歌の才能がないにも拘わらず音楽を愛し歌手になる夢を諦めなかったフローレンス・フォスター・ジェンキンスの晩年を描く、監督スティーヴン・フリアーズ、主演メリル・ストリープ、ヒュー・グラント、サイモン・ヘルバーク、レベッカ・ファーガソン他共演のドラマ。 |
・ドラマ
・レベッカ・ファーガソン / Rebecca Ferguson / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:スティーヴン・フリアーズ
製作
マイケル・クーン
トレイシー・シーウォード
脚本:ニコラス・マーティン
撮影:ダニー・コーエン
編集:ヴァレリオ・ボネッリ
衣裳デザイン:コンソラータ・ボイル
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演
フローレンス・フォスター・ジェンキンス:メリル・ストリープ
シンクレア・ベイフィールド:ヒュー・グラント
コズメ・マクムーン:サイモン・ヘルバーク
キャスリーン・ウェザーリー:レベッカ・ファーガソン
アグネス・スターク:ニナ・アリアンダ
フィニアス・スターク:スタンリー・タウンゼント
ジョン・トッテン:アラン・コーデュナー
アール・ウィルソン:クリスチャン・マッケイ
カルロ・エドワーズ:デヴィッド・ヘイグ
ハーマン医師:ジョン・セッションズ
キティ:ブリッド・ブレナン
アルトゥーロ・トスカニーニ:ジョン・カヴァノー
コール・ポーター:マーク・アーノルド
イギリス/フランス 映画
配給
20世紀FOX(イギリス)
パテ(フランス)
2016年製作 110分
公開
イギリス:2016年5月6日
フランス:2016年7月13日
北米:2016年8月12日
日本:2016年12月1日
製作費 $29,000,000
北米興行収入 $27,383,800
世界 $48,902,950
■ アカデミー賞 ■
第89回アカデミー賞
・ノミネート
主演女優(メリル・ストリープ)
衣裳デザイン賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1944年、ニューヨーク。
イギリス人であるシェイクスピア役者のシンクレア・ベイフィールド(ヒュー・グラント)は、愛する妻で富豪夫人のフローレンス・フォスター・ジェンキンス(メリル・ストリープ)のために舞台を進行する。
舞台を”成功”させた音楽をこよなく愛するフローレンスは、それを称えられ、シンクレアと共にホテルのスイートルームに戻る。
フローレンスを眠らせたシンクレアは彼女のカツラを外し、メイドのキティ(ブリッド・ブレナン)に後を任せてその場を去る。
愛人キャスリーン・ウェザーリー(レベッカ・ファーガソン)の元に向かったシンクレアは、彼女と愛し合う。 翌朝、ホテルに向かいフローレンスに朝食を運んだシンクレアは、昨夜の公演の評価が上々だったことを彼女から知らされる。 指揮者アルトゥーロ・トスカニーニ(ジョン・カヴァノー)の訪問を歓迎したフローレンスは、資金援助を求められる。 ”リリー・ポンス”の”鐘の歌”のレコードをもらい1000ドルを渡したとシンクレアに伝えたフローレンスは、その後、トスカニーニのコンサートに向かい、リリー・ポンスの歌声に感激する。 自分も”メトロポリタン・オペラ/MET”でコンサートを開きたくなったフローレンスは、伴奏のピアニストを探したいことをシンクレアに伝える。 何人もの教師を呼んだシンクレアは、フローレンスがコズメ・マクムーン(サイモン・ヘルバーク)を気に入ったために雇うことにする。 翌日、ホテルに向かったマクムーンは、METの副指揮者である歌の教師カルロ・エドワーズ(デヴィッド・ヘイグ)をフローレンスから紹介される。 早速レッスンを始めるフローレンスは、”ラクメ”の”鐘の歌”をカルロの指導で歌い始める。 その歌声に驚きながらも伴奏をするマクムーンは、カルロが今までで一番良かったと言ってフローレンスを褒める姿を見て戸惑う。 シンクレアに見送られて部屋を出たマクムーンは、エレベーターの中で思わず笑ってしまう。 フローレンスの前では、コンサートを開けば必ず成功すると言うカルロだったが、公演の際にはニューヨークにいたくないという彼の考えをシンクレアは悟る。 マクムーンから、フローレンスの歌の才能について意見され、コンサートを開くのは考え直した方がいいと言われたシンクレアは、彼女のために”準備”をするので心配はいらないと伝える。 その後、マクムーンの協力を得たシンクレアは、コンサートを成功させるために、缶詰工場の経営者であるフィニアス・スターク(スタンリー・タウンゼント)と妻アグネス(ニナ・アリアンダ)ら信奉者であるファンクラブのメンバーだけを集め始めてチケットを売る。 訪ねて来た”ニューヨーク・ポスト”のコラムニスト、アール・ウィルソン(クリスチャン・マッケイ)からチケットを求められたシンクレアは、彼を買収しようとするものの断られる。 キャスリーンのアパートに向かったシンクレアは、友人のオーガスタスからチケットを求められ、それを断るものの、キャスリーンから頼まれて仕方なく承知する。 コンサート当日、動揺するマクムーンを落ち着かせたシンクレアは、フローレンスをステージに案内して開演する。 フローレンスは気持ちよく歌うのだが、それを聴いたアグネスは笑い始めてしまい、シンクレアはフィニアスと共に会場から出てもらう。 吹き出しそうになったオーガスタスのことも気にするシンクレアだったが、フローレンスが歌い終わると同時に、オーガスタスは席を立って彼女を称える。 その後パーティーが開かれるものの、フローレンスが気分がよくないことを知ったシンクレアは、彼女を連れてホテルに戻る。 ハーマン医師(ジョン・セッションズ)の診察を受けたフローレンスは、最初の夫フランク・ジェンキンスに梅毒をうつされたことを伝える。 舞台で疲れたと思われるフローレンスを気遣うハーマンは、体力が回復するまで静養するようにと伝えて、梅毒で50年以上も生きる患者は初めてだとシンクレアに話す。 ハーマンから、静養を取らせるようにと念を押されたシンクレアは、フランクとの出会いを後悔するフローレンスを慰めて優しく語りかける。 キャスリーンのアパートに向かったシンクレアは、パーティーが開かれている中に、公演でトラブルを起こしたアグネスがいることを気にする。 その場にいたマクムーンと話したシンクレアは、キャスリーンとの関係を疑問に思う彼に、フローレンスも了解済みで、妻とは愛し合い人生を捧げていることを伝える。 友人だと言われたマクムーンは、いつも持参しているフローレンスのブリーフケースの中身を尋ねるものの、シンクレアに答えてもらえず、彼と共にパーティーを楽しむ。 翌朝、その場で眠ってしまったマクムーンはフローレンスが来たことに気づき、キャスリーンとベッドで寝ていたシンクレアを起こす。 焦るシンクレアはキャスリーンを起こし、時間稼ぎをすることをマクムーンに指示する。 部屋に入ったフローレンスは、寝室で読書をしているシンクレアにマクムーンがいる理由を尋ねる。 鍵をなくしたために泊めたと答えたシンクレアは、フローレンスから部屋が散らかっている理由も聞かれ、酔ったマクムーンが騒いだことにする。 マクムーンを叱ったフローレンスは、新聞の批評をチェックしようとするものの、そこにアグネスが現れる。 驚くマクムーンが気づかれないようにしてアグネスを部屋に連れて行き、シンクレアはフローレンスを見送る。 自分の家で隠れなくてはならないキャスリーンは、こんな生活には耐えられないとシンクレアに伝えて涙する。 キャスリーンに謝罪したシンクレアは、埋め合わせをしようとする。 メロトーン・レコーディング・スタジオ。 フローレンスは、マクムーンの伴奏で無事にレコーディングを終える。 その後、シンクレアはキャスリーンと共にゴルフ場に向かい、彼女は機嫌をよくする。 シンクレアとの出会いを訊かれたフローレンスは、彼の父はイングランドの伯爵だったものの、庶子だったために相続権がなく、アメリカに渡り俳優になったことをマクムーンに話す。 ゴルフに行ったシンクレアがいないことを寂しく思うフローレンスは、マクムーンから、彼が”妻に尽くす”と言っていたことを知らされる。 梅毒で神経が痛んだ左手を使わず、フローレンスはマクムーンと共にショパンを弾く。 ニューヨークに戻ったシンクレアは、ラジオからフローレンスの歌声が流れていることをキャスリーンから知らされホテルに向かう。 キティから、フローレンスが暴走し始めたと知らされたシンクレアは、ラジオで流れた曲を欲しがる者が殺到し、その中にコール・ポーターもいたために彼女が興奮していることを知る。 フローレンスが”カーネギー・ホール”の支配人ジョン・トッテン(アラン・コーデュナー)の元に向かったことを知ったシンクレアは、その場に向かう。 トッテンに挨拶して、客席にいたフローレンスと話したシンクレアは、10月25日にこの場で歌う予約をしたと言われる。 フローレンスから、チケット1000枚を退役軍人に贈ると言われたシンクレアは、彼らや3000人の観客に手を回すのは不可能なために戸惑いながらも、この会場で歌う姿を見たいと伝えるしかなかった。 静養するようにと言われているため、体に負担がかかると伝えたシンクレアだったが、フローレンスは、50年もの間、死と背中合わせに生きて来たので、絶対にここで歌うという考えを変えなかった。 もう十分だと考えるシンクレアだったが、フローレンスは、自分を本当に愛しているならやるべきだと言うはずだと彼に伝える。 キャスリーンと食事をしたシンクレアは、帰還兵らがフローレンスのレコードをかけて侮辱しているのを知り苛立つ。 無視するようにと言うキャスリーンから、席を立てば永遠にお別れだと警告されたシンクレアだったが、彼女の言葉を無視して帰還兵らの元に向かう。 兵士らからレコードを奪うものの追い払われたシンクレアは、キャスリーンが去ったことを知る。 翌日、マクムーンにカーネギー・ホールの件を話したシンクレアは、無理だと言われるものの、愛するフローレンスの夢をかなえてあげたいと伝えて彼を説得する。 10月25日、カーネギー・ホール。 シンクレアと共に楽屋で準備をするフローレンスは、マクムーンが姿を現さないために動揺する。 開演が遅れているトッテンは焦り、マクムーンが現れたためにフローレンスは安心する。 フィニスは、騒ぐ兵士を挑発するアグネスに呆れる。 最前列にコール・ポーターがいることを知ったフローレンスは動揺し、歌う目的を伝えたシンクレアは彼女を落ち着かせる。 マクムーンにも励まされたフローレンスは、ブリーフケースから遺書を取り出し遺産を遺すことを彼に伝えて、証人としてトッテンにサインさせる。 マクムーンが舞台に上がりピアノの演奏を始め、登場したフローレンスの歌声を聴いた兵士ら観客は驚く。 場内は騒めき、笑われたフローレンスは戸惑い声が出なくなるが、席を立ったアグネスが皆を鎮めようとする。 力の限り歌っているフローレンスに敬意を払うようにと言うアグネスは、声援を求めて”ブラボー!”と叫ぶ。 席を立ったオーガスタスに続き、ファンクラブの人々は一斉に”ブラボー!”と言って拍手する。 兵士達も含め全員から声援を送られたフローレンスは歌い始めるものの、耐えられなくなったウィルソンは会場を去る。 それに気づいたシンクレアはウィルソンを追い、これほどの独りよがりでお粗末な公演は初めてで、フローレンスをおだてて恥をかかせたことは、許しがたい行為だと言われる。 ありのままに記事を書くと言うウィルソンを買収しようとしたシンクレアだったが、無駄だった。 公演を成功させてホテルに戻ったフローレンスは、シンクレアとマクムーンに感謝して寝室に向かう。 マクムーンと祝杯を挙げたシンクレアは、彼が眠った後で出かけようとする。 起きて来たフローレンスから、一緒にいてほしいと言われたシンクレアは、彼女と共にベッドに入り愛を確かめ合う。 翌朝、マクムーンを起こしたシンクレアは、新聞スタンドに向かい、”ニューヨーク・ポスト”のウィルソンの酷評を確認して、それを買い占めてゴミ箱に捨てる。 目覚めたフローレンスは、好意的な記事をキティに読んでもらいご機嫌だった。 ”ニューヨーク・ポスト”に抗議したシンクレアは、シンクレアとマクムーンを伴い、男爵夫人と仲間とのランチに向かう。 皆と共に食事をするマクムーンは、”ニューヨーク・ポスト”を持参して席に着いた男性に気づき彼の元に向かう。 マクムーンが話をつけられないようだったために、シンクレアが男性に50ドルを渡して”ニューヨーク・ポスト”を譲ってもらう。 化粧室に向かおうとしたフローレンスは、昨夜の公演を観た男性二人から、コメディのセンスがあると言われる。 新聞の酷評は気にしないようにとも言われたフローレンスは、通りの新聞スタンドに向かい”ニューヨーク・ポスト”を買おうとする。 イギリス人が買い占めてゴミ箱に捨てたと言われたフローレンスは、それを拾ってウィルソンの記事を読む。 フローレンスを捜したシンクレアは、記事を読みホールで倒れてしまった彼女に気づいて駆け寄る。 その後、フローレンスを看病するシンクレアは、彼女から、皆が自分を嘲笑していたことを訊かれる。 自分はそうではないと伝えたシンクレアは、観客の大喝采を想いながら語るフローレンスから、酷い悪声だと非難されても歌った事実は消えないと言われる。 ”ブラボー”と言うシンクレアに見守られながら、フローレンスは息を引き取る。 フローレンス・フォスター・ジェンキンス 1868-1944年 カーネギー・ホールのアーカイブの一番人気は、今でもフローレンス・フォスター・ジェンキンスである。 フローレンスのレコードはベストセラーになった。 コズメ・マクムーンはフローレンスの協力者に徹し、地味なキャリアを送った。 ボディービルを始めたマクムーンは競技会では審査員を務め、1980年に他界した。 シンクレア・ベイフィールドはニューヨークの音楽界に貢献し、1967年に亡くなるまで質素に暮らした。
...全てを見る(結末あり)
クリスマスにクラブの会員に渡すためのレコードを録音しようと考えたフローレンスは、シンクレアの制止も聞かずにスタジオに入る。
マクムーンを訪ね、出来上がったレコードを渡したフローレンスは、汚れているサラを洗う代わりにピアノを弾いてもらう。
多くの軍人やファンクラブの人々、コール・ポーター(マーク・アーノルド)とタルラー・バンクヘッドらが会場に向かう。
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*(簡略ストー リー)
1944年、ニューヨーク。
音楽を愛する富豪夫人フローレンス・フォスター・ジェンキンスは、歌の才能がないにも拘わらず、歌手になる夢を諦めなかった。
イギリス人の俳優であるフローレンスの夫シンクレア・ベイフィールドは、信奉者達に手を回して、彼女を称える社交界のファンクラブを作っていた。
”メトロポリタン・オペラ”で歌いたいと考えたフローレンスの望みをかなえるために、シンクレアはピアノの伴奏者としてマクムーンを雇う。
フローレンスの歌声を聴いたマクムーンは驚いてしまうものの、妻を愛するシンクレアの気持ちを知って彼に協力する。
愛人キャスリーンとの二重生活をするシンクレアだったが、フローレンスへの愛は変わらなかった。
その後、録音したレコードが評判になったことに気分を良くしたフローレンスが、”カーネギー・ホール”で歌う決心をしたことを知ったシンクレアは、彼女の暴走を止めることができない・・・。
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歌唱能力に問題があるにも拘らず、音楽を愛し、最高の舞台で歌うことを夢見た富豪夫人フローレンス・フォスター・ジェンキンスの晩年を描いた作品。
夢を実現させようとする主人公フローレンス・フォスター・ジェンキンスの人間性と、献身的に尽くす夫シンクレア・ベイフィールドの妻への愛情をユーモアを交えて深く描く、スティーヴン・フリアーズの繊細な演出が見所の作品。
第89回アカデミー賞では、主演女優(メリル・ストリープ)と衣裳デザイン賞にノミネートされた。
第二次大戦末期のニューヨークを舞台にしたドラマなのだが、撮影はイギリスで行われた。
その時代の雰囲気を見事に再現した、セットや衣装の素晴らしさに注目したい。
批評家の評価は高かったものの、北米興行収入は約2700万ドル、全世界でも約4900万ドルに留まった。
個人的には、メリル・ストリープの”これ見よがし”的な演技が苦手なのだが、”才能なき歌姫”フローレンス・フォスター・ジェンキンスを熱演する彼女の演技は流石という他ない。
愛人との二重生活はしているものの、その他では主人公を決して裏切らず献身的に仕える夫シンクレア・ベイフィールドを好演するヒュー・グラント、主人公に気に入られて夫の協力者となるピアニストのコズメ・マクムーンのサイモン・ヘルバーク、シンクレアの愛人レベッカ・ファーガソン、主人公のファンクラブの一員スタンリー・タウンゼント、派手なその妻ニナ・アリアンダ、”カーネギー・ホール”の支配人アラン・コーデュナー、”ニューヨーク・ポスト”のコラムニスト、アール・ウィルソンのクリスチャン・マッケイ、主人公に歌の指導をする”メトロポリタン・オペラ”の副指揮者のデヴィッド・ヘイグ、主人公を診察する医師のジョン・セッションズ、主人公のメイド、ブリッド・ブレナン、主人公に支援を受けるアルトゥーロ・トスカニーニのジョン・カヴァノー、コール・ポーターのマーク・アーノルドなどが共演している。