1924年に上演された、ノエル・カワードの舞台劇”Easy Virtue”を基に製作された作品。 離婚訴訟で傷ついた女性が安易な美徳を求めた末に起きる報いを描く、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演イザベル・ジーンズ、ロビン・アーヴァイン、イアン・ハンター他共演のドラマ。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:マイケル・バルコン
原作:ノエル・カワード”Easy Virtue”(戯曲)
脚本:エリオット・スタナード
撮影:クロード・L・マクドネル
編集:イヴォール・モンタギュー
出演
ラリータ・フィルトン/ラリータ・ホイットテッカー:イザベル・ジーンズ
ジョン・ホイットテッカー:ロビン・アーヴァイン
原告弁護人:イアン・ハンター
ホイットテッカー大佐:フランク・エリオット
オーブリー・フィルトン:フランクリン・ダイオール
クロード・ロブソン:エリック・ブランズビー・ウィリアムズ
ホイットテッカー夫人:ヴァイオレット・フェアブラザー
マリオン・ホイットテッカー:ダーシア・ディーン
ヒルダ・ホイットテッカー:ドロシー・ボイド
サラ:エニッド・スタンプ・テイラー
イギリス 映画
配給
Woolf & Freedman Film Service(イギリス)
Sono Art-World Wide Pictures(北米)
1928年製作 70分
公開
イギリス:1928年3月5日
北米:1928年6月
日本:未公開
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
”美徳は報いを受ける。
しかし、安易な美徳は、誹謗中傷という社会的な報いを受けることになる。”
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イングランド。
ラリータ・フィルトン(イザベル・ジーンズ)の離婚裁判。
画家のクロード・ロブソン(エリック・ブランズビー・ウィリアムズ)と浮気をしたと思われるラリータは証言台に立ち、その件を追及される。
原告の弁護人(イアン・ハンター)は、持ち出した証拠品である酒のボトルについての説明をラリータに求める。
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クロードのアトリエで肖像画を描いてもらっているラリータの脇で、夫オーブリー(フランクリン・ダイオール)は、ボトルの酒を飲み続ける。 3日間描くことを中断して再びアトリエに向かったラリータは、クロードに手を握られる。 酔ったオーブリーに掴まれて手を痛めていたラリータは、それをクロードに伝える。 クロードは、アトリエでは二度と酒を飲ませないとラリータに約束する。 証言台のラリータは、夫が酒乱だと考えるかを追及される。 裁判長は、それに答える必要はないと判断し、弁護人とラリータのやり取りは続く。 その後、あんな夫のために苦しむ必要がないという、クロードからラリータに送られた手紙が証拠として提出さる。 手紙を受け取ったラリータはクロードに迫られるが、それをオーブリーが目撃してしまう。 オーブリーはクロードに近づき杖で襲い掛かるが、クロードは銃を手にして発砲する。 ラリータは倒れこんだオーブリーに寄り添い、警官を呼ばれたクロードは絶望する(自殺する)。 傷を負ったオーブリーはラリータに抱きかかえられながら、クロードの手紙を手にする。 弁護人は、クロードが全財産をラリータに残すつもりだったと指摘し、ラリータには年約2000ポンドが入ることになっていた。 陪審員の協議の末、故クロードとの姦通による罪でラリータは有罪となる。 ラリータは、記者やカメラマン、そして人々の目から逃れるためにコート・ダジュールへと向かう。 ホテルに着いたラリータは、”ラリータ・グレイ”の名でチェックインする。 心は傷ついていたものの、魅力的なラリータには新たな恋の予感が・・・。 テニスコートにいたラリータに、打ったボールをぶつけてしまった青年ジョン・ホイットテッカー(ロビン・アーヴァイン)は、彼女に歩み寄り気遣う。 ラリータの部屋に向い、テラスでカクテルを飲みながら二人は話を弾ませる。 ジョンは、愛のメッセージが添えられたラリータへの花を見てその場を去る。 その後、花束を手に現れたジョンは、ラリータに好意を伝えるものの彼女は戸惑う。 親交を深めた二人は、自然に惹かれ合うようになり、ジョンの気持ちがラリータの心を癒した。 馬車で外出した際、愛を告げられたラリータは過去があるために戸惑う。 ジョンは愛があればいいと言ってラリータに結婚を迫り、返事を夜まで待つことになる。 馬車を降りた二人は歩いてホテルに向かい、その後、夜も更けて、ジョンの忍耐も限界に達した頃、ラリータからの電話を受ける。 それを聞いていた電話交換手の女性は、二人の関係が気になり、結ばれることを知り安堵する。 ジョン・ホイットテッカー夫人となったラリータはイングランドに戻り、ジョンの実家屋敷に向かい、彼の両親(フランク・エリオット/ヴァイオレット・フェアブラザー)と姉妹マリオンとヒルダ(ダーシア・ディーン/ドロシー・ボイド)に紹介される。 ラリータは、ジョンの妹ヒルダから、肌の色が浅黒い異国の人かと思っていたと言われて戸惑う。 ジョンは母親から、元恋人のサラ(エニッド・スタンプ・テイラー)が訪れると知らされて動揺する。 サラを歓迎したジョンは、彼女にラリータを紹介して祝福される。 食事の時間となり、ラリータをよく思わない母親は、以前会ったことがあるように思えるため、共通の友人がいるかを彼女に尋ねる。 父親は食後の会話で、ラリータが素敵な女性であることを認め、それをジョンに伝える。 しかし、母親はラリータを侮辱し、ジョンに彼女の素性を聞く。 ジョンは何も答えられず、父親は妻の言葉に不快感を示すが、彼女は、間違いなくラリータをどこかで見たことがあり、何かを隠していると言い張る。 ラリータは不穏な雰囲気に気づき、家族に挨拶して寝室に向かう。 メイドを下がらせたラリータは、一人考え込む。 それから数日、ラリータは母親の仕打ちに耐えながら平静を保ち笑顔で対応した。 ポロの競技場。 弁護士は、ジョンの車に乗っていたラリータに気づき、同じく目が合った彼女も驚く。 その後、屋敷でパーティーが開かれることになり、招待状を書く母親に声をかけて手伝おうとしたラリータだったが、それを断られる。 そこに弁護士が現れ、彼はラリータに挨拶する。 部屋に戻ったラリータは、その場に置いてあったカメラに気づき、記者達に追われた辛い思い出が甦り、それに本を投げつける。 ラリータは、このまま屋敷に留まることができないことをジョンに伝える。 コート・ダジュールに戻ることを提案するラリータは、皆が自分を嫌っていることと、やがて同じ思いになるのではないかとジョンに伝える。 しかし、ラリータはその場に残り悩み続け、ついにジョンも自分から心が離れたことを知る。 母親は、娘が見つけたラリータの記事が掲載されている雑誌を見て、彼女を憶えていたことが確認できる。 その記事を読んで驚いた母親は、ラリータが、例の離婚裁判で話題になった本人だったことに気づき驚く。 父親は落ち込むラリータを励ますものの、母親は、その記事を彼女に見せて罵り始め夫に全てを知らせる。 ラリータの過去を追及する気がないことを伝える父親だったが、彼女は全てをさらけ出すように、その記事を彼に読ませる。 サラが騒ぎに気づき、思慮深い彼女は、ジョンにラリータを守ってあげるよう伝える。 記事を読みショックを受けるジョンに母親は寄り添うが、ラリータは、愛し合ったから結婚したのであって、それ以上の理由は必要ないと言い切る。 母親は、ジョンがそれを受け入れても、自分達は決して納得しないことを伝える。 ラリータは、ジョンに会う以前のことは自分だけの問題だと言葉を返す。 家名が汚されてもいいのかとラリータに言い寄る母親は、ふしだらな女を理解することなどできないと伝える。 理解などしてほしくないと答えるラリータは、平然として、使用人が持ってきたパーティー用の提灯を選ぶ。 父親は娘達を下がらせて妻に冷静になるよう伝えるが、彼女が聞き入れないため席を外す。 ラリータは、他に話がなければ部屋に戻ると言ってその場を去ろうとする。 母親から、パーティーが終わるまで大人しくしているように言われたラリータは、笑いながらその場を去る。 父親は、ジョンの愛があれば乗り切れると言ってラリータを励ます。 ラリータは、ジョンが愛しているのは家族だけだと言って嘆き部屋に向かう。 家族会議が開かれ、母親は、パーティでは誰にも知られないような振る舞いをするよう指示する。 母親は、ジョンとラリータの幸せを願うサラを非難する。 招待客が現れたため対応する母親は、ラリータのことを聞かれ、頭痛で寝ていると答える。 パーティーは始まり、休んでいるはずのラリータが姿を現し、招待客の注目を集める。 ジョンに声をかけ、勝ち誇ったような表情を見せながら、母親から頭痛のことを聞かれたラリータは、そ知らぬ振りをして彼女に恥をかかせる。 弁護士に気づいたラリータは、彼に挨拶しながら、家族に過去を探らせたのではないかと尋ねる。 それを否定した弁護士は、いつかは知られることだと言って彼女と踊り始める。 弁護士と共に別の部屋に向かったラリータは、結婚したことを後悔していると語る。 ジョンを気の毒に思うラリータは、今回の離婚は簡単に済むと付け加える。 弁護士はホールに戻り、サラにラリータの元に向かうよう伝える。 ラリータは、今夜出て行くことと、ジョンと結婚するようサラに伝えてその場を去る。 離婚が成立したラリータは、法廷を離れて記者に囲まれるが、今回は逃げ隠れする気はなかった。
...全てを見る(結末あり)
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ジョンは知人の弁護士(離婚裁判での原告の弁護人)と会話を交わして別れる。
★ヒッチコック登場場面
上映から約21分、テニスコートにいたヒロイン(イザベル・ジーンズ)の横をステッキを手に通り過ぎ、その場を去る太った男性。
後姿なので注意していないと分からない。
*(簡略ストー リー)
イングランド。
ラリータ・フィルトンは自殺した画家クロードとの浮気を疑われ、離婚裁判で有罪になる。
世間の目が気になり耐え切れないラリータは、コート・ダジュールに向い青年ジョンと出会う。
そして、傷ついた心を癒してくれたジョンとの結婚を決意し、夫人となったラリータは帰国する。
ジョンの家族に紹介されたラリータだったが、彼の母親に嫌われて素性を探られる。
やがて、話題になった離婚裁判の当事者であることを知られたラリータは、母親から酷い仕打ちを受け、ジョンの心も彼女から離れていく・・・。
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デザイナーから美術を担当し、監督となり既に10作以上の作品を手掛けていたアルフレッド・ヒッチコック演出のサイレント映画。
弱冠25歳のノエル・カワードが書いた戯曲を基に、独特の風刺や皮肉が入り混じる、当時としてはかなり刺激的な内容だったと想像ができる作品。
2008年にジェシカ・ビール、コリン・ファース、クリスティン・スコット・トーマス共演で再映画化された。
サイレント作品なので、説明不十分でやや分かり難い場面はあるのだが、時計の振子で時間の経過を表現したり、電話交換手の表情だけで主人公の結婚を伝えるシーンなど、かなり工夫が見られる興味深い作品。
サスペンスでもスリラーでもないヒッチコック作品であるが、”謎の物体”が裁判長のカツラだと分かる冒頭のシーンから異様なムードが漂い、後の彼の作品に影響しているようなシーンが多く見られる。
心傷ついた女性から恋する女、そして、素性を知られて開き直り、魔性の女の様な表情も見せるイザベル・ジーンズの好演は見ものだ。
「恋の手ほどき」(1958)でヒロインの大伯母を演じ、60代後半にも拘らずその美しさに驚いた方も多いはずだ。
ヒロインと恋に落ちる青年ロビン・アーヴァイン、原告の弁護人イアン・ハンター、ヒロインを擁護する青年の父親フランク・エリオット、その妻ヴァイオレット・フェアブラザー、娘達ダーシア・ディーンとドロシー・ボイド、ヒロインの最初の夫フランクリン・ダイオール、ヒロインを愛する画家エリック・ブランズビー・ウィリアムズ、ヒロインの幸せを願う、青年の元恋人エニッド・スタンプ・テイラーなどが共演している。