1955年に発表された、ウィリー・ハインリッヒの小説”The Willing Flesh”を基に製作された作品。 戦いそして全てを憎む男の戦場での生き様を描く、監督サム・ペキンパー、主演ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェル、ジェームズ・メイソン、デビッド・ワーナー、センタ・バーガー他共演の戦争ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:サム・ペキンパー
製作
ヴォルフ・C・ハルトヴィッヒ
アーリーン・セラーズ
アレックス・ウィニトスキー
原作:ウィリー・ハインリッヒ”The Willing Flesh”
脚本
ジュリアス・J・エプシュタイン
ジェームス・ハミルトン
ウォルター・ケリー
撮影:ジョン・コキロン
編集
トニー・ローソン
マイケル・エリス
音楽:アーネスト・ゴールド
出演
ロルフ・シュタイナー曹長:ジェームズ・コバーン
シュトランスキー大尉:マクシミリアン・シェル
ブラント大佐:ジェームズ・メイソン
キーゼル大尉:デビッド・ワーナー
エヴァ:センタ・バーガー
クリューガー伍長:クラウス・レーヴィッチェ
トリービッヒ中尉:ロジャー・フリッツ
マイヤー少尉:イゴールガロ
ゾール二等兵:アルトゥール・ブラウス
マーグ二等兵:ブルクハルト・ドリースト
ツォル二等兵:アーサー・ブラウス
西ドイツ/イギリス 映画
配給
EMI Films(イギリス)
コンスタンティン・フィルム(西ドイツ)
1977年製作 133分
公開
西ドイツ:1977年1月28日
イギリス:1977年3月8日
北米:1977年5月11日
日本:1977年3月17日
製作費 $6,000,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1943年、第二次大戦下、東部戦線、ロシア、タマン半島。
ロルフ・シュタイナー軍曹(ジェームズ・コバーン)の指揮するドイツ軍の援護小隊はソ連兵を襲い、少年兵を見逃して連行する。
西部戦線から赴任したシュトランスキー大尉(マクシミリアン・シェル)は司令部のブラント大佐の元に向い、副官のキーゼル大尉(デビッド・ワーナー)を紹介される。
シュトランスキーが”鉄十字勲章”を手に入れるためにフランスから来たことを知ったブラントは、自分の勲章を渡そうとする。
それが冗談だというシュトランスキーは、東部戦線を立て直すため司令官に命ぜられたことをブラントに伝える。
ソ連を打ち破るため、部隊の士気を高める必要があるとシュトランスキーは語る。
士気が低くなるのは敗北が続いているからだと言うブラントは、もはやドイツ軍に誇りなどないことを伝え、東部戦線を知らないシュトランスキーに忠告する。
シュトランスキーは、軍人としての役目を果たすことを伝える。 シュタイナーが戻るという連絡を受けたブラントは、休息後に報告をするよう指示する。 面倒な男だが、兵士としては一流だとシュタイナーのことを語るブラントは、彼の行いは大目に見るようにとシュトランスキーに伝える。 現状においては必要であり、危険を伴う男だともキーゼルから言われたシュトランスキーは、シュタイナーに会うことにする。 偵察から戻ったシュタイナーに指揮官であることを伝えたシュトランスキーは、捕虜の少年兵を始末するよう命ずる。 自分で銃殺すればいいとシュタイナーに言われたシュトランスキーは銃を抜くが、伍長が処置すると申し出たためにそれを許可する。 休息をとり1時間後にシュトランスキーに報告書を提出したシュタイナーは、食料事情もあり捕虜を殺すのは仕方のないことだと言われる。 曹長に昇進させると言われても喜びもしないシュタイナーは、行方不明になった部下を捜索しなかったことでシュトランスキーに責められる。 シュタイナーは、ナチ党員でない貴族の軍人シュトランスキーが誇りを持って戦っていることを考慮し、警戒した方がいいとマイヤー少尉(イゴールガロ)に忠告される。 兵士達によりマイヤーの誕生日を祝う会が開かれ、揉め事も起きるものの楽しい時を過ごす。 副官トリービッヒ中尉(ロジャー・フリッツ)もフランスから志願してきたことを知ったシュトランスキーは、彼と当番兵が惹かれ合う仲の同性愛者だということに気づいていたため、それを認めさせる。 これが発覚すれば処刑されると言って、シュトランスキーは二人に警告する。 敵が迫り戦闘が始まることを考えたシュタイナーは、少年兵を逃がし彼からハーモニカを渡される。 しかし、少年兵は現れた味方のソ連兵に射殺されてしまう。 戦闘は始まり、ブラントからの連絡を受けたシュトランスキーは、総攻撃に対して反撃することを伝える。 マイヤーは戦死し、シュタイナーは脳震盪で意識を失い病院に運ばれ看護師エヴァ(センタ・バーガー)に介抱される。 三週間静養して故郷に帰れると言われたシュタイナーは、エヴァと親交を深める。 愛し合った二人だったが、前線に戻ると言うシュタイナーは、別れを惜しむエヴァの元を去る。 部隊に戻り同僚達に歓迎されたシュタイナーは、シュトランスキーに呼ばれる。 上層部が”鉄十字勲章”に相応しいと判断してくれたことを伝えたシュトランスキーは、反撃を指揮してソ連軍を撤退させたことの証人が二名必要であることを伝える。 トリービッヒが既に署名したことを伝えたシュトランスキーだったが、自分の”鉄十字勲章”を見せたシュタイナーは、なぜそれにこだわるのかを問う。 勲章なしで国に戻れば一族の恥だというシュトランスキーに対し、シュタイナーはそれに値しないと言い切る。 意見しようとしたシュトランスキーだったが、敵の爆撃が始まり、シュタイナーは部隊に戻ろうとする。 全滅したと言われながらも部隊に戻ったシュタイナーは、生き残り混乱して呆然とするクリューガー伍長(クラウス・レーヴィッチェ)を連れてその場を離れる。 ブラントの元に向かったシュタイナーは、反撃がシュトランスキーの指揮だったかを聞かれ、マイヤーの指揮だったと答える。 署名したトリービッヒを呼んだブラントは、戦闘でシュトランスキーが指揮をしたのかを問い、命令に従い戦場に向かったと言われる。 トリービッヒの供述は曖昧で、現場の指揮は戦死したマイヤーが執っていたとキーゼルは判断する。 戦死者の戦功を奪おうとする卑劣な行為を批判したブラントは、シュトランスキーが指揮していなかったという証言を撤回しないのかをシュタイナーに問う。 トリービッヒを下がらせたブラントは、答えを保留したいと言うシュタイナーに、シュトランスキーに恥をかかせるチャンスだと伝える。 そんなことは望んでいないし頼んでもいないと言うシュタイナーに、正気かと言い寄るブラントだったが、シュタイナーはシュトランスキーや士官、そしてドイツ軍全てを憎んでいると答える。 そして、この軍服をどれだけ憎んでいるかを理解してもらえるかと語るシュタイナーをブラントは追い払う。 司令官からの連絡を受けたブラントは、戦況の悪化を知らされて撤退の準備を始める。 キーゼルからその場を離れるなと言われたシュトランスキーは、護衛小隊を退避させるよう指示される。 シュタイナーにもそれを伝えるようトリービッヒに命じたシュトランスキーだったが、電話線を切ってしまう。 退避が遅れたシュタイナーの小隊は、敵戦車隊の攻撃を受ける。 工場に向かったシュタイナーらは敵を迎え撃ち、戦車が現れたためトンネルに向い、それを通り抜けて逃れる。 シュトランスキーがパリに行くことを知ったブラントは、このままでは無能な臆病者が”鉄十字勲章”を受けることになると言って、シュタイナーの行方が分からない現状を嘆く。 偵察隊を出すしかないブラントは、シュタイナーの安否を気にする。 敵地を進み橋に着いたシュタイナーらは監視兵を殺し、ソ連軍の女性兵士達がいる家を襲撃する。 女に手を出そうとする兵士に、彼女らの軍服を奪い着るようにとシュタイナーは命ずる。 女が抵抗したため納屋に連れて行ったツォル二等兵(アーサー・ブラウス)は、彼女に性器を噛み切られる。 見張りの新兵も油断した隙に女に殺され、シュタイナーはツォルの悲鳴を聞く。 女達を納屋に閉じ込めてシュタイナーらはその場を去り、置き去りにされたツォルは女達に殺される。 攻撃が激しくなり撤退を余儀なくされたブラントだったが、キーゼルはそれに従おうとしない。 ブラントは、生き残った者達と役目を果たせと命じキーゼルを出発させる。 敵の塹壕を越えられるかをクリューガーに聞かれたシュタイナーは、護衛として戦っていた時よりも楽しくなってきたことを伝える。 ソ連兵に扮し捕虜を捕えたと見せかけたシュタイナーらは、隙を見て敵を襲い塹壕を突破する。 シュタイナーから捕虜がいるという連絡を受けたシュトランスキーは、それが無電だったため罠であることも考える。 暗闇の中で敵の軍服を着て歩いている者に発砲した場合には、非難されないことをトリービッヒに確認したシュトランスキーは、その対処をするよう命ずる。 クリューガーらが捕虜に扮し味方陣地に近づく小隊は、合言葉を伝えながら前進する。 それがシュタイナーらだと確認したトリービッヒは、容赦なく攻撃を命ずる。 シュタイナーは怒り狂い、クリューガーが負傷兵を担いで陣地に向い、ドイツ側も味方がいることを知る。 シュタイナーに気づいたトリービッヒは、その場から逃れようとする。 トリービッヒに銃を向けたシュタイナーは、シュトランスキーの命令であり自分は無関係だという彼を銃撃する。 クリューガーがトリービッヒに襲いかかり、ナイフで止めを刺す。 シュタイナーは、クリューガーに後を任せてシュトランスキーの元に向かう。 ブラントから人員が必要だという連絡を受けたシュトランスキーは、命令書が来ていると言ってそれを断る。 シュトランスキーに銃を向けたシュタイナーは、トリービッヒが死んだことを伝える。 威嚇射撃をしたシュタイナーは、勲章はいらないのかとシュトランスキー問う。 小隊の残りを聞かれたシュタイナーは、お前だと言ってシュトランスキーに機関銃”MP 40”を渡す。 シュトランスキーは微笑みながら、プロイセン魂を見せると言ってシュタイナーと共に戦場に向かう。 銃を手にしたブラントも、部下を指揮して戦う。 そして、シュトランスキーが銃の扱い方も知らずに助けを求めたため、それを見たシュタイナーは笑い始める。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
1943年、第二次大戦下、東部戦線、ロシア、タマン半島。
劣勢の陣地で護衛小隊を指揮するドイツ軍のロルフ・シュタイナー軍曹は、上官として赴任してきたシュトランスキー大尉に偵察の報告をする。
ナチ党員ではない貴族出身のシュトランスキーは、名誉欲だけでこの地に志願し、”鉄十字勲章”を受けることだけを考えていた。
最初の戦闘でそのチャンスが訪れ、部隊を指揮したという証人として署名を求められたシュタイナーはそれを拒む。
司令官のブラント大佐はシュタイナーから話を聞き、戦死した少尉が指揮を執っていたことを知る。
戦死者の戦功を奪おうとするシュトランスキーの卑劣な行為を非難するブラントだったが、それを含め全てを憎み自分の世界で生きるシュタイナーの考えが理解できない・・・。
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製作は当時の西ドイツとイギリスで、オープニングのナチやヒトラー、”ヒトラーユーゲント”そして戦闘映像のバックで流れる童謡”Hänschen Klein/幼いハンス”がなんともミスマッチで興味深く、いきなり引き込まれてしまう。
トレードマークともなった、超スローモーションと残虐性をマッチさせたダイナミックなサム・ペキンパーの映像感覚は冴え渡り、今までに体験したことのない凄まじい戦場の戦いが幾度となく描写される展開は見応え十分だ。
戦い、そして上官をも恐れずに全てを憎む異端児的な歴戦の勇士ジェームズ・コバーンが、自分達の抹殺まで考える”鉄十字勲章”にこだわる上官クシミリアン・シェルに銃を向ける、緊迫感溢れるクライマックスは圧巻だ。
主人公が、憎き相手を単純に殺すことなく勇気を証明させようとするが、上官もプロイセン魂を見せて戦うという結末も見事な演出だ。
ラストの主人公の高笑いが衝撃的であり、再び流れる”Hänschen Klein”が効果的に流れる。
問題を抱える主人公を兵士として評価する、部隊を指揮する司令官ジェームズ・メイソン、その副官デビッド・ワーナー、主人公と親交を深める看護師センタ・バーガー、シュトランスキー(クシミリアン・シェル)の副官ロジャー・フリッツ、主人公の同僚クラウス・レーヴィッチェ、アルトゥール・ブラウス、ブルクハルト・ドリースト、アーサー・ブラウス、直属の上官イゴールガロなどが共演している。