1953年に発表された、レイ・ブラッドベリ小説”華氏451”を基に製作された作品。 全てが機械化されている未来、書物を”悪”としてそれを焼却することが任務だった消防士の心の乱れや変化を描く、監督、脚本フランソワ・トリュフォー、主演オスカー・ウェルナー、ジュリー・クリスティ、シリル・キューザック他共演のSFドラマ。 |
・SF
■ スタッフ キャスト ■
監督:フランソワ・トリュフォー
製作:ルイス・M・アレン
原作:レイ・ブラッドベリ”華氏451”
脚本
フランソワ・トリュフォー
ジャン=ルイ・リシャール
撮影:ニコラス・ローグ
編集:トム・ノーブル
音楽:バーナード・ハーマン
出演
ガイ・モンターグ:オスカー・ウェルナー
リンダ・モンターグ/クラリス:ジュリー・クリスティ
消防隊長:シリル・キューザック
ファビアン/女性の校長:アントン・ディフリング
スタンダールの”アンリ・ブリュラールの生涯”を暗記する男性:アレックス・スコット
婦人:ビー・ダッフェル
小学生:マーク・レスター
イギリス/フランス 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1966年製作 112分
公開
イギリス:1966年9月16日
フランス:1966年9月15日
北米:1966年11月14日
日本:1967年12月20日
製作費 $1,500,000
北米興行収入 $1,000,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
全てが機械化されている時代。
消防士ガイ・モンターグ(オスカー・ウェルナー)やファビアン(アントン・ディフリング)らは、隊長(シリル・キューザック)の指揮下である家に向かう。
モンターグらは、照明器具やテレビ内などに隠されていた書物を発見して、それを持ち去り火炎放射器で焼き払う。
隊長はモンターグを呼び寄せて、昇進が近いことを知らせ、消防隊はその場を去る。
帰宅途中のモノレール内で、近所に住むクラリス(ジュリー・クリスティ)に話しかけられたモンターグは、自分の妻が彼女に似ていることや、紙が燃える温度が”華氏451”であることなどを教える。
クラリスは、消防士のモンターグに、かつての仕事は本を焼くことではなく、火を消すことだったことを確認する。 教師見習いのクラリスは、なぜ本を焼くのかをモンターグに尋ねるが、彼も明確な答えは返せない。 単なる仕事と割り切るモンターグは、クラリスと別れて帰宅し、妻リンダ(ジュリー・クリスティ)に昇進できそうだと伝える。 食事をしようとした二人だったが、知識や情報を入手する手段であるテレビ番組が始まる。 テレビと対話しそれに従うリンダの行動に、モンターグは興味を示さない。 翌日、隠された本を見つけ出す講師として授業を担当していたモンターグは隊長に呼ばれる。 昇進のことをリンダに話したかなどを聞かれたモンターグは、ファイルを見せられ、昇進のために後姿の写真があと6枚要ると言われる。 帰宅したモンターグは、リンダが意識を失い倒れていることに気づき、病院に電話して薬を飲んだらしいことを伝える。 モンターグは、興奮剤と鎮静剤を一緒に飲むと危険だと言われ二つの瓶を見つけ、救急車が数分で着くと言われる。 暫くすると二人の救命士がが現れ、リンダの血液を入れ替えると言って処置を始める。 処置を終えた救命士は、モンターグに心配いらないことを伝えてその場を去る。 尚も意識のないリンダだったが、彼女は翌朝、何事もなかったかのように回復する。 何も覚えていない様子のリンダは、モンターグの話しも真剣に聞かずに彼を誘い愛し合う。 仕事から戻ったモンターグは、リンダに知られないように棚の中に何かを隠す。 夜中に起きたモンターグは、隠したチャールズ・ディケンズの小説”デイヴィッド・コパフィールド”を読み始める。 ある日、署に向かうモンターグを婦人(ビー・ダッフェル)と共につけたクラリスは、彼と偶然会ったように見せかけて声をかける。 クラリスは悩みがあることを伝え、モンターグは心配して話をするため彼女を誘い、ファビアンが二人を目撃する。 モンターグは、解雇されたと言うクラリスを気の毒に思い、彼女が他の教師に嫌われ締め出されたことを知る。 署に向かおうとしたモンターグだったが、クラリスは、一緒に学校に行ってほしいと彼に頼み隊長に電話をする。 クラリスは妻リンダを装い、モンターグの体調が悪いため休むことを伝える。 その件を隊長から知らされたファビアンは不審に思う。 モンターグと学校に向かったクラリスは、自分が子供達にも嫌われていることを知り傷つく。 クラリスは、昇進したら力になれると言うモンターグに、なぜ消防士などをしているのかを泣きながら尋ねる。 モンターグは、以前、本を読んだかを尋ねられたことを確認して、昨夜、読んだとクラリスに伝える。 その夜リンダは、モンターグが本を読んでいることを知り、棚に隠してあった本を捨てようとする。 それに気づいたモンターグは、干渉するなと言って彼女を眠らせる。 翌日、出勤したモンターグは、ポールで上り下りする気になれないまま、救急車で出動する。 婦人の家に押し入った隊員達は大量の本を見つけ、そして隊長は秘密の図書館の存在を知る。 隊長は書物の無益性を説くが、モンターグは本を持ち出そうとして隠し、それをファビアンが目撃する。 婦人は本の引き渡しを拒むが、隊長は可燃液体を本に撒き、その場を焼き払うと警告する。 マッチを手にした婦人は自ら火を放ち焼け死に、その光景を見たモンターグは動揺する。 帰宅したモンターグは、友人達とテレビを見ているリンダを無視して部屋に閉じこもる。 友人に挨拶もしないモンターグを、リンダは非難する。 モンターグはテレビを消し、リンダと友人達に仕事で起きた出来事を話し、彼女らの生活行動に意見する。 小説を持ち出したモンターグはそれを読み始め、一人の女性が心を乱して涙する。 女性達はその場を去り、友人をなくしたと言ってリンダはモンターグを非難するが、彼はもっと本を読むべきだと言い放つ。 その夜、本と共に焼身自殺した婦人のことが頭から離れないモンターグは、クラリスも同じことをする悪夢にうなされる。 救急車に気づいたクラリスは、伯父に逃げるよう指示され、本を持ってその場を離れる。 翌朝、仕事を辞める話などをしてリンダと口論しながら家を出たモンターグは、クラリスの家が封鎖されていることに気づく。 モンターグは、隣人の婦人からクラリスらが連れ去られたことを知らされる。 署に向かい隊長の部屋に忍び込んだモンターグはクラリスの資料を探す。 そこに隊長が現れ、捕えたものの資料を確認しているというモンターグを疑いながら、受け取ったばかりの資料を見せる。 クラリスが捕まっていないことを知ったモンターグは、彼女を捕えれば家を渡すと隊長に言われる。 モンターグはめまいがして意識を失いかけるが、クラリスを早く見つけるように隊長に言われその場を去る。 リンダは、署の前に設置されている情報ポストにモンターグの写真を入れて、彼が本を持っていることを知らせる。 モノレールを降りたクラリスを待っていたモンターグは、彼女の家の地下に向かう。 クラリスは、捕まった伯父が隠してあった住所録があると伝え、それをモンターグが見つける。 それを焼いたモンターグは、死んだ婦人も仲間だということをクラリスに確認する。 モンターグは、本の内容を暗記している人々の存在をクラリスから知らされる。 隊員の家に本を隠して陥れる考えを伝えたモンターグは、クラリスを仲間の元に行かせて隊長に会う。 モンターグは辞職することを隊長に伝えるが、今日だけは任務を遂行するように言われて出動する。 自宅に向かったため驚くモンターグは、リンダが出て行くことも知る。 家に押し入った隊長らは本を発見し、モンターグに焼き払うよう命ずる。 モンターグがベッドやテレビを焼いたため、隊長は本を焼き払うよう指示する。 それに従ったモンターグだったが、隠し持っていた本が隊長に見つかり逮捕すると言われる。 抵抗するモンターグは銃を向けられるが、隊長に火炎放射器を向けて彼を焼き殺す。 モンターグはその場から逃走し、殺人犯として指名手配される。 逃亡を続けたモンターグは、森の中で共同生活をしていたスタンダールの”アンリ・ブリュラールの生涯”だという男性(アレックス・スコット)に迎えられる。 男性は、モンターグが殺害されることを伝える、警察のでっち上げ放送をモンターグに見せる。 モンターグは、世界の書物を暗記する人々を男性に紹介され、この場以外にも同じような人々がいることを知らされる。 いずれは暗記したものを本として再び出版すると言われたモンターグは、現れたクラリスにある本を見せる。 エドガー・アラン・ポーの”怪奇と幻想の物語”だと確認したクラリスは、暗記してそれを焼くよう男性と共にモンターグに指示する。 そして、クラリスや人々は暗唱を続け、モンターグは本を暗記する。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
全てが機械化されている未来、人々はあらゆる情報をテレビから入手していた。
消防士のガイ・モンターグは、”悪”の根源である書物を焼き払う任務を遂行する毎日を送る。
ある日モンターグは、近所に住む女性クラリスと知り合い、単なる仕事だと割り切っていた本を焼くという行為に疑問を持ち始める。
モンターグは、妻リンダが情報化社会に完全に浸っていることも気になり、やがて本を手にして読み耽る日々を過ごすようになる。
隊長にも評価され昇進も近かったモンターグは、秘密の図書館を所有する婦人の家で、彼女が書物と共に焼身自殺するのを目の当たりにして心を乱す・・・。
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ヌーヴェルヴァーグを代表する監督として、既にキャリアを重ねていたフランソワ・トリュフォーが、読書愛好家の思いを逆手に取った斬新な演出を見せる一作。
*”華氏451”とは紙の燃え始める温度(摂氏233度)。
SFを嫌う彼が、その要素を排除して製作したとは言うが、今観ると半世紀前の作品にしてはかなり先進的な映像に驚く。
現在の液晶テレビのようなものも登場する、色調のセンスなども興味深い内容と共に、その未来感の描写は注目だ。
しかしトリュフォーは、イギリス映画と言っていい本作で英語が苦手なため苦労したらしく、主演のオスカー・ウェルナーともトラブルが絶えなかったらしい。
アルフレッド・ヒッチコック作品などでお馴染みのバーナード・ハーマンの音楽が効果抜群であり、非常に印象に残る。
エリート消防隊員の心の変化を見事に演ずる、主人公のオスカー・ウェルナー、その妻と隣人の二役を演ずるジュリー・クリスティ、消防隊長のシリル・キューザック、隊員と、一瞬ではあるが女性学校長を演ずるアントン・ディフリング、書物を暗記している男性のアレックス・スコット、書物を大量に隠し持つ婦人のビー・ダッフェル、そしてマーク・レスターが小学生役で早く出演している。