1818年に発表された、メアリー・シェリーの小説”フランケンシュタイン”に登場する主人公を基に製作された”ハマー・フィルム・プロダクション”による”フランケンシュタイン”シリーズの第6作である最終作。 フランケンシュタイン男爵による人造人間の創造を描く、監督テレンス・フィッシャー、主演ピーター・カッシング、シェーン・ブライアント、マデリン・スミス、ジョン・ストラットン、デヴィッド・プラウズ、バーナード・リー他共演のホラー。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:テレンス・フィッシャー
製作:ロイ・スケッグス
原作:メアリー・シェリー”フランケンシュタイン”(キャラクター)
脚本:ジョン・エルダー
撮影:ブライアン・プロビン
編集:ジェームズ・ニーズ
音楽:ジェームズ・バーナード
出演
ヴィクター・フランケンシュタイン男爵/カール・ヴィクター医師:ピーター・カッシング
サイモン・ヘルダー医師:シェーン・ブライアント
サラ”エンジェル”クラウス:マデリン・スミス
アドルフ・クラウス:ジョン・ストラットン
クリーチャー/シュナイダー:デヴィッド・プラウズ
タルムート:バーナード・リー
精神病患者:マイケル・ワード
精神病患者:エルシー・ワグスタッフ
アーンスト:フィリップ・ヴォス
ハンス:クリストファー・カニンガム
ダレンデル教授:チャールズ・ロイド・パック
死体泥棒:パトリック・トラウトン
巡査部長:ノーマン・ミッチェル
イギリス 映画
配給
AVCO Embassy Pictures(イギリス)
パラマウント・ピクチャーズ(北米)
1974年製作 99分
公開
イギリス:1974年5月2日
北米:1974年6月12日
日本:未公開
製作費 £137,200
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
墓地の物音に気づいた巡査部長(ノーマン・ミッチェル)は、死体泥棒(パトリック・トラウトン)を見つけるものの殴られ、逃げられてしまう。
死体を外科医のサイモン・ヘルダー(シェーン・ブライアント)の元に運んだ死体泥棒は、金を受け取りその場を去る。
酒場に向かった死体泥棒は、現れた巡査部長に話しておきたいことがあると伝える。
サイモンは、ヴィクター・フランケンシュタイン男爵(ピーター・カッシング)の論文集を見ながら、死体の眼球を摘出する。
巡査部長が来たことに気づいたサイモンは身を隠し、ドアを開けようとしない。 押し入った巡査部長は死体を確認し、摘出されて瓶に入れられた眼球を見つける。 サイモンが物陰から現れたために巡査部長は驚き、瓶を落としてしまう。 巡査部長から説明を求められたサイモンは、様々な人体のパーツで新たな人間を造り出す研究をしていることを伝える。 逮捕すると言う巡査部長は、この行為を妖術だと判断してサイモンを連行する。 裁判で有罪となったサイモンは、人のためになる医学的研究をしていただけだと訴えるものの、判事は聞き入れない。 同じような例があったと言われたサイモンは、数年前にある男爵が刑を宣告されていることを知らされる。 その男爵が誰かを尋ねたサイモンは、判事から自分には無関係だと言われたため、フランケンシュタインの名前をあげる。 フランケンシュタインの著書は全て持っていると伝えたサイモンは、異常犯罪者用の精神病院に5年間入院させるという判決を言い渡される。 その後の審議会の判断により退院を許可するか検討すると言われたサイモンは、病院に移送される。 病院の職員アーンスト(フィリップ・ヴォス)とハンス(クリストファー・カニンガム)に迎えられたサイモンは、院長のアドルフ・クラウス(ジョン・ストラットン)に会う。 入院していたはずのフランケンシュタが死亡したことを知らされたサイモンだったが、自分が囚人だと知ったクラウスに追い出される。 その後、患者達の前で消火ホースの放水で体を洗われたサイモンは怪我をしてしまう。 そこに現れたカール・ヴィクター(ピーター・カッシング)は、騒ぎを鎮める。 患者のサラ(マデリン・スミス)に、サイモンを診察室に連れて行き、体を拭いて傷の手当てをするよう指示したヴィクターは、クラウスの部屋に向かう。 女性患者に手を出していたクラウスを非難するヴィクターは、アーンストとハンスがサイモンを虐待したことを伝えて、院長の管理責任を追及する。 アーンストを責めるクラウスは、給料の1週間分と特権を没収する。 ハンスがやったと言われたクラウスは、二人とも罰すると伝えてアーンストを追い出す。 注文していた物を受け取れなかったので戻ったと言うヴィクターは、普通の衣料品でない物があったためであることをクラウスから知らされる。 いかがわしい本は予算で手に入れたと指摘されたクラウスは焦り、金を払うことをヴィクターに約束する。 適切な処置をするサラに感心したサイモンは、彼女に話しかけるものの何も答えない。 そこに現れたヴィクターは、サラのあだ名が”エンジェル”であることをサイモンに伝え、簡単な診察をする。 サラはその場を去り、ヴィクターからここに来た理由を訊かれたサイモンは、フランケンシュタインと同じで妖術使いと判断されて罰せられたと答える。 ヴィクターがフランケンシュタインであることを確認したサイモンは、著書を読んで実験を真似たがうまくいかなかったことを伝える。 男爵は死に中庭に埋葬されていることになっていると言うフランケンシュタインは、その真相を知るのはクラウスと数名の職員だけで、秘密が漏れることはないと話す。 助手になるなら献身的に務めるようにとサイモンに伝えたフランケンシュタインは、彼に医学知識があることを確認し、腕が確かなら治療は任せ、自分は個人的な研究をすると伝える。 サイモンを助手にすることをクラウスに伝え許可を求めたフランケンシュタインは、書類に署名させる。 サラを助手にして、フランケンシュタインの指示で診察を始めたサイモンは、フランケンシュタイン自身が担当するという患者の元に向かう。 鉄格子を壊して脱出し9メートル下に転落したにも拘らず、骨折しただけで生き延びた凶暴な患者の話をフランケンシュタインから聞いたサイモンは、脳は使いものにならなかったという、埋葬されたその患者の死体に興味を持つ。 フランケンシュタインは、彼の眠りを妨げるなと言って部屋を出る。 音楽を愛する患者で数学者のダレンデル教授(チャールズ・ロイド・パック)を紹介されたサイモンは、どう見ても正常にしか思えなかったが、フランケンシュタインは、彼に襲われたクラウスにその経緯を聞くようにと伝える。 穏やかな人物に見えるダレンデルだったが、興奮すると山猫のように野蛮になるため、退院は無理だろうというのがフランケンシュタインの見解だった。 彫刻家のタルムート(バーナード・リー)を診察したフランケンシュタインは、脳が委縮してしまったため、以前のようなものは彫れないことをサイモンに伝える。 タルムートから彫刻を渡されたサラは喜び、フランケンシュタインは、明日から回診をサイモンに任せることにする。 その夜、うなり声のようなものを聴いたサイモンは、遅くまで部屋で何かを続けるフランケンシュタインが気になる。 翌朝、患者が死亡して埋葬されるのを知ったサイモンは、それが自殺したタルムートであり、手首が切断されていることに気づく。 フランケンシュタインの部屋を調べたサイモンは、隠し扉から出て来たサラと共に、奥の研究室に入る。 そこにフランケンシュタインが現れ、勝手に入ったサイモンを責める。 サイモンから人造人間を造る夢は諦めてないはずだと言われたフランケンシュタインは、その通りだと答えて、檻に閉じ込めてある野獣のような男シュナイダー(デヴィッド・プラウズ)を見せる。 昨日の話では死んだと言ったはずだと尋ねたサイモンは、死ねずに苦しんだシュナイダーに、普通の人間では致死量となる鎮静剤を打って死亡を宣言し埋葬したことを知る。 その後シュナイダーを掘り起こしたフランケンシュタインは、薬が切れる前に脳の感覚中枢を切除したので痛みはないとサイモンに伝える。 独房の鉄格子は壊せたが檻は頑丈に作ってあると伝えたフランケンシュタインは、サイモンから、シュナイダーの手はタルムートのものだと言われる。 タルムートが埋葬されるのを見たと言うサイモンはシュナイダーを観察し、フランケンシュタインから意見を求められる。 一流の外科医と聞いていたが、名医とは思えない手術痕だと言われたフランケンシュタインは、頭脳は名医のままだが、火傷のため手の感覚が鈍くなったことをサイモンに伝える。 手術はサラが行ったことを伝えたフランケンシュタインは、サイモンが外科医であることを知る。 サイモンに手術をさせたフランケンシュタインは、シュナイダーの手の接合と眼球の移植を任せて、その結果に満足する。 目覚めたシュナイダーは目が見えることを確認して立ち上がり、それに気づいたフランケンシュタインは、彼に麻酔薬をかがせて再び眠らせる。 シュナイダーが自分に襲い掛かったのは、死にたがる彼を生かしておいたからだと言うフランケンシュタインは、自分を怖がっているとサイモンに伝える。 あとは天才の脳が必要だと言うフランケンシュタインは、サイモンからダレンデル教授しか該当者がいないと言われ、殺人を犯す気はないと話してその場を去る。 その後、ダレンデルがヴァイオリンの弦で首を吊って自殺し、それを知ったフランケンシュタインは、サイモンと共に教授の脳を摘出する。 フランケンシュタインがダレンデルに”不治”という診断書を見せたことを知ったサイモンは、それを非難するものの、自分には治療できなかったと言われる。 サイモンから、患者が知る必要のないことだと言われたフランケンシュタインは、それを気にすることなく、食事の後に移植手術を始める。 シュナイダーにダレンデルの脳は移植され、フランケンシュタインは、10日後に結果が分かるとサイモンに伝える。 フランケンシュタインは、成功すればこれまでの犠牲が報われると考える。 その後、目覚めた”クリーチャー”は自分の姿を見て驚き、サラがそれに気づきフランケンシュタインとサイモンに知らせる。 クリーチャーの意識がグレンデルであることを確認したフランケンシュタインは、自分達が分かる彼に、自殺した脳を保存しておいた新しい体に与えたことを伝える。 ついに人造人間を造り出すことに成功したと言って興奮するサイモンは、フランケンシュタインと共に祝杯を挙げる。 その後フランケンシュタインは、クリーチャーの脳を使う練習を始める。 混乱するクリーチャーに、天才の脳と職人の手があれば何でもできると伝えたフランケンシュタインは彼を励ます。 しかし、凶暴性が残るクリーチャーの体が脳を受け入れず拒絶していると考えるフランケンシュタインは、自分達の行いは失敗したとサイモンに語る。 やがて脳は衰えて壊れ腐ってしまい、クリーチャーは廃人となり死んでしまうと言って嘆くフランケンシュタインだったが、脳の適応に時間がかかっているとサイモンは考える。 フランケンシュタインとサラを休ませたサイモンは、クリーチャーを監視するが、目覚めた彼に襲われる。 部屋に入ってきたフランケンシュタインがクリーチャーを麻酔薬で眠らせ、檻に入れる。 クリーチャーの体が脳を乗っ取ろうとしていると考えたフランケンシュタインは、脳はダレンデルであるにも拘らず、シュナイダーが人を殺した方法と同じ行動したのが理由だとサイモンに伝える。 今のうちにダレンデルの本質を引き出せば成功に導けると言うフランケンシュタインは、クリーチャーに伴侶を与えることを考える。 それがサラだと知ったサイモンは驚き、フランケンシュタインから、心身ともに普通の女性である彼女は、ショックを受けたために言葉を失ったと言われる。 父親に犯されてショックを受けたサラに、再度、衝撃を与えれば元に戻ると考えるフランケンシュタインは、サイモンから、正気とは思えず非道だと意見される。 サラをクラウスに預けると言うサイモンは、クラウスが彼女の父親だと知らされる。 そのためにダレンデルがクラウスに襲い掛かったのであり、秘密を知る自分は何でも許されると、フランケンシュタインはサイモンに伝える。 ダレンデルがサラを抱くはずがないと言うサイモンだったが、フランケンシュタインは薬を使うことを考えていた。 グレンデルとしてのクリーチャーに話しかけたサイモンは、食事を欲しがる彼に薬を混ぜて与える。 苦しむクリーチャーを殺そうとしたサイモンは抵抗されて腕を掴まれれるが、サラが”放して”と言葉を発する。 檻から逃れたサイモンはクリーチャーを研究室に閉じ込め、サラが話せることを確認してその場を去る。 研究室に戻ったフランケンシュタインは、クリーチャーに襲われる。 その後、アーンストとハンスは、クリーチャーがダレンデルの墓を掘り起こしていることに気づく。 女と共に戻ったクラウスはそれを知らされ、アーンストとハンスにクリーチャーを殺すよう命じて武器庫の鍵を渡す。 窓から院長室に押し入ったクリーチャーは、”エンジェル”に乱暴したと言いながらクラウスに襲い掛かり殺す。 混乱する患者達の前に現れたクリーチャーは、アーンストとハンスに銃撃される。 サラに声をかけた瀕死のクリーチャーは、患者達に襲われる。 傷を負いながら騒ぎを鎮めたフランケンシュタインは、クリーチャーが死んでいることを確認し、アーンストとハンスにその場を掃除させる。 役立たずだったと言ってクリーチャーの死も気にしないフランケンシュタインは、再び実験をすることをサイモンに伝えて、新たな人材を探す準備を始める。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ヴィクター・フランケンシュタイン男爵を尊敬し、自ら人造人間の創造を試みる若い外科医サイモンは逮捕されて裁判にかけられ、有罪となり精神病院に送られる。
病院の医師カール・ヴィクターが、死んだはずのフランケンシュタインであることに気づいたサイモンは、彼が、密かに人造人間創造の実験を続けていることを知る。
言葉を失った患者のサラと共にフランケンシュタインの助手となったサイモンは、野獣のような男シュナイダーに、才能ある者の人体パーツを移植し人造人間を造り出すことになるのだが・・・。
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ピーター・カッシングとクリストファー・リーを起用し、怪奇ホラー映画を数多く製作した”ハマー・フィルム・プロダクション”による”フランケンシュタイン”シリーズの第6作である最終作。
その第2作と5作以外を監督したテレンス・フィッシャーの繊細な演出により、そのクオリティーは高く評価され、怪奇映画ファンならずとも十分に楽しめる作品に仕上がっている。
1980年に亡くなるテレンス・フィッシャーにとっては、本作が遺作となった。
主演のピーター・カッシングは、何も語らずとも、その雰囲気による圧倒的存在感で画面を支配している。
そのピーター・カッシングと3年後に「スターウォーズ」(1977)で共演し、映画史上に残るキャラクター”ダース・ベイダー”を演ずることになるデヴィッド・プラウズが、フランケンシュタイン男爵により創造される人造人間を演じていることに注目したい。
デヴィッド・プラウズは、「スターウォーズ」により世界に名が知られるようになる。
フランケンシュタイン男爵を崇拝し助手となる若き外科医シェーン・ブライアント、同じく助手を務める言葉を失った患者マデリン・スミス、娘である彼女を暴行した精神病院の院長ジョン・ストラットン、人造人間と野獣のような男を演ずるデヴィッド・プラウズ、彫刻家である患者のバーナード・リー、音楽を愛する大学教授で患者のチャールズ・ロイド・パック、患者のマイケル・ワードとエルシー・ワグスタッフ、病院職員のフィリップ・ヴォスとクリストファー・カニンガム、死体泥棒のパトリック・トラウトン、巡査部長のノーマン・ミッチェルなどが共演している。