1998年公開「エリザベス」の続編。 女王即位以来続く国内の混乱や国外からの圧力に立ち向かいながらも“ゴールデン・エイジ”(黄金時代)を築き弱小国のイングランドの国家としての威信を守るために戦ったエリザベス1世の生き様を描く、監督シェカール・カプール、主演ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ、クライヴ・オーウェン、サマンサ・モートン、アビー・コーニッシュ他共演の歴史ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:シェカール・カプール
製作総指揮
マイケル・ハースト
デブラ・ヘイワード
ライザ・チェイシン
製作
ティム・ビーヴァン
エリック・フェルナー
ジョナサン・カヴェン・ディッシュ
脚本
ウイリアム・ニコルソン
マイケル・ハースト
撮影:レミ・アデファラシン
編集:ジル・ビルコック
衣装デザイン:アレクサンドラ・バーン
音楽
クレイグ・アームストロング
A.R.・ラーマン
出演
ケイト・ブランシェット:エリザベス1世
ジェフリー・ラッシュ:フランシス・ウォルシンガム
クライヴ・オーウェン:ウォルター・ローリー
サマンサ・モートン:メアリー・スチュワート
アビー・コーニッシュ:エリザベス・スロックモートン
トム・ホランダー:エイミアス・ポーレット
リス・エヴァンス:ロバート・レストン
ジョルディ・モリャ:フェリペ2世
アダム・ゴドリー::ウィリアム・ウォルシンガム
ローレンス・フォックス:クリストファー・ハットン
エディ・レッドメイン:アンソニー・バビントン
デヴィッド・スレルフォール:ジョン・ディー博士
イギリス 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
2007年製作 114分
公開
イギリス:2007年11月2日
北米:2007年10月12日
日本:2008年2月16日
製作費 $55,000,000
北米興行収入 $16,264,480
世界 $74,237,560
■ アカデミー賞 ■
第80回アカデミー賞
・受賞
衣装デザイン賞
・ノミネート
主演女優賞(ケイト・ブランシェット)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1585年。
世界最強国スペイン国王フェリペ2世(ジョルディ・モリャ)は、カトリック原理主義者としてヨーロッパ全土を”聖戦”に巻き込んでいたが、プロテスタントの女王エリザベスの支配する国イングランドだけはそれに抵抗した。
____________
弱冠25歳でイングランド女王に即位したエリザベス1世(ケイト・ブランシェット)は、父王ヘンリー8世の遺志を継ぎ、プロテスタントの女王としてイングランドを統治していたが、国内にはカトリック信者も多く、多くの問題を抱えていた。
エリザベス失脚を狙う者も多い中、イングランドはヨーロッパの強国からの脅威も警戒していた。
中でもカトリック原理主義者のスペイン国王フェリペ2世は、度々エリザベスに圧力をかけた。 フェリペは、カトリック派のスコットランド女王で、エリザベスの従妹メアリー・スチュワート(サマンサ・モートン)をイングランド女王に据えようと画策していた。 女王暗殺も考えられる中、国民を愛するエリザベスはさらなる国家繁栄に自信を見せる。 エリザベスの側近フランシス・ウォルシンガム(ジェフリー・ラッシュ)は、子供のいる、幽閉中のメアリー・スチュワートの名前が王位に上がらぬよう、女王に結婚を提案するが、彼女にその意思はなかった。 そんなエリザベスは、純真無垢な侍女のエリザベス”ベス”スロックモートン(アビー・コーニッシュ)との、他愛ない会話や遊びが唯一の安らぎだった。 その頃フェリペは、スペインの森を切りつくす勢いで、世界に誇る大艦隊を誕生させようとしていた。 そんな時、新世界から帰還した航海士ウォルター・ローリー(クライヴ・オーウェン)がエリザベスの前に現れる。 ローリーは、敵国スペインから奪った戦利品などを女王に捧げ、彼女の気を引くことに成功する。 一方、ロンドンのイエズス会のロバート・レストン(リス・エヴァンス)は、フェリペと共謀しエリザベス暗殺計画を進めていた。 ウォルシンガムの策略で、自分に夢中の若いオーストリア大公に会ったエリザベスだが、彼女はいつものようにその誘いを断る。 エリザベスは、ローリーの自分に対する立ち振る舞いを気にして距離を置き、ベスに彼のことを探らせる。 ベスも気に入ったと見えるローリーを、エリザベスは呼び寄せて話を聞き、教養があり夢について熱く語る彼に魅了される。 ベスはイエズス会にいた従兄を裏切り、ウォルシンガムに差し出し、彼は密かにうごめく女王暗殺の陰謀を探る。 エリザベスはそれをスペイン大使に追求するが、彼女は海賊(ローリー)と寝ているとまで言われて侮辱され、激怒して大使を追放する。 イングランド側が、暗殺計画を察知したとの報告を受けたフェリペは、1ヶ月以内に艦隊が出航できるよう命令を出す。 女王の占星術師ジョン・ディー博士(デヴィッド・スレルフォール)は、台頭する帝国と滅びる帝国、 どちらかを特定することができないことをエリザベスに伝える。 ローリーが出航準備を始めたことを知り、嵐に立ち向かわねばならない自分を手助けさせるために、エリザベスは彼を近衛隊長に任命しする。 ”ヴァージン・クィーン”の誓いを立てたエリザベスは、それ以上を望むことはできなかった。 ローリーは従兄を処刑されて悲しむベスを慰め、やがて愛し合うようになる。 エリザベスは自分をベスに投影させ、ローリーとの叶わぬ恋を想う。 そして、メアリーの命令は下り、イエズス会の女王暗殺の準備は整う。 実行犯のアンソニー・バビントン(エディ・レッドメイン)が、女王エリザベスに銃口を向け発砲するのだが、銃は空砲だった。 女王襲撃を、監視官エイミアス・ポーレット(トム・ホランダー)から聞かされたメアリーは、エリザベスの生存を知り愕然とする。 ウォルシンガムは、暗殺計画に加担したカトリック教徒の弟ウィリアム(アダム・ゴドリー)を捕らえ、絶縁してフランスに追放し命だけは助ける。 今回の事件で動揺するエリザベスは、自分の暗殺を企てたメアリーの処刑をウォルシンガムに進言されるが、さすがに従妹の処刑は拒む。 1587年2月8日。 しかし、その処刑はメアリーを利用したフェリペの罠だあり、それを知ったウォルシンガムはエリザベスに謝罪する。 大義名分ができたフェリペは、1万の兵と無敵艦隊を、イングランドへと向かわせる命令を出す。 エリザベスは、ローリーを側に置き心の拠り所としていたが、ベスが彼の子を身篭り、女王との誓いを破り二人は密かに結婚してしまう。 それを知ったエリザベスは激怒し、ローリーとベスを逮捕監禁してしまう。 フェリペの進軍に焦りを見せるエリザベスは、占星術師ディー博士の、”嵐に襲われた時、ある者は、鷲のように翼を広げ、風に乗って舞い上がる”という言葉を聞き、民と共に敵に立ち向かう覚悟を決める。 女王の命令で、ローリーを含めた囚人も解放され、海岸線は警戒態勢となり、スペインの無敵艦隊を迎え撃つ。 エリザベスは自ら戦いの中に身を置くため、前線に赴き兵士達の士気を高める。 そして海戦は始まり、苦戦するイングランド艦隊は大損害を受ける。 しかし、荒れ狂う海域に錨を下ろした無敵艦隊めがけ、ローリーの艦などが焼討ち船となり突入する。 その結果、無敵艦隊は全滅し、エリザベスのイングランドは勝利する。 やがて、役目を終えたウォルシンガムは、エリザベスに見守られながら息を引き取る。 その後、ローリーとベスには男の子が生まれ、二人を許したエリザベスは彼らを祝福する。 そして、”ヴァージン・クイーン”エリザベスは、国民の母としての新たな誓いをたてる。 スペインの無敵艦隊の敗北は、海戦史上屈辱的な汚点を残し、フェリペ2世は10年後に財政を破綻させて死去する。 一方、イングランドは、平和と繁栄の“ゴールデン・エイジ”(黄金時代)を迎えることになる。
...全てを見る(結末あり)
今回ばかりはウォルシンガムも後には引かず、結局メアリーは処刑される。
__________
参考:「エリザベス」(1998)
*(簡略ストー リー)
世界最強国スペイン国王フェリペ2世は、カトリック原理主義者として、プロテスタント派のイングランド女王エリザベス1世に圧力をかける。
”ヴァージン・クイーン”としての誓いをたてていたエリザベスの前に、新世界から戻った航海士のウォルター・ローリーが現れる。
エリザベスは自由人ローリーに魅了されていくのだが、フェリペがカトリック派であるスコットランド女王メアリー・スチュワートを巻き込み、エリザベス暗殺計画を実行する。
それは失敗に終わり、従妹メアリーを已む無く処刑したエリザベスだったが、その暗殺計画がフェリペの考えていたイングランド攻撃のための策略だったことが分かる。
そしてフェリペは、1万の兵と無敵艦隊をイングランドに向かわせる命令を下すのだが・・・。
__________
前作「エリザベス」(1998)とほぼ同じスタッフ、主演のケイト・ブランシェットとジェフリー・ラッシュは同じ役ではあるが、前作を観ていなくても問題なく楽しめる作品で続編と考える必要はない。
但し、本作を楽しむには、この時代の歴史的背景を理解する必要がある。
チューダー朝の終焉、単純にイングランドとイギリスの違いなど、基本的なことを学ぶ良い機会かもしれないので予備知識を持って観ることをお勧めします。
第80回アカデミー賞では、衣装デザイン賞を受賞し、ケイト・ブランシェットが主演女優賞候補になった。
本作はエリザベス1世そのものを描く人間ドラマだが、フェリペ2世の命令により、広大な森林が伐採されて建造されるスペイン艦隊(無敵艦隊)がイングランドと相打つ”アルマダの海戦”の、迫力あるスペクタクル映像も見応え十分だ。
セットではない歴史的建造物での撮影などもドラマにリアリティを与えているが、女王の年齢設定他、歴史的事実をかなり脚色している部分もある。
前作「エリザベス」(1998)も監督したインド出身のシェカール・カプールの演出は、隣国同士の宗教が絡んだ女王暗殺計画など、一級のサスペンス・ドラマとして楽しませてくれる。
エリザベス意思の強さを見事に表現した、クレイグ・アームストロングとA.R.・ラーマンの力強い音楽も印象に残る。
絢爛豪華な衣装や宮殿のセットなどが霞んでしまう程の存在感 を示す、ケイト・ブランシェットの力感溢れる演技は見ものだ。
残念ながら彼女のアカデミー賞受賞はならなかったが、30年前の「グッバイガール」(1997)でのマーシャ・メイスンが見せた演技が、”上手過ぎた”と言われ同賞受賞を逃した時のことを思い出す。
女王の側近フランシス・ウォルシンガムのジェフリー・ラッシュ、航海士である寵臣ウォルター・ローリーのクライヴ・オーウェンも、女王ケイト・ブランシェットの引き立て役に徹し、その確かな演技がドラマに重厚感を与える。
スコットランド女王メアリー・スチュワートのサマンサ・モートン、女王の心の拠り所の侍女で、エリザベス・スロックモートンのアビー・コーニッシュ、フェリペ2世(ジョルディ・モリャ)の命を受け女王暗殺を画策するリス・エヴァンス、メアリー・スチュワートの監視官のエイミアス・ポーレットのトム・ホランダー、女王暗殺に加担するウォルシンガムの弟役のアダム・ゴドリー、大法官クリストファー・ハットンのローレンス・フォックス、暗殺実行犯アンソニー・バビントンのエディ・レッドメイン、占星術師ジョン・ディー博士デヴィッド・スレルフォールなどが共演している。