007シリーズ第12作。 1960年に発表された、イアン・フレミングの原作のシリーズの短編”For Your Eyes Only”を基に製作された作品。 東西のバランスをも崩す恐れがあるミサイル誘導装置の奪還を命ぜられたMI6諜報員ジェームズ・ボンドの活躍を描く、製作アルバート・R・ブロッコリ、監督ジョン・グレン、主演ロジャー・ムーア、ジュリアン・グローヴァー、トポル、キャロル・ブーケ、リン=ホリー・ジョンソン他共演のスパイ・アクション。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・グレン
製作:アルバート・R・ブロッコリ
原作:イアン・ フレミング”For Your Eyes Only”
脚本
リチャード・メイボーム
マイケル・G・ウィルソン
撮影:アラン・ヒューム
編集:ジョン・グローヴァー
メインタイトル・デザイン:モーリス・ビンダー
モンティ・ノーマン:ジェームズ・ボンドのテーマ
音楽:ビル・コンティ
主題歌:シーナ・イーストン”For Your Eyes Only”
出演
ジェームズ・ボンド:ロジャー・ムーア
アリストトゥル・クリスタトス:ジュリアン・グローヴァー
ミロス・コロンボ:トポル
メリナ・ハブロック:キャロル・ブーケ
ビビ・ダール:リン=ホリー・ジョンソン
リスル・フォン・シュラフ伯爵夫人;カサンドラ・ハリス
Q:デスモンド・リュウェリン
マネーペニー:ロイス・マクスウェル
エリッヒ・クリーグラー:ジョン・ワイマン
ジャコバ・ブリンク:ジル・ベネット
アナトール・ゴゴール将軍:ウォルター・ゴテル
フレデリック・グレイ国防相:ジェフリー・キーン
ジム・タナー:ジェームズ・ヴィラーズ
ルイージ・フェラーラ:ジョン・モレノ
エミール・ロック:マイケル・ゴザード
ティモシー・ハブロック卿:ジャック・ヘドリー
マーガレット・サッチャー首相:ジャネット・ブラウン
イギリス/アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1981年製作 127分
公開
北米:1981年6月28日
日本:1981年7月11日
製作費 $28,000,000
北米興行収入 $54,812,800
世界 $195,300,000
■ アカデミー賞 ■
第54回アカデミー賞
・ノミネート
歌曲賞”For Your Eyes Only”
主題歌:シーナ・イーストン
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1969年に亡くなった妻テレサの墓参りをしたイギリス諜報員ジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)は、迎えに来たヘリコプターでロンドンに向かう。
しかし、国際犯罪組織”スペクター”のブロフェルドは、そのヘリのパイロットを遠隔操作で殺害し、ボンドは後部座席に閉じ込められる。
ボンドは操縦席に乗り移り、リモコン操作を解除して状況を逆転させ、ブロフェルドを車椅子ごと捕らえ、工場の煙突に落下させる。
__________
アルバニア沖イオニア海。
漁船に偽装したイギリスの情報収集船が、機雷事故で沈没する。
それが、KGB長官アナトール・ゴゴール将軍(ウォルター・ゴテル)に知らされ、船内のATAC(自動攻撃誘導装置)を奪うためにソ連側が動き始める。
ATACの引き上げ作業をイギリス側から依頼されていた、海洋考古学者のティモシー・ハブロック卿(ジャック・ヘドリー)が、訪ねて来た娘のメリナ(キャロル・ブーケ)の目の前で、妻と共にキューバ人の殺し屋に殺される。 ロンドン。 ボンドは、ATACが敵方に渡るのを阻止する任務を命ぜられ、ハブロックを殺した犯人を追い雇い主を捜す。 スペインに向かったボンドは、犯人の屋敷で捕らえられてしまう。 しかし、犯人は何者かに殺され、隙を見てボンドはその場から逃れ、途中メリナに助けられる。 ボンドのロータス・エスプリは対敵防御装置で爆発してしまい、2人はメリナの車(シトロエン2CV)で逃亡する。 町を通り抜けて林道を下った2人は、敵の追跡をかわす。 犯人を殺したのがメリナだと知ったボンドは、彼女と別れてその件を本部に連絡する。 犯人は重要な証人と成り得たため、グレイ国防大臣は、作戦失敗を首相に報告しようとする。 しかしボンドは、犯人に金を渡そうとしていた男を見ていたために、Q(デスモンド・リュウェリン)の元に向かう。 立体人相グラフを使ったボンドは、その男がブリュッセルの殺し屋エミール・ロック(マイケル・ゴザード)だと確認する。 それを本部のタナーに報告したボンドは、Qから新しいロータス・エスプリを支給され、イタリアのコルティーナ・ダンペッツォに向かう。 現地で連絡員ルイージ・フェラーラ(ジョン・モレノ)と接触したボンドは、ギリシア人の実業家であるアリストトゥル・クリスタトス(ジュリアン・グローヴァー)を紹介される。 クリスタトスは、フィギュアスケートのオリンピック優勝候補ビビ・ダール(リン=ホリー・ジョンソン)のスポンサーだった。 殺し屋ロックは、クリスタトスの宿敵であるギリシャの密輸業者のミロス・コロンボ(トポル)の右腕だということを、ボンドは知る。 既にボンドの動きを監視していたロックは、彼の命を狙う。 メリナをその場で目撃したボンドは、殺し屋に襲われた彼女を助ける。 ボンドは、自分からの電報を受けたというメリナがロックを殺そうとしていることを知り、彼女に町を出るよう指示する。 ホテルに戻ったボンドはビビに誘われるが、それを断り、彼女とゲレンデに向かう。 東ドイツのバイアスロン選手エリッヒ・クリーグラー(ジョン・ワイマン)に声をかけたビビだったが、彼女と別れた後、ボンドはクリーグラーらに襲われる。 それをかわしたボンドだったが、その後ジャンプ台に上り、ロックに追われる。 ジャンプ台から逃れたボンドはゲレンデに戻り、バイクに追われてボブスレーのコースを滑走し、クリーグラーは転倒してしまう。 ビビからクリーグラーの話を聞きだそうとしたボンドだったが、今度はホッケー選手に扮した男達に襲われ、それを撃退する。 車に戻ったボンドは、鳩のペンダントを握り締めたままでフェラーラが殺されていることに気づく。 ギリシャに向かったボンドは、メリナに会い彼女との時を過ごす。 クリスタトスと再会したボンドは、近くにいたコロンボの、鳩のマークのカフスボタンを確認する。 コロンボは、ボンドとクリスタトスの会話を録音していた。 その時、コロンボと同席していたリスル・フォン・シュラフ伯爵夫人(カサンドラ・ハリス)が、彼の無礼な態度に憤慨して席を外す。 それを見たボンドは、罠と知りながらリスルを追い彼女を車で送る。 ボンドはリスルと一夜を過ごすが、翌朝ロックが現れ、彼女はビーチで殺されてしまう。 ロックに捕らえられそうになったボンドは、鳩のマークをつけた男達に救われるが、頭を殴られてコロンボの元に連れて行かれる。 コロンボは、クリスタトスがソ連のスパイで、ロックも彼の手下だということをボンドに知らせる。 ボンドはコロンボを信用し、その夜、クリスタトスの倉庫に侵入して、潜水装置やアヘンをみつける。 クリスタトスの手下達と銃撃戦になったボンドは、ロックを追い詰めて車ごと崖下に転落させる。 ボンドは、父ハブロック卿を殺したのは、ATACを狙うクリスタトスだということをメリナに話し、航海日誌を調べる。 それを手掛かりにしたボンドとメリナは潜水艇で海底に向かい、イギリスのスパイ船を発見して船内に入る。 ATACを回収したボンドだったが、クリスタトスの手下に襲われる。 ボンドはATACを奪われてしまうが、敵の潜水装置に爆薬を仕掛け、ATACを奪い返して船外に出る。 敵は爆死し、ボンドは、酸素ボンベのパイプが破損したメリナを連れて潜水艇に戻る。 メリナは窒息寸前で助かるが、敵の潜水艇に襲われる。 それを逃れて海面に上がったボンドだったが、そこにクリスタトスらが現れ、ATACを再び奪われてしまう。 ボンドとメリナは、クリスタトスにサメの餌食にされそうになるが、彼女が海底の遺跡に置いてあった酸素ボンベを使い逃れる。 2人はメリナの船に戻り、クリスタトスの話を聞いていたハブロック卿のオウムが、彼らが”聖シリルの僧院”に行くと話す。 神父に扮したQと接触し、”聖シリルの僧院”が439もあることを知ったボンドは、コロンボの協力でクリスタトスの居場所を突き止める。 絶壁を登ったボンドは、クリスタトスの手下に突き落とされ、ロープで宙吊りになってしまう。 ボンドは何とか這い上がり敵を倒して僧院に侵入し、物資補給用のゴンドラでコロンボら引き上げる。 クリスタトスの手下達を次々と捕らえたボンドらだったが、ソ連のゴゴール将軍が、ATACを受け取るためにヘリで到着する。 クリーグラーを倒したボンドは、キューバに連れて行かれようとしていたビビを助け出す。 コロンボは、ATACをゴゴール将軍に渡そうとするクリスタトスを追い詰める。 ボンドはATACを奪い、メリナはクリスタトスを殺そうとするが、コロンボが彼を刺殺する。 ゴゴール将軍は、ボンドにATACを渡すよう要求する。 ボンドは、ATACを崖から投げ捨てて破壊してしまう。 ボンドから”これはデタントだ”と言われたゴゴール将軍は、笑ってその場を去って行く。 ビビは負傷したコロンボを介抱して、新たなスポンサーを得る。 任務完了後、ボンドは、サッチャー首相(ジャネット・ブラウン)からの祝福を無視し、メリナと共に海中に向かう。
...全てを見る(結末あり)
MI6本部に戻ったボンドは、マネーペニー(ロイス・マクスウェル)からMが休暇だと知らされ、フレデリック・グレイ国防大臣(ジェフリー・キーン)とMの参謀のジム・タナー(ジェームズ・ヴィラーズ)らの元に向かう。
*(簡略ストー リー)
アルバニア沖イオニア海。
漁船に偽装したイギリスの情報収集船が機雷事故で沈没し、それが、KGB長官ゴゴール将軍に知らされ、船内のATAC(自動攻撃誘導装置)を奪うためにソ連側が動き始める。
ATACの引き上げ作業をイギリス側から依頼されていた、海洋考古学者ハブロック卿が、娘メリナの目の前で妻と共に殺し屋に殺される。
ロンドン、MI6本部。
イギリス諜報員ジェームズ・ボンドは、休暇のMに代わり、グレイ国防大臣らからATACが敵方に渡るのを阻止する任務を命ぜられ、ハブロック卿を殺した犯人を追い、殺し屋の雇い主を捜す。
スペインに向かったボンドは、犯人の屋敷で捕らえられてしまう。
犯人は何者かに殺され、隙を見てその場を逃れたボンドは、現れたメリナに助けられる。
ボンドは、メリナが犯人を殺したことを知り、それを本部に連絡して、グレイ国防大臣は作戦失敗を首相に報告しようとする。
しかしボンドは、犯人と接触した殺し屋の情報を入手し、イタリアのコルティーナ・ダンペッツォに向かうのだが・・・。
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オープニングで登場する、ボンドの妻(テレサ)の墓石には1969年死亡という文字が刻まれ、「女王陛下の007」(1969)のストーリーが継承され、ボンドはブロフェルドを倒し妻の仇を討つ。
前作「ムーンレイカー」(1979)で、ボンドはついに宇宙にまで飛び出してしまう。
本作は、アクション映画ではあるものの、秘密兵器などに頼らない、体を張った本来のスパイ劇に仕上げてある。
ヒロインの両親への復讐を絡めた冷戦下の東西の駆け引きを、シリーズ初監督となるジョン・グレンは、見応えあるドラマとして描き切っている。
ギリシャ沖のイオニア海から、スキーリゾートのコルティーナ・ダンペッツォまで、美しいロケ地の映像も素晴らしい。
特に、シリーズには欠かせないスキーの追跡シーンの迫力とスピード感は圧巻だ。
前作には及ばなかったものの、派手さを抑えた内容にも拘らず、興行成績は全世界で2億ドルに迫る大ヒットとなった。
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製作費 $28,000,000
北米興行収入 $54,812,800
世界 $195,300,000
第54回アカデミー賞では歌曲賞にノミネートされた。
小柄ながら歌唱力があるシーナ・イーストンが、主題歌”For Your Eyes Only”を授賞式で熱唱したパフォーマンスが印象的だった。
主題曲を歌う歌手がオープニングで登場するのは、これが唯一の作品。
また、音楽担当がビル・コンティだというところも注目だ。
いつもながらユーモアをまじえた演技のロジャー・ムーアに対し、知的で上品であり、ボンドガールにしてはやや質素なキャロル・ブーケの組み合わせも興味深く、作品に落ち着きを与えるのに彼女が一役買っている。
彼女は、15歳でソルボンヌ大学の(現パリ大学)哲学科に入学した才女でもある。
M役のバーナード・リーが撮影中に亡くなったために、敬意を表して、本作にMは登場しない。
一応ボンドガールと言われているリン=ホリー・ジョンソンは、当時の人気で出演しているものの、今見ると、なんとなく浮いているような感じもする。
ギリシャの密輸業者として後半で重要な役を演じ、豪快で人間味のあるボンドの協力者を演じているトポル、対するソ連に加担する実業家ジュリアン・グローヴァー、当時のピアース・ブロスナン夫人である、殺される伯爵夫人カサンドラ・ハリス、Qのデスモンド・リュウェリン、マネーペニーのロイス・マクスウェル、殺し屋のジョン・ワイマン、マイケル・ゴザード、KGB長官のウォルター・ゴテル、国防相ジェフリー・キーン、Mの参謀役ジェームズ・ヴィラーズ、連絡員のジョン・モレノ、海底探査を依頼されるメリナ(キャロル・ブーケ)の父親ジャック・ヘドリー、そして、サッチャー首相役のジャネット・ブラウンなどが共演している。