アメリカの元外交官ジョセフ・ウィルソンの妻ヴァレリー・プレイムがCIA工作員であることがマスコミに漏洩した”プレイム事件”を描く、製作、監督、撮影ダグ・リーマン、主演ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン、サム・シェパード他共演の社会派ドラマ。 |
・ショーン・ペン / Sean Penn / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ダグ・リーマン
製作総指揮
ジェフリー・スコール
デイヴィッド・バーティス
ケリー・フォスター
モハメド・カーラフ
製作
ビル・ポーラッド
ジャネット・ザッカー
ジェリー・ザッカー
アキヴァ・ゴールズマン
ジェズ・バターワース
ダグ・リーマン
原作
ジョセフ・ウィルソン
”The Politics of Truth:
Inside the Lies that Led to War and Betrayed
My Wife’s CIA Identity: A Diplomat’s Memoir”
ヴァレリー・プレイム
”Fair Game:
My Life as a Spy, My Betrayal by the White House”
脚本
ジェズ・バターワース
ジョン=ヘンリー・バターワース
撮影:ダグ・リーマン
編集:クリストファー・テレフセン
音楽:ジョン・パウエル
出演
ヴァレリー・プレイム・ウィルソン:ナオミ・ワッツ
ジョセフ”ジョー”ウィルソン:ショーン・ペン
サム・プレイム:サム・シェパード
ルイス”スクーター”リビー:デヴィッド・アンドリュース
ダイアナ:ブルック・スミス
ビル:ノア・エメリッヒ
フレッド:タイ・バーレル
ジェームズ・パヴィット:ブルース・マッギル
ジャック:マイケル・ケリー
カール・ローヴ:アダム・ルフェーヴル
ザハラ医師:リラズ・チャーヒ
ディック・チェイニー:本人(映像)
コンドリーザ・ライス:本人(映像)
アメリカ/アラブ首長国連邦 映画
配給 サミット・エンターテインメント
2010年製作 107分
公開
北米:2010年11月5日
日本:2011年10月29日
製作費 $22,000,000
北米興行収入 $9,528,090
世界 $24,188,920
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
2001年10月7日、ワシントンD.C.。
マレーシア、クアラルンプールでの任務を終えた、CIA秘密工作員のヴァレリー・プレイム(ナオミ・ワッツ)は、元ガボン大使でもある、中東・アフリカ問題の専門家で夫のジョセフ”ジョー”ウィルソン(ショーン・ペン)と、双子の子供達と共に郊外に住み、慌しい毎日を送っていた。
911以降、アメリカのブッシュ政権は、イラク政府が大量破壊兵器を密かに保有していると考えていた。
兵器拡散対策室副主任のジャック(マイケル・ケリー)と、その上司ビル(ノア・エメリッヒ)に呼ばれたヴァレリーは、ホワイトハウスからの指令である、対イラク合同作戦の指揮を任される。
イラクに関する情報を調べ始めたヴァレリーは、ジャックから、ジョーの協力を要請される。
2002年2月19日、CIA本部。 帰国したジョーは、現地での、あらゆる観点からの調査の結果として、ニジェールとイラクの500トンの”取引”はなかったと判断し、それを報告する。 ジョーは、他の者を送っても同じ結果だと自信を持って語るが、イラクの行動を確実視する、ホワイトハウス側の意見も聞いていたヴァレリーは、調査が続くことを夫に伝える。 カイロ。 2002年6月28日、CIA本部。 CIA副長官ジェームズ・パヴィット(ブルース・マッギル)との話し合いで、さらに詳しい調査を必要としたヴァレリーは、兄が、イラクの著名な物理学者である医師ザハラ(リラズ・チャーヒ)に接触して協力を求める。 その間も、ブッシュ大統領による、イラクが大量破壊兵器の存在を明らかにするよう要求する、脅しとも言える発言や、リビーのCIAへの圧力が強まる。 ヨルダン、アンマン イラク、バグダッド。 2003年1月29日。 ブッシュ大統領は、一般教書演説において悪の枢軸発言で、イラク他の大量破壊兵器開発を批判する。 3月17日、バグダッド。 既にヴァレリーの調査も必要なくなった状況で、彼女は、危険にさらされているザハラの兄を救出しようと、ジャックの許可を受けて極秘行動を始める。 ジョーは、ブッシュの言う、イラクの、アフリカからの大量のウラン調達がニジェールの”イエローケーキ”かを確認する。 ホワイトハウスが、大量破壊兵など何もなかったことを知り、焦りながら開戦し、後には引けない状況もジョーは知り、深入りが危険だとも警告される。 7月6日。 大統領次席補佐官カール・ローヴ(アダム・ルフェーヴル)は記者達の対応に追われ、副大統領首席補佐官リビーは、”イエローケーキ”やジョーについての情報を集めて、彼への攻撃を始める。 7月14日。 CIAの内部保安課の調べを受けたヴァレリーは、ジャックの手を借りることも出来ず、ビルから、海外を含めて展開する全ての作戦の指揮権を奪われる。 帰宅したヴァレリーは、両親や周囲の者達にも工作員だと知られ、ジョーがNBCのテレビ番組でインタビューに答え、今回の件が違法だと訴える。 ヴァレリーは親友ダイアナ(ブルック・スミス)に会うが、当然全てを話すわけにはいかなかった。 バグダッドから脱出するはずだった、ザハラの兄と家族は行方不明となり、彼女は、保護すると約束したヴァレリーを責める。 ヴァレリーは、手のひらを返したように、自分を厄介者扱いするジャックを痛烈に非難して見限る。 2003年9月26日。 CIA副長官パヴィットに呼び出されたヴァレリーは、抵抗しようとしている相手の権力の大きさを知り、ジョーの活動を止めさせるよう忠告される。 しかしジョーは、限界に達しているヴァレリーの意見も聞き入れないまま、徹底的に戦うことを彼女に伝える。 その後、ヴァレリーが、ジョーをニジェールの調査に推薦したことが問題になり、二人はさらに叩かれる。 ジョーと別居して実家に住むことになったヴァレリーは、今後のことを考えると、耐え切れなくなり涙する。 ヴァレリーは、父親サム(サム・シェパード)に苦しい胸の内を語るが、自分の強さを知る彼に励まされる。 やがて、副大統領首席補佐官リビーが、偽証罪で起訴されて辞任する。 リビーが罪を逃れることは容易に予想できたが、家に戻ったヴァレリーは、何が起ころうとも、自分の結婚だけは守り抜くことをジョーに伝える。 ジョーはヴァレリーに謝罪し、彼女は、夫が命がけで自分を守ってくれたことを感謝する。 二人はお互いの愛と、戦い抜く意志があるかを確かめ合う。 ジョーは、アメリカの誇りとも言える民主主義の下で、真実を追究するための行動を起すことを人々に訴える。 そして、ヴァレリーは、下院監査・政府改革委員会で、宣誓証言をする。 ルイス”スクーター”リビーは有罪となり、2年6ヶ月の実刑判決と罰金25万ドルが言い渡されるが、ブッシュ大統領の権限で、彼は減刑される。 2006年9月。
ジョーと面会したジャックは、イラクが500トンのウラン鉱石の精錬品”イエローケーキ”を、ニジェールから輸入したという副大統領の側近の情報を伝え、彼を適任者と判断して現地に派遣する。
...全てを見る(結末あり)
イラクの、原発責任者だったと思われる大学教授に接触したヴァレリーは、仲間と核開発についての情報を入手する。
ディック・チェイニー副大統領の、首席補佐官ルイス”スクーター”リビー(デヴィッド・アンドリュース)が、CIAの調査などに探りを入れ始める。
ヴァレリーは、ジョーにはクリーブランドと伝えて、ザハラをイラクに侵入させるための作戦を指揮する。
ザハラは兄に会うことができるが、彼は、核開発が行われるような国情でないことを妹に語る。
ヴァレリーはザハラからの情報を受けて、それをジャックとビルに伝え、都合の言い情報を入手したホワイトハウスが、CIAに単に確認しようとしているとパヴィットに報告する。
アメリカ軍による、先制攻撃となる空爆が行われる。
ニューヨーク・タイムズにジョーが寄稿した、”What I Didn’t Find in Africa”(私がアフリカで見つけなかったもの)という記事は波紋を呼ぶ。
新聞記事で、ヴァレリーがCIA工作員だと報じられ、それが世界中に知られることを知った彼女は動揺する。
その後、ジョーを指示する人々は増え続け、司法長官が大陪審を召集し、CIA工作員(ヴァレリー)の素性を暴露した者を、FBIが調査し始める。
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推薦状のメモでヴァレリー・プレイムの素性を知ったという、リチャード・アーミテージ元国務副長官は、自分が情報漏洩源だと認める。
*(簡略ストー リー)
911以降、ブッシュ政権は、イラク政府が大量破壊兵器を密かに保有していると考えていた。
CIAの秘密工作員ヴァレリー・プレイムは、対イラク合同作戦の指揮を、ホワイトハウスからの指令で任される。
ヴァレリーは、元ガボン大使でもある、中東・アフリカ問題の専門家、夫のジョセフ”ジョー”ウィルソンに、調査協力を依頼するよう上司に指示される。
それを受けたジョーは、ニジェールに向かい、同国とイラクとの、ウラン鉱石の精錬品”イエローケーキ”の大量取引を調査し、それがなかったという報告をする。
しかし、イラク側の動きを正当化しようとしていたホワイトハウスは、チェイニー副大統領の首席補佐官リビーをCIA本部に派遣して、探りを入れ始める。
ヴァレリーは、戦争を仕掛けようとするホワイトハウスに、イラクの核開発が進められていない事実を伝えるため、各国で作戦を展開して調査を続ける。
しかし、ブッシュ大統領は、イラクの大量破壊兵器の存在を確実視して名指しで非難し、宣戦布告して攻撃を始めてしまう。
自分の調査結果を無視した、ホワイトハウスの行動にジョーは反発し、新聞記事を寄稿して、それを公然と非難するのだが・・・。
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ジョセフ・ウィルソンの著書、”The Politics of Truth:Inside the Lies that Led to War and Betrayed My Wife’s CIA Identity: A Diplomat’sMemoir”と、ヴァレリー・プレイムの著書”Fair Game: My Life as a Spy, My Betrayal by the White House”を基に製作された作品でもある。
”ウォーターゲート事件”を彷彿させるような内容、巨大国家権力に立ち向かう正義と勇気を、骨太に描いたダグ・リーマンの力作である。
傲慢とも言える大義の犠牲者を、容赦なく徹底的に排除しようとする国家権力、それに対抗する人々を含め、実名で登場する人物同士の激しい”戦い”は実にリアルで、それ故に、真実を追究しようとする、強い”心”を感じる見応えあるドラマだ。
自分の身分を隠して多くの知人達と付き合い、工作員として世界を飛び回り、さらには母親として子育てもする主人公、架空の物語ならば理解できるが、これが実在の人物だというところが注目で、スパイ=”007”だと思っている呑気な日本人には、驚きの世界が展開する。
とは言っても、主人公を熱演するナオミ・ワッツが、一際美しく見える冒頭は、さながら”ボンド・ガール”のようだでもあり、実際のヴァレリー・プレイムも、単なる”秘密工作員”とは思えない容姿であることも事実だ。
序盤は優秀な元外交官を物静かに演じ、妻をサポートするジョセフ・ウィルソン役のショーン・ペンだが、家族を守り信念を貫く男となる後半は、凄まじい迫力と共に力強い演技を見せてくれる。
主人公ヴァレリー・プレイムの父親サム・シェパード、副大統領首席補佐官ルイス”スクーター”リビーのデヴィッド・アンドリュース、主人公の友人ブルック・スミス、タイ・バーレル、主人公の上司ノア・エメリッヒとマイケル・ケリー、CIA副長官ジェームズ・パヴィット役のブルース・マッギル、大統領次席補佐官カール・ローヴ役のアダム・ルフェーヴル、主人公の調査に協力するイラク人医師リラズ・チャーヒなどが共演している。