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ダイヤルMを廻せ! Dial M For Murder (1954)

1952年に初演された、イギリスの作家フレデリック・ノットの探偵劇”Dial M for Murder”を基に製作された作品。
妻の浮気を知った男が企む遺産目当ての殺人計画を描く、製作、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演レイ・ミランドグレイス・ケリーロバート・カミングスジョン・ウィリアムズアンソニー・ドーソン他共演によるサスペンスの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)

アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
アルフレッド・ヒッチコック / Alfred Hitchcock / Pinterest


スタッフ キャスト
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:フレデリック・ノット
撮影:ロバート・バークス
編集:ルーディ・ファー
音楽:ディミトリ・ティオムキン

出演
レイ・ミランド:トニー・ウェンディス
グレイス・ケリー:マーゴ・ウェンディス
ロバート・カミングス:マーク・ハリデイ
ジョン・ウィリアムズ:ハバード警部
アンソニー・ドーソン:レスゲイト大尉/チャールズ・アレキサンダー・スワン

アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1954年製作 105分
公開
北米:1954年5月29日
日本:1954年10月27日
製作費 $1,400,000


アカデミー賞
第27回アカデミー賞

・ノミネート
監督賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
ロンドン
高級アパートに住む、トニー・ウェンディス(レイ・ミランド)と妻マーゴ(グレイス・ケリー)は、見かけは普通の夫婦に見えたが、二人の関係は冷えきっていた。

マーゴは、アメリカ人推理作家マーク・ハリデイ(ロバート・カミングス)が、客船”クイーン・メリー”で到着したことを新聞記事で知る。

実は、マーゴとマークは関係を持っていたのだが、テニス・プレイヤーだったトニーが引退して、仕事を始めて優しくなったために、彼女は一応、夫婦生活を維持していた。

マークを迎えたマーゴは、そのような状況を彼に話して、燃やしていた彼からの手紙のうち、一通がバッグと共に盗まれたことを伝える。

そして、現金を要求するメモを受け取っていたマーゴは、それをマークに見せる。
...全てを見る(結末あり)

マーゴは現金50ポンドを指示通りに渡したのだが、結局、手紙は戻らず、マークは、トニーに二人の関係や全てを告白することを彼女に提案する。

そこにトニーが帰宅し、劇場に行くはずだった彼が都合が悪くなり、マーゴとマークだけが出かける。

その後トニーは、”フィッシャー”と名乗り、車を買う約束をしてある、レスゲイト大尉(アンソニー・ドーソン)を自宅に招く。

二人は、直ぐに顔見知りだということに気づき、トニーは、レスゲイトがケンブリッジ大学の先輩であるチャールズ・アレキサンダー・スワンだということを思い出す。

スワンも、テニス・プレイヤー時代のトニーを思い出しながら、彼の話を聞き始める。

資産家令嬢マーゴと結婚したトニーは、彼女が学生時代の友人マークと関係を持ち、密会を繰り返しているのを知り、彼もしくは妻を殺すことを考える。

手紙のやり取りをしていた二人の、一通の手紙を盗み内容を知ったトニーは脅迫状を書。

トニーは、妻は自分に相談しなかったと言って、その手紙を見せようとして、それを床に落とす。

手紙を拾ったスワンは、それを確認してトニーに返すが、彼は、手を触れずに受け取る。

トニーは妻を殺そうと決めたのだが、パブでスワンを見かけて気が変わったのだった。

スワンが、様々な悪事を働いていると知っていたトニーは、彼の弱みを握り、1000ポンドの報酬で、妻の殺害計画に加担させようとする。

綿密に練られたその計画とは・・・。
マーゴの鍵を階段の絨毯下に隠し、アリバイ作りのために、トニーとマークが彼女を残してパーティーに出かける。

その鍵でアパートに忍び込んだスワンが、トニーからの電話に出たマーゴを、背後から絞殺するというものだった。

そして翌日の夜、パーティーに出かけようとしたトニーは、マーゴの鍵がバッグにあるのを確認して、彼女が映画にでも行くかもしれないと知り、なんとかそれを止めさせる。

トニーは、マーゴに気づかれないように、バッグから鍵を取り出し、階段に隠してマークと出かける。

午後11時前。
階段の鍵でアパートに忍び込んだスワンは、電話がかかってこないために部屋を出ようとする。

その頃、時計が止まっていたことに気づいたトニーは、焦って電話をかける。

眠っていたマーゴは電話に気づき、リビングに向かい受話器を取るが、相手は何も話さない。

その時、スワンはマーゴに襲い掛かりスカーフで彼女の首を絞める。

しかし、抵抗したマーゴは、机の上にあったハサミでスワンの背中を刺す。

もだえるスワンは仰向けに倒れこみ、自分の体重でハサミは奥深く刺さり彼は息絶える。

その様子を受話器の向こうで聞いていたトニーは、電話に出たマーゴがスワンを殺したことを知る。

トニーは、何もせずに誰にも話さないようマーゴに伝え、至急帰ると言って電話を切る。

動揺するマーゴは、スワンの遺体を確認しながら寝室に向う。

トニーは、マーゴの具合が悪いと言って、マークを残して自宅に急ぐ。

帰宅したトニーは、スワンの持っている鍵をマーゴのバッグに戻し、警察に通報する。

トニーは、状況を把握して考えをまとめて、マーゴを計画的殺人犯に仕立て上げようとする。

やや冷静になったマーゴは、彼がなぜ電話をよこしたのかを問う。

後で説明することを伝えたトニーは、マーゴを寝室に向わせ、テラスにあったスカーフを暖炉で燃やしてしまう。

トニーは、マーゴの裁縫箱のストッキングの片方に、結び目をつくりテラスに、もう片方を机の上に隠すように置く。

スワンの指紋が付く、例の盗んだ手紙を彼のコートに隠したトニーは、スカーフが燃え尽きたことを確認して警察を待つ。

その後、現場検証が行われ、机の上のスカーフもトニーの思惑通りに見つかり、警察官は引き揚げる。

トニーは、警察への連絡が遅れたのは、マーゴ自身がすると考えたからだということにしてあると彼女に伝える。

そこに、事件担当のハバード警部(ジョン・ウィリアムズ)が現われて、事情聴取を始める。

トニーは、犯人スワンが大学の先輩で知人であることを伝える。

ハバードは、事件当時の状況を順を追って再現し、犯人が玄関のドアから入ったことを証拠をあげながら説明する。

トニーは、鍵を入れておいたマーゴのバッグが、以前、盗まれたことがあると伝え、ハバードは、手紙などが盗まれなかったかを確認するが、彼女はそれを否定する。

ヴィクトリア駅でバッグを盗まれたのだが、トニーがスワンを目撃したのもそこだということをハバードは確認する。

ハバードは署に戻ろうとするが、そこにマークが現われ、トニーが電話をした時刻など確かめる。

マークはその時刻と、トニーが上司に電話をすると言っていたことを思い出す。

トニーは、上司の番号を忘れたために、マーゴに聞こうと電話をしたことを伝える。

ハバードはマークの電話番号を聞き、彼が、ロンドンに1年前にも来ていることを確認する。

野次馬がいるといって、裏口を開けるようにトニーに指示したハバードは、その間に、手紙が見つかり、マークとマーゴ
の関係は知っていることを伝える。

ハバードは、マーゴに、手紙のことと脅迫されたことを認めさせて、証人がなく、自己防衛のためにスワンを殺したことの説明がつけられない状況だと彼女に告げる。

犯行を、トニーが電話で聞いていたという話もマーゴから聞いたことで、スワンが押し入った形跡もなく、脅迫されていた証拠はあり、首のアザでさえ自分でつけられるとハバードは言い放つ。

更に、犯行に使われていたというストッキングも結び目が二つあり、片方が机の上に隠されていたのも不自然で、それがマーゴの物だということも証明する。

憤慨したトニーは弁護士に連絡し、彼らはハバードと共に警察署に向うことになる。

その後マーゴは、スワン殺害の容疑で起訴され、有罪となり死刑が確定する。

マークは、推理作家としての知恵を働かせて、トニーの実行した計画と裏工作と、ほぼ同じ作り話でマーゴを救おうと考える。

トニーが刑務所に行くことになるのだが、マーゴの命を救うために考えたことだと、マークは彼を説得しようとする。

そもそも、マークが原因で今回の事件は起きたようなもので、トニーは、一理はあるが現実味がないことを伝える。

そこにハバードが現われ、トニーが対応して、マークは寝室に身を潜め二人の話を聞く。

ハバードは、トニーの最近の金遣いなどについて質問し、床に鍵が落ちていたように見せかけてて、トニーのコートの鍵を確認し、それが自分が落としたように装う。

その後ハバードは、トニーがタクシーに忘れたという青いカバンについて質問する。

目撃者の証言で、そのカバンをトニーがいつも持っていたということをハバード確認し、マークが、寝室にあったそのカバンを見つけてこじ開けると、中には大金が入っていた。

思い立ったマークは、帰ろうとするハバードにカバンの現金を見せて、それがスワンに払うはずの殺しの報酬だと言って、例の作り話を始める。

しかし、トニーは自らそれを作り話だと言って説明し始め、マーゴの命を救おうとするマークは、何とかハバードの疑問に答えようとする。

ハバードは、現金の出所が問題だと言って、銀行の通帳を調べるが、大金を下ろした形跡はない。

そこでトニーが、現金は、スワンを殺したマーゴから預かったことを伝え、その話に納得のいかないマークに帰ってもらう。

ハバードは、マークの話が信じられないことをトニーに伝えながら、隙を見て彼のコートと自分のものを摩り替える。

マーゴの物を署に取りに来るよう、トニーに伝えたハバードは、その場を去る。

コートを持参して出かけたトニーを確認したハバードは、彼の鍵で部屋に入り、署に連絡して行動を開始させる。

そこにマークが現われ、マーゴも警官に伴われて到着するが、彼女の鍵でドアが開かない。

予定通りマーゴは裏口に案内されて、ハバードとマークが彼女を迎える。

ハバードは、合わなかった鍵と、マーゴがカバンのこことを知らないことを確認する。

その鍵をマーゴのバッグに戻し、ハバードは部下にそれを署に届けるよう指示する。

自宅に連れて来られた理由も分からないマーゴは、トニーが自分を殺そうとした計画をハバードから聞かされる。

ハバードは、マーゴの逮捕直後から、トニーの金遣いの荒さが気になり、金の出所を探ろうとして、彼女のバッグの鍵でアパートに入り通帳を調べようとしたが、ドアが開かなかったことを説明する。

そこにトニーが戻るが、コートを間違えて鍵がないことに気づき署に向かう。

ハバードは、署にマーゴのバッグが戻ったことを確認して、それをトニーに渡すように指示を出す。

そしてハバードは、階段に隠されていた鍵の存在をマーゴとマークに知らせる。

トニーが今使わなかったのは、隠したはずの鍵はマーゴのバッグにあると思っているからで、スワンがその鍵を戻すのは、犯行を終えて部屋を出る時のはずだった。

そこでトニーは、スワンが死んだために、鍵が死んだ彼のポケットにあると考えた。

しかしスワンは、部屋に入る際に鍵を階段の絨毯の下に戻し、彼が持っていたのは恋人の部屋の鍵だったのだ。

マーゴを呼んだのは、階段に鍵を置いたのが彼女かを調べるためだと、ハバードは説明する。

それを知らなかったマーゴは、その瞬間、自分が無実だと証明されたことを知る。

トニーが署を出たとの連絡が入り、彼が階段の鍵に気づけば事件解決に至り、マーゴの死刑が中止されることになる。

自宅に戻ったトニーは、ドアがマーゴの鍵で開かないために一旦、その場を離れようとする。

その様子を見ていたハバードは諦めかけるが、トニーは、階段に鍵があると考え、それを手にして、計画と違うと思いながらもドアを開ける。

そこには、マーゴとマーク、そしてハバードが待ち構えていてた。

ドアの外にも警官がいるのを確認したトニーは、マークに筋書き通りだと伝え、ハバードに鍵を渡す。

開き直ったトニーは、スコッチをグラスに注ぎ、マーゴとトニーにもそれを勧める。

そして、ハバードは、事件解決を内務大臣に知らせるために電話をする。


解説 評価 感想

★ヒッチコック登場場面
上映から約13分したところで、 レイ・ミランドアンソニー・ドーソンの、同窓会の写真の中でちゃっかり同席している。

*(簡略ストー リー)
ロンドン
高級アパートに住む、トニー・ウェンディスと妻マーゴの関係は冷えきっていた。
マーゴは、アメリカ人の推理作家マークと密会を重ね、それを知ったトニーは、遺産を当てにした妻の殺害を考える。
そしてトニーは、大学の先輩で、悪事に手を染めていたスワンを妻の殺害計画に誘い込む。
トニーに弱みを握られていたスワンはそれを承諾し、計画を実行する。
しかし、スワンはマーゴの抵抗に遭い、ハサミで刺し殺されてしまう。
それを知り、思惑が狂ったトニーは、マーゴを計画的殺人犯に仕立て上げ、彼女の財産を手に入れようとするのだが・・・。
__________

見ている者には犯人は分かっていながら、警察側がそれをどのようにして突き止めるかという、知的サスペンスの代表作。

第27回アカデミー賞では、監督賞にノミネートされた。

電話、鍵、ハサミなど、多くの小道具の使い方が抜群であり、巧みに仕上がった戯曲の映画化なので、あえて映画的に脚色し直していないところや、物語のほとんどがアパート内という、舞台劇の特色をそのまま生かした、ヒッチコックの演出は素晴らしい。

主人公が、計算しつくした殺人計画を、実行犯に延々と説明する様子を、天井から映すシーンなども斬新だ。

ヒッチコック作品、初出演のグレイス・ケリーの美しさと若さが際立っていたが、突然襲われ動揺する場面や、自分の主張が何一つ通らない絶望感の表現なども見事だ。

主演のレイ・ミランドは、妻殺害を企てるものの、予期せぬ事態が多発し、追い詰められていく男性を熱演している。

ドラマ後半を一人で仕切っていたような、凡庸だが実に堅実な警部役ジョン・ウィリアムズの名演は秀逸だ。

彼は、犯人のアンソニー・ドーソンと共に、舞台のオリジナルキャストでもある。

ヒロインの愛人である推理作家のロバート・カミングスの存在も物語りにアクセントを加える重要な役柄である。

西部劇やアクション映画で、ダイナミックな曲が多いディミトリ・ティオムキンの、優雅な主題曲も印象に残る。

また、もともとは3D映画として作られた作品で、なんとなく画面から物が飛び出してくるような構図になっている場面がある。
残念ながら日本では普通上映しかされなかった。


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