ハリウッドでの成功を夢見て旅立った恋人を追う男性がヒッチハイクをしたことにより破滅に向かう運命を描く、監督エドガー・G・ウルマー、主演トム・ニール、アン・サヴェージ、クラウディア・ドレイク、エドマンド・マクドナルドた共演によるフィルム・ノワールの名作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:エドガー・G・ウルマー
製作:レオン・フロムケス
原作:マーティン・ゴールドスミス”Detour”
脚本:マーティン・ゴールドスミス
撮影:ベンジャミン・H・クライン
編集:ジョージ・マクガイア
音楽:レオ・エードディ
出演
アル・ロバーツ:トム・ニール
ヴェラ:アン・サヴェージ
スー・ハーヴェイ:クラウディア・ドレイク
チャールズ・ハスケルJr.:エドマンド・マクドナルド
ダイナーのオーナー:ティム・ライアン
ホリー:エスター・ハワード
中古車のセールスマン:ドン・ブロディ
ジョー:パット・グリーソン
アメリカ 映画
配給 Producers Releasing Corporation
1945年製作 68分
公開
北米:1945年11月15日
日本:2012年9月22日
製作費 $30,000
北米興行収入 $16,170
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
職を失ったピアニストのアル・ロバーツ(トム・ニール)は、ヒッチハイクをして東に向かう。
疲れ切ってリノに着いたアルは、ダイナーに寄り考え込む。
トラック・ドライバーのジョー(パット・グリーソン)に声をかけられたアルは、方向が同じなら乗せると言われるものの、彼を迷惑に思う。
ジョーがジュークボックスでかけた曲も気に入らないアルは、騒ぎ出したためにダイナーのオーナー(ティム・ライアン)に非難され、追い出されそうになる。
謝罪したアルは、クラブ歌手で恋人のスー・ハーヴェイ(クラウディア・ドレイク)の持ち歌だった曲を聴きながら、消し去りたい思い出のことを考える。
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ニューヨーク。
クラブでピアノを弾いていたアルは、歌手のスーとの婚約を控えていた。
成功を夢みるスーは結婚する気になれなくなり、ハリウッドで運を試したいことをアルに伝える。
納得はできないものの、スーの気持ちは変わらないために、アルは彼女と別れる。
その後、場末のクラブでピアノを弾くことが空しくなったアルは、スーに電話をする。 アルは、ウエイトレスをして苦労していると言うスーの元に向かい、結婚することを決心をする。 資金的な問題があり、ヒッチハイクをして苦労しながら西に向かったアルは、アリゾナに着く。 街道でチャールズ・ハスケルJr.(エドマンド・マクドナルド)の高級車(リンカーン・コンチネンタル)に乗せてもらったアルは、彼に気を遣い、余計な口をきかずに話しかけてくるまで黙っていた。 何かの薬を飲むハスケルから、行き先を訊かれたアルはロサンゼルスだと答え、ニューヨークから旅していることを話す。 その後、ハスケルの右手の傷に気づいたアルは、女に傷つけられたことを知る。 二十歳の頃から競馬賭博の胴元をしていると話すハスケルは、世の中には怖い女がいると言いながら、友だちと父親のサーベルで決闘した際に切られた腕の傷も見せる。 相手の目をくり抜いてしまったと言うハスケルは、怖くなり家出したのが15~16年前だとアルに話す。 ダイナーに寄ったハスケルにおごってもらったアルは、空腹だったために助かり、競馬で儲けるつもりだと言われて安心する。 ハスケルは賭博のことを話し続け、騙された経験もアルに語り、チップを置いて店を出る。 車に乗りハスケルに運転を任されたアルは、彼が眠ってしまったために、成功したスーのことを考えながら西に向かう。 暫くして雨が降り出し、幌を上げようとしたアルは、ハスケルが起きないために車を止める。 助手席のドアを開けたアルは、眠ったままのハスケルが崩れ落ちて、地面の石で頭を打ったために驚く。 ハスケルが死んでいることに気づいたアルは焦り、2人でいる所を多くに人に見られていることもあり、逃げるわけにもいかない。 警察に話しても信じてもらえないと思ったアルは、仕方なく遺体を道路から離れた場所に移し、財布と洋服を奪い車に戻り幌を上げる。 そこにパトロール警官が現れ、アルは、路肩に寄せて止めるようにと言われ、注意されただけで済む。 自分の所持品を捨てたアルは、遺体は自分だと思うだろうと考え、雨の中、出発する。 夜が明けてカリフォルニアの州境の検問で停車したアルは、ハスケルの身分証を見せても疑われることはなかった。 その後、睡魔に襲われたアルはモーテルの部屋を取り、眠りながら悪夢を見る。 掃除のメイドに起こされたアルは、ハスケルの身分を捨てるために、車を売ることなどを考える。 768ドルの現金を確認したアルは、質問された時のためにハスケルのことを知ろうとしてスーツケースの中にあった手紙を読み、彼が単なる詐欺師に思えてくる。 マイアミで負けを取り戻すために、ハスケルが父親を騙そうとしていたのは明らかだと分かったアルは、着替えて出発する。 ”デザートセンター空港”近くのガソリンスタンドに寄ったアルは、ヒッチハイクをしようとしているヴェラ(アン・サヴェージ)を乗せる。 不躾で愛想がないヴェラを観察しながら運転したアルは、ロサンゼルスに向かうことを彼女に伝える。 暫くするとヴェラは眠ってしまい、アルは、彼女のことを考えながら運転する。 突然、目を覚ましたヴェラは、ハスケルの遺体のことを口にする。 車の持ち主ハスケルを知っているヴェラは、本人だと言って免許証を見せようとするアルの話を聞こうとしない。 ルイジアナからハスケルと一緒だったと話すヴェラが、ヒッチハイクで彼に拾われたことを知ったアルは、ハスケルの話を思い出す。 アルは、ハスケルに傷を負わせた女がヴェラで、自分がモーテルで眠っている間に先を越されたことに気づき、彼女を乗せたことを後悔して何も話せない。 仕方なくすべてを話したアルだったがヴェラに信じてもらえず、ハスケルを殺したと言われたために警察に逮捕されることを恐れる。 警察に通報しても自分の特にならないと考えたヴェラは、アルが持っていた財布の現金を確認する。 その金額が不満なヴェラは、水曜に3000ドルを馬に賭けると言っていたハスケルの話をアルに伝える。 ハスケルがウソをついた可能性があると言われたヴェラは、アルのことも信じる気になれず、彼を脅して、ハスケルの手首を傷つけた話をする。 完全に主導権を握るヴェラは、車を捨てる気のアルに、警察が持ち主を調べて捜査するので売るべきだと伝える。 ハリウッドに着いたアルは、スーのことを考えるものの、彼女が遠ざかってしまったように思える。 アルとヴェラは、車を売るのに必要な住所を確保するため、夫婦に扮してアパートを借り、その場でくつろごうとする。 落ち着かないアルは、ハスケルの話をするヴェラに、殺してないことを再び伝える。 ハスケルが車から落ちる前に死んでたかもしれないと話すアルは、ヴェラの酒に付き合いながら、気まずい時間を過ごす。 話題もなくなったアルは、咳込むヴェラが悪い病気でないかと考え、結核で死んだ女友達のことを考える。 自分が死ねばすべて独り占めだと言われたアルは、人の死など喜ばないとヴェラに伝える。 ヴェラから自分の死でもかと訊かれたアルは、ハスケルの死で十分であり、君には死んでほしくないと彼女に伝えてる。 アルを誘うそぶりを見せたヴェラは、気のない態度をされたために、寝室に向かい鍵をかける。 アルはスーに電話をするものの、電話に出た彼女と話しができなかった。 翌日、ヴェラと共に車を売るために出かけたアルは、その後は彼女と別れるつもりだった。 ある中古車ディーラーに向かった2人は、車を売りたいことを店員(ドン・ブロディ)に伝え、1850ドルが限度だと言われたヴェラは納得しない。 その値段で売ることにしたアルは、手続きをするためにオフィスに向かう。 アルにグローブボックスを見ておくようにと言われたヴェラは、財布を見つける。 手続きをしていたアルは、現れたヴェラから車を売るのはやめたと言われ、その場を去る。 ドライブインに寄ったヴェラは、納得できないアルに新聞を渡し、ハスケルの父親が肺炎で危篤状態で、息子を捜しているという記事を見せる。 遺産を手に入れようとするヴェラは、アルにハスケルに成りすますことを要求する。 バレると言うアルだったが、ヴェラは、死を待つだけの父親や親戚は疎遠だったので、今の息子を見ても分からないので心配ないと考える。 1500万ドルの父親の遺産を諦められないヴェラは、やる気になれないアルを説得する。 アパートに戻り話し合ったアルは、車を売り所持金を合わせて次のことを考えるのが懸命だとヴェラに伝える。 短い命だと気づいていたヴェラは納得できず、再びアルと口論になり、ハスケルのことで警察に電話しようとする。 それを制止したアルは、ヴェラの計画について考えるが、ハスケルについての知識も腕の傷もないために悩む。 父親は直ぐに死ぬので心配いらないと言い張るヴェラは、酔ってアルの話を聞こうとせず、電話をしようとしたために揉み合いになる。 力づくで制止されたヴェラは、隙を見て電話を持って寝室に入り鍵をかける。 酔っていたために電話の線が首に絡まったヴェラは、そのままベッドで眠ってしまう。 電話線を引っ張ったアルはドアを壊して中に入り、ヴェラが窒息死していることに気づき愕然とする。 アルは、今回のことも事故とは認められないだろうと考え絶望し、逃げるしかなかった。 ダイナーで考え込むアルは、ニューヨークに戻ることもできず、スーにも会えないと思いながら、彼女の幸せを祈ることしかできなかった。 店を出たアルは、ヴェラの遺体を発見した警察は、ハスケルを捜していることを知っていた。 もしハスケルが車を止めなかったらと思いながら、アルは避けられない事実を考える。 アルは、ある日、警察の車が止まり、逮捕されることを想像する。
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*(簡略ストー リー)
ニューヨーク。
場末のクラブのピアニストだったアル・ロバーツは、成功を夢見てハリウッドに向かった恋人スーを追い旅立つ。
資金難のアルはヒッチハイクで西に向かい、アリゾナで、羽振りのよさそうなハスケルの車に乗せてもらう。
競馬賭博の胴元だと言うハスケルに世話になったアルだったが、雨の中、眠っているハスケルが事故で死んでしまい焦る。
疑われることを恐れたアルは、ハスケルの遺体を隠して彼に扮し、旅を続ける。
カリフォルニアに着いたアルは、ヒッチハイクをしていたヴェラを乗せる。
ヴェラがハスケルと揉めたことを知ったアルは驚き、彼女に翻弄されながらハリウッドに向かうのだが・・・。
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1939年に発表された、マーティン・ゴールドスミスの小説”Detour”を基に製作された作品。
わずか30000ドルの製作費で、2週間で撮影された作品。
逃れられない状況に追い詰められていく主人公を、緊迫感ある映像で見事に描くエドガー・G・ウルマーの演出は高く評価され、心理スリラーの名作にしてフィルム・ノワールの傑作と言われる作品となった。
1992年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
運に恵まれず、わずかな希望を胸に恋人の元に向かう男性が拾われる車が、アメリカの富の象徴のような”リンカーン・コンチネンタル”であることなども注目したい。
一時の希望や憧れが一転、破滅に向かう主人公の運命が、より悲しく感じられる小道具の使い方なども見事だ。
運命に翻弄される主人公を好演するトム・ニール、彼を利用して大金を手に入れようとする魔性の女アン・サヴェージ、夢を追いハリウッドに向かう主人公の恋人クラウディア・ドレイク、主人公を車に乗せる競馬賭博の胴元エドマンド・マクドナルド、主人公が立ち寄るダイナーのオーナー役ティム・ライアン、そのダイナーのウエイトレス役エスター・ハワード、中古車のセールスマン役ドン・ブロディ、ダイナーで主人公に声をかけるトラック・ドライバーのパット・グリーソンなどが共演している。