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狼たちの午後 Dog Day Afternoon (1975)

1972年8月22日にニューヨークブルックリンで実際に起きた銀行強盗事件を基に描く、監督シドニー・ルメット、主演アル・パチーノジョン・カザールクリス・サランドンチャールズ・ダーニング他共演の犯罪ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)

アル・パチーノ / Al Pacino / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:シドニー・ルメット

製作
マーティン・ブレグマン

マーティン・エルファンド
脚本:フランク・ピアソン
撮影:ヴィクター・J・ケンパー
編集:デデ・アレン
音楽
エルトン・ジョン

ユーライア・ヒープ

出演
ソニー・ワージック:アル・パチーノ

サルヴァトーレ”サル”ナチュラル:ジョン・カザール
レオン・シャーマー:クリス・サランドン
ユージーン・モレッティ巡査部長:チャールズ・ダーニング
シェルドン捜査官:ジェームズ・ブロデリック
マーフィー捜査官:ランス・ヘンリクセン
マルヴァニー:サリー・ボイヤー
シルヴィア:ペネロペ・アレン
アンジェラ”アンジー”ウォルツキー:スーザン・ペレツ
ジェニー:キャロル・ケイン
ミリアム:マルシア・ジーン・カーツ
ソニーの父親:ドミニク・チアニーズ
ソニーの母親:ジュディス・マリナ
スティーヴィー:ゲイリー・スピングラー
デボラ:サンドラ・カザン

アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1975年製作 124分
公開
北米:1975年9月21日
日本:1976年3月13日
北米興行収入 $50,000,000


アカデミー賞 ■
第48回アカデミー賞

・受賞
脚本賞
・ノミネート
作品・監督
主演男優(アル・パチーノ
助演男優(クリス・サランドン
編集賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1972年8月22日、ニューヨークブルックリン
うだるような暑い日、ソニー・ワージック(アル・パチーノ)、サルヴァトーレ”サル”ナチュラル(ジョン・カザール)、スティーヴィー(ゲイリー・スピングラー)の三人は、閉店間際の銀行の様子を窺う。

まずサルが店内に入り、その後ソニーがとスティーヴィーが続く。

サルは支店長マルヴァニー(サリー・ボイヤー)の元に向かい銃を向ける。

怯えるスティーヴィーに入り口を見張るよう指示したソニーは、箱に入れて持ち込んだ銃を取り出して行員に向け、動くなと叫ぶ。

スティーヴィーに警備員が動いたら撃てと指示したソニーだったが、スティーヴィーはビビってしまう。
...全てを見る(結末あり)

ソニーは焦り、それができないと言うスティーヴィーを追い出すようサルに言われる。

スティーヴィーは、ソニーに謝罪してその場から逃げる。

ソニーは、現金を奪うために金庫を開けるようマルヴァニーに指示する。

マルヴァニーは行員のミリアム(マルシア・ジーン・カーツ)と共に金庫に向かい、彼女は袋に現金を詰めるのだが1100ドルしかなかった。

ショックを受けたソニーは出納係のシルヴィア(ペネロペ・アレン)を呼び、少額の現金を奪い出納帳を燃やす。

それで諦め引き上げようとしたソニーだったが、向かいの保険会社の社員がこちらを見ていることにサルが気付く。

煙が建物から出ていることを気にした男性は銀行の入り口に近づくが、マルヴァニーが対応して問題ないことを伝える。

女性行員を金庫に閉じ込めようとしたソニーだったが、彼女らがトイレに行きたいと言い出したためそれを許す。

トイレに女性がいたのを知ったソニーは、金庫に戻るよう彼女らに指示する。

そこに電話が入りソニーは受話器を渡され、向かいの床屋から監視しているユージーン・モレッティ巡査部長(チャールズ・ダーニング)からの電話を受ける。

次の瞬間、サイレンと共にパトカーが大挙して現れ、銀行はたちまち包囲されてしまう。

夫から連絡のあった行員ジェニー(キャロル・ケイン)、喘息もちの警備員などを気にしながら、ソニーは、協力的であるため信用したマルヴァニーと裏口を塞ぐ。

やがてFBI捜査官のシェルドン捜査官(ジェームズ・ブロデリック)やマスコミが現れ、モレッティがそれに対応する。

ソニーに電話をしたモレッティは人質を解放するよう迫り、弱っている警備員がシルヴィアに連れられて外に出る。

警官は警備員を犯人だと思い取り押さえるが、モレッティがそれを制止し、女しかいないと言った、入り口に出て来たソニーを非難する。

モレッティに出てくるよう言われたソニーは、何かあればサルが人質を殺すと脅しシルヴィアと共に銀行の外に出る。

250人の警官で周囲が完全に包囲されていることを知らされたソニーは、今なら強盗未遂で終わるので人質を解放するようモレッティに言われる。

警官を挑発するソニーは強気に出て叫び始め、野次馬の民衆は彼を支持して警察を非難する。

それをテレビ中継で見ていたソニーの両親(ドミニク・チアニーズ/ジュディス・マリナ)は、世間を騒がせる息子の行動を嘆く。

モレッティはソニーと握手して別れるが、シルヴィアも戻ろうとしたため彼女を引き留めようとする。

シルヴィアは、仲間達を見捨てられないと言いながら、歓声に応えて手を振り行内に戻る。

電話でテレビ局の取材を受けたソニーは、銀行を襲った理由などを聞かれ、妻子がいながら仕事に就けないことなどを伝え、興奮して放送禁止用語を口に出してしまう。

中継は中止され、ソニーはFBIと交渉つもりがあることをサルに伝えるが、計画が失敗し動揺するサルの心は乱れる。

ソニーはジェット機を用意させて高飛びすることをサルに提案する。

行員達も連れて行くと言うソニーは表に出て丸腰をアピールし、人々の歓声を受ける。

そこに、恋人が中にいる男がソニーに飛び掛かり、警官がそれを取り押さえる。

モレッティはソニーの怪我を気にして近づき、ヘリコプターとジェット機、そして妻アンジェラ”アンジー”(スーザン・ペレツ)を呼ぶよう要求される。

アンジーは、現れた警官に話を続けるだけで協力的ではなかった。

行内のエアコンが故障してしまい、気分の悪くなる者が現れたため、ソニーはその様子を見に行こうとする。

裏口から警官が侵入しようとしていることに気づいたソニーは発砲し、周囲は騒然となる。

モレッティはソニーを呼び、自分の指示でないことと、要求通りにすることを興奮する彼に伝える。

ヘリは着陸できないが空港には連れて行くと言われたソニーは食べ物とドリンクを要求し、移動方法が変わったことを考え込むサルに伝える。

ピザが届き、代済みだと言う配達係に金を渡したソニーは、民衆に向かって現金をばらまく。

その後、妻が到着したと言われたソニーは、ゲイのパートナーであるレオン・シャーマー(クリス・サランドン)が現れたため彼に声をかける。

病院から連れて来られたレオンは失神してしまい、建物内に運ばれた彼にモレッティが質問する。

ソニーの説得を拒むレオンは、両親の面倒を見ているソニーのことや自分の性転換手術費用の2500ドルを工面するために、彼はストレスが溜まっていると話す。

手術ができないだろうと考えたレオンは大量の薬を飲み病院に運ばれたため、ソニーが事件を起こしたのは自分のせいだと認める。

モレッティは共犯だと言って説得を強要するが、レオンは無理だと言って泣き出してしまう。

ソニーは、レオンが話をしたがらないことをモレッティから知らされる。

テレビでは、犯人がゲイで男と結婚したことなどが報道される。

それを知ったサルは、自分がゲイだと思われていることを気にして動揺し、否定するようソニーに伝える。

無視するようサルに伝えたソニーは、行員達が自分を見る視線を気にする。

夜になり、ソニーを恐れることもなく談笑する行員達は、目的地がどこかなどを彼に聞く。

その時、室内の電気が消され、呼び出されたソニーは警戒しながら入り口に向かう。

交渉役を代わったFBIのシェルドンが近づき、ジェット機の準備が整ったことをソニーに伝える。

直ぐに人質を解放することを拒んだソニーは、移送が始まった段階でそれを順次、実行することを約束する。

ソニーは、人質の確認を求めるシェルドンを行内に入れるが、サルは始末すると帰り際に言われる。

糖尿病のマルヴァニーが倒れてしまい、ソニーは医者を呼ぶ。

レオンからの連絡を受けたソニーは、彼の体調のことを聞き、一緒にアルジェリアに逃亡する気があるかなどを尋ねる。

ソニーは、共犯と疑われていることも話すレオンを落ち着かせて、盗聴しているモレッティらに彼が無関係だと伝える。

レオンはソニーに感謝し、別れを告げて電話を切る。

アンジーに電話をしたソニーは、死を覚悟していることを伝えるが、心配事を一方的に話す彼女に苛立ち電話を切ってしまう。

医師から病院で検査する必要があると言われソニーは、マルヴァニーを解放しようとするが、彼はソニーを罵り指示されることを拒む。

医師を外に出したソニーは、声を上げる民衆が自分の支持者であることを確認する。

その後、ソニーは現れた母親の説得を拒み、シェルドンから10分後に出発すると合図される。

ソニーは、レオンやアンジーに宛てた遺書をシルヴィアに代筆してもらう。

移送用の車が到着し、それを調べたソニーは運転手が警官であることに見破る。

FBIのマーフィー(ランス・ヘンリクセン)を呼び寄せたソニーは、サルに警戒するよう指示し行員達と共に車に乗る。

ソニーは人質の一人を残し、マーフィーに運転をさせて車は出発する。

警察車両に先導されながら移送車は空港に向かい、用意されたジェット機が近づく。

そこで一人が解放され、ソニーが移動を始めようとしたため、マーフィーは事故を避けるために銃を上に向けるようサルに指示する。

自分から降りると伝えたマーフィーの合図で、シェルドンはソニーを抑え込む。

マーフィーは隠されていた銃を取り出してサルを射殺し、ソニーのこめかみに銃を向ける。

ソニーは取り押さえられ、解放された人質と運ばれるサルを見つめる。
__________

ソニー・ワージックは懲役20年の刑で服役中であり、妻アンジーと子供達は生活保護を受けている。

レオン・シャーマーは、手術を受けてニューヨークに在住している。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1972年8月22日、ニューヨークブルックリン
うだるような暑い日、ソニー・ワージック、サル、スティーヴィーの三人は銀行を襲う。
行員らを人質に取ったソニーらだったが、金庫にはわずかな現金しかないことが分かりショックを受ける。
事件を知った警察は警戒を始め、モレッティ巡査部長がソニーに電話をかけて説得を始める。
250人の警官で周囲を包囲されたソニーらは、その場から逃げることができないまま焦るものの、集まった民衆が自分達を支持していることを知る。
やがて、極悪人ではないソニーらと人質には連帯感も生まれ、彼らは高飛びを考えるのだが・・・。
__________

1970年代初頭のアメリカ、社会制度や警察権力への不満、性差別など、社会派らしいシドニー・ルメットの、様々な問題を鋭く描く緊迫感のある演出が見どころの作品。

原題”Dog Day Afternoon”は真夏を意味する言葉であり、邦題の”狼”は的を得ていない。

劇中、汗だくの役者達の熱演が印象に残るが、実際の撮影は9月から行われ、吐く息の白さが画面で目立たないような工夫もされた。

また、役者の演技は殆どがアドリブであったということで、それが、臨場感のあるリアルな映像として効果を上げている。

地味な作品ではあるが、北米興行収入だけで約5000万ドルという大ヒットとなった。

2009年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

第48回アカデミー賞では、脚本賞を受賞している。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(アル・パチーノ
助演男優(クリス・サランドン
編集賞

ゴッドファーザー」(1972)シリーズの成功などで若手ナンバーワンの実力者と評価されていた、アル・パチーノの迫真の演技は絶賛された。
実際の犯人John Wojtowiczに容姿が似ていたということで主演となったと言われる(ダスティン・ホフマンも候補)。
小柄で気弱な男である主人公を演ずる彼だが、その存在感は際立っている。

その「ゴッドファーザー」シリーズでアル・パチーノの兄を演じた強盗仲間のジョン・カザール、主人公のゲイのパートナーで当時のスーザン・サランドンの夫クリス・サランドン、犯人と交渉する巡査部長チャールズ・ダーニング、彼と交渉を代わるFBI捜査官のジェームズ・ブロデリック、同じく捜査官のランス・ヘンリクセン、主人公の妻スーザン・ペレツ、銀行支店長サリー・ボイヤー、行員ペネロペ・アレンキャロル・ケインマルシア・ジーン・カーツ、主人公の両親ドミニク・チアニーズジュディス・マリナなどが共演している。


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