げられ、ミープ・ヒースが、ついにウィルソン高校を訪れることが決まる。 ミープ・ヒース(パッツィー・キャロル)は、自分をヒーローだというマーカス(ジェイソン・フィン)に、”人間としてやるべきことしただけ、あなたがたこそヒーロー”だと生徒達に語る。 コンビニ襲撃事件の犯人を知るエバは、裁判で証言台に立ち、偽証することが出来ずに真実を述べて仲間を裏切ってしまう。 エバは仲間に襲われ、命は奪われずに済むものの、脅された末に縄張りから追放されてしまう。 その後、エバは家を離れ伯母の家で暮らすため、放課後には教室に残り、宿題をする許可をエリンから得る。 スコットはついにエリンの元を去り、クラスを持った2年目の後期、エリンは、来年はクラスを教えられないことを生徒に話す。 夫との離婚や、生徒達との別れを思うと居たたまれない思いのエリンを、父スティーヴは素晴らしい教師だと称え、それが言える父親としての幸せを語る。 学区長コーン博士への嘆願も叶わず、学校側はエリンの3年の受持ちを拒否してしまう。 エリンは最後のプロジェクトとして、生徒達の日記帳を本にすることを考えて、即実行に移す。 そしてその本は、”The Freedom Writers Diary”と名付けられる。 教育委員会に呼び出されたエリンを待っていた生徒達に、彼女は3年だけでなく4年もクラスを受け持つことになったことを告げ、互いに喜びを分かち合う。 1999年に”The Freedom Writers Diary”は出版され、エリンと生徒達のクラス”203教室”を多く作ろうと、エリンは、”フリーダム・ライターズ基金”を設立する。
...全てを見る(結末あり)
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*(簡略ストー リー)
1994年。
ロサンゼルス、ロングビーチ。
ロス暴動の影響も残る中、人種の集合体とも言えるウィルソン高校に、国語の新任教師にエリン・グルーウェルが赴任する。
教科主任の心配を余所に、エリンは希望に燃えるて初登校する。
しかし、生徒達はエリンを無視して、人種ごとに徒党を組み、縄張り争いを始める。
ショックを受けたエリンだったが、夫スコットに支えられつつ、教師を続けていく覚悟を決める。
その後も、エリンの努力も空しく、生徒達を統率できないでいたが、彼女は、教室内でゲームなどを始め、そして、全員に日記帳を配り、毎日思いついたことを書くよう提案するのだが・・・。
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落ちこぼれ集団の、お決まりの更生ドラマと思いきや、それは、中盤であっさりクリアされて、教師と生徒達が社会に影響を与えて、その存在価値を大きく証明する後半の展開など、「フィッシャー・キング」(1991)他で脚本を手がけた監督リチャード・ラグラヴェネーズの演出は、今までの学園物とは一味違い、新鮮味が感じられる作品。
アンネ・フランク一家らを隠れ家で匿った女性ミープ・ヒースと、主人公と生徒達が対面するシーンは感動的だ。
人種偏見により、毎日、生死を争う生活をしている子供達がいる社会事態が、日本人からすると考えられないことなのだが、アメリカ社会の抱える大きな問題であり、そして、これが実話だということに、ただただ驚くばかりだ。
主人公エリン・グルーウェルを演ずるヒラリー・スワンクは製作にも参加しているのだが、彼女自身、子供時代に貧しく不幸な生活をしていた。
それをバネにして何事にも意欲的に取り組む、バイタリティなど、実際の自分に照らし合わせた、彼女の意欲が窺える熱演は、大きな感動を与えてくれる。
あまりドラマに深入りしてこない、地味な役柄だった主人公の夫パトリック・デンプシー、娘を誇りに思う父親を物静かに演ずるスコット・グレン、教育方針が合わずに最後まで主人公と対立して徐々にヒステリックになる教科主任イメルダ・スタウントン他、生徒達の自然な演技もなかなかいい。