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逃亡者 Desperate Hours (1990)

1954年に発表された、ジョセフ・ヘイズの小説”The Desperate Hours”を基に、1955年にブロードウェイで初演された舞台劇を映画化した、監督ウィリアム・ワイラー、主演ハンフリー・ボガートによる「必死の逃亡者」(1955)のリメイク。
ある民家に立て籠り家族を人質にとった凶悪犯の逃亡劇を描く、製作、監督マイケル・チミノ、主演ミッキー・ロークアンソニー・ホプキンスミミ・ロジャースリンゼイ・クローズケリー・リンチデヴィッド・モースイライアス・コティーズ他共演の犯罪ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)


スタッフ キャスト
監督:マイケル・チミノ

製作
マイケル・チミノ
ディノ・デ・ラウレンティス
製作総指揮:マーサ・デ・ラウレンティス
原作:ジョセフ・ヘイズThe Desperate Hours
脚本
ジョセフ・ヘイズ
ローレンス・コナー
マーク・ローゼンタール
撮影:ダグラス・ミルサム
編集:クリストファー・ラウズ
音楽:デヴィッド・マンスフィールド

出演
マイケル・ボズワース:ミッキー・ローク
ティム・コーネル:アンソニー・ホプキンス
ノラ・コーネル:ミミ・ロジャース
ブレンダ・チャンドラーFBI捜査官:リンゼイ・クローズ
ナンシー・ブレイヤーズ:ケリー・リンチ
アルバート:デヴィッド・モース
ウォリー・ボスワース:イライアス・コティーズ
メイ・コーネル:ショウニー・スミス
ザック・コーネル:ダニー・ジェラード
マドックス:ディーン・ノリス
カイル:マット・マクグラス
エド・タレント:ジェリー・バマン
検察官:ジェームズ・レブホーン

アメリカ 映画
配給 MGM
1990年製作 106分
公開
北米:1990年10月5日
日本:1991年1月19日
製作費 $18,000,000
北米興行収入 $2,742,910


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
ユタ州。
弁護士のナンシー・ブレイヤーズ(ケリー・リンチ)は、湖の畔に愛車”ジャガー”を放置して、徒歩で街道に向いバスを待つ。

その後ナンシーは、法廷で凶悪犯である依頼人のマイケル・ボズワース(ミッキー・ローク)を弁護するが、彼は弁護に不満を訴えて騒ぎを起こす。

退廷させられたボスワースは、謝罪する振りをするナンシーが隠し持っていた銃を手にし、彼女を人質に取ると見せかけてその場から逃走する。

ナンシーにキスしたボスワースは彼女を残し、車で現れた弟のウォリー(イライアス・コティーズ)と友人アルバートと共にその場を去る。

ベトナムの帰還兵でもある刑事弁護士のティム・コーネル(アンソニー・ホプキンス)は、別居中の妻ノラ(ミミ・ロジャース)の家に向う。
...全てを見る(結末あり)

家を売るための看板に気づいたティムはそれを倒し、駆け寄って来た息子のザック(ダニー・ジェラード)と共に家に入る。

子供達を迎えに来るのは午後だと言われたティムは、娘のメイ(ショウニー・スミス)に相手にされない。

娘のような愛人のことでノラに責められたティムは口論になるが、傷つける気はなかったことを伝える。

ザックを連れて出かけようとしたティムは、午後にまた寄ると言って、家を本当に売るのかをノラに確認してその場を去る。

湖に着いたボスワースらは、自分達の車を沈めて、ナンシーの”ジャガー”に乗り街に向かう。

FBI捜査官ブレンダ・チャンドラー(リンゼイ・クローズ)は、何も話さない尋問を受けているナンシーが、嘘をついていると考える。

ボスワースの様々な犯罪歴を聞いたチャンドラーは、ナンシーを釈放して泳がせ、組んでいると思われるボスワースを誘き寄せ、二人を逮捕しようとする。

郊外の住宅地に着いたボスワースは、売りに出ているコーネル家に目を付ける。

暖房の故障で業者に電話をしたノラは、現れたボスワースやウォリー、そしてアルバートが押し入ってきたために驚く。

紳士的に振る舞うボスワースは、ノラに車の鍵を渡すよう要求し、ウォリーとアルバートに金品を集めさせる。

子供達の話をしてノラを脅したボスワースは、ナンシーに電話をかけてこの家の番号を知らせるようノラに命ずる。

指示通りにナンシーに電話をしたノラは、メッセージを残す。

2階の部屋を探っていたアルバートは、キャビネットの上に隠されていた拳銃を見つける。

子供達にプレゼントを買って家を訪れたティムは、侵入者に気づく。

ザックに渡すバットをアルバートに奪われたティムは、脚を殴られてしまう。

ノラが脅されていることを知ったティムは、苛立ちながら現金とクレジットカードをボスワースに渡す。

それを返したボスワースは、フィアンセのナンシーを待つだけだと伝える。

学校から帰ったザックはアルバートとウォリーに気づき、怯えながらノラの元に向かう。

家には銃がないことをノラに確認したボスワースは、ティムが刑事弁護士であること知る。

ノラに夕食の支度をさせたボスワースは、入浴して正装し食卓に着く。

ナンシーはノラのメッセージを聞いて番号をメモし、録音テープを燃やして出かける。

食事をしたボスワースは、ナンシーが警察に全面協力しているというニュースを見る。

ウォリーが焦るために、ナンシーが協力して犠牲者を装っていることをボスワースは彼に理解させる。

そこに、ボーイフレンドのカイル(マット・マクグラス)に送られてきたメイが戻り、ボスワースは、ティムを外に出して対応させる。

酔っていたメイをカイルと食事に行かせようとしたティムだったが、彼女は家に入ってしまう。

見知らぬ男達に家族が脅されている状況に気づいたメイは、自分のヘッドフォン・ステレオを使い、それを踏みつけて壊したアルバートに襲いかかる。

バカにされたアルバートは憤慨するものの、ウォリーになだめられる。

その後、朝呼んだ暖房の修理業者がようやく現れ、ノラが対応して不満を訴える。

出張費を要求されたノラは、小切手に”助けて”と書いたのをボスワースに気づかれてしまう。

小切手を書き直したノラは、それを業者に渡す。

ノラはボスワースに殴られてしまい、隙を見てナイフを手にしたティムは、アルバートに襲いかかる。

ウォリーに羽交い絞めにされていたメイを二階に向かわせたティムだったが、ボスワースがノラに銃を向けていたためナイフを捨てる。

アルバートは拾ったナイフでティムの肩を刺し、ノラが二階で手当てをする。

ティムは、用心のために買った銃があることを知ノラから知らされるが、既に奪われていた。

アルバートが奪ったと思われる銃のことをボスワースが知らないはずだと言うティムは、子供達だけでも逃がす方法を考える。

余計なことをしたと言って責めるノラに、済んだことは忘れ、ボスワースより自分を信じるようティムは彼女に伝える。

その頃、車で移動するナンシーを、チャンドラーは飛行機で監視し、追っていた同僚のマドックス(ディーン・ノリス)が公衆電話に立ち寄ったナンシーに気づく。

違う番号にかけたナンシーは先を急ぎ、チャンドラーは、その番号の通話記録を調べさせる。

ナンシーは暴走を続け、マドックスは車での追跡を諦めるが、チャンドラーは空から彼女を追う。

カイルからの電話で、湖へのドライブに誘われたメイはそれを断る。

二階から逃げようとしたザックは窓から落ちてしまい、そこに不動産業者のエド・タレント(ジェリー・バマン)が現れ、彼は、対応したウォリーにノラがいるかを尋ねる。

エドを家に入れたボスワースは、何もするなと言うティムの言葉を無視して彼を射殺してしまう。

動揺するアルバートは銃を手にして逃げると言い出し、銃のことを隠していたことでボスワースはノラを責める。

出て行くことを認めたボスワースは、エドの死体を始末するようアルバートに指示し、メキシコで落ち合うことを伝える。

ティムを銀行に向かわせて1万ドルを手に入れようとしたボスワースは、それを不安に思うウォリーに、何もできないと言って安心させる。

エドの死体をトランクに乗せたアルバートは、彼の車でその場を去る。

銀行に向かったティムは、行員に不審に思われながら、口座を解約して現金を受取り家に向かう。

山間部に向かったアルバートは、暴走したためパトカーに追われ、道を外れて車が立ち往生してしまい、エドの死体を川に捨てる。

警察がナンシーを起訴しないことをニュースで知ったボスワースは、彼女からの電話は必ずあると考える。

ティムが戻り、現金を受け取ったボスワースはそれを確認する。

エドの死体が発見されたことを知ったチャンドラーは、彼の顧客リストを調べるよう指示する。

マドックスに非常線を張る提案をされたチャンドラーは、民家に押し入り人質をとるのがボスワースの手口だと彼に伝える。

チャンドラーは、情報は全て自分に知らせるようマドックスに指示する。

血まみれで街道に向かったアルバートは、その場にいた女性に声をかける。

女性は車で逃げ去ってしまい、もう一人が店に飛び込み警察に連絡する。

パトカーが現れたために川に逃げたアルバートは、マドックスらに追い詰められる。

銃を捨てろとマドックスに言われたアルバートは、それに従わないために射殺される。

アルバートの所持していた銃の登録名が”ノラ・コーネル”だと分かり、エドの顧客名簿、そしてナンシーが公衆電話の住所が一致したことをチャンドラーは確認する。

ボスワースはナンシーからの電話を受けて、彼女が1時間以内に来ることになる。

既に捕えられていたナンシーは、ボスワースを連れ出してドライブ・インに向い、その後は任せるようにとチャンドラーに指示される。

ボスワースが裏切りに気づくことを恐れるナンシーが、銃がなければ従わないと言うため、チャンドラーは弾丸を抜いた拳銃を渡す。

別の武器を手にしたチャンドラーは、その場をマドックスに任せて現場に向かう。

コーネル家に着いたナンシーは、ボスワースに求められて愛し合う。

ナンシーにティムの家族を紹介したボスワースは、彼女にノラの指輪を渡す。

メイを迎えに来たカイルは警官に止められるが、それを無視してコーネル家に向かってしまう。

対応するようボスワースに指示されたティムは、カイルからメイとドライブしたいと言われ、様子を聞いてくると彼に伝える。

それを許したボスワースは、カイルと遠くに行くようにとメイに伝え、指示に従わなければ父親を殺すと言って脅す。

ボスワースから車を回すよう指示されたティムは、車内に潜んでいたチャンドラーから、犯人を追い出すようにと言われるものの無理だと答える。

銃を渡されたティムは弾丸を抜き、考えがあるとチャンドラーに伝えて家に戻る。

キーがなかったと言うティムはボスワースに拳銃を奪われ、シートの下に隠してあったと伝える。

同行することになったティムは、ノラとザックに別れを告げる。

ボスワースにエンジンをかけるようにと言われたナンシーは、ウォリーと共に車に向かう。

動揺するナンシーは狙撃手に気づき叫び声をあげ、ボスワースが一人を射殺する。

一斉射撃が始り、チャンドラーの制止にも拘わらず銃撃戦となり、彼女は脚を撃たれマドックスに助けられる。

ウォリーは撃たれるものの、ナンシーと共に家に戻る。

警官からかかってきた電話に出たボスワースは、空港に向かう車を用意するよう伝える。

考えを変えないチャンドラーは、車を玄関に回すよう指示する。

ノラはザックを逃がし、ティムは、瀕死のウォリーに助からないと伝えて拳銃を奪う。

ウォリーは息絶えて、ナンシーは取り乱しそうになる。

ノラに銃を向けたボスワースだったが、ティムが銃を向ける。

弾丸がないことに気づいたボスワースは、ノラが逃げたため、ティムに階段から落とされる。

車が用意できたというチャンドラーの呼びかけで、ティムはボスワースを表に出す。

拳銃を手にしたまま立ち上がったボスワースは、ナンシーと叫びながら射殺される。

ティムは、外に出たナンシーの指輪を外し、彼女は逮捕連行される。

指輪をノラに渡したティムは、駆け寄って来たメイとザックと共に家に入る。

ティムらを見守っていたチャンドラーはその場を去る。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
ユタ州。

公判中の凶悪犯マイケル・ボズワースは、恋人である担当弁護士のナンシーの協力で逃亡する。
コーネル家に目を付けたボスワースは、弟のウォリーとその友人のアルバートと共に家に押入り、弁護士のティムの妻ノラを人質に取って立て篭もる。
帰宅した息子ザックと別居中のティム、そして娘のメイを脅したボスワースは、ナンシーの連絡を待つ。
その頃、ナンシーの行動を怪しんだFBI捜査官のチャンドラーは、彼女がボスワースと組んでいると考えて捜査を進めるのだが・・・。
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1970年代前半から活躍を始め、「ディア・ハンター」(1978)で映画史に残る業績を残したにも拘らず、その後、作品に恵まれずに低迷していたマイケル・チミノが、犯罪ドラマに挑んだ注目作ではある。

しかし、サスペンスとしての緊迫感、繊細さに欠ける脚本など、マイケル・チミノの演出に精彩はなく、駄作としか言いようのない内容は残念だ。

辻褄が合わないようなチグハグな展開や配役の失敗なども目立ち、意味不明で不必要な、妖艶な弁護士の脚線のクローズ・アップなど、B級作品を観ているような安っぽさも感じられる。

この後に、長身を生かし頼りがいのある名脇役として活躍する、犯人一味を演ずるデヴィッド・モースの役柄は、本格的に認められた存在でなかったためにまだ許せるが、深い演技のできる実力派女優リンゼイ・クローズの、女戦士のような熱血FBI捜査官は完全なミスキャストで、彼女の印象が強すぎる演出も頭を傾げる。

凶悪犯という設定ではあるものの、単なるインテリの悪党青年程度の役柄がやや物足りないミッキー・ローク、キャリアは摘んでいた実力派だが、翌年の「羊たちの沈黙」(1991)のオスカー受賞により、更に存在感のあるスターとなったと言っていいアンソニー・ホプキンスの二人の共演は、良い悪いは抜きにして、今観ると実に興味深い。

夫(アンソニー・ホプキンス)と別居中ではあるものの、事件により絆が深まるミミ・ロジャース、その娘ショウニー・スミス、息子ダニー・ジェラード、主人公の恋人である担当弁護士ケリー・リンチ、主人公の弟イライアス・コティーズFBI捜査官のディーン・ノリス、コーネル家の娘のボーイフレンド、マット・マクグラス、不動産業者ジェリー・バマンジェームズ・レブホーンなどが共演している。


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