1998年に発表された、リチャード・プライスの同名小説の映画化。 息子を誘拐されたという女性の言動を気にしながら捜査を進めるベテラン刑事の彼女との交流を描く、監督ジョー・ロス、主演サミュエル・L・ジャクソン、ジュリアン・ムーア、イーディ・ファルコ、ロン・エルダード、ウィリアム・フォーサイス、アーンジャニュー・エリス、アンソニー・マッキー他共演の社会派サスペンス。 |
・ジュリアン・ムーア / Julianne Moore / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョー・ロス
製作:スコット・ルーディン
製作総指揮:チャールズ・ニューワース
原作:リチャード・プライス”Freedomland”
脚本:リチャード・プライス
撮影:アナスタス・N・ミコス
編集:ニック・ムーア
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演
サミュエル・L・ジャクソン:ロレンゾ・カウンシル
ジュリアン・ムーア:ブレンダ・マーティン
イーディ・ファルコ:カレン・コルッチ
ロン・エルダード:ダニー・マーティン
ウィリアム・フォーサイス:ボイル
アーンジャニュー・エリス:フェリシア・ウィリアムズ
アンソニー・マッキー:ビリー・ウィリアムズ
ラターニャ・リチャードソン・ジャクソン:マリー
クラーク・ピータース:ロングウェイ牧師
ピーター・フリードマン:ゴールド警部補
ドメニク・ランバルドッツィ:レオ・サリヴァン
アーシフ・マンドヴィ:アニル・チャタージー医師
フィリップ・ボスコ:神父
フライ・ウィリアムズ三世:ラフィク
ドリアン・ミシック:ジェイソン・カウンシル
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1996年製作 113分
公開
北米:2006年2月17日
日本:2007年1月20日
北米興行収入 $12,512,890
世界 $14,655,630
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1995年5月、ニュージャージー州、デンプシー。
手が血だらけの女性(ジュリアン・ムーア)が医療センターに現れ、何があったのかを、放心状態の彼女にアニル・チャタージー医師(アーシフ・マンドヴィ)が尋ねる。
刑事ロレンゾ・カウンシル(サミュエル・L・ジャクソン)と同僚のボイル(ウィリアム・フォーサイス)は、低所得者の黒人が住む”アームストロング団地”を見回っていた。
団地の住人であるフェリシア・ウィリアムズ(アーンジャニュー・エリス)から声をかけられたロレンゾは、自分に暴力をふるう息子のビリー(アンソニー・マッキー)と話をしてほしいと言われて、それを約束する。 ヤク中のラフィク(フライ・ウィリアムズ三世)にギャノン市警の逮捕状を見せたロレンゾは、ヤクを止めるよう忠告する。 そこにギャノン市警の刑事レオ・サリヴァン(ドメニク・ランバルドッツィ)が現れたためにラフィクは姿を消す。 ラフィクのことは引き継ぐとレオに伝えたロレンゾとボイルは、別の件で来たと言われる。 カージャック被害の連絡を受けたロレンゾは、その場をボイルに任せて医療センターに向かう。 ロレンゾは、両手を血まみれにして現れたという、被害者のブレンダ・マーティン(ジュリアン・ムーア)から事情を聞く。 車で襲われて放り出され、その際に地面に散らばっていたガラスで手を切ったと言うブレンダは、兄がギャノン市警の刑事ダニー・マーティン(ロン・エルダード)だと伝える。 夜中にアームストロング団地に行った理由を訊かれたブレンダは、団地の3号棟の子供クラブで働いていたために、メガネを忘れたと思い戻ったと伝える。 それが勘違いだと分かり、車で戻る途中に起きた事件だとブレンダから知らされたロレンゾは、何か隠していないかと伝えて、犯人が知人でなないか確認する。 アームストロング団地のことは熟知し、住人を全員知っているとブレンダに伝えたロレンゾは、誰に襲われたのかを問う。 盗まれた車にブレンダの4歳の息子コーディが乗っていたと言われたロレンゾは、緊急事態だと考えて署に連絡を入れる。 喘息のロレンゾは興奮したために吸引器を使うが、それが空だったためにチャタージー医師からアドレナリンを打ってもらう。 ブレンダの兄ダニーが現れ、ロレンゾから事情を聞いた彼は、管轄外ではあるが、コーディの写真を持って犯行現場に向かう。 現場にいたボイルに、被害者の兄がギャノン市警のダニーだと伝えたロレンゾは、既に現れたことを知らされる。 様子のおかしいブレンダを連れて現場に向かうロレンゾの車を、何者かが尾行する。 普段は住民の要望にも非協力的な警察が犯行現場を封鎖したため、付近は騒然となり、ロングウェイ牧師(クラーク・ピータース)は警官に抗議する。 現場に着いたロレンゾは、団地の住民を疑うダニーから、徹底的に捜査するようにと言われる。 その場で揉め事を起こしたロレンゾは、住人の情報を知らせないことなどをゴールド警部補(ピーター・フリードマン)から非難され、担当を外されそうになる。 ロレンゾは、警官に抗議するビリーを落ち着かせるようフェリシアに指示する。 ブレンダを知っているフェリシアに、ロレンゾは、ブレンダのアパートで話をするので待っていると伝える。 その場を離れたロレンゾの車は尾行される。 ブレンダのアパートで、ロレンゾは、通りに停車する不審な車に気づく。 現れたフェリシアに犯人の似顔を描くことを頼んだロレンゾは、ブレンダは団地の住民に好かれているため、襲う者などいないと言われる。 フェリシアを送ってきたビリーに話しかけたロレンゾは、酔いを醒ませと言って車のキーを取る。 車を出したロレンゾは、尾行してきた、行方不明の子供達を捜索しているボランティア団体”ケントの友”のカレン・コルッチ(イーディ・ファルコ)に話しかけ、ブレンダの同意があれば協力すると言われる。 それを断ったロレンゾは、気が変わったら連絡するようにと言われて、カレンから名刺を渡される。 翌日、服役中の息子ジェイソン・カウンシル(ドリアン・ミシック)に面会したロレンゾは、その後、団地に向かい、ブレンダの話が事実なのかを疑うゴールドから、厳しく尋問するよう指示される。 ブレンダの狂言だとは思えないロレンゾだったが、犯人が黒人だと言う彼女が、自分を信頼していることを疑問に思うとボイルに話す。 自分に担当を譲れとボイルから言われたロレンゾは、早く解決しないと暴動が起きると忠告される。 何も話さないためにダニーに責められたブレンダを連れて現場に向かったロレンゾは、彼女から情報を聞き出そうとする。 現場の公園が見える部屋でブレンダと話をしたロレンゾは、子供時代から皆に無視され、学校を中退してヤク中になり、実家に転がり込んでも厄介者扱いされたと言われる。 子供が生まれた瞬間、自信が持てたと言うブレンダは、どんなことがあってもコーディは守るとロレンゾに伝える。 最悪の結果になると思っているために不安なブレンダに、たとえそうなっても神の意志だと伝えたロレンゾは、コーディと犯人は必ず捜し出すことを約束する。 一刻も早くコーディを捜し出す必要があると言うロレンゾは、暴動が起きる寸前の状況をブレンダに理解させて情報を聞き出そうとする。 心の整理がつかないブレンダは、勤め先の子供達の元に向かう。 子供達に会ったブレンダは笑顔を見せ、昨日コーディは、病気で来なかったと保育士から言われたロレンゾは、ブレンダからコーディの写真を見せられる。 その場を離れたロレンゾとブレンダは、連れ去ったコーディを解放するよう犯人に呼び掛ける、ダニーのテレビ影像を確認する。 同じ頃、レオは、逮捕令状を見て逃げようとしたラフィクを逮捕する。 ブレンダを問い詰めれば事実が分かるとロングウェイ牧師から言われたロレンゾは、自分のやり方で捜査すると伝える。 ラフィクが連行されるためロレンゾは、ブレンダをフェリシアに任せてギャノン署に向かう。 子供の親から、自分の子供には近づかないようにと警告されたブレンダは戸惑う。 麻薬所持で逮捕したラフィクの件をレオに問い詰めたロレンゾだったが、そこに現れたダニーが、似顔絵でラフィクを誘拐犯だと決めつけて痛めつける。 同僚達に制止されたダニーに、捜査の邪魔をするなと警告したロレンゾは、ブレンダが嘘をついていることを伝える。 その場にいたラフィクの家族から裏切り者呼ばわりされたロレンゾは、ボイルから、捜査はFBIが引き継ぐと言われる。 ブレンダを疑うボイルに、その考えは正しくないが、彼女は何かを隠しているので、それを突きとめるために、あと一日ほしいと言って彼を納得させる。 ”ケントの友”のカレンに会い、運営内容を聞いたロレンゾは、母親が犯人だった事件の話をする彼女に、今回はそうとは限らないと伝える。 自分のやり方でいくと言うロレンゾはカレンに協力を求め、指揮官は自分だと伝えて、”フリーダムランド”の捜索をする考えを話す。 ブレンダに会ったカレンは、コーディ捜索の許可を得て事件の話を聞く。 ブレンダが何も話そうとしないため、カレンは警察の報告書を参考にしようとする。 捜索する場所をブレンダに伝えたカレンは、1950年代に閉鎖された、親と住めない子供達が収容されていた養護施設跡地”フリーダムランド”を調べることを伝えて、ブレンダに了承してもらう。 翌日、カレンらは多数のボランティアを動員し、フリーダムランドで徹底的な捜索を始める。 その規模の大きさに驚いたロレンゾは、現場に向かおうとしないブレンダを説得して敷地内に入る。 カレンが被害者の立場になれる理由を参加者のマリー(ラターニャ・リチャードソン・ジャクソン)に尋ねたロレンゾは、実は、カレンの息子”ケント”が10年前に行方不明になり、彼女が未だに捜索しているからだと知る。 犯人は分かっているが、証拠がないために何もできないということだった。 ロレンゾらと共に廃墟と化した施設内も調べたカレンは、ブレンダに、息子の失踪と犯人のことなどを話し、決して諦めずに捜し続けることを伝える。 息子が死んだのか犯人に確かめたいと言うカレンは、それを知るだけで闇から抜け出せて、死んでいるのならきちんと埋葬してあげたいとブレンダに話す。 動揺するブレンダは、コーディが別の場所にいるとロレンゾとカレンに話す。 ロレンゾから、コーディは死んだのかと訊かれたブレンダは、二日前に咳止めを飲んで死亡した息子の遺体を捨てたことを伝える。 自分が外出中だったため、コーディは独りだったとブレンダは話す。 コーディを埋めた場所に向かったブレンダは動揺し、土が新しい個所をカレンが見つけてロレンゾに知らせる。 そこには石が並べられていたのだが、ブレンダが運べるような石ではないため、ロレンゾは、それを運んだ者が誰かを聞き出そうとする。 別の場所で話したいと言うブレンダと共に、ロレンゾはその場を離れる。 ロングウェイに扇動された団地の住民は、自分達の中に犯人がいると決めつける警察に抗議する。 取調室にブレンダを連れて行ったロレンゾは、ゴールドから、団地が暴動寸前であるため彼女を逮捕して殺人課に任せるようにと言われる。 ロレンゾは、人間以下の扱いを受けている団地の住人の生活を尊重するようにとゴールドに伝える。 フェリシアの息子ビリーに、コーディを埋めるのを手伝ってもらったと言うブレンダの話にロレンゾは驚き、それを部屋の外でダニーが聞いてしまう。 常に人を避けてきたブレンダは、コーディと共に頑張ってきたのだが、二人だけでは無理だと思ったとロレンゾに話す。 ビリーはコーディの死に関係していないと言うブレンダは、自分と同じ孤独を感じている彼と愛し合うようになったことをロレンゾに伝える。 ブレンダはビリーとの時間を優先するようになり、咳止めシロップを飲むとコーディが静かに眠ったために安心するようになった。 事件の日、ビリーから話があると言われたブレンダは、別れ話だと思い、今後はコーディと過ごせるかと思うとある意味ホッとするが、咳止めを飲んでも息子が眠らないために苛立つ。 ”言ったら後悔するぞ”と大人の男のような言葉で言われたブレンダは、思わず部屋を飛び出してしまい、ビリーに会い、別れ話だったために安心してアパートに戻った。 姿が見えないコーディを捜し眠っていた彼を抱き抱えるが、咳止めの空の瓶に気づいたブレンダは、”行ったら後悔する”という言葉の意味を理解する。 コーディは死んでいたと言われたロレンゾは、動揺するブレンダに事故だと伝える。 逮捕してほしいと言うブレンダに、ビリーも捜査妨害と共謀罪で逮捕されると伝えたロレンゾは、全ての話を聞く。 呼び出したビリーが指定した場所にコーディを埋めて、その上に石を並べて墓地のようにしたと話すブレンダは、翌日の夜、気づいたらその場所にいたとロレンゾに伝える。 その時に自分で手を傷つけたと言うブレンダは、その後、アームストロング団地を抜けて医療センターに向かったのだが記憶がないと話す。 団地のことを口すれば事件はうやむやになり、自分も傷つかず普通の生活に戻れると思ったと話すブレンダに、ロレンゾは、とりあえず殺人容疑で逮捕することを伝える。 叫び声をあげながら取り乱したたブレンダは、拘束される。 逮捕連行されたビリーは、自分がしたことが罪なのかをロレンゾに問う。 署を出たロレンゾは、抗議する住民と共にその場にいたフェリシアとは言葉を交わさずに立ち去る。 街は騒然となり、現場に向かったロレンゾとボイルは住民を説得する。 警官隊に加わっていたレオに手を引くようにと伝えたロレンゾは、納得させる。 しかし、警官に徴発されたラフィクが、ロレンゾの制止も聞かずに襲い掛かる。 団地住民と警官隊は衝突し、ロレンゾも殴られて気を失う。 その後ブレンダは起訴され、容疑を認めた彼女は収監される。 ブレンダに面会したロレンゾは、自殺する可能性があるために監視付きだった彼女に、気にしないようにと伝える。 強盗罪で服役中の息子ジェイソンと面会することをブレンダに話したロレンゾは、彼が自分の銃を犯罪に使ったことを正直に伝える。 同僚達は自分の責任ではないと言ってくれるが、ロレンゾは、ジェイソンが悪人になったのは、家族を大事にしなかった自分の責任だと考えていることを伝え、息子の力になりたいとブレンダに話す。 どんなに酷い親でも、神はもう一度チャンスをくれるはずで、人間はやり直せると信じるロレンゾは、どの子も息子だと思っていると明るい人生が送れるとブレンダに伝える。 この場には他にも母親がいて、所長も旧友だと話すロレンゾに、初めて会った時から、その話し方が好きだったと話すブレンダは、自分のことを心配する彼にキスする。 監視の警官がブレンダを制止し、彼女を監房に連れて行く。 ジェイソンに会ったロレンゾは、ジョークを言われて笑うものの涙を流し、心配する息子を抱きしめる。 見せたいものがあると言うボイルと共にコーディの遺体発見現場に向かったロレンゾは、その場にいたフェリシアから声をかけられる。 ビリーとブレンダのことは自分のせいかもしれないと言うフェリシアは、息子がコーディの死に関わったのかを尋ね、それはないとロレンゾは答える。 ロレンゾは、安堵するフェリシアを抱きしめる。 カレンと共に、その場に置かれたコーディに捧げられたものを見つめるロレンゾは、一つのメッセージを読む。 悲劇は無駄ではなかった・・・と書かれたメッセージを読んだロレンゾは、カレンを見つめる。 来てよかったとボイルに伝えたロレンゾは、彼に感謝してその場を去る。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
1995年5月。
ニュージャージー州、デンプシー。
管轄の低所得者の黒人が住むアームストロング団地を見回っていたロレンゾ・カウンシル刑事と同僚のボイルは、カージャック被害の連絡を受けて医療センターに向かう。
ロレンゾは、両手を血まみれにして現れたという被害者のブレンダから、詳しい事情を聞き始める。
ブレンダは、団地の子供クラブで働いていたのだが、盗まれた車には、4歳の息子が乗っていたというのだ。
その後、自分を監視するような不審車に近づいたロレンゾは、行方不明の子供達を捜索するボランティア団体”ケントの友”のカレンから、協力すると言われる。
その後ロレンゾは、ブレンダを連れて現場に向かうが、彼女が真実を語っていないことに気づく・・・。
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誘拐事件に絡む、貧困者に対する偏見や差別、肌の色を越え、虐げられた同じような境遇の生活を送ってきた男女の愛が、やがて大事件を引き起こしてしまう恐ろしさや切なさを、「アメリカン・スウィートハート」(2001)のジョー・ロスが、アメリカの大きな社会問題として赤裸々に描いている作品。
商業ベースには乗れなかった作品で、批評家、観客の評価もそれほどよくなかったが、主演のサミュエル・L・ジャクソンとジュリアン・ムーアの熱演は見応えある。
舞台となる団地の全ての住民を知るという刑事のサミュエル・L・ジャクソンは、、その場で被害に遭ったという白人女性の立場にもなり、彼女と住民の板挟みの中で、両者と公平に接しながら捜査を進める、頼もしさと共に人情味を感じさせる人物を熱演している。
疎外されて育った身の上がもの悲しいは、半狂乱状態にもなる母親役を、実力派らしく見事に演じている。
子供を誘拐され10年もの間、捜索を続けるボランティア団体のリーダー、イーディ・ファルコ、妹と甥が巻き込まれた事件解決に管轄外から手を出す刑事ロン・エルダード、主人公の同僚である冷静な刑事役のウィリアム・フォーサイス、団地の住民でブレンダ(ジュリアン・ムーア)の知人のアーンジャニュー・エリス、その息子アンソニー・マッキー、そしてボランティア団体の一員で、サミュエル・L・ジャクソン夫人ラターニャ・リチャードソン・ジャクソン、団地の住人の立場になり警察に抗議する牧師のクラーク・ピータース、主人公の上司である警部補のピーター・フリードマン、管轄外の刑事レオ・サリヴァン、医師のアーシフ・マンドヴィ、ボタンティア活動に参加する神父フィリップ・ボスコ、ヤク中の団地の住人フライ・ウィリアムズ三世、主人公の息子ドリアン・ミシックなどが共演している。