硫黄島の激戦の生存者ジョン・ブラッドリーの息子ジェームズ・ブラッドリーとロン・パワーズの2000年に発表された共同著書”Flags of Our Fathers”を基に、クリント・イーストウッドとスティーブン・スピルバーグが組んで製作された作品。 激戦地硫黄島で戦った兵士達と共に摺鉢山山頂に代替の星条旗を上げたことにより国策に担ぎ出され”英雄”として祭り上げられた生存兵の人生を描くドラマ。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:クリント・イーストウッド
製作
クリント・イーストウッド
スティーブン・スピルバーグ
ロバート・ロレンツ
原作
ジェームズ・ブラッドリー
ロン・パワーズ
脚色
ポール・ハギス
ウィリアム・ブロルイズJr.
撮影:トム・スターン
美術:ヘンリー・バムステッド
衣装:デボラ・ホッパー
編集:ジョエル・コックス
音楽:クリント・イーストウッド
出演
ジョン“ドク”ブラッドリー:ライアン・フィリップ
ジョン・ブラッドリー:ジョージ・グリザード
レイニー・ギャグノン:ジェシー・ブラッドフォード
アイラ・ヘイズ:アダム・ビーチ
ラルフ”イギー”イグナトウスキー:ジェイミー・ベル
マイク・ストランク:バリー・ペッパー
デーブ・セヴェランス大尉:ニール・マクドノー
デーブ・セヴェランス:ハーヴ・プレスネル
ハンク・ハンセン:ポール・ウォーカー
キース・ビーチ:ジョン・ベンジャミン・ヒッキー
バド・ガーバー:ジョン・スラッテリー
チャンドラー・ジョンソン大佐:ロバート・パトリック
ポーリーン・ハーノイス:メラニー・リンスキー
ジェームズ・ブラッドリー:トム・マッカーシー
アレクサンダー・アーチャー・ヴァンデグリフト将軍:クリス・バウアー
ホーランド・スミス将軍:ゴードン・クラップ
ジョー・ローゼンタール:ネッド・エイゼンバーグ
上院議員:デヴィッド・ラッシュ
トルーマン大統領:デヴィッド・パトリック・ケリー
ベル・ブロック:ジュディス・アイヴィ
ランズフォード:スコット・イーストウッド
ウォルター・ガスト:スターク・サンズ
フランクリン・スースリー:ジョセフ・クロス
ハーロン・ブロック:ベンジャミン・ウォーカー
マデリン・イーヴリー:マイラ・ターリー
チャールズ・W・リンドバーグ:アレッサンドロ・マストロブーノ
アメリカ 映画
配給
ドリームワークス
ワーナー・ブラザーズ
2006年製作 132分
公開
北米:2006年10月20日
日本:2006年10月28日
製作費 $90,000,000
北米興行収入 $33,574,330
世界 $65,900,250
■ アカデミー賞 ■
第79回アカデミー賞
・ノミネート
録音賞・音響編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
葬儀会社を営むジョン・ブラッドリー(ジョージ・グリザード)が、ある日、”あいつはどこだ?”と言いながら発作を起し病院に運ばれる。
ブラッドリーの息子ジェームズ(トム・マッカーシー)は、病院に駆けつける。
戦争のことを語らなかった父親が、ある人物のこと口にしたことをきっかけに、ジェームズは、当時のことを調べ始める。
第二次大戦に従軍した、ブラッドリーの上官のデーブ・セヴェランス(ハーヴ・プレスネル)を訪ねたジェームズは、彼から戦争の実態を聞かされる。
そして、どん底の経済の下で、戦争に疲弊した国民の沈滞した状況を、ある一枚の写真が一変させたことを知る。 太平洋戦争末期、1945年2月19日。 しかし、親友のラルフ”イギー”イグナトウスキー(ジェイミー・ベル)の姿が見えなくなり、ブラッドリーはイギーを捜そうとする。 1944年12月、ハワイ、キャンプ・タワラ。 チャンドラー・ジョンソン大佐(ロバート・パトリック)とデーブ・セヴェランス大尉(ニール・マクドノー)から、部隊は、硫黄島に上陸する作戦を知らされる。 島の様子を説明するセヴェランスは、硫黄島がグアムやサイパンと違い、日本固有の領土として、日本人にとっては聖域であることを部下達に伝える。 1万2000名の日本兵の抵抗は必至で、第5海兵師団には、その拠点となる摺鉢山の攻略が鍵だという命令が徹底される。 そして、総勢11万の派遣軍が硫黄島に向かい出撃し、ストランクは、分隊から第2小隊の軍曹に昇進することを、上官セヴェランスに通達される。 1945年2月16日。 しかし、10日間の砲撃予定が3日に繰り上げられて、司令官ホーランド・スミス将軍(ゴードン・クラップ)は、攻撃不足を懸念する。 上陸前日、日本側のラジオ放送を聴きながら、部隊員はヘイズから、捕虜が日本兵に虐殺されている写真を見せられ、生死を決する作戦を前に言葉がなくなる。 2月19日。 しかし、物陰や偽装したトーチカに潜んでいた日本兵の一斉射撃や、浜辺を見下ろす摺鉢山からの砲撃が始まり、アメリカ側は甚大な被害を受ける。 1945年4月、エニウェトク環礁。 写真の兵士達とその家族は、人々の注目の的となるが、戦地の兵士はその多くが戦死していた。 ブロック母ベル(ジュディス・アイヴィ)は、写真を見てその1人が息子だと確信するが、戦死した息子を思い出し悲しみに暮れる。 帰国した写真の兵士で生存者のブラッドリー、ヘイズ、ギャグノンは、各地で大歓迎を受る。 3人は、世話役のキース・ビーチ(ジョン・ベンジャミン・ヒッキー)に、財務省のバド・ガーバー(ジョン・スラッテリー)を紹介され、戦時国債のキャンペーンの協力を要請される。 戦死した小隊のハンセンの母親がイベントに参加することを聞いたブラッドリーとヘイズは、ハンセンが写真には写っていないことをガーバーに伝える。 戸惑うガーバーに、ハンセンは最初に星条旗を掲げた兵士で、自分達は代替の旗を掲げ、それが写真となり新聞で取りざたされたことを、ブラッドリーとヘイズは伝える。 問題は写真の兵士が重要だと言うガーバーは、3人がそれに写っているかを確認する。 しかし、それならば写真に写っているブロックの母親を呼ばなくては意味がないことを、ヘイズはガーバーに伝える。 切迫した財政状況で、140億ドルもの予算が必要な事態を説明したガーバーは、事実はともかく、国民に希望を与えてくれる写真を使って、なんとか窮状を脱却しなければならないことを3人に説明する。 ホワイトハウス。 キャンペーンに向かった3人は、会う人々全てから英雄だと賞賛されるが、ヘイズは、戦死した者や、未だ戦地で戦う仲間達のことを想うと心が痛む。 あるキャンペーン祝賀会場で、ブラッドリーはハンセンの母親マデリン・イーヴリー(マイラ・ターリー)に出会うのだが、旗を掲げた写真に、ハンセンが写っていないことを口にできなかった。 ヘイズは、ストランクの母親と対面し、言葉にならず泣き崩れてしまう。 ギャグノンには、彼の人気をに便乗しようとする恋人のポーリーン・ハーノイス(メラニー・リンスキー)が寄り添う。 泥酔したヘイズは、ブラッドリーとギャグノンに宿泊先に連れて行かれ、戦場のことを想い浮かべる。 硫黄島。 摺鉢山の山頂に到着した第3小隊は、そこに星条旗を掲げ、友軍兵はそれを見て歓声をあげる。 第2小隊のストランクは、山頂に電話線を引けというセヴェランス大尉の命令を受ける。 海軍長官・ジェームズ・フォレスタルが島に到着して、ジョンソン大佐は、最初の旗を持ち帰るという連絡を受け、第2小隊に星条旗を差し替える命令を出す。 セヴェランスの伝令だったギャグノンは、山頂に向かった第2小隊に、それを知らせるよう命ずる。 ギャグノンは山頂に星条旗を届け、電話線を設置し終えた第2小隊のストランク達は二番目の星条旗を掲げ、従軍カメラマンのジョー・ローゼンタール(ネッド・エイゼンバーグ)がそれを撮影する。 シカゴのソルジャー・フィールドで行われる大イベントで、ブラッドリー、ヘイズ、ギャグノンは、特製モニュメントの上で、星条旗を掲げるパフォーマンスをさせられることになる。 それを馬鹿げていると罵ったヘイズは、街の酒場で、先住民だと言われ暴れてしまうが、それをブラッドリーーがなだめ、二人はソルジャー・フィールドに向かう。 その後、第2小隊は日本兵の反撃を受け、ストランク、ハンセン、ブロック、スースリーらが次々と戦死する。 ブラッドリーは親友イギーを捜し続け、やがて日本兵が掘った洞穴の中で、彼が虐殺されているのを発見する。 ソルジャー・フィールドの大観衆の前で、モニュメントに上り旗を掲げて見せた3人だったが、その直後ヘイズが、アレクサンダー・アーチャー・ヴァンデグリフト将軍(クリス・バウアー)の前で吐いてしまい、無様な姿に将軍は彼を罵倒する。 激怒したヴァンデグリフト将軍は、望み通りヘイズを戦地に返すよう命じ、彼は、ブラッドリーとギャグノン、そしてビーチに別れを告げる。 ギャグノンはポーリーンと結婚し、国内のキャンペーン旅行は続くが、写真はやらせでなかったかという意見も出始める。 ブラッドリーは爆撃で足を負傷するが、仲間達を見捨てられず戦地に残り、キャンペーン終了後に、傷を手術して故郷に帰る。 ヘイズは講演活動などをするが、その後は同胞達と農地で働き貧しい生活を続ける。 名声は消え去り、ギャグノンは、連絡するように言われた会社などにも無視され、結局は、用務員として生涯を閉じることになる。 旅に出たヘイズは、ヒッチハイクをしながらテキサスのブロックの父親を訪ね、写真に写っていたのが、彼の息子だと告げてその場を立ち去る。 それは、息子を戦地に送った夫を恨み、家を出ていたブロックの母親や、息子が写真に写っていたと言われたハンセンの母親にも知らされる。 ブラッドリー、ヘイズ、ギャグノンが最後に会ったのは、1954年10月10日の”海兵隊記念碑”の除幕式だった。 3ヵ月後。 その後ブラッドリーは、毎年、追悼式典になると連絡が入る取材を断り続ける。 雇い主が引退した後、ブラッドリーはその葬儀社を買い取り、仕事と家族のために生涯を捧げた。 戦争や”星条旗”のことを家族に語らなかったブラッドリーは、病院に自分を見舞う息子ジェームズに、”あいつはどこだ?”とうわ言で尋ねる。 ジェームズは、”彼は死んだ”と答え、それがイギーだと父に伝える。 しかし、ブラッドリーは、呼んだのはジェームズだと答え、いい父親じゃなかったことを息子に謝罪する。 ジェームズは、最高の父親だったと彼を抱きしめる。 ブラッドリーは、硫黄島での戦闘の最中に許された、海水浴のことを話し始め、その後、息を引き取る。 そしてジェームズは、”英雄”というものの本当の意味を理解する。
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...全てを見る(結末あり)
硫黄島に上陸したアメリカ海兵隊・第5海兵師団・第28連隊所属の衛生兵ジョン“ドク”ブラッドリー(ライアン・フィリップ)は、負傷兵を治療して味方の元に戻る。
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第28連隊のマイク・ストランク(バリー・ペッパー)、レイニー・ギャグノン(ジェシー・ブラッドフォード)、アイラ・ヘイズ(アダム・ビーチ)、ハーロン・ブロック(ベンジャミン・ウォーカー)、フランクリン・スースリー(ジョセフ・クロス)、ハンク・ハンセン(ポール・ウォーカー)、ラルフ”イギー”イグナトウスキーそしてブラッドリーらは、小高い山を登り、上陸のための”ヒギンズ・ボート”(上陸用舟艇)よる訓練などを受けていた。
硫黄島近海に集結したアメリカ派遣軍は、艦砲射撃で摺鉢山に向けて砲撃を加える。
いよいよ上陸は始まり、全く抵抗のないまま各部隊はスムーズに浜辺に上陸していく。
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”写真”の生存者として帰国することになったギャグノンは、摺鉢山山頂に旗を掲げた6人のうちの、最後の1人が誰だったかを言うよう強要され、ヘイズの名前をあげてしまう。
トルーマン大統領(デヴィッド・パトリック・ケリー)と面会した3人は、大統領直々に国債売り込みに協力することを要請される。
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上陸直後の海岸の激しい戦闘は収まり、第5海兵師団は摺鉢山を登り始める。
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泥酔の末に死亡したヘイズの遺体が発見され、同じ頃、ブラッドリーはイギーの実家を訪ね、母親に彼の最後の様子を知らせるが、真実かどうかは不明だった。
*(簡略ストー リー)
1945年2月。
太平洋戦争末期、国土防衛の為に死守する覚悟を決めた、日本軍の拠点硫黄島に上陸したアメリカ軍は、1万2000名の日本兵の抵抗に苦戦する。
長期戦が予想される中、第5海兵師団に摺鉢山の攻略が鍵だという命令が徹底される。
アメリカ側は、甚大な被害を受けながらも摺鉢山を攻略し、6人の兵士が山頂に星条旗を立てる。
その様子を撮影した1枚の写真が本土で反響を呼び、それに写っていた生存兵士のブラッドリー、ヘイズ、ギャグノンは、帰国後、各地で大歓迎を受る。
それを、戦意高揚の材料にしようとする軍部や財務省は、兵士3人に戦時国債のキャンペーンの協力を要請するのだが・・・。
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硫黄島の激戦で生き残り摺鉢山に星条旗を掲げたことで”英雄”として国民に迎えられたジョン・ブラッドリーの息子ジェームズ・ブラッドリーとロン・パワーズの、2000年に発表された共同著書”Flags of Our Fathers”を基に、クリント・イーストウッドとスティーブン・スピルバーグが組んで製作された作品。
ピューリッツァー賞も受賞し、社会現象にまでなった有名なジョー・ローゼンタールの写真の裏に隠された人間ドラマを中心に、クリント・イーストウッドが主宰する”マルパソ・カンパニー”とスティーブン・スピルバーグの”ドリームワークス”が組み、総力を結集して製作したアメリカ側から描いた作品で、2ヵ月後には日本側の視点で描いた「硫黄島からの手紙」(2006)が公開されて話題を呼んだ。
度々登場する、島の象徴である、摺鉢山を浜から見上げた攻撃シーンや、山頂からの遠景ショット等は、大規模で悲惨な上陸作戦の凄まじさを見事に描写している。
日本側(東京都)全面協力による、硫黄島での生々しいロケや、アメリカ国内の当時の様子を映し出した映像なども、見応えあるものに仕上がっている。
第79回アカデミー賞では、録音賞と音響編集賞にノミネートされた。
上記のように姉妹作「硫黄島からの手紙」(2006)を同時に製作しているので、単独作品としては、それほど商業的に成功した作品ではなく、日米両国以外の国での人気が低かったのも致し方ないところだ。
製作費 $90,000,000
北米興行収入 $33,574,330
世界 $65,900,250
しかし、日米両国、特に日本では現地で戦った兵士達の苦悩などが殆ど知られていない現状で、それを考え直す意味で実に意味深い2作となった。
派手な国債キャンペーンに駆り出され、全米行脚が繰り広げられる中、英雄に仕立て上げられる兵士達の心の傷を見事に表現した、イーストウッド自身が担当した音楽の、悲し気なメロディも印象に残る。
多くの出演者の中で、ネイティブ・アメリカンのアイラ・ヘイズ役のアダム・ビーチが、作られた栄光の影で惨めな最後を遂げる、彼の生涯を見事に演じている。
”英雄”の意味を理解し、戦友への想いを胸に秘め生涯を送る、ジョン“ドク”ブラッドリー役のライアン・フィリップ、3人の中で唯1人”英雄”の待遇を歓迎するものの、結局はそれに成りきれないレイニー・ギャグノンのジェシー・ブラッドフォード、戦友達、マイク・ストランクのバリー・ペッパー、ラルフ”イギー”イグナトウスキー役のジェイミー・ベル、ハンク・ハンセンのポール・ウォーカー、フランクリン・スースリーのジョセフ・クロス、ハーロン・ブロックのベンジャミン・ウォーカー、チャールズ・W・リンドバーグのアレッサンドロ・マストロブーノ、上官ニール・マクドノーとその後年を演ずるハーヴ・プレスネル、同じく上官のロバート・パトリック、英雄3人の世話役のジョン・ベンジャミン・ヒッキーとジョン・スラッテリー、原作者で主人公の息子のジェームズ・ブラッドリーのトム・マッカーシー、アレクサンダー・アーチャー・ヴァンデグリフト将軍クリス・バウアー、司令官ホーランド・スミス将軍ゴードン・クラップ、カメラマン、ジョー・ローゼンタールのネッド・エイゼンバーグ、上院議員デヴィッド・ラッシュ、トルーマン大統領のデヴィッド・パトリック・ケリー、ブロックの母ジュディス・アイヴィ、ハンセンの母メラニー・リンスキー、ギャグノンの妻メラニー・リンスキー、そして、晩年のブラッドリーを演ずるジョージ・グリザードなどが共演している。