資金繰りの問題を抱える男が考えた偽装誘拐が何人もの死者を出す事件に発展してしまう・・・。 製作、監督、脚本、編集コーエン兄弟、主演フランシス・マクドーマンド、ウィリアム・H・メイシー、ピーター・ストーメア、スティーヴ・ブシェミ他共演による残虐性とユーモアを交えた異色のサスペンス。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン(クレジットなし)
製作
ジョエル・コーエン(クレジットなし)
イーサン・コーエン
脚本
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
撮影:ロジャー・ディーキンス
編集:ロデリック・ジェインズ
音楽:カーター・バーウェル
出演
フランシス・マクドーマンド:マージ・ガンダーソン
ウィリアム・H・メイシー:ジェリー・ランディガード
ピーター・ストーメア:ゲア・グリムスラッド
スティーヴ・ブシェミ:カール・ショーウォルター
ハーヴ・プレスネル:ウェイド・グスタフソン
クリスティン・ルドルード:ジーン・ランディガード
トニー・デンマン:スコティ・ランディガード
ジョン・キャロル・リンチ:ノーム・ガンダーソン
スティーヴ・リーヴィス:シェプ・プラウドフット
ラリー・ブランデンバーグ:スタン・グロスマン
スティーヴ・パク:マイク・ヤナギタ
アメリカ 映画
配給 Gramercy Pictures
1996年製作 98分
公開
北米:1996年3月8日
日本:1996年11月9日
製作費 $7,000,000
北米興行収入 $24,611,980
世界 $60,611,980
■ アカデミー賞 ■
第69回アカデミー賞
・受賞
主演女優(フランシス・マクドーマンド)
脚本賞
・ノミネート
作品・監督
助演男優(ウィリアム・H・メイシー)
編集・撮影賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1987年冬、ノースダコタ州、ファーゴ。
自動車ディーラーの営業部長ジェリー・ランディガード(ウィリアム・H・メイシー)は、資金繰りに困ったあげく、妻ジーン(クリスティン・ルドルード)を偽装誘拐して身代金を手に入れることを考える。
ジェリーは、気味の悪い顔のカール・ショーウォルター(スティーヴ・ブシェミ)と、無口な男ゲア・グリムスラッド(ピーター・ストーメア)を、仮出所中の整備工シェプ・プラウドフット(スティーヴ・リーヴィス)から紹介されて2人に会う。
2人に新車を渡そうとしたジェリーは、報酬の4万ドルも要求される。
4万ドルは身代金で払うと伝えたジェリーは、納得しないカールと話しがかみ合わない。 妻ジーンの父親である、自動車ディーラー社長で裕福なウェイド・グスタフソン(ハーヴ・プレスネル)を脅迫しようと企むジェリーは、彼女を誘拐して身代金8万ドルを要求して、資金を工面しようと考えていた。 自分の抱える問題を聞こうとするカールに、個人的な事なので話したくないと伝えたジェリーは、とりあえず車を渡す。 ミネソタ州、ミネアポリス。 しかしウェイドは、ジェリーを無能な男と決め付けて信用していなかった。 ミネアポリスに向かう途中、食事をしたカールとゲアは、ブレイナードで女を買う。 息子のスコティ(トニー・デンマン)の成績が落ちたために、当分ホッケーはさせないと言い聞かせていたジーンは、ウェイドから電話を受ける。 自分への電話だと知らされたジェリーは、ウェイドから、計理士のスタン・グロスマン(ラリー・ブランデンバーグ)が、例の話に乗る考えがあると言われて呼び出される。 そのため、誘拐計画を中止しようとしたジェリーは、紹介してくれたゲアの居場所をシェプに聞くのだが、知らないと言われる。 その頃、ミネアポリス入りしたカールとゲアは、ジェリーの家に乱入してジーンに襲い掛かろうとする。 取り乱したジーンは必死に逃げようとするが、階段から転げ落ちて気を失ってしまう。 何も手が打てないままジェリーは、ウェイドとスタンとの駐車場の打ち合わせに向かう。 ジェリーに金を渡して投資させるつもりのないウェイドとスタンは、自分達がビジネスを立ち上げて、手数料を彼に支払う提案をする。 即現金が必要なジェリーは、それに同意できなかったが、ウェイドに罵られて追い返される。 失意のジェリーは帰宅し、予定通りジーンが誘拐されていることに気づき、ウェイドに連絡を入れる。 ブレイナード。 尋問されたカールが車を降りるように言われたため、ゲアが警官を射殺してしまう。 そこに車で通りがかった男女は殺人を目撃して走り去り、それを追ったゲアは、事故を起こした2人も射殺する。 翌早朝、ブレイナードの警察署長マージ・ガンダーソン(フランシス・マクドーマンド)は事件の連絡を受け、野生動物画家の夫ノーム(ジョン・キャロル・リンチ)との朝食を済ませて現場に向かう。 現場に着いたマージは、妊娠中である身で惨殺体を確認して現場を検証し、犯人が2人組みの余所者だと判断する。 殺された警官のパトロール・メモから、犯人が乗っていた車のナンバーが”DLR”だと知ったマージは、それがディーラーの車だと気づく。 犯人から、ジーンの身代金100万ドルを要求されたことをウェイドに伝えたジェリーは、警察には通報せずに取引することで話をつけようとする。 ウェイドは、取引すると言うジェリーを当てにせずに、自分が話を進めようと考える。 帰宅したジェリーは、母を心配して警察に通報するべきだと言うスコティに、そうしなくても手を打つことを伝える。 湖畔のアジトに着いたカールとゲアは、ジーンを車から降ろす。 警察署のオフィスでノームと共にランチを食べていたマージは、犯人の情報を得る。 犯人と一夜を共にした女性に会ったマージは、気味の悪い顔をした小柄の男ともう一人が、ミネアポリスに行くと言っていたことを知る。 その夜、眠っていたマージは、学友のマイク・ヤナギタ(スティーヴ・パク)からの電話を受ける。 ミネアポリスで殺人事件のニュースを見て、顔が映っていたとヤナギタから言われたマージは、彼を懐かしく思う。 翌日、仕事に身の入らないジェリーはカールから電話を受け、3人を殺害したために状況が変わったと言われ、報酬を吊り上げられて8万ドルを要求される。 その直後に、ローン会社から請求の電話を受けたジェリーは、窮地に立たされてしまう。 ノームとランチを食べていたマージは、犯人がモーテルから、ミネアポリスの郵送会社とシェプ・プラウドフットに電話をしたことを同僚のオルソンから知らされる。 100万ドルを持って自分が交渉に向かうとウェイドから言われたジェリーは、それに従うしかなかった。 マージは、車やシェプのことなどを調べるためにミネアポリスに向かう。 空港の駐車場に向かったカールは、駐車してあった車のナンバープレートを盗む。 突然、現れた、女性警官マージがシェプと会っていることを知ったジェリーは焦る。 シェプが電話のことは知らないと言うため、麻薬がらみで服役し仮出所中であることは調べてあると話すマージは、電話の相手によっては刑務所に逆戻りだと伝えて真実を聞き出す。 ジェリーと話し、”ポール・バニヤンの故郷”ブレイナードの警官で、事件を捜査中だと伝えたマージは、ディーラーから車が盗まれていないことを確認しながらも、彼の挙動がおかしいことを気にする。 その夜、バーに向かったマージは、かつて自分に好意を抱いていた学友ヤナギタと会い、妻が白血病で亡くなったことなどを知る。 エスコート・クラブの女と愛し合っていたカールは、マージが捜査していることで憤慨したシェプに痛めつけられる。 その後、即、現金を渡すようジェリーに要求したカールは、取引場所を教える。 無能なジェリーを無視するウェイドは、身代金と銃を持って取引場所の駐車場に向かう。 現れたウェイドに驚いたカールは彼を銃撃し、自分も顔面を撃たれてしまう。 カールはウェイドに止めを刺して現金を奪い逃走し、直後に現れたジェリーは、遺体をトランクに入れる。 駐車場を出ようとしたジェリーは、ゲートが壊され係員が殺されていることに気づく。 帰宅したジェリーは、スタンから二度も電話があったとスコティから言われ、思ってもいなかった展開に愕然としてうなだれてしまう。 翌日、通報を受けたオルソンは、気味の悪い顔の男が女を買おうとしていたことをバーテンダーから知らされ、その男が湖の近くにいるとも言われる。 奪った現金が大金だったために驚いたカールは、8万ドルを抜き、残りを街道脇の雪の中に埋めて目印を付ける。 ホテルの部屋で友人と電話で話したマージは、ヤナギタは未婚で、精神的に問題があり嘘をついていたことを知り驚く。 再びジェリーに会いに行ったマージは、もう一度、盗まれた車のことを確認する。 盗まれた車はディーラーの車で、犯人が整備工のシェプに電話をしているとジェリーに伝えたマージは、何か関係があるはずだと言って更に追及する。 混乱してマージの質問にまともに答えられないジェリーは、社長のウェイドとの面会を求められる。 開き直ったジェリーは、盗難車があるか在庫を調べると言って席を立ち、そのまま逃亡してしまう。 湖畔のアジトに戻ったったカールは、ゲアがジーンを殺害してしまったことを知る。 8万ドルを分けて4万ドルを置いて立ち去ろうとしたカールは、車は渡さないと言われて憤慨する。 外に出たカールに、ゲアは襲い掛かる。 ジェリーの義父の計理士の通報で、誘拐事件が起きたことを無線で知らされたマージは、それが殺人と同じ日に起きたことを確認する。 ウェイドとジェリーは行方不明だと言われたマージは、湖を調べてから帰ることを伝える。 捜査で浮かび上がっていた車を見つけたマージは、カールの死体を粉砕機にかけいるゲアに銃を向ける。 逃亡しようとするゲアの足を撃ったマージは、彼を逮捕する。 ブレイナードに向かう途中の車内でゲアに話しかけたマージは、”どうしてこんなことをしたのか理解できない・・・人生を無駄にしている・・・”と語り塞ぎこむ。 ノースダコタ州、ビスマルク郊外。 自宅に戻ったマージは、ベッドで待つノームから、真鴨の絵が3セント切手に採用されたと言われて喜ぶ。 3セント切手など誰も使わないと嘆くノームだったが、マージは、郵便代が値上げされれば、不足分を補うために皆が使うと言って夫を励ます。 そして、2ヵ月後の出産を控え2人は幸せを実感する。
...全てを見る(結末あり)
帰宅したジェリーは、その場にいたウェイドと食事をしながら、話してあった駐車場を作る投資の確認をする。
ファーゴに戻る途中、カールとゲアは、パトロール中の警察官に車を止められる。
名前を変えてモーテルに潜伏していたジェリーは、警官に見つかり、逃亡を阻まれて逮捕される。
*(簡略ストー リー)
ミネソタ州、ミネアポリス。
資金繰りに困った自動車ディーラーの営業部長ジェリー・ランディガードは、妻ジーンを偽装誘拐して身代金を手に入れることを考える。
ジェリーは、整備工のシェプに紹介された悪党のカールとゲアにそれを依頼する。
その後、自分の提案した駐車場事業に、義父であるディーラーの社長ウェイドが賛同しそうな気配となり、ジェリーは妻の誘拐を中止しようとする。
しかし、既にはカールとゲアは犯行を済ませ、逃走途中に警官と目撃者の三人を殺してしまう。
ブレイナードの警察署長マージ・ガンダーソンは、早速、捜査を開始して、余所者で2人組みの犯行だと判断し、彼らが乗っていた車の手掛かりもつかむ。
ジェリーは、カールとゲアがつかまらずに焦り、ジェリーを無能扱いして全く信用していないウェイドは、駐車場事業を自ら立ち上げようとする。
窮地に立たされたジェリーは、妻が誘拐されたことを知り、仕方なく計画を進める。
しかし、カールとゲアに渡した車から足がつき、ジェリーから事情を聞くためにマージはミネアポリスに向かう・・・。
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なんの変哲もない町で起きる事件だからこそ切実に思える、異常な状況下での人間の慌てふためく様子、加害者の心理が理解できない警察官の気持ち・・・。
コーエン兄弟が常に伝えるテーマ、”世の中の不条理”を徹底的に追及する、その実感がこもる描写が強烈に印象に残る、ユーモアと残虐性のバランスが絶妙な作品。
冒頭で”事実に基づく物語”と表記されるが、実際にこのような事件が起きた事実はなかったようだ。
第69回アカデミー賞では、ジョエル・コーエンの妻フランシス・マクドーマンドが主演女優賞を、コーエン兄弟が脚本賞を授賞した。
・ノミネート
作品・監督
助演男優(ウィリアム・H・メイシー)
編集・撮影賞
*
コーエン兄弟、編集はロデリック・ジェインズでクレジット。
2006年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
コーエン兄弟の作品全ての音楽を担当しているカーター・バーウェルの悲しいテーマ曲は、主人公のマージが、逮捕した犯人の真意が理解できずに、目に涙を浮かべながら犯行の理由を尋ねる、彼女の心境を物語り、それを表現する実に効果的な楽曲だ。
主演のフランシス・マクドーマンドは、温厚な夫と幸せに暮す、妊娠中の警察署長役であり、几帳面な性格で、淡々と事件を調査していく。
やや奇妙にも思える個性的な人物を飄々と演ずる彼女は、見事にアカデミー主演賞を受賞した。
それとは対照的に、人は好いが無能であり、深みに嵌り慌てふためくウィリアム・H・メイシーの熱演は見もので、キャリア最高の演技と言える彼のアカデミー助演賞ノミネートも納得だ。
”気味の悪い顔の男”で通る犯人、一度見たら忘れられない怪優スティーヴ・ブシェミ、無口で残虐な誘拐殺人犯を雰囲気を出して演ずるピーター・ストーメア、身代金を運び殺害されてしまう、自動車ディーラー社長のハーヴ・プレスネル、その娘で、誘拐殺害されるクリスティン・ルドルード、その息子トニー・デンマン、主人公マージ(フランシス・マクドーマンド)の優しい夫である画家のジョン・キャロル・リンチ、ディーラーの整備工スティーヴ・リーヴィス、ウェイド(ハーヴ・プレスネル)の計理士ラリー・ブランデンバーグ、主人公の学友スティーヴ・パクなどが共演している。