1958年に発表された、レオン・ユーリスの小説”Exodus”(原題)の映画化。 ナチス・ドイツによるホロコーストを逃れたユダヤ人のパレスチナへの入植とイスラエル建国までを描く、製作、監督オットー・プレミンジャー、脚本ダルトン・トランボ、主演ポール・ニューマン、エヴァ・マリー・セイント、ラルフ・リチャードソン、ピーター・ローフォード、リー・J・コッブ、サル・ミネオ他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:オットー・プレミンジャー
製作:オットー・プレミンジャー
原作:レオン・ユーリス
脚本:ダルトン・トランボ
撮影:サム・リーヴィット
編集:ルイス・R・ローフラー
ポスター・デザイン:ソウル・バス
音楽:アーネスト・ゴールド
出演
ポール・ニューマン:アリ・ベン・カナン
エヴァ・マリー・セイント:キャサリン”キティ”・フリーモント
ラルフ・リチャードソン:サザーランド将軍
ピーター・ローフォード:コールドウェル少佐
リー・J・コッブ:バラク・ベン・カナン
サル・ミネオ:ドヴ・ランダウ
ジョン・デレク:タハ
デヴィッド・オパトシュー:アキヴァ・ベン・カナン
ヒュー・グリフィス:マンドリア
ジル・ハワース:カレン・ハンセン
ポール・スティーヴンス:ルーベン
マーティン・ミラー:オデンハイム医師
アレグザンドラ・スチュアート:ジョダナ・ベン・カナン
フェリックス・エイルマー:リーバーマン医師
マリウス・ゴーリング:フォン・ストーク
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1960年製作 207分
公開
北米:1960年12月15日
日本:1961年7月22日
製作費 $4,000,000
世界 $21,750,000
■ アカデミー賞 ■
第33回アカデミー賞
・受賞
音楽賞(ドラマ・コメディ)
・ノミネート
助演男優(サル・ミネオ)
撮影賞(カラー)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1947年、イギリスの統治領キプロス島。
アメリカ人のキティ・フリーモント(エヴァ・マリー・セイント)は、ナチス・ドイツのホロコーストを生き抜き、パレスチナに向かおうとしているユダヤ人を、イギリスが収容所に送り込もうとしていることを知る。
イギリスがアラブ諸国との紛争を避けるためとった政策ではあるが、キティは真意を確かめるために、イギリス軍司令官サザーランド将軍(ラルフ・リチャードソン)の元に向かう。
サザーランド将軍は、カメラマンであったキティの夫の死を悼み、その勇敢さを称える。
キティは、帰り際に見送ってくれたコールドウェル少佐(ピーター・ローフォード)から、将軍がユダヤ人問題に苦慮していると聞き、益々興味を抱き、島に滞在することを決める。
その頃、ユダヤ人地下組織のアリ・ベン・カナン(ポール・ニューマン)が島に潜入し、同志ルーベン(ポール・スティーヴンス)に迎えられる。 サザーランド将軍の計らいで、ユダヤ人の収容所に案内されたキティは、看護師として手伝うことになる。 キティは病棟で、勝気な青年ドヴ・ランダウ(サル・ミネオ)と、その恋人で病棟を手伝う少女カレン・ハンセン(ジル・ハワース)に出会う。 元イギリス軍将校のアリは、キプロス人協力者マンドリア(ヒュー・グリフィス)と接触し、大量のユダヤ人を貨物船でパレスチナに送り込もうとする計画を話す。 アリは、マンドリアが手配したポンコツの貨物船を手に入れ、さらにジープなどの調達など、無理難題をマンドリアに要求する。 キティはカレンが気に入り、サザーランド将軍から彼女の外出許可をもらい町に連れ出し、アメリカに連れて行くことも考え始める。 それを知ったカレンは喜ぶが、父親がパレスチナで生存している可能性があり、それが気がかりだった。 しかし、カレンはキティの提案を受け入れ、アメリカ行きを決意する。 イギリス軍将校に扮したアリは、偽の証明書で車両を調達し、”ダビデの星”号でヨーロッパから移送されてきた、収容所のユダヤ人を船に移動させる。 途中アリは、通りがかったコールドウェル少佐に質問されるが、少佐はユダヤ人を厄介払いできると考え、アリに協力してしまう。 居合わせたキティは、カレンもそのユダヤ人の中にいるのではと心配するが、アリは機転を利かしサザーランド将軍の命令で、彼女を収容所に置いてきたということにしてしまう。 カレンが収容所にいないことを知ったキティは、即刻、司令部に向かいサザーランド将軍に知らせ、自分の過ちに気づいたコールドウェルは港を封鎖させる。 アリはコールドウェルに対し、アメリカの協力の下、611人のユダヤ人と共に船は、パレスチナに向かうことを伝える。 サザーランド将軍は、カレンが強制的に船に乗せられていた場合、記者会見でそれを発表することを考え、キティを船に向かわせる。 キティは、アリの許可を受けてカレンを連れ戻そうとするが、彼女は同胞とパレスチナへ向かおうとする。 ”エクソダス”と改名した船のユダヤ人は、収容所代わりとなる船でハンストをする覚悟を決める。 ユダヤ人は、船の食料を海に捨ててハンストを始めるが、次第に衰弱する者が出始める。 人々を気遣っていたオデンハイム医師(マーティン・ミラー)は、心臓麻痺で倒れ死亡してしまう。 アリは仕方なく、13歳以下の子供を収容所に戻す決断を下す。 キティは、アリに船を降りるように説得するが、彼はそれを聞き入れず、子供達の母親も子供を収容所に戻すのを拒み、自由への強い意志を見せる。 サザーランド将軍はロンドンに向かい、オデンハイム医師を収容所で手伝っていたキティは、船で看護活動を始める。 将軍は、キプロスの任を解かれ、イギリスは”エクソダス”の出航とハイファへの入港を許可する発表をする。 やがて”エクソダス”はハイファに到着し、過激派イルグンに入ろうとしていたドヴは逮捕されてしまう。 カレンを含めた子供達は、ガン・ダフナ村に移送され、ユダヤ機関の会長でもある、アリの父親バラク・ベン・カナン(リー・J・コッブ)や、土地を提供したアラブ人のタハ(ジョン・デレク)らの歓迎を受ける。 釈放されたドヴは、イルグンのアジトに連れて行かれ、アリの叔父アキヴァ(デヴィッド・オパトシュー)の尋問を受ける。 ドヴは、自分が収容所の死体処理班をしていたため生き延びられたことと、ドイツ兵に犯されたことを告白する。 そしてアキヴァは、ドヴに”イルグンの戦い”を誓わせる。 アリは、レストランで偶然キティに出くわし、船での無礼を謝罪する。 アキヴァに呼ばれたアリは、キティに挨拶もせずその場から姿を消す。 軍事組織ハガナーに籍を置くアリは、イギリスの軍事施設の破壊を繰り返すイルグンに、攻撃の歯止めをかけさせるためにアキヴァの元に向かう。 パレスチナ分割後にはアラブとの対抗上、お互いが手を組むしかなかったが、闘い方の違う両者は意見が分かれてしまう。 翌日、キティをガン・ダフナ村に送ることになったアリは、途中、村を望む丘で車を止めて、彼女と語り合い互いに惹かれ合うようになる。 村に行く途中、実家に寄ったアリ達は、父バラクの前で、不仲のアキヴァの話を始め、バラクは気分を害してしまう。 キティは、ガン・ダフナで働くアリの妹ジョダナ(アレグザンドラ・スチュアート)と村に向かい、カレンに再会する。 エルサレムに向かうアリは、キティに別れを告げようとするが、彼女もアリの家族などに会い、違う人間だと感じたことと、昼間のことを忘れるよう彼に伝える。 その後、カレンの父親の生存を確認したアリは、彼女とキティを呼び寄せる。 アリは、精神に異常をきたした父親に、カレンを会わせる。 ショックを受けたカレンは、その直後に起きた、イルグンのテロの爆破を目撃して気を失ってしまう。 そのテロを実行したドヴはイギリス軍に尾行され、アキヴァは捕らえら、法廷で裁かれて絞首刑が決まる。 バラクは刑務所のアキヴァに面会に行くが、言葉を交わすことなく立ち去ってしまう。 しかしバラクは、弟アキヴァの命が救われるよう神に祈る。 あくまでも、ハガナーとイルグンの統一が必要だと考えたアリは、アキヴァを救い出そうとする。 アリはイルグンと手を組み、ドヴに自首させて刑務所に入れ、アキヴァ救出の内部からの工作を計画する。 刑務所の内部では準備が進められ、爆破と共にアキヴァと囚人達の脱出作戦が始まる。 無事にアキヴァを助け出したアリは、街道の検問を突破するが、アキヴァは撃たれてしまう。 アキヴァは、”バラクによろしく”と言い残し、アリに見守られながら息を引き取る。 事件を内部で指揮し逃亡したドヴが指名手配され、それをラジオで聞いたカレンは、実は臆病な彼を気遣う。 負傷したアリも、ガン・ダフナ村までたどり着き治療を受ける。 村にイギリス軍の捜査が入り、アリはキティに付き添われタハの屋敷に匿われる。 その頃、村では大量の武器が見つかり、施設を運営していたリーバーマン医師(フェリックス・エイルマー)が連行される。 アリの様態は悪化して脈が止まってしまうが、キティの的確な処置で彼は一命を取り留める。 1947年11月29日。 回復したアリも、ラジオでそれを聞きキティと愛を確かめ合う。 しかし、協力者であったアラブ人のタハは、元ナチスの将校で、アラブ人を扇動するフォン・ストーク(マリウス・ゴーリング)に、ユダヤ人絶滅のために尽くすよう強要されてしまう。 タハはアリとキティに、村の子供達が殺されることを知らせて逃亡させる。 村の見張りをしていたカレンは、逃げてきたドヴに再会する。 アリとキティも村に戻りドヴと合流し、ハガナーに支援を要請して、子供達を移動させようとする。 アリとキティは子供達を連れて、危険な山道を進んでい行く。 村に支援部隊が到着し、見張りについていたドヴの元にカレンが寄り添ってくる。 ドヴは、戦いが収まった後に結婚することをカレンに約束して彼女を村に戻す。 しかし、その途中、カレンはアラブ人に捕らえられてしまう。 翌朝、子供達を移動させたアリ達は村に戻り、見張りを交代したドヴは、カレンの姿が見えないのに気づく。 偵察に出たアリは、アラブの裏切り者として無惨にも殺されたタハの遺体を見つけ、ドヴも、カレンの遺体を発見する。
...全てを見る(結末あり)
国連でパレスチナ分割が決議され、民衆の前に現れたバラクは、翌年5月14日に、イスラエルが独立するだろうということ確信して歓喜に応える。
*(簡略ストー リー)
1947年。
イギリスの統治領キプロス島。
アメリカ人のキティ・フリーモントは、ナチス・ドイツのホロコーストを生抜き、パレスチナに向かおうとするユダヤ人を、イギリスが収容所に送り込もうとしていることを知る。
アラブ諸国との紛争を避けるためとった政策だったが、その頃、ユダヤ人地下組織のアリ・ベン・カナンが島に潜入し、パレスチナに同胞を移送する計画を進める。
イギリスはそれを阻止しようとするが、ユダヤ人はハンストを決行し、ついに出航が認められ、”エクソダス”と改名した船はハイファへと向かうのだが・・・。
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原題は、当時、イギリスの統治領キプロス島から、強行脱出しようとする船に付けられた”Exodus”で、”旧約聖書”のモーセがユダヤ人を率いエジプトから脱出した”出エジプト記”と、本来の意味”国外脱出、大量出国”から引用されている。
第33アカデミー賞では、アーネスト・ゴールドが音楽賞を受賞し、その主題曲は、映画史上に残る名曲として語り継がれる、勇壮で力強く尚且つ、民族問題に翻弄される人々の苦悩を表現する曲に仕上がっている。
・ノミネート
助演男優(サル・ミネオ)
撮影賞(カラー)
キプロス島の脱出までの展開は、オットー・プレミンジャーらしい、皮肉を込めたユーモアあるシーンが随所に見られ、ダルトン・トランボの脚本を見事に生かし、序章として十分楽しませてくれる。
それほどスケールが大きい訳でもなく、派手な内容でもないが、歴史の大きなうねりを感じさせる、緊張感のある、中盤からのサスペンス・タッチの展開は、3時間30分弱の長編にも拘らず、クライマックスまで飽きることがない。
但し、時折見られるややちぐはぐな編集などが気になり、主人公の2人が始めて愛を語るキスシーンでは、カメラマンの影が映ってしまう場面などもあり、ロマンチックなシーンを台無しにしている。
30代半ばのポール・ニューマンは、台詞を語らなくても、その雰囲気だけで十分魅力的なところが実に彼らしく、野心ある地下活動家を好演している。
冒頭からの登場となるエヴァ・マリー・セイントは、主役と言っていいほどの存在感を示し、精神的に逞しく、また清潔感溢れる美しさも際立っている。
ユダヤ人に友好的な、イギリス軍司令官ラルフ・リチャードソンの、統率力があり茶目っ気まで兼ね備えた人物像も興味深い。
対照的に、自分のミスでユダヤ人移送を知らずに手伝ってしまう、ひょうきんなイギリス軍将校ピーター・ローフォード、主人公の父でユダヤ機関のリーダーのリー・J・コッブ、過激派に身を投ずる青年サル・ミネオ、その恋人で、重要な役を演ずる少女ジル・ハワース、ユダヤに友好的なアラブ人領主ジョン・デレク、主人公の叔父である過激派イルグンのリーダー、デヴィッド・オパトシュー、キプロスの協力者ヒュー・グリフィス等が共演している。