第二次世界大戦前夜のヨーロッパを舞台に、アメリカの海外特派員が巻き込まれる殺人事件を描く、製作ウォルター・ウェンジャー、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演ジョエル・マクリー、ラレイン・デイ、ジョージ・サンダース、ハーバート・マーシャル、アルバート・バッサーマン他共演のサスペンス映画の傑作。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:ウォルター・ウェンジャー
脚本
チャールズ・ベネット
ジョーン・ハリソン
撮影:ルドルフ・マテ
編集:ドロシー・スペンサー
美術・装置:アケグザンダー・ゴリツェン
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演
ジョエル・マクリー:ジョニー・ジョーンズ/ハントリー・ハバストック
ラレイン・デイ:キャロル・フィッシャー
ジョージ・サンダース:スコット・フォリオット
ハーバート・マーシャル:スティーブン・フィッシャー
アルバート・バッサーマン:ヴァン・メア
ハリー・ダベンポート:Mr.パワーズ
ロバート・ベンチリー:ステビンス
エドマンド・グェン:ロウリー
エドゥアルド・チアネッリ:クルーグ
イアン・ウォルフ:スタイルズ
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1940年製作 119分
公開
北米:1940年8月16日
日本:1976年9月25日
■ アカデミー賞 ■
第13回アカデミー賞
・ノミネート
作品
助演男優(アルバート・バッサーマン)
オリジナル脚本・撮影(白黒)
美術(白黒)・特殊効果賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
第二次世界大戦開戦前夜。
ニューヨーク・モーニング・グローブ紙の社主パワーズ(ハリー・ダベンポート)は、報告書のような記事しか送ってこない記者に腹を立てる。
骨のある男だというジョニー・ジョーンズ(ジョエル・マクリー)を推薦されたパワーズは、彼を、政情不安のヨーロッパに特派員としてを派遣することを決める。
ヨーロッパ情勢の鍵を握る人物”ヴァン・メア”との接触を命ぜられたジョーンズは、平和運動家の大者である、世界平和党の党首スティーブン・フィッシャー(ハーバート・マーシャル)を紹介される。
ジョーンズは、特派員名”ハントリー・ハバストック ”という名前をパワーズに付けられ、家族に見送られながら航路イギリスに向かう。
ロンドンに着いたジョーンズは、現地の記者ステビンス(ロバート・ベンチリー)に出迎えられる。 フィッシャーが主催する、昼食会に向ったジョーンズは、目的の人物、オランダ人の元政治家で反戦活動家のヴァン・メア(アルバート・バッサーマン)に偶然出会い、一緒に会場に行くことになる。 ジョーンズは、早速、ヴァン・メアに世の中の情勢についての質問を浴びせるが、彼は話しをはぐらかす。 会場のホテルに着いた二人だったが、昼食会に出席するはずのヴァン・メアは姿を消してしまう。 その後ジョーンズは、会場で魅力的な女性(ラレイン・デイ)と出会い、昼食会はさて置き彼女のことばかりが気になる。 ジョーンズは、その女性が、フィッシャーの娘キャロルだと知り驚いてしまう。 数日後、雨が降る中、アムステルダムで開かれた平和会議の会場前で、ジョーンズは、現れたヴァン・メアに声をかける。 ヴァン・メアは怪訝な顔をするのだが、次の瞬間、彼は、カメラマンを装った男に銃撃されてしまう。 逃走した犯人を追ったジョーンズは、通りがかりの車に便乗する。 その車には、新聞記者のスコット・フォリオット(ジョージ・サンダース)とキャロルが乗っていた。 その後、追跡の末に、三人は風車のある田園地帯にたどり着く。 ジョーンズは、一つの風車が不審な動きをしていることに気づき、二人と別れてそこを調べ、犯人が乗って逃げた車を見つける。 風車小屋内には、数人の男と、銃撃されたはずのヴァン・メアが監禁されていた。 ヴァン・メアは何者かに誘拐されていて、会議場前で銃撃されたのは替え玉だったのだ。 薬を飲まされていたヴァン・メアは、ジョーンズにメモ書きを渡し、彼は小屋から逃げ出して警官を連れて戻る。 しかし、既に風車小屋の痕跡は全て消され、ジョーンズは、キャロル達の信用も失う。 その後、ホテルに戻ったジョーンズを、警察官を装った二人の男が訪ねて来る。 危険を感じたジョーンズは、窓からキャロルの部屋に行き、自分の考えを彼女に伝えて理解を得る。 そして、その場を逃れ、船でロンドンに向かったジョーンズとキャロルは、互いに愛し合っていることを確認して結婚を約束する。 ところが、ジョーンズがキャロルを家まで送ると、風車小屋にいた男クルーグ(エドゥアルド・チアネッリ)が、フィッシャーと昼食中だった。 クルーグは席を立ち、ジョーンズは彼が風車小屋にいたことをフィッシャーとキャロルに伝える。 しかし、フィッシャーはクルーグらと手を組んでいて、彼らはジョーンズを始末することを考える。 フィッシャーは、真相を知り過ぎて危険だとという理由で、ジョーンズに、私立探偵ロウリー(エドマンド・グェン)を護衛につける。 ジョーンズを送り出したキャロルが、彼を愛していることを知ったフィッシャーは、娘を悲しませる事態になり、一瞬、後悔する。 ロウリーは、ジョーンズを殺すために手を下し始め、追手をまく目的で、”ウエストミンスター大聖堂”の大時計塔、”聖エドワードタワー”に登る。 塔の上で人がいなくなったことを確認したロウリーは、ジョーンズを突き落とそうとするが、誤って自ら墜落死してしまう。 その後ジョーンズは、フィッシャーが平和主義者を装う、ヴァン・メア誘拐の黒幕であることを知る。 そしてジョーンズは、強かなフォリオットの考えで、仕方なくキャロルを利用しながら、ヴァン・メアを救出しようとする。 ジョーンズはキャロルとケンブリッジに向かい、 フォリオットは彼女を誘拐したことにして、それをフィッシャーに伝える。 フォリオットはフィッシャーを脅し、ヴァン・メアの居場所を知ろうとするが、そこにキャロルが姿を現す。 驚いたフォリオットだったが、フィッシャーからヴァン・メアの居場所を書いたメモを受け取り、その場を立ち去る。 しかし、そのメモは、キャロルの帰宅が車の音で分かったという、フィッシャーの走り書きだった。 キャロルは、ジョーンズが、ホテルで別の部屋をとったために、気分を害して戻ってきたのだった。 そして、翌日の開戦を知っていたフィッシャーは、アメリカに帰ることをキャロルに伝える。 フィッシャーは、キャロルがジョーンズを愛していること知り、彼女を今回の件に巻き込んだことで心を痛める。 外出したフィッシャーを追おうとしたフォリオットは、現れるはずのジョーンズに伝えるよう、ステビンスに、その行き場所を言い残す。 クルーグらと、監禁しているヴァン・メアの元に向かったフィッシャーは、彼から重要な情報を聞き出そうとする。 そこに、後を追ってきたフォリオットが、銃を突きつけられて連れてこられる。 ヴァン・メアは、友人フィッシャーが救出に来てくれたことを知り安心するが、彼が裏切り者だと知り抵抗する。 しかし、拷問されたヴァン・メアは、ついに、開戦後に実行される行動についてを話し始めてしまう。 そこに、ジョーンズとステビンスが現れ、部屋で暴れ始めたフォリオットに気づく。 その後、フィッシャーらは姿を消し、ヴァン・メアは無事にジョーンズらに救出される。 フィッシャーを、逮捕できないことを知ったフォリオットは、彼が帰国する飛行機に乗るため、ジョーンズと空港に向かう。 そして、ナチス・ドイツに対してイギリスは宣戦布告して、ヨーロッパは戦火の地となる。 フィッシャーは、帰国する飛行機にフォリオットが乗っていることを知り、彼宛ての電報を読んでしまう。 ヴァン・メアが意識を回復し、供述を始めることを知ったフィッシャーは、アメリカ到着時に自分が逮捕されることを察知する。 覚悟を決めたフィッシャーは、キャロルに自分がドイツ人であり、祖国のために行動したことを告白する。 そこにジョーンズが現れ、自分を責めるキャロルの誤解を解こうとする。 その時、ドイツ軍艦の攻撃で飛行機は海上に墜落して、機内から脱出したジョーンズらは、浮かんでいる主翼に乗り移る。 しかし、それに乗っている人数が多いため、主翼が沈みそうになってしまう。 それを知ったフィッシャーは海に身を投げ、ジョーンズとフォリオットが彼を助けようとするものの、彼の姿は消えてしまう。 ジョーンズらはアメリカ船に救助されるが、事件の真相を聞いた船長は、それを信じようとしなかった。 自らの命で生存者を救ったフィッシャーを、ジョーンズは裏切り者にしたくないことをフォリオットに伝える。 それを知ったキャロルはジョーンズに感謝するが、記者としての記事を送るよう彼を説得する。 その後、ジョーンズは、なんとか”ニューヨーク・モーニング・グローブ”のパワーズに連絡を取り、彼の機転で新聞社は特ダネをものにする。 そして、ロンドンに戻ったジョーンズとキャロルは、空襲が迫る中、ラジオ局でマイクの前に立つ。 ジョーンズは、戦火に対するともし火を消さぬよう、アメリカの人々に呼びかける。
...全てを見る(結末あり)
★ヒッチコック登場場面
今回の登場は、意外にオーソドックスで容易に彼を発見できる。
上映開始後約12分、主人公のジョエル・マクリーが招待された、昼食会の会場に向かおうとする際にすれ違う、新聞を読んでいる通行人である。
*(簡略ストー リー)
緊迫したヨーロッパ情勢を取材させるために、アメリカの新聞社社主パワーズは、若い記者のジョニー・ジョーンズを海外特派員としてロンドンに派遣する。
ジョーンズは、平和運動家フィッシャーを紹介され、情勢の鍵を握る人物ヴァン・メアに接触して情報を得ようとする。
しかし、ヴァン・メアは、民衆の前で暗殺されてしまう。
その現場にいたジョーンズは、フィッシャーの娘キャロルと地元の記者フォリオットと共に犯人を追う。
その後、ジョーンズは監禁され生きているヴァン・メアを見つけ、開戦を前にして、彼が大きな陰謀に巻き込まれていることを知るのだが・・・。
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同年、アルフレッド・ヒッチコックがアメリカ進出第一作にして、いきなりアカデミー作品賞を受賞した「レベッカ」(1940)とは全く作風のノンストップ・サスペンス作品の傑作。
第二次大戦の勃発から約1年後に公開された、明らかに反ナチスのプロパガンダ映画。
手に汗握るカーチェイスや、特撮が随所に盛り込まれ、風車、大聖堂、飛行機などを効果的に使った、1940年製作当時としては、画期的な映像が楽しめる、アクション映画の先駆け的な作品でもある。
ヒッチコック作品らしく、ユーモアのセンスも抜群で、一つのシークエンスの終わりに発せられる、セリフや役者の仕草がワンポイントとなっている。
特に主人公が滞在している「HOTEL EUROPE」の、電飾看板の”EL”を主人公が壊してしまい、「HOT EUROPE」になってしまう場面などは、当時の世情を、何も語らず見事に表現したショットで、思わず拍手してしまいたいほどだ。
1940年8月16日に北米公開された作品というところが注目で、ラストの空襲下のラジオ放送は、2週間後から始まるドイツ軍による”ロンドン空襲”を前に緊迫感も大いに高まり、アメリカへの支援のメッセージで終わる、力強いラストも大いに盛り上がる。
第13回アカデミー賞では作品、助演男優(アルバート・バッサーマン)、オリジナル脚本、撮影(白黒)、美術(白黒)、特殊効果賞にノミネートされた。
ドイツと同盟国の日本では、当時公開されるはずもなく、初公開はなんと36年後の1976年だった。
当時高校生の私は、幸運にも劇場で本作を観ることができた。
オープニングで流れる、アルフレッド・ニューマンの胸躍るような軽快且つ勇ましい主題曲だけで感激してまったことを昨日のように思い出す。
また、西部劇しか知らなかったジョエル・マクリーの勇気ある活躍に圧倒されたものだ。
いかにもアメリカ人らしい、ジョエル・マクリーの大活躍は、まるで冒険活劇を見ているような痛快さがある。
飄々としてユーモラスなジョージ・サンダースや、紳士役がよく似合うハーバート・マーシャルらの、脇を固めるイギリス側俳優陣も充実している。
アカデミー助演賞にノミネートされたアルバート・バッサーマンの重厚な演技も印象に残る。
アメリカ人のラレイン・デイも、お嬢様風ではあるが、主人公を愛し、逞しく支える女性を好演している。
また、「三十四丁目の奇蹟」(1947)のサンタクロース、ヒッチコックの「ハリーの災難」(1955)の気のいい老人など、善人が最も似合いそうなエドマンド・グェンが、暗殺者として登場するのも実に興味深い。
新聞社社主のいハリー・ダベンポート、現地記者ロバート・ベンチリー、陰謀に加担する男エドゥアルド・チアネッリ、フィッシャー(ハーバート・マーシャル)の執事イアン・ウォルフなどが共演している。