1972年に発表された、パット・コンロイの自叙伝”The Water Is Wide”を基に製作された作品。 本土から離れた島の黒人学校に赴任した白人教師と子供達の親交を描く、製作、監督マーティン・リット、主演ジョン・ヴォイト、ポール・ウィンフィールド、マッジ・シンクレア、ヒューム・クローニン他共演のヒューマン・ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:マーティン・リット
製作
マーティン・リット
ハリエット・フランクJr.
原作:パット・コンロイ”The Water Is Wide”
脚本
アーヴィング・ラヴェッチ
ハリエット・フランクJr.
撮影:ジョン・A・アロンゾ
編集:フランク・ブラクト
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演
パット・コンロイ:ジョン・ヴォイト
マッド・ビリー:ポール・ウィンフィールド
スコット校長:マッジ・シンクレア
スケフィントン:ヒューム・クローニン
メアリー:ティナ・アンドリュース
クイックフェロー:アントニオ・ファーガス
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1974年製作 106分
公開
北米:1974年3月27日
日本:1975年4月19日
製作費 $2,370,000
北米興行収入 $2,000,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
サウスカロライナ州。
ビューフォートからボートでヤマクロウ島に向かった教師のパット・コンロイ(ジョン・ヴォイト)は、黒人小学校の教師に赴任するため島に到着する。
少女メアリー(ティナ・アンドリュース)はコンロイに気づくが、まともな挨拶もしない。
バラックのような小さな校舎に着いたコンロイは、校長のスコット(マッジ・シンクレア)に迎えられるものの、厳しく接することなど黒人の子供達への対応などで忠告される。
スコットの鳴らすベルで、遊んでいた生徒達は教室に入り、彼女からコンロイを紹介される。
コンロイは自分についてを語り始めるが、生徒達は彼のことを”コンラック”としか発音できない。 自分の国の名前も分からず足し算もできない、世間のことを何も知らない子供達に驚いたコンロイは、それをスコットに伝えるが、彼女は最初に忠告したはずだと言葉を返す。 黒人は鞭で教えなければだめだと言うスコットに対し、コンロイは奴隷を使う主人ではないと答える。 翌日、男子生徒を挑発したコンロイは、その一人と取っ組み合いになる。 騒ぎに気づいたスコットは鞭を持って現れそれを鎮める。 コンロイはその鞭を渡されるものの、それを置いた彼は自分の人生などを生徒に語る。 生徒達との触れ合いを第一に考えたコンロイは、彼らに様々な事について興味を持たせ、課外授業などもして楽しく過ごす。 コンロイは、学校に通わないメアリーと親しくなるが、スコットにそれを注意される。 そんな時コンロイは、生徒達と森の中で授業していた際、妻を亡くして精神を病んでいるというマッド・ビリー(ポール・ウィンフィールド)の存在を知る。 弟のランチを教室に持ってきたメアリーを席に着かせたコンロイは性教育を始める。 その場から駆け出したメアリーを追ったコンロイは、彼女がスコットを嫌っているために登校を拒んでいることを知る。 同じ黒人であるにも拘らず、白人に従う教育しかしないスコットを、メアリーは痛烈に批判する。 しかしメアリーは、楽しそうなコンロイの授業に興味を持ちクラスに加わる。 翌日、コンロイの上司でもある教育委員会の理事スケフィントン(ヒューム・クローニン)が、本土から学校を視察するために現れる。 授業に参加したスケフィントンは、知識もなく喧嘩を始める生徒を厳しく叱る。 その後、コンロイと共に商店に向かったスケフィントンは、反戦抗議デモのテレビ中継を見て苛立つが、それに息子が映っていたために驚いて嘆く。 森でマッドに再会したコンロイは、彼が気さくな男だと知る。 マッドは、密造酒と交換で読み書きを教えてほしいとコンロイに頼む。 数日後、再び現れたスケフィントンは、コンロイが裸で泳いだことや性教育をしたことなどで意見する。 釣りをしながらマッドに読み書きを教えていたコンロイは、水死した少年を発見し、島の者が誰も泳げないことを知る。 生徒達を海岸に連れて行ったコンロイは、彼らに水に入るよう指示して泳ぎを教える。 スコットが生徒達に厳し過ぎるため話をしたコンロイだったが、社会に出て行く子供達を、白人を喜ばせるように育てるのが自分の役目だと彼女は説明する。 コンロイは、授業で生徒達に”ベートーベン”の交響曲第五番”運命”を聴かせ、自分に誇りを持ち何があっても屈しない気持ちを理解させる。 メアリーは、島の住人のクイックフェロー(アントニオ・ファーガス)から結婚を申し込まれ、それが家族や自分のためにもなると考えていることをコンロイに伝える。 コンロイは、なぜ人に従う人生しか考えないのかをメアリーに尋ね、それに逆らって生きるべきだと助言する。 その後コンロイは、ハロウィンを知らない子供達のために、彼らをビューフォートに連れて行くことを考える。 ビューフォートに向かったコンロイは、生徒達を宿泊させる家を探す。 苦労しながらそれを見つけたコンロイは、ハロウィンの件をスケフィントンに伝える。 スケフィントンは許可を出す気はなかったが、コンロイは彼の意見を無視してそれを実行しようとする。 島に戻ったコンロイは、生徒達の親などが島を離れることに反対していることを知る。 生徒の家族から、水死者が絶えない川を怖がっていると言われたコンロイは、自分が責任を持って子供達を連れて帰ることを約束する。 ビューフォート。 その夜、ハロウィンの支度をした生徒達は、各家庭を回りお菓子をもらう。 スケフィントンは、自分の家にもコンロイに伴われた生徒が現れたため、一応、お菓子はあげる。 島に戻ったコンロイは、解雇するという教育委員会からの通知を受け取る。 コンロイの行動を認めた住民達は、その決定に抗議しようとする。 スコットは、コンロイの子供を愛する気持ちは認めるものの、彼の力にはなれなかった。 スケフィントンを訪ねたコンロイだったが、復職は認められず、仕方なく法廷に訴える。 しかし、コンロイの考えは認められず、彼はビューフォートの住民に街宣車で訴えるものの無駄だった。 その後、コンロイは島を離れることになり、クイックフェローとの結婚を止めたことをメアリーから知らされる。 そしてコンロイは、見送りに来た生徒達に自分の教えたことを復習させる。 それを確認したコンロイは、”川は渡るためにある”という別れの言葉を残し、生徒達に見守られながらボートでその場を去る。 メアリーは、持参したプレイヤーで”ベートーベン”の交響曲第五番”運命”を流し、生徒達と共にいつまでもコンロイを見つめる。
...全てを見る(結末あり)
町に着いたコンロイは、生徒達をカフェや図書館に連れて行く。
*(簡略ストー リー)
1969年、サウスカロライナ州、マクロウ島。
黒人小学校に赴任した白人教師パット・コンロイは、生徒達に厳しく接するスコット校長に迎えられる。
コンロイは、生徒達がまともに読み書きもできす、知識欲も希望もないことに驚く。
スコットは、白人を喜ばせることが黒人の使命だと信じ、それを基本に教育を進めていたが、コンロイは納得できず独自の授業を進める。
やがて、コンロイの自由な行動が教育委員会に伝わり、理事のスケフィントンが学校を視察する。
その後、スケフィントンの意見にも従わないコンロイは、生徒達と心を通わせ親交を深めるのだが・・・。
__________
ただ日々を送るだけの何の欲もない黒人の子供達と、進歩的な考えの自由人である白人教師の交流を単純に描いた作品でないところに注目したい。
ベトナム戦争が激化する時代、反戦運動なども盛んな当時の情勢の中で、左翼的なその活動をあからさまに批判する場面などもある。
また、保守層が自由主義を過剰に抑圧する姿勢なども描写したマーティン・リットの演出で、差別に対する自虐史観を含め社会問題を鋭く描く力作となっている。
若手の実力派としてその才能を評価されていたジョン・ヴォイトは、周囲とは異質な雰囲気ではあるが自らの信念を貫く、気骨のある青年を熱演する。
妻を失ったため精神を病んでいる島の住民で、主人公と親しくなるポール・ウィンフィールド、黒人は白人に従うという現実的な考えの基に厳しい教育を心がける校長マッジ・シンクレア、保守的な教育委員会理事長ヒューム・クローニン、主人公と親交を深める少女ティナ・アンドリュース、彼女と結婚しようとする住人アントニオ・ファーガスなどが共演している。