娘を嫁がせる父親の切実な思いをユーモアを交えて描く、監督ヴィンセント・ミネリ、主演スペンサー・トレイシー、ジョーン・ベネット、エリザベス・テイラー他共演のヒューマン・コメディの秀作。 |
・コメディ
・エリザベス・テイラー / Elizabeth Taylor / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ヴィンセント・ミネリ
製作:パンドロ・S・バーマン
原作:エドワード・ストリーター
脚本
フランシス・グッドリッチ
アルバート・ハケット
撮影:ジョン・アルトン
編集:フェリス・ウェブスター
音楽:アドルフ・ドイチュ
出演
スタンリー・T・バンクス:スペンサー・トレイシー
エリー・バンクス:ジョーン・ベネット
キャサリン”ケイ”バンクス:エリザベス・テイラー
バックリー・ダンスタン:ドン・テイラー
ドリス・ダンスタン:ビリー・バーク
ハーバート・ダンスタン:モローニ・オルセン
マズーラ:レオ・G・キャロル
トミー・バンクス:ラスティ・タンブリン
ベン・バンクス:トム・アイリッシュ
アメリカ 映画
配給 MGM
1950年製作 92分
公開
北米:1950年6月16日
日本:1952年12月16日
■ アカデミー賞 ■
第23回アカデミー賞
・ノミネート
作品
主演男優(スペンサー・トレイシー)
脚色賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
弁護士スタンリー・T・バンクス(スペンサー・トレイシー)は、娘のキャサリン”ケイ”(エリザベス・テイラー)の結婚式を終える。
そしてスタンリーは、娘を持つ父親の思いを語り始める。
3ヶ月前。
いつものように帰宅したスタンリーは、妻エリー(ジョーン・ベネット)に迎えられる。
工学部の学生の長男ベン(トム・アイリッシュ)と次男トミー(ラスティ・タンブリン)の様子に目をやり、どうしても特別な目で見てしまう、年頃のケイの同行を気にしてしまう。
どうやら、”バックリー”という男性と付き合っているらしいケイに探りを入れるスタンリーは、家に出入りする誰が彼女の相手なのか気になる。 唐突に、結婚するのかを尋ねたスタンリーは、そのつもりだと言うケイの言葉で、急に苛立ち始め声を荒げてしまう。 ケイは、相手のバックリー・ダンスタン(ドン・テイラー)を、立派なビジネスマンだとスタンリーに伝えるものの、父の態度に傷ついてしまう。 妻エリーに促され、ケイに謝罪したスタンリーだったが、既に相手の苗字を忘れてしまった父に、彼女は再びショックを受けてしまう。 その後、ケイを迎えに来たバックリーを確認したスタンリーは、まさかと思っていた青年だったので失望する。 幸せに満ち溢れた表情で、バックリーと出かけようとするケイを送り出したスタンリーは、父親の役目が終わってしまったことを実感する。 スタンリーは、エリーにバックリーが気に入らないことを伝えるが、彼女が、結婚式のことで既に浮かれているのを見て驚いてしまう。 ケイの結婚に関して、悲観的なことばかり考えるスタンリーは眠ることが出来ず、不満をエリーにぶちまけて熟睡してしまう。 その反対に、楽観的だったエリーは、スタンリーが言う通り、確かに素性も知らないバックリーのことが心配になる。 エリーは、バックリーと話しをしてみることをスタンリーに提案し、彼を夕食に招くことになる。 結局、スタンリーとエリーは、バックリーが立派な仕事をしいる、預金もある好青年だと分かり安心する。 数日後、バックリーの家に招待されたスタンリーとエリーは、郊外の邸宅を見て驚いてしまう。 バックリーの両親ハーバート(モローニ・オルセン)とドリス(ビリー・バーク)に挨拶した二人は、当初はギクシャクするものの、スタンリーが酒を勧められて話を弾ませる。 後日、スタンリーとエリーは、バックリーの両親を自宅のパーティーに招待することになる。 大袈裟なスピーチまで用意したスタンリーは、カクテルを作ることに追われて、何も出来ないままゲストは帰ってしまう。 やがて、結婚式の準備が始まり、教会で式を挙げたいというケイの意見を、スタンリーは受け入れられない。 しかし、それが女性の夢だということを、エリーがスタンリーに伝えて彼を説得する。 スタンリーは、次第にエスカレートしていく結婚仕度に気を揉み、いつのまにか招待客が膨大な数になったことを不満に思い、人数制限をすることにする。 一生に一度のイベントを、まるでビジネスのように仕切ろうとするスタンリーに、ケイは意見して気分を害してしまう。 スタンリーはジョークで、この際、二人で駆け落ちしてみてはとケイに提案する始末で、馬鹿げた発言に気づいた彼は、招待客の全てを招くことを決める。 その後、エリーがウエディング・プランナーのマズーラ(レオ・G・キャロル)を探し、相談することになる。 その後も慌しい準備の日が続き、やがて結婚祝いの贈り物が大量に届く。 そんな時、ケイが結婚を中止すると言い出して部屋に閉じ篭ってしまう。 バックリーは、ケイがロマンチックな場所を望んだにも拘らず、釣りをするために、ノバスコシアを新婚旅行に選んでしまい、彼女はショックを受けたのだった。 それを聞いたスタンリーは、他愛もないことだと思うのだが、ケイにとっては重要なことだった。 そこにバックリーが現れるものの、ケイは会おうとしなかったが、彼が自分のせいで手を怪我したことを知り、結局、スタンリーらの心配を余所に、二人は仲直りしてしまう。 忙しなく式のリハーサルを終えたスタンリーは、寝付かれない夜を過ごし、ようやく眠れたところで、本番で大失態を演ずる悪夢を見てしまう。 キッチンに向かったスタンリーは、同じく心配で眠れずにいたケイを父親らしく励まし、彼女はそれを頼もしく思う。 そして式の当日、スタンリーは、着飾った花嫁のように美しい妻エリーに見とれてしまう。 その直後、正にプリンセスと言える、ウエディングドレス姿のケイを見たスタンリーは、この上ない幸せを味わう。 二人は教会に到着し、式は始まリ、ケイはスタンリーと共にヴァージンロードに向かう。 驚くほど冷静なケイに導かれるように、スタンリーは新郎の元に彼女を案内する。 スタンリーはエリーに寄り添い、娘を嫁がせるという意味に突然、気づき胸が痛む。 そして、ケイとバックリーは誓いの言葉を交わし夫婦となり、両親に笑顔を見せて教会を後にする。 自宅での盛大なパーティーが始まり、スタンリーは人が溢れる中でケイに会うことが出来ない。 大混乱の内に、新郎新婦は新婚旅行に旅立ってしまい、スタンリーは、ケイに別れの言葉もかけられず落胆する。 スタンリーは、招待客が引き上げた後、荒れ果てた自宅で沈んでいたが、そこに駅を出発するケイからの電話が入る。 ケイは両親に感謝し、スタンリーは、娘は生涯、娘のままだと思い安堵し、音楽をかけ、エリーを抱き寄せダンスを踊る。
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■ 解説 評価 感想 ■
1949年に発表された、エドワード・ストリーターの同名小説を基に製作された作品。
*(簡略ストー リー)
堅実な生活を送る弁護士スタンリー・T・バンクスは、年頃の娘ケイが、結婚を前提に、バックリーという青年と付き合っていることを知りショックを受ける。
いずれは出て行く娘ではあるが、まだ子供だと思っていたケイが結婚するかと思うと、スタンリーは、浮かれている妻エリーのようには冷静ではいられない。
早速バックリーやその両親と話しをしたスタンリーとエリーは、彼が好青年で、家柄も良いことが分かり安心する。
やがて結婚式の準備が始まり、質素な式を望むスタンリーと、一生に一度のイベントに、情熱を傾けているケイとで意見が食い違い、トラブルが耐えない。
その度に、エリーがスタンリーを説得し妥協させるのだが、予想以上にエスカレートする騒ぎとなり、スタンリーは頭を抱えてしまう・・・。
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その後の活躍で、日本では、プリンセスのようなエリザベス・テイラーの代表作的なイメージを抱いてしまうのだが、本作は紛れもなく、 大スター、スペンサー・トレイシーの作品である。
人間味溢れる彼のキャラクターは、娘を持つ父親でなくとも共感できると共に、ユーモアのセンスなどを含め、円熟の演技は敬服に値する。
本作の好評により、翌年、続編の「可愛配当」(1951)が公開され、1991年には「花嫁のパパ」としてリメイクされた。
第23回アカデミー賞では、作品、主演男優(スペンサー・トレイシー)、脚色賞にノミネートされた。
軽快なヴィンセント・ミネリの演出も冴え、楽しいコメディとして、父親の娘への思いを見事に描写した快作だ。
終戦間もない時期にも拘らず、当時のアメリカの豊かさが窺えるシーンは実に興味深く、ドラマにマッチしたアドルフ・ドイチュの愉快な音楽も印象的だ。
撮影中に18歳になったエリザベス・テイラーの美しさは言うまでもなく、上記のように、彼女を前面に出す作品ではなく、あくまで花嫁の父親が主役のため、意外にも彼女のアップが少ない、控え目な出演になっている。
尚、エリザベス・テイラーは、”ヒルトン・ホテル”の創業者コンラッド・ヒルトンの息子コンラッド・ヒルトンJr.との結婚を控えながらの撮影だった。
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結婚:1950年5月6日
公開:1950年6月16日
困惑する夫をうまく操作する妻ジョーン・ベネット、やや頼りなく見える花婿、後に監督となるドン・テイラー、その母で、出番が少ないのが残念なビリー・バーク、その夫役モローニ・オルセン、ウェディング・プランナーを、飄々と演ずるレオ・G・キャロル、主人公の息子ラスティ・タンブリンとトム・アイリッシュなどが共演している。