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ミクロの決死圏 Fantastic Voyage (1966)

あらゆる物を縮小する技術を発明した重傷を負った科学者を救うために結成されたチームが挑む体内の患部除去手術を描く、監督リチャード・フライシャー、主演スティーヴン・ボイドラクエル・ウェルチエドモンド・オブライエンアーサー・ケネディアーサー・オコンネルドナルド・プレザンス他共演による奇想天外なSF冒険映画の傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


SF


スタッフ キャスト
監督:リチャード・フライシャー
製作:ソウル・デイヴィッド
原案
オットー・クレメント

ジェイ・ルイス・ビクスビー
脚本:ハリー・クライナー
撮影:アーネスト・ラズロ
編集:ウィリアム・B・マーフィー
美術・装置
ジャック・マーティン・スミス

デール・ヘネシー
ウォルター・M・スコット
スチュアート・A・ライス
音楽:レナード・ローゼンマン

出演
スティーヴン・ボイド:グラント
ラクエル・ウェルチ:コーラ・ピーターソン
エドモンド・オブライエン:カーター将軍
アーサー・ケネディ:デュヴァル医師
アーサー・オコンネル:ドナルド・リード大佐
ドナルド・プレザンス:マイケルズ医師
ウィリアム・レッドフィールド:ビル・オーウェンス船長
ジーン・デル・ヴァル:ヤン・ベネシュ博士
ジェームズ・ブローリン:エンジニア

アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1966年製作 100分
公開
北米:1966年8月24日
日本:1966年9月1日
製作費 $5,115,000
北米興行収入 $12,000,000


アカデミー賞
第39回アカデミー賞

・受賞
美術・視覚効果賞
・ノミネート
編集・撮影賞(カラー)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
米ソ冷戦下。
全ての物体を縮小させて、その状態を持続させることに成功した科学者ヤン・ベネシュ博士(ジーン・デル・ヴァル)は、アメリカに亡命する。

空港に到着したベネシュ博士は、亡命の手助けをしてくれた諜報員グラント(スティーヴン・ボイド)に感謝する。

空港を離れたベネシュ博士は敵側に襲われ、車の衝突事故による血栓が原因で昏睡状態となり、患部手術の準備が進められる。

呼び出されたグラントは、秘密機関CMDF(ミニュチュア機動部隊)の地下施設に向かう。

医務部に案内されたグラントはカーター将軍(エドモンド・オブライエン)に迎えられ、ベネシュ博士が襲撃されたことを知らされる。

手術に協力してほしいと言われたグラントは、脳外科医デュヴァル(アーサー・ケネディ)と助手のコーラ・ピーターソン(ラクェル・ウェルチ)が手術を担当することを知る。

同じく手術に協力する循環器専門医マイケルズ(ドナルド・プリーゼンス)から、医学的暗殺など今後も妨害工作の可能性があると説明されたグラントは、デュヴァルが怪しいと考える。
...全てを見る(結末あり)

カーター将軍から、デュヴァルは第一人者で手近にいる人材だと言われたグラントは、監視役をするつもりのマイケルズに従うよう指示される。

全ての物を縮小できるCMDF(ミニュチュア機動部隊)の説明をカーター将軍から受けたグラントは、ベネシュ博士の研究が、現在では約60分しか継続しない縮小時間の延長に不可欠なため、博士を救うことが必要だということを知る。

自分も縮小されて、潜水艇でベネシュの人体に入り手術を行うことを知らされたグラントは、従う気になれない。

会議室に向かったグラントは、計画チームの参謀ドナルド・リード大佐(アーサー・オコンネル)や潜水艇の船長ビル・オーウェンス(ウィリアム・レッドフィールド)、そして、気難しそうなデュヴァル、コーラ、マイケルズらを紹介される。

デュヴァルとマイケルズが解説する計画は、小型原子力潜水艇”プロテウス”を細菌大に縮小し、眼球裏患部をレーザー光線で除去し、首の付け根の静脈から注射器で摘出されるという画期的な方法だった。

プロテウスは追跡も可能であり、いつでも摘出できるように外科医も待機し、時間を過ぎると白血球抗体が襲ってくることをグラントは知らされる。

患部の場所が悪いために、外部からの手術は不可能だった。

一刻を争う計画は実行され、殺菌処置を施された乗組員達は、プロテウスに乗り込み準備を始める。

無線の担当でもあるグラントはテストを済ませ、幹部の除去で使うレーザーガンのチェックをする、デュヴァルを信頼する助手のコーラと話をする。

縮小の準備が整い、コーラは、同行を許可してくれたデュヴァルに感謝する。

そして、プロテウスは段階を経て縮小され、巨大な注射器に入れられて潜水する。

その時、祖国イギリスで、戦時中の空襲により2日間、生き埋めになったことで閉所恐怖症となったマイケルズが、極度の緊張から取り乱してしまい、グラントとデュヴァルが彼を落ち着かせる。

そして、最終段階まで縮小されて60分のカウントダウンが始まり、プロテウスは注射器からベネシュ博士の頚動脈に注入される。

プロテウスは安定航行に入り、神秘的な体内の様子に5人は驚く。

しかし、突然、血流が乱れ、プロテウスは血管を突き破ってしまう。

進路を外れたプロテウスの内部では、怪我のせいでできたと思われる瘻管を通り動脈を突き破り静脈に入ってしまったことを、マイケルズが皆に説明する。

患部から遠ざかることになってしまい、心臓を通る方法があるが、船体が耐えられないというオーウェンの意見を聞いたマイケルズは、計画の中止を提案する。

リード大佐に意見を求めたカーター将軍は、60秒間、心臓を停止できると言われ、プロテウスは心臓を通過して再び動脈に戻ることができるだろうと考える。

その連絡を受けたグラントは、心臓を停止している間の60秒以内に通過する方法を皆に伝える。

心臓は停止し、蘇生寸前でなんとか通過したプロテウスは肺動脈に入る。

通過のショックでプロテウスの浮上用酸素が減ってしまい、で酸素を補充することになる。

船外活動のための潜水具を用意しようとしたグラントは、コーラがチェックしたはずのレーザーガンが固定台から外れていることに気づく。

間違いなく固定したと言うコーラは、船外活動後に故障個所を調べることにする。

左肺でプロテウスが停止していることを知ったカーター将軍は、何をしているのか連絡を取るようにと指示し、時間のことを考えて苛立つ。

オーウェンス船長を残して4人が船外活動を始め、チューブを持ってに入ったグラントは、タンクが満タンになった直後に吸い込まれてしまう。

プロテウスにつないでいたワイヤーも切れてしまうが、グラントは自力で戻り、デュヴァルらに助けられる。

報告を受けたカーター将軍は、空気補給のために進行が遅れていたことを知る。

プロテウスに戻ったコーラは、レーザーガンが壊れていることを確認する。

レーザーガンは応急処置で修理可能と分かり、グラントは無線機の部品を使おうとする。

外部と連絡できなくなるためマイケルズに反対されるものの、グラントから、プロテウスの追跡は可能だと言われる。

デュヴァルからも、ベネシュ博士か無線機のどちらを選ぶのかと言われたマイケルズは仕方なく納得し、外部に連絡しておくようにと伝える。

レーザーガン修理のために無線機を分解し、以後、連絡を絶つという報告を受けたカーター将軍は、リード大佐から位置は追跡できると言われるものの、問題が続くために頭を抱える。

コーラから、トランジスターは使えるが針金が太いと言われたデュヴァルは、それをメスで削る。

二度の破壊工作があったとマイケルズに話すグラントは、レーザーガンの故障と自分のワイヤーが切れたのは事故ではないと伝える。

CIAに目を付けられているデュヴァルを疑うマイケルズだったが、有能な外科医であるために事故であってほしいと思う。

プロテウスはリンパ管に進入し、5人は抗体がバクテリアを攻撃する様子を目撃する。

その後、近道をするために内耳を通ろうとするプロテウスは、外のわずかな音が命取りになる危険性があったが、位置が分かるはずなので大丈夫だろうということになる。

プロテウスが内耳に入ることを知ったリード大佐は、その間は声も音も出さないようにと医療チームに指示する。

進行するプロメテウスだったが、海藻のようなものが排水口に詰まり航行不能になる。

それを除去するために、グラントらが船外に出て排除作業を始め、外部では、物音を立てないように細心の注意が払われる。

残り24分、再びプロテウスが停止したことで苛立つカーター将軍は、こぼれた砂糖の場所にいたアリを潰そうとするものの思い止まる。

それを見ていたリード大佐は、ヒンドゥー教の非殺生を語る。

作業は続けられていたが、外部で起こした物音が原因でコーラが弾き飛ばされ、グラントが助けに行きマイケルズは船内に戻る。

グラントはコーラを助けるものの、彼女は抗体に襲われる。

息ができないコーラを船内に運び込んだグラントは、マイケルズとデュヴァルの手を借りて抗体を剥ぎ取り彼女を助ける。

外部では体内で起きている問題に気づくはずもなく、残り12分でプロテウスが動き出したことを確認する。

リード大佐は、プロテウスが内耳を通過してクモ膜下腔に入ったことを医療チームに知らせる。

レーザーガンの修理は終わるが、テストが必要だと主張するマイケルズと、電力消費を抑えるべきだと言うデュヴァルの意見が対立する。

そして、プロテウスはようやく患部に到着するが、残り時間は6分に迫る。

時間が少ない状況で、計画を中止させて脱出地点に向かうべきだと言うマイケルズの意見を聞き入れようとしないグラントは、デュヴァルとコーラを患部の除去に向かわせる。

デュヴァルがベネシュ博士を殺す気だと考えるマイケルズだったが、狂人だと思えないと言うグラントも船外に出る。

レーザーガンは問題なく作動し、デュヴァルは幹部を除去する。

破壊工作をした裏切り者だったマイケルズは、オーウェンスを殴り倒し、プロテウスを奪い脱出しようとする。

それに気づいたグラントはレーザーガンでプロテウスを攻撃し、航行不能になった船内からマイケルズを助けようとする。

オーウェンズに潜水具をつけるようにと指示したグラントは、マイケルズを助けようとするものの、彼は白血球に襲われてしまう。

グラントはオーウェンスを救出し、タイムリミットが近づく中、4人は、視神経を伝って眼球の表に回り脱出することを思いつく。

既に60分は過ぎ、リード大佐は、プロテウスを体内から摘出するための手術をするよう指示するが、カーター将軍は、グラントらが眼球から脱出することに気づく。

ベネシュ博士の元に向かったリード大佐は、涙の中のグラントらを確認し、スライド・グラスで彼らを摘出し拡大室に運ぶ。

4人の拡大は始まり、元に戻ったグラントらの脱出を喜ぶリード大佐とカーター将軍は、顔を見合わせる。

リード大佐とカーター将軍らは、グラントらの偉業を称える。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
米ソ冷戦下。
あらゆる物を縮小し、更にその持続時間を飛躍的に延ばした科学者のベネシュ博士がアメリカに亡命し、敵側の妨害工作により重傷を負ってしまう。
外部からの手術が不可能なために、ベネシュの亡命に協力した諜報員グラントらと医師達は、小型潜水艇”プロテウス”ごと縮小され、ベネシュ博士の人体に入り患部の除去手術を行う計画が実行される。
予定進路を外れて妨害工作に遭いながらも、グラントらはついに患部に到達するが、既に脱出する時間が残されていなかった・・・。
__________

SF作家オットー・クレメントジェイ・ルイス・ビクスビーの原案を基に映画化された、奇想天外なSF冒険映画の傑作。

宇宙と同じく、誰もが興味を抱く体内の神秘を、これほどまでにドラマチックで娯楽性のある作品に仕上げたのは画期的なことだ。

第39回アカデミー賞では、美術、視覚効果賞を受賞した。
・ノミネート
編集・撮影賞(カラー)

人間を潜水艇ごと縮小してしまうとい奇抜なアイデアとストーリーに加え、東西冷戦下の社会情勢の下、活発化する諜報活動や計画内部での妨害工作など、サスペンスタッチの物語に引き込まれる。

更に、スティーヴン・ボイドをはじめとした個性的な登場人物の中で、紅一点のラクエル・ウェルチの魅力も必見で、娯楽に徹したリチャード・フライシャーの演出手腕が光る。
体内の血管、臓器の構造や仕組みを、素人にもわかり易くするために度々登場する人体図、限られた時間内の緊迫感を伝えるタイム・カウンターなどが、効果的な役割を果たしている。

また、「真昼の決闘」(1952)などでも使われた、ドラマの進行と上映時間を一致させる手法が見事に生かされている。

縮小から60分間のカウントダウン、刻々と迫るタイムリミットの告知が緊張感を伝える。

音信不通の4人が、眼球の涙から救出されるクライマックスは、何度見ても手に汗を握ってしまう。

専門家の目にはどう映るかはわからないが、1960年代半ばに公開されたとは思えない、潜水艇”プロテウス”のデザイン・センスの良さをはじめ、今観ても全く古臭さを感じない。
計算機も一般的でない時代、計算尺を使う姿までが、むしろ新鮮に見えてしまう。

レナード・ローゼンマンの、幻想的な世界を見事にイメージした音楽も素晴らしい。

歴史劇などがよく似合うアクション派スティーヴン・ボイドは、正義感溢れる勇敢な諜報部員を好演し、11年後の1977年に45歳の若さでこの世を去ることになる、彼の代表作でもある。

知的でセクシーな脳外科医助手のラクエル・ウェルチ、命の尊さを知り、アリを殺すのも躊躇するようになる指揮官エドモンド・オブライエンと部下のアーサー・オコンネル、妨害工作を疑われる脳外科の第一人者アーサー・ケネディ、妨害工作の黒幕ドナルド・プレザンス、潜水艇船長のウィリアム・レッドフィールドなど、ベテラン個性派を揃えた豪華キャストも見所の一つだ。

技術者役でジェームズ・ブローリンも端役で登場する。

よく言われる、サルバドール・ダリが体内のデザインを担当したというのは事実ではい。

また、本作は、手塚治虫のアイデアを拝借したとか言われているが、そうであれば、それを強く主張すればいいのであって、作品自体の出来に影響するような問題ではない。


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