史上最低監督と言われたエド・ウッドの映画製作活動と怪奇役者でベラ・ルゴシとの友情を描く、製作、監督ティム・バートン、主演ジョニー・デップ、マーティン・ランドー、ビル・マーレイ、サラ・ジェシカ・パーカー、パトリシア・アークエット、ジェフリー・ジョーンズ、リサ・マリー他共演のヒューマン・コメディの秀作。 |
・ティム・バートン / Tim Burton 作品一覧
・ジョニー・デップ / Johnny Depp 作品一覧
■ スタッフ キャスト ■
監督:ティム・バートン
製作
ティム・バートン
デニーズ・ディ・ノヴィ
原作:ラドルフ・グレイ”Nightmare of Ecstasy”
脚本
スコット・アレクサンダー
ラリー・カラゼウスキー
撮影:ステファン・チャプスキー
編集:クリス・レベンゾン
メイクアップ
リック・ベイカー
ヴェ・ニール
ヨランダ・トーシン
音楽:ハワード・ショア
出演
エド・ウッド:ジョニー・デップ
ベラ・ルゴシ:マーティン・ランドー
バニー・ブレッケンブリッジ:ビル・マーレイ
ドロレス・フーラー:サラ・ジェシカ・パーカー
キャシー・オハラ:パトリシア・アークエット
ザ・アメージング・クリズウェル:ジェフリー・ジョーンズ
ヴァンパイラ(マイラ・ヌルミ):リサ・マリー
トー・ジョンソン:ジョージ”ザ・アニマル”スティール
ロレッタ・キング:ジュリエット・ランドー
レモン:G・D・スプラドリン
オーソン・ウェルズ:ヴィンセント・ドノフリオ
トム・メイソン:ネッド・ベラミー
ジョージ・ウェイス:マイク・スター
ポール・マルコ:マックス・カセラ
コンラッド・ブルックス:ブレント・ヒンクリー
マッコイ:ランス・ハワード
トニー・マッコイ:ビル・キューザック
支援者:グレゴリー・ウォルコット
バーテンダー:コンラッド・ブルックス
インド人ミュージシャン:コーラ・パンディット
アメリカ 映画
配給
1994年製作 126分
公開 タッチストーン・ピクチャーズ
北米:1994年9月28日
日本:1995年9月2日
製作費 $18,000,000
北米興行収入 $5,866,520
■ アカデミー賞 ■
第67回アカデミー賞
・受賞
助演男優(マーティン・ランドー)
メイクアップ賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1952年。
自称映画プロデューサー兼監督のエド・ウッド(ジョニー・デップ)は、友人でゲイのバニー・ブレッケンブリッジ(ビル・マーレイ)と共に芝居の評価を気にする。
終演後にエドは、バニーや出演者でもある恋人のドロレス・フーラー(サラ・ジェシカ・パーカー)、ポール・マルコ(マックス・カセラ)、コンラッド・ブルックス(ブレント・ヒンクリー)らとバーに向かう。
芝居を酷評されたエドは、ショックを受けるバニーらに、今後の明るい展望を語るものの、帰宅後のベッドの中では、自信を失ったことをドロレスに伝える。
26歳のオーソン・ウェルズが、「市民ケーン」(1941)で若くして成し遂げた功績と自分を比較して嘆くエドは、ドロレスに励まされる。 ベッドから起き上がったドロレスは、クローゼットの中の自分のセーターがなくなっていることに気づき、エドは何も知らぬふりをする。 スタジオの雑用係をしつつ新作のアイデアを探していたエドは、”ヴァラエティー”誌に掲載された、性転換した男の話を映画化するという記事に注目する。 映画製作会社”スクリーン・クラシックス”のジョージ・ワイス(マイク・スター)に連絡したエドの、自分が”適任”だという言葉が気になるドロレスだったが、仕事を得るための口実だと彼から言われる。 作品が自分に向いていると言ういエドは、その理由を訊かれ、女装趣味であるため、秘密を抱え世間を恐れる人の気持ちがわかり、恋人のセーターさえ黙って着ているとワイスに伝える。 ワイスから、自分が求めるのは自己主張ではなく、4日で撮って利益を上げるビジネスだと言われたエドは、落胆しながらその場を去り、バーに寄り考え込む。 バーを出たエドは、棺おけの下見をしていた、往年のドラキュラ役者ベラ・ルゴシ(マーティン・ランドー)と出会う。 大ファンであることをベラに伝えたエドは、バスで帰ろうとする彼を車で送り、かつての大スターも世間から見放されていることを知る。 ベラの話にのめり込みながら、郊外の質素な家に着いたエドは、再会を約束して別れる。 帰宅したエドは、大スターのベラ・ルゴシに会ったことを興奮しながらドロレスに話す。 その後、スタジオの同僚からはベラが過去の人だと言われたエドだったが、彼に再会して益々、惹かれていく。 再びワイスに会ったエドは、スターを起用するのが映画をヒットさせる秘訣だと伝える。 自分は”デヴィッド・O・セルズニック”ではなく、B級作品の製作者だと言うワイスに、わずか1000ドルでベラ・ルゴシを出演させて、3日で映画を完成させることを約束したエドは、監督を任される。 脚本を書き始めたエドは、ベラに新作の出演を伝え、バニーに連絡してゲイを集めさせる。 作品の内容をベラに話したエドは、皆を上から操るような役柄だと伝える。 ”紐を弾く/Pull the Strings”のだなと言って納得するベラの言葉が気に入ったエドは、それを台詞に使う。 その夜、出来上がった脚本をドロレスに読ませたエドは、彼女のセーターを着て、自分が女装趣味だということを告白する。 女装したエドを見て取り乱しそうになるドロレスだったが、彼に説得されて協力することになる。 そしてエドは、バニーや仲間達と共に、大スターであるベラ・ルゴシを出演させた作品「グレンとグレンダ」を、驚くべき早業で完成させる。 しかし、「グレンとグレンダ」は撮影所や世間から全く相手にされず、ワイスにも見放されてしまい、仕方なくエドは、自分の力で映画製作の続行することを考える。 次回作「原子の花嫁」の準備を始めたエドは、プロレスラーのトー・ジョンソン(ジョージ”ザ・アニマル”スティール)を起用しようと考え、彼と話をする。 そんな時エドは、ベラがモルヒネ中毒と金銭面で苦しんでいることを知る。 悩むエドは、自力で資金を集めるべきだとドロレスから助言されて、新作を完成させようとする。 霊能予言者のザ・アメージング・クリズウェル(ジェフリー・ジョーンズ)と意気投合したエドは、資金集めのパーティーを開くものの、出資者はいなかった。 そんなエドは、資金提供が期待できる女優志願のロレッタ・キング(ジュリエット・ランドー)に声をかけ、彼女が投資すると考えて、希望したドロレスの役を与えてしまう。 「原子の花嫁」の撮影を、いつものように自己満足で進めてしまうエドは、資金提供を当てにしていたロレッタの全財産が300ドルだと知りショックを受ける。 一気に資金難となったエドらは、借りていたスタジオから追い出されてしまう。 再び資金集めのパーティーを開いたエドは、会場にいた、テレビの人気者であるヴァンパイラ/マイラ・ヌルミ(リサ・マリー)の出演を望む投資家の意見を聞き、彼女と出演交渉をする。 ヴァンパイラに相手にされなかったエドは、それでも諦めずにスポンサーを探す。 そしてエドは、精肉業者のマッコイ(ランス・ハワード)から、大爆発で終わるラストと息子のトニー(ビル・キューザック)を出演させる条件で出資してもらう。 仕方なく撮影に参加したドロレスは、ロレッタといがみ合いながらも経理係役をこなし、エド達は、撮影所の倉庫から映画で使う大ダコを盗み出す。 その甲斐があり、ベラは、水中で大ダコと大格闘の熱演を見せてラストを締めくくり、ついに作品は完成する。 「原子の花嫁」の完成パーティーがマッコイの精肉工場で開かれ、アンゴラのセーターを着て女装し、仲間と羽目を外すエドを見たドロレスは、そのバカさ加減に呆れてしまい、愛想を尽かして彼の元を去る。 その後、失業保険も打ち切られることになり絶望したベラは、エドを呼んで道連れにして死のうとする。 ベラを説得したエドは、彼を施設に連れて行き、麻薬依存症の治療を受けさせる。 その場でエドは、入院している父の面倒を見るキャシー・オハラ(パトリシア・アークエット)と出会う。 世間から忘れ去られていたベラは、皮肉にも入院したことでマスコミの話題となり、彼が見世物にされることに気づいたエドは、記者達を追い払う。 しかし、ベラは、自分が注目されてそれが宣伝になることを喜ぶ。 施設で度々出くわすエドとキャッシーは、惹かれ合う仲になる。 初デートで正直に女装癖を告白したエドを、心優しいキャッシーは受け入れる。 財産のないベラに代わり、高額な入院費を払おうとしたエドは、それを払うことができず、ベラは退院させられることになる。 回復したと言ってベラを病院から連れ出したエドは、残り少ない彼の人生をフィルムに残そうとする。 「原子の花嫁」は「怪物の花嫁」と改名されて試写会が開かれることになり、ようやくヴァンパイラを誘えたエドは、ベラやキャシーらと共に劇場に向かう。 上映は始まるものの、劇場内は大混乱となる。 翌日、今までのことをエドに感謝しながら街を歩くベラは、その場で、かつての役を演じ始める。 拍手する人々からサインを求められたベラは、上機嫌になる。 その夜、キャシーと過ごしていたエドは、ベラが亡くなったという知らせを受ける。 ドラキュラの衣装で埋葬されるベラの葬儀は行われ、落ち込むエドは、自分が撮影したベラの映像を観て悲しむ。 その後エドは、家賃の請求に来た大家から、教会が映画を作ろうとしていると言われ、脚本は仕上がっているため、ベラのフィルムを使って製作する自分の作品に投資してもらおうとする。 バプテスト教会からの資金援助を受けることになったエドは、ベラの代役を探していた。 そんなエドは、失業したヴァンパイラを仲間に引き入れことができる。 ダイナーでヴァンパイラと話していたエドは、同席していたキャシーが声をかけた、彼女の知人であるカイロプラクターのトム・メイソン(ネッド・ベラミー)が、ベラの代役として使えると考える。 仲間達と共にバプテスト教会の洗礼を受けて資金に目途が付いたエドは、「プラン9 フロム・アウタースペース」の撮影を開始する。 そして、いつものように精力的に仕事をこなしていたエドだったが、出資者の牧師レモン(G・D・スプラドリン)らが口を出し始める。 自分の思い通りにならないエドは苛立ち、女装して撮影をしようとする。 それを再びレモンに非難されたエドは、我慢の限界だと言ってスタジオを飛び出しバーに向かう。 憧れのオーソン・ウェルズ(ヴィンセント・ドノフリオ)がその場にいることに気づいたエドは、彼に話しかける。 「夢のために闘え、他人の夢を撮ることはない」と言う、ウェルズの言葉に勇気付けられたエドは、撮影を再開する。 そしてエドは、自分の思い通りに撮影を続け、納得いく作品を完成させる。 試写会の日、キャシーと劇場に着いたエドは、クリズウェルに紹介されて舞台に上がり、作品をベラに捧げると語る。 上映は始り、仲間達と満員の観客に囲まれたエドは、思い出のベラの映像を観ながら人生最高の瞬間を味わう。 試写会は終わり、劇場を出たエドは、キャッシーにプロポーズして、結婚するためにラスベガスに向かう。 エドワード・D・ウッドJr.は、ハリウッドで闘い続けたものの、成功に見放されて酒に溺れ、1978年54歳で死亡した。 キャシー・ウッドは、20年間エドに連れ添い、生涯、彼を支え続け、再婚はしなかった。 ベラ・ルゴシは、103本の作品に名を連ね、関連作品の売り上げはボリス・カーロフを凌いでいる。 バニー・ブレッケンブリッジは、性転換をせずにニュージャージーで暮らしている。 ドロレス・フーラーは、エドと別れた後に作曲家として成功し、エルヴィス・プレスリーの”ロカ・フラ・ベイビー”、”スイムで行こう”などのヒット曲を生んだ。 トー・ジョンソンは、数多くのB級映画に出演し、ハロウィンの売り上げの1位を記録し、1971年に亡くなった。 ヴァンパイラは、芸能界を引退してアクセサリー商に転向し、1980年代に、肖像権の侵害で”エルヴァイラ”を訴えて敗訴した。 ポール・マルコとコンラッド・ブルックスは、今でも映画界で活躍し、ポールはファンクラブを設立して会長をしている。 カイロプラクターのトム・メイソンは、エド・ウッドの”Night of the Ghouls”にも出演し、素顔を見せている。 クリズウェルは、その後もインチキな予言で”ザ・トゥナイト・ショー”に出演し、1982年に”異次元”へと旅立った。
...全てを見る(結末あり)
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その2年後に、エドは”史上最低監督”に選ばれるものの、それ以来、新世代のファンの心を掴むことになる。
コンラッドは近年、”低級映画の名優”に選ばれた。
*(簡略ストー リー)
自称映画作家のエド・ウッドは、ある時、女装趣味の自分にぴったりの企画を見つけて、プロデューサーのワイスに自分を売り込みをかける。
一旦はそれを断られたエドだったが、往年の怪奇映画スター、ベラ・ルゴシに出会い、彼の出演を条件に映画の監督を任される。
早速、自らの生活をモデルにした作品製作を開始したエドは、自己満足で撮影を続けるのだが、完成した映画は世間に全く相手にされない。
それを意に介さないエドは、資金集めに苦労しながらも、尊敬するベラや仲間達と共に作品を製作するのだが・・・。
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1992年に発表された、ラドルフ・グレイのエド・ウッドの伝記小説”Nightmare of cstasy ”の映画化。
B級映画マニアで知られるティム・バートンが、史上最低監督と言われたエド・ウッドを作品の題材に選ぶこだわりようは半端でない。
かなり脚色されているとは思われるが、エド・ウッドの素人目にも胡散臭い映画作りは、共に働く仲間達を含めて、とても正常には思えないという、ナンセンス極まりない描写が実に愉快だ。
第67回アカデミー賞では、マーティン・ランドーが迫真の演技で助演男優賞を、またメイクアップ賞も受賞した。
これはコメディ映画なのであり、実際のエド・ウッドは、もう少し真面目に映画作りをしていたと思われるのだが、それを考えるとなおさら可笑しい。
本作は、ティム・バートン自身が、好き勝手に映画を作ろうとする手法のルーツとして、エド・ウッドへのオマージュとも言える。
ティム・バートンとジョニー・デップの黄金コンビとしては、商業的には成功しなかった作品なのだが、個人的には二人のベストに上げたいほど好きな作品だ。
ハワード・ショアの、エドの作品で使用された音楽をアレンジした、ベラに対しての優しさを思わせる曲や、怪奇映画を連想させ尚且つ拍子抜けしたテーマ曲も印象に残る。
主演のジョニー・デップは、楽天家であるエド・ウッドの脳天気さを、彼らしい演技でコミカルに演じている。
往年の怪奇スター、ベラ・ルゴシに成りきるマーティン・ランドーの熱演は、各方面で絶賛された。
私生活でもドラキュラのイメージを変えない、周囲に影響を与えるベラ・ルゴシの持つ独特の雰囲気や、メイクから物腰まで、彼の圧倒的な存在感なくして本作は語れない。
プライドが高く厳ついベラ・ルゴシと温和な最悪監督エド・ウッドの、親子のような信頼関係にホロリとくる場面も何度かある。
マーティン・ランドー扮するベラ・ルゴシは、入院してベッドに横たわっている時も両手を胸で交差させているが、そのドラキュラ・ポーズも笑える。
バニー・ブレッケンブリッジ役のビル・マーレイを始め、奇怪的な仲間達を演ずる役者の熱演も見逃せない。
異常なエドの元を去る恋人ドロレス・フーラーのサラ・ジェシカ・パーカー、後の恋人で妻となるパトリシア・アークエット、霊能預言者ザ・アメージング・クリズウェル役のジェフリー・ジョーンズ、ヴァンパイラ役のリサ・マリー、マーティン・ランドーの実娘で、女優志願のロレッタ・キング役ジュリエット・ランドー、トー・ジョンソンのジョージ”ザ・アニマル”スティール、撮影に口出しするスポンサーのG・D・スプラドリン、「グレンとグレンダ」のプロデューサー、ジョージ・ワイス役のマイク・スター、ベラ・ルゴシの代役トム・メイソン役のネッド・ベラミー、オーソン・ウェルズ役のヴィンセント・ドノフリオ、エド・ウッド作品の常連だったポール・マルコ役のマックス・カセラとコンラッド・ブルックス(カメオ出演も)役のレント・ヒンクリー、インド人ミュージシャン役でコーラ・パンディット、”怪物の花嫁”の出資者ランス・ハワード、その息子ビル・キューザック(ジョン・キューザックの兄)また、「プラン9 フロム・アウタースペース」の出演者であるグレゴリー・ウォルコットもカメオ出演している。