ジェームズ・フォグルの自伝的小説”Drugstore Cowboy”を基に製作された作品。 ドラッグストアを襲撃する薬物依存症の若者達の生き様を描く、監督、脚本ガス・ヴァン・サント、主演マット・ディロン、ケリー・リンチ、ジェームズ・レグロス、ヘザー・グラハム、ジェームズ・レマー他共演の犯罪ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ガス・ヴァン・サント
製作
ニック・ウェクスラー
カレン・マーフィー
製作総指揮:ケイリー・ブロコウ
原作:ジェームズ・フォグル:”Drugstore Cowboy”
脚本
ガス・ヴァン・サント
ダニエル・ヨスト
撮影:ロバート・D・イェーマン
編集
メアリー・バウアー
カーティス・クレイトン
音楽:エリオット・ゴールデンサル
出演
ボブ・ヒューズ:マット・ディロン
ダイアン・ヒューズ:ケリー・リンチ
リック:ジェームズ・レグロス
ナディーン:ヘザー・グラハム
ジェントリー刑事:ジェームズ・レマー
デヴィッド:マックス・パーリック
トム・マーフィ神父:ウィリアム・S・バロウズ
ヒューズ夫人:グレイス・ザブリスキー
カウンセラー:ビア・リチャーズ
警官:ジョン・ケリー
アメリカ 映画
配給
International Video Entertainment
Avenue Pictures
1989年製作 102分
公開
北米:1989年10月6日
日本:1990年12月22日
製作費 $2,500,000
北米興行収入 $4,729,350
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
かつて、薬物依存症だったボブ・ヒューズ(マット・ディロン)は、妻ダイアン(ケリー・リンチ)、相棒のリック(ジェームズ・レグロス)と恋人ナディーン(ジェームズ・レグロス)と共にドラッグストア襲撃を繰り返していた頃のことを考える。
救急車で搬送されるボブは、いつかは破滅すると思いながら日々を過ごしていたことも脳裏を過る。
1971年、オレゴン州、ポートランド。
ボブら4人は、あるドラッグストアに入り、ナディーンが発作を起こした振りをして倒れる。
薬剤師がナディーンの様子を見ている隙に、ボブはドラッグを盗んで裏口から逃げる。
その間、薬剤師が救急車を呼び、リックとナディーンもその場から去り、ボブとダイアンがが待つ車に乗り逃げ去る。 家に着いた4人は、ドラッグでハイになろうとするが、隣人のデヴィッド(マックス・パーリック)が現れる。 ボブは、デヴィッドが持ってきた覚醒剤を試して病院を襲うことをダイアンに提案する。 モルヒネと覚醒剤を交換しようとしたボブは、ナディーンの値段をデヴィッドに聞かれる。 ナディーンは憤慨して揉め事になり、ダイアンがそれを鎮めてデヴィッドを帰す。 その頃、ジェントリー刑事(ジェームズ・レマー)は、ドラッグストア襲撃事件の捜査を始めていた。 その夜、ボブは病院襲撃に向かおうとするが、ジェントリーら警官が押し入り家の中を調べる。 ドラッグストア襲撃を否定されたジェントリーは、それを信じるはずもなく、未成年にしか見えないナディーンに、ドラッグの在りかを話せば見逃すと言って白状させようとする。 しかし、何の収穫もなかったジェントリーは、ボブらを脅してその場を去る。 翌朝、ダイアンと共に洋服を取りに来たボブを、いつまでも子供じみたことしかできないと言って母(グレイス・ザブリスキー)は嘆く。 新しいアパートに移ったボブは、ナディーンから犬を飼いたいと言われるものの、それを許さない。 かつて、愛犬のせいで逮捕されたことがあるボブは、縁起が悪い話しをしたことでナディーンを責める。 ベッドの上に帽子を置くことや、鏡の裏を見るのも災いを招くと言う気を落ちするボブを、ダイアンは励ます。 ボブらを監視していたジェントリーは、彼らがドラッグストアを襲い戻った現場を押さえようと考える。 同じアパートに住む老婦人から、不審者が梯子を持ってうろついているため不安だと言われたボブは、それがジェントリーだと気づく。 翌日ボブは、隣人とドラッグの取引をしているように見せかける。 隣人には、不審者が家を覗いているようだと伝えたボブは、事が起きる様子を見守る。 不審者が梯子を使って上っていくことに気づいた隣人は、その男(ジェントリーの相棒)を銃撃してしまう。 仕組んだことは分かっていると現れたジェントリーに言われたボブは、彼を挑発したために痛めつけられる。 その場を離れることにしたボブらは、ドラッグをとスーツケースに隠してバスで運び、自分達は車で移動する。 停留所でスーツケースを受け取ったボブらは、旅を続ける。 ある町に寄ったボブは、ドラッグストアの窓が開いていることに気づき、リックとナディーンと共にその場に侵入してドラッグを奪う。 モーテルで待つダイアンの元に向かったボブは、コカインなどの他に上物のディローディドがあったために驚く。 ダイアンとリックと共にディローディドでハイになったボブは、天井裏にドラッグを隠す。 ボブに嫌われていることで、今後が不安なため動揺するナディーンは、捨てられると言ってリックに不満を訴える。 ナディーンはベッドに帽子を置き、ジンクスなどないことを証明するとリックに伝える。 ダイアンとリックと共に病院に向かったボブは、別々の車に乗った二人を正面入り口で暴走させる。 警備員や職員が外に出た隙に、窓を破り病院内に侵入したボブは、見つかってしまいその場から逃れる。 額を怪我したボブは、女性トイレに入り身を潜める。 翌朝、ボブが現れないためにダイアンと共にモーテルに戻ったリックは、ベッドの横で死んでいるナディーンに気づく。 戻ったボブは、ベッドの上の帽子を確認しながら、ドラッグストアを襲った際にくすねたディローディドを、ナディーンが過剰摂取したことを知る。 ナディーンを責めたことでリックに批判されたボブだったが、帽子をベッドに置き災いを招いたと言って憤慨する。 天井裏にナディーンの死体を隠したボブは、警察の大会があるため全室予約済みなので、部屋を空けてほしいとモーテル側に言われる。 不運を嘆くボブは、警官が集まる中、オフィスに向い1日だけ滞在を伸ばしてもらおうとするものの、それを断られる。 部屋に戻り、警官に追い出されることを考えると不安に思うボブは、大きな服のケースにナディーンの死体を隠して車のトランクに入れる。 田舎に戻り治療を受けて足を洗うとボブに言われたダイアンは驚き、一緒に帰ることを提案されるものの、それを断る。 好きにするようダイアンに伝えたボブは、モーテルを出て郊外の林に向い死体を埋めて、ダイアンとリックを残してその場を去る。 ポートランド。 その後、医療施設でメタドン治療を受けるボブは、子供時代から知っているトム・マーフィ神父(ウィリアム・S・バロウズ)を見かけて声をかける。 薬物依存症のマーフィ神父と街に出て散歩をしたボブは、かつてドラッグを回してくれた彼と話を弾ませる。 工場での仕事も得たボブは、アパートで穏やかな暮らしを始め、同じ依存症の者達との話し合いにも出席する。 ある日、アパートで待っていたジェントリーから、ダイアンのことなどを聞かれたたボブは、まともになるべきだと忠告される。 マーフィ神父との交流を続けたボブは、社会と麻薬患者の今後の関りなどを語り合う。 ある夜、現れたダイアンからドラッグを渡されたボブは、なぜ自分を捨てたのかを彼女に聞かれる。 モーテルで、死体のことを知られずに警官から逃れられることだけを神に願ったボブは、その代わりに、故郷に帰り治療することの誓いを守っているだけだと語る。 堅気の生活も悪くないと話すボブは、連れがいると言うダイアンに泊まっていくよう勧める。 恋人となったリックが下で待っていると答えるダイアンは、迫るボブを拒み、その場を去ろうとする。 会えてよかったと言うボブから、戻らないかと聞かれたダイアンは、微笑んだだけで何も答えなかった。 翌日、同じアパートのマーフィ神父の部屋に向かったボブは、ダイアンから受け取ったドラッグを渡す。 感謝するマーフィ神父は、その中にディローディドがあるのを確認する。 部屋に戻ったボブは、覆面をした二人組に襲われて銃を向けられ、相手がデヴィッドだと気づき、足を洗うように説得する。 痛めつけられたボブは、死を予知したため抵抗しなかった。 ボブを銃撃したデヴィッドは、仲間と共にその場から逃げる。 銃声に気づいた隣人はボブの部屋に向い、彼が倒れているのを見て救急車を呼ぶ。 一命を取り留めたボブは、駆けつけたジェントリーから、誰が犯人かを聞かれる。 ”ハット/帽子”だと答えたボブは、それに気をつけるようにダイアンに言ってほしいとジェントリーに伝える。 ジェントリーは、”ハット/帽子”が犯人かとの問にテレビっ子だと答えるボブに、犯人が誰か分からないとダイアンに知らせられないと伝える。 構わないと言うボブは、自分が伝えると言い残し、救急車に乗せられて病院に向かう。 その様子を、マーフィ神父は部屋の窓から見つめる。 人生は理解できないが、ジャンキーは賢く楽しくやっていけるとボブは考える。 合図に気づけばいいのであって、それが帽子だったために恐怖から解放されたボブは、警察に護衛されながら病院に搬送されることを皮肉に思う。 そしてボブは、生きていることを実感し、生きたいと考える。
...全てを見る(結末あり)
カウンセラー(ビア・リチャーズ)に会い質問をされたボブは、薬物依存症の患者を助けるための相談員になることを勧められるものの、それを断る。
*(簡略ストー リー)
1971年、オレゴン州、ポートランド。
薬物依存症のボブ・ヒューズは、妻ダイアンと相棒のリック、そして彼の恋人ナディーンと共に、ドラッグストア襲撃を繰り返していた。
ジェントリー刑事の手入れを受けたボブは、ドラッグを隠してあったために逮捕は免れ、4人で街を離れることにする。
その後、ある町のドラッグストアに侵入したボブらは、ドラッグを手に入れる。
素人のナディーンが、災いを招く行為をしたことを気にしながら、病院を襲ったボブだったが、それに失敗してしまう。
ジンクスを信じようとしなかったナディーンは、ドラッグの薬物過剰摂取で命を落とし、ボブらが滞在するモーテルは、大会参加のため警官が大挙して現れる。
悪い予感が当たったことで気落ちするボブは、故郷に帰り治療を受け、足を洗おうと考えるのだが・・・。
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1985年に「マラノーチェ」を監督していたガス・ヴァン・サントは、それが16mmフィルムの作品だったため、35mmの映画としては本作が最初の作品。
また、「マラノーチェ」(1985)、「マイ・プライベート・アイダホ」(1991)と合わせて本作は、ガス・ヴァン・サントの”ポートランド三部作”として知られている。
ドラッグによる幻覚症状やその恐ろしさを描いた作品と指摘する見方もあるが、それに関しては、主人公がドラッグの影響を受ける際の感覚が、少々独創的に描写されている程度である。
それよりも、アメリカ社会の中で、ごく日常的にドラッグが使われる中で、それに関わる若者達の生き様をガス・ヴァン・サントが切実に描く、人間ドラマに近い内容だ。
短絡的な現実逃避から社会の流れに従うようになる青年を好演する、当時の若手期待の星マット・ディロンの演技は高い評価を受け、インディペンデント・スピリット賞の男優賞を受賞した。
主人公の妻ケリー・リンチ、主人公の相棒ジェームズ・レグロス、その恋人ヘザー・グラハム、主人公を追う刑事ジェームズ・レマー、薬物依存症である売人の青年マックス・パーリック、主人公と親しい薬物依存症の神父ウィリアム・S・バロウズ、主人公の母親グレイス・ザブリスキー、カウンセラーのビア・リチャーズなどが共演している。