第二次大戦下、過酷な任務を遂行するナチス・ドイツが誇る潜水艦”Uボート”の乗組員の苦闘を描く、監督、脚本ウォルフガング・ペーターゼン、主演ユルゲン・プロホノフ、ヘルベルト・グレーネマイヤー、クラウス・ヴェンネマン他共演のドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ウォルフガング・ペーターゼン
製作:ギュンター・ロールバッハ
原作:ロータル=ギュンター・ブーフハイム”Das Boot”
脚本:ウォルフガング・ペーターゼン
撮影:ヨスト・ヴァカーノ
編集:ハンネス・ニーケル
音楽:クラウス・ドルディンガー
出演
艦長:ユルゲン・プロホノフ
ヴェルナー少尉:ヘルベルト・グレーネマイヤー
機関長:クラウス・ヴェンネマン
第一当直士官:フーベルトゥス・ベンクシュ
第二当直士官:マルティン・ゼメルロッゲ
クリークバウム一等航海士:ベルント・ダウバー
ヨハン:アーウィン・レダー
ランプレヒト兵曹長:ウーヴェ・オクセンクネヒト
ピルグリム二等兵曹:ヤン・フェダー
ウルマン少尉:マルティン・マイ
ヒンリッヒ:ハインツ・ヘーニッヒ
アリオ:クロード=オリバールドルフ
マート:ヤン・フェダー
フィリップ・トムセン大尉:オットー・ザンダー
西ドイツ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1981年製作 135分(DC:209分/UC:293分)
公開
西ドイツ:1981年9月17日
北米:1982年2月10日
日本:1982年1月9日
製作費 $14,000,000
北米興行収入 $11,433,130
世界 $84,970,340
■ アカデミー賞 ■
第55回アカデミー賞
・ノミネート
監督・脚色・撮影・編集・録音・音響編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1941年、ナチス占領下のフランス、ラ・ロシェル。
ドイツ軍のUボート”U-96”の艦長(ユルゲン・プロホノフ)は、報道部記者のヴェルナー少尉(ヘルベルト・グレーネマイヤー)と機関長(クラウス・ヴェンネマン)を伴い酒場に向かう。
艦長は、既に酔っている第二当直士官(マルティン・ゼメルロッゲ)に、ヴェルナーを紹介する。
考えこむ機関長が妻の出産のことを気にしていることを知った艦長は、出航準備が整ったことを第一当直士官(フーベルトゥス・ベンクシュ)から報告され、出撃前のひと時を楽しもうとする。
別のUボートの艦長である”騎士鉄十字章”の叙勲者フィリップ・トムセン大尉(オットー・ザンダー)は称えられ、酔ったままステージに上がった彼はスピーチをする。 浮かれている若い乗組員の様子をトムセンと見つめる艦長は、ヒトラー崇拝者の彼らが、いつか思い知るだろうと考える。 翌日、U-96に向かった艦長は、部下達にヴェルナーを紹介して、同乗することを伝える。 最終準備が整い、艦長は出航を命じ、U-96の帰艦を祈るトムセンが見送る。 艦内をランプレヒト兵曹長(ウーヴェ・オクセンクネヒト)に案内されたヴェルナーは、機関兵曹長のヨハン(アーウィン・レダー)を紹介される。 乗組員の写真を撮るヴェルナーに、髭面になった帰還時に撮るべきだと伝えた艦長は、新聞を見たイギリス側は、相手が子供だと思うだろうと付け加える。 その後、敵発見の警報が鳴り艦内に緊張が走るが、訓練だったことを伝えた艦長は、警戒解除後に、潜航して耐圧テストをする指示を出す。 緊張するヴェルナーは、第二当直士官から、水圧に耐えきれず艦体が潰れる可能性があると言われる。 機関長から160mと言われた艦長は、U-96を浮上させる。 艦内を案内され写真を撮っているまでは良かったものの、訓練や耐圧テストにより、ヴェルナーは緊張の極に達する。 眠ろうとしたヴェルナーは、向いの寝台のウルマン少尉(マルティン・マイ)から、恋人フランソワーズの写真を見せられ、妊娠していることを知らされる。 レジスタンスに見つかった場合はまずいことになると言うヴェルナーは、フランソワーズが産む気だと知り、ウルマンを気遣う。 ナチ上層部の戦略を批判する艦長は、乗組員の士気を高めるため”遥かなティペラリー”を歌わせる。 その後、護衛船団を見つけたという電文を受けるものの、遠すぎると判断した艦長は支援を諦める。 出撃20日目、ようやく艦内の様子に慣れたヴェルナーは、体中の痛みや悪臭に耐えながらの日々を過ごす。 船影を確認した艦長だったが、高速船であるために追うのは不可能だと判断する。 イギリス船団を発見したU-32からの連絡で、支援作戦のため出動することになったU-96は現地に向かう。 時化の中、敵駆逐艦を発見した艦長は、戦闘配備のまま潜航する。 停止して魚雷発射準備をした艦長は、目前に駆逐艦が現れたことを確認して、潜航を指示する。 爆雷攻撃を受けたU-96はそれを凌ぎ、敵の行動を探り心理戦になる。 再び爆雷攻撃を受けて耐えたU-96は、更に潜航を続けて艦体がきしみ始める。 次の攻撃で浸水するものの、それを修理させた艦長は、深度150mを保つよう指示する。 別の船が接近し、通過したことを確認した艦長は、潜航を続けさせる。 1時間が過ぎ、士官達と食事をした艦長は、待機して夜まで潜航することを伝えるが、不安を隠せないヴェルナーは、何も食べる気にならない。 その後、急速浮上させた艦長は、潜望鏡深度で周囲を確認して浮上する。 乗組員は久し振りに羽目を外し、毛じらみの検査を受ける。 堅物の第一当直士官も、機関長から、目の上に毛じらみの症状が現れていると言われ、衛生兵も兼ねる通信士ヒンリッヒ(ハインツ・ヘーニッヒ)の元に向かう。 その後も時化は続き、不安を抱くヒンリッヒに、この艦は大丈夫だと伝えた艦長は、艦内に音楽を流すよう彼に指示する。 荒れ狂う海面に浮上した際、艦橋から落下したピルグリム二等兵曹(ヤン・フェダー)が重傷を負う。 機関長の妻や故郷の写真を見せてもらったヴェルナーは心和むが、機関長は家族を想いうなだれる。 その後、味方のUボートが現れ、信号を送った艦長は、それがトムセンの艦だと分かり、互いの健闘を祈る。 艦内に戻った艦長は、広い海で付近に二隻もUボートがいることを疑問に思い、他の海域が手薄になっている現状を嘆く。 ようやく静まった海を航行するU-96は、敵船5隻を発見し、魚雷を発射するものの、駆逐艦の攻撃を受けたために潜航する。 二隻に魚雷を命中させたU-96だったが、爆雷攻撃で被害を受ける。 深度を下げるよう命じた艦長は、敵を振り切ろうとする。 230mの深度で艦体がきしみボルトが吹き飛んだため、艦長は10m浮上させるが、更に爆雷攻撃を受ける。 150mまで浮上するよう命じた艦長だったが、ボルトとパッキンが破損して浸水が始まる。 魚雷ハッチからも浸水し、何んとかそれを止めたことを機関長から知らされた艦長は、負傷者を出しながらも艦内の騒ぎが収まったことを確認する。 しかし、機関兵曹長のヨハンが正気を失い取り乱したため、艦長は銃を手にする。 部下達がヨハンを取り押さえて事態を鎮めるが、敵が再び接近して激しい攻撃を受ける。 艦内が混乱する中、死を覚悟しながらヴェルナーは眠ってしまう。 周囲の静けさで目覚めたヴェルナーは、U-96が危機を乗り切ったことに気づく。 浮上して艦橋に上がった艦長は、炎上しながらも沈没しないタンカーを目の前にして、止めを刺す命令を出す。 タンカーに人が乗っていることに気づいた艦長は、時間はあったにも拘らず、敵船が救助しなかったこと疑問に思う。 助けを求めて近づいてくる者達を見つめながら、艦長はU-96を後退させる。 その後、U112からの電文が届き、イギリス船3隻を撃沈し、護衛船団が退散したことをクリークバウム一等航海士(ベルント・ダウバー)から知らされた艦長は、他の艦の救援に行くことを考え、帰港する気はなかった。 落ち着いたヨハンは艦長に謝罪し、重大事に取り乱して命令違反をしたことを厳しく非難される。 軍法会議を恐れるヨハンが、今後は過ちを犯さないことを約束したため、艦長は彼を許し眠るよう指示する。 暗号化された極秘無線が入り、航行を続けていたU-96は進路を変更し、ラ・ロシェルに帰港することなく、スペインのビーゴで燃料を補給して、イタリアのラ・スペツィアに向かうことになる。 ジブラルタル通過の危険性を考える艦長は、精神的に限界に思える機関長と共にビーゴで降りることをヴェルナーに伝える。 それに従うことを艦長に伝えたヴェルナーは、そのことをウルマンに話し、フランソワーズへの手紙を預かる。 ビーゴ。 補給船の艦長は、海の武勇伝を艦長から聞こうとするものの、話してもらえない。 そこに海軍部代表セーヴァルトが現れ、ジブラルタル突破の資料を渡された艦長は電文も手に取り、ヴェルナーと機関長を呼んで席を外す。 下艦が却下されたことを二人に伝えた艦長は、機関長から、気心が知れた自分と組んだ方がいいと言われる。 燃料と食料などの補給を済ませた艦に戻ったヴェルナーは、残ることになったとウルマンに伝えて、手紙を返す。 出航したU-96は、敵駆逐艦などを警戒しながら、難関のジブラルタル海峡に向かう。 敵機の攻撃を受け、艦橋にいたクリークバウムが被弾して艦内に運び込まれ、U-96は艦長の命令に従い全速で進む。 潜航したU-96は、深度を下げ続けて浮上できず、海底に達する。 深度280mで耐えたU-96だったが、魚雷ハッチから浸水してしまう。 艦長は、各部にダメージを受けたことを機関長から知らされる。 魚雷室の水位が上がり、ヴェルナーの助けを借りて何んとか浸水を止めたヨハンは、それを艦長に報告する。 ヨハンの労を労った艦長は、手作業での排水作業を始めるよう指示する。 機関長から、無事だった3個のバッテリーの接続を終えたことを知らされた艦長だったが、第一当直士官から、羅針盤、速度計、深度計、そして無線機も故障したと言われる。 艦長は、圧縮空気の噴射で浮上することを考える。 故障個所の修理を始めさせた艦長は、酸素マスクを用意させて、他の乗組員を休ませる。 疲労困憊の機関長は、飲物を持ってきてくれたヴェルナーに、ジブラルタル海峡突破の命令を受けた艦長は不可能だと悟っていたため、自分達をビーゴで降ろそうととしたと話す。 15時間経っても作業は終わらず、諦めかけた艦長は、ヴェルナーの絶望的な言葉に耳を傾ける。 そこに現れた機関長は、排水作業他、計器などの修理が完了したことを艦長に報告する。 機関長に感謝して休むようにと伝えた艦長だったが、まだ仕事があると言って機関長は持ち場に戻る。 優秀な部下を持って幸せだと、艦長はヴェルナーに伝える。 乗組員を集めた艦長は、浮上を試みることを伝えて空気を噴射させる。 艦が動き始めたことを確認した乗組員は喜び、浮上したU-96はエンジンを始動させる。 無警戒な敵が油断している隙に、U-96は全速航行を続けて、無事に地中海に向かうことができる。 ラ・スペツィア。 その直後に空襲警報が鳴り響き、敵機の攻撃を受けて、U-96の多くの乗組員が命を落とす。 艦長は、攻撃を受けたU-96が沈没する様子を見届けて息を引き取る。 艦長の元に歩み寄ったヴェルナーは、破壊された周囲の光景を見て絶望する。
...全てを見る(結末あり)
偽装した補給船を探した艦長は、士官と共にそれに乗船して歓迎される。
Uボート・ブンカーに到着したU-96は歓迎を受け、ヒンリッヒの治療により一命を取り留めたクリークバウムが運び出される。
*(簡略ストー リー)
1941年、ナチス占領下のフランス、ラ・ロシェル。
ドイツ軍のUボート”U-96”の艦長は、任務を受けて出航する。
報道部記者ヴェルナーを同乗させた艦長だったが、ヴェルナーは、訓練や艦内の過酷な体験をしながら苦悩する日々を送る。
敵駆逐艦の攻撃を凌ぎ、タンカーを撃沈したU-96は、スペインのビーゴ経由でイタリアのラ・スペツィアに向かう命令を受ける。
艦長は、精神的に限界に達した機関長と共に、ヴェルナーをビーゴで下艦させようとする。
しかし、それが却下された艦長は、難関のジブラルタル海峡に向かうことになる。
敵艦の攻撃を受けたU-96は海底に沈み、再び浮上するための、乗組員の必死の作業が始まる・・・。
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第二次大戦中、実際にUボート”U-96”に乗艦したロータル=ギュンター・ブーフハイムが、1973年に発表した”Das Boot”を基に製作された作品。
当初はテレビ・ドラマ用に製作され、編集した作品を劇場用映画として公開し、世界中で高い評価を受けた作品でもある。
思いがけない形で注目された本作で、脚本も兼ねたドイツ人監督のウォルフガング・ペーターゼンは、その後ハリウッドに拠点を移し、話題作を手掛けて世界的名声を得ることになる。
物語は、第二次大戦下、当時、大西洋を中心にして多くの戦果を挙げた、Uボートの若き乗組員の苦悩と悲しい運命を、戦争の悲惨さと共にリアルに描いた作品。
第55回アカデミー賞では、監督・脚色・撮影・編集・録音・音響編集賞にノミネートされた。
当時のドイツ映画としては破格の製作費となる1400万ドルをかけた作品は、全世界で約8500万ドルのヒットとなった。
勇ましいクラウス・ドルディンガーの主題曲も、非常に印象に残る。
その後、本作のイメージが強過ぎて苦労することもあったが、ハリウッドに進出して、独特の個性を放つ存在となった、艦長役のユルゲン・プロホノフの好演は光る。
報道部記者の少尉ヘルベルト・グレーネマイヤー、機関長のクラウス・ヴェンネマン、その部下のアーウィン・レダー、第一当直士官フーベルトゥス・ベンクシュ、第二当直士官のマルティン・ゼメルロッゲ、一等航海士のベルント・ダウバー、聴音、通信更に衛生兵を兼ねる兵曹ハインツ・ヘーニッヒ、記者と親交を深める少尉のマルティン・マイ、兵曹長のウーヴェ・オクセンクネヒト、重傷を負う二等兵曹のヤン・フェダー、乗組員のクロード=オリバールドルフとヤン・フェダー、別Uボートの艦長オットー・ザンダーなどが共演している。