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愛しのシバよ帰れ Come Back, Little Sheba (1952)

1950年に上演された、ウィリアム・インジの舞台劇”Come Back, Little Sheba”の映画化。
学生時代の過ちの末に結婚した心に傷を負う夫婦の苦悩と再生を描く、製作ハル・B・ウォリス、監督ダニエル・マン、主演バート・ランカスターシャーリー・ブーステリー・ムーアリチャード・ジャッケル他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト
監督:ダニエル・マン

製作:ハル・B・ウォリス
原作:ウィリアム・インジCome Back, Little Sheba
脚本:ケティ・フリングス
撮影:ジェームズ・ウォン・ハウ
編集:ウォーレン・ロウ
音楽:フランツ・ワックスマン

出演
”ドク”デレイニー:バート・ランカスター
ローラ・デレイニー:シャーリー・ブース
マリー・バックホルダー:テリー・ムーア
ターク・フィッシャー:リチャード・ジャッケル
エド・アンダーソン:フィリップ・オバー
コーフマン夫人:リザ・ゴルム
エルモ・ヒューストン:エドウィン・マックス
ブルース・カニンガム:ウォルター・ケリー

アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1952年製作 99分
公開
北米:1952年12月23日
日本:1953年9月20日


アカデミー賞
第25回アカデミー賞

・受賞
主演女優賞(シャーリー・ブース
・ノミネート
助演女優(テリー・ムーア
編集賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
大学生のマリー・バックホルダー(テリー・ムーア)は、デレイニー家を訪ねる。

指圧師”ドク”デレイニー(バート・ランカスター)の妻ローラ(シャーリー・ブース)は、部屋を見に来たマリーを歓迎し、彼女を二階に案内する。

部屋を見せたローラは、眠っているドクのことを話し、一階の裁縫室を貸してもいいと伝えて、他の家も見て検討すると言うマリーを見送る。

ローラは、かつて飼っていた子犬のシバに似た犬を道路で見かけ、起きた来たドクにそのことを話す。
...全てを見る(結末あり)

マリーの話も聞いたドクは、アルコール依存症を克服しようとしている今は、誰にも部屋を貸す気はないと伝える。

朝食でジュースが飲みたいと言うドクのために、ローラは買い物に行く。

戻ってきたマリーはドクに挨拶し、1階の裁縫室を借りたいことを伝える。

美術を専攻していると言う快活なマリーに、かつてのローラの面影を見たドクは、彼女に部屋を貸すことにする。

マリーから2週間分の部屋代を受け取ったドクは、その後、戻ってきたローラに裁縫室を貸したことを伝える。

ローラと共に断酒会の”誕生会”に向かったドクは、アルコール依存症を克服したエド・アンダーソン(フィリップ・オバー)から、断酒1年を祝い名前を呼ばれる。

4年のエルモ・ヒューストン(エドウィン・マックス)と3年のパール、2年のヘンリエッタ、そしてドクには、それを祝うケーキが渡される。

帰宅したローラは、故郷の恋人ブルース・カニンガム(ウォルター・ケリー)に手紙を書いているマリーに声をかけ、映画鑑賞だったのかと訊かれたために、ドクを気にしながら友人と会ってきたと答える。

寝室に向かったドクは、マリーに依存症のことは知られたくないとローラに伝える。

自覚することが大切だとエドが話していたと言われたドクは、自信が持てたら皆に話すとローラに伝える。

ベッドに入ったローラは、昨夜シバの夢を見たことを話し、帰ってくるという暗示だろうかとドクに尋ねる。

分からないと答えるドクに会いたいと伝えたローラは、シバのことを想う。

翌朝、ローラから、今夜、映画に行きたいと言われたドクは、断酒会の活動の予定があることを伝える。

映画はマリーと行けばいいと言うドクは、彼女がターク・フィッシャー(リチャード・ジャッケル)とデートすることを知り、あんな男はやめた方がいいとローラに伝える。

ドクは、タークが好青年だというローラに女を弄ぶタイプだと伝える。

若い娘は「聖処女」のジェニファー・ジョーンズのようでなければいけないのかと言われたドクは、マリーは清純だと思いたいと伝える。

マリーと出かけるドクを、ローラは見送る。

歩きながら話すマリーは、ドクが名門のミード医大中退であることを知り、彼が中退した理由を話さないために、女学生と歩くタークの元に向かう。

隣人のコーフマン夫人と話したローラは、シバがいないので寂しいと伝える。

忘れるには別の犬を飼うべきだと言われたローラは、シバほど可愛い犬はいないとコーフマン夫人に伝える。

もう何か月も経つのだから忘れるべきだと言うコーフマン夫人は、忙しい日々を送れば忘れられるとローラに助言する。

郵便配達に声をかけたローラは、自分宛ての手紙がないことを確認して、のどが渇いている様子の彼を家に招き入れる。

コップに水を注いで渡し郵便配達と話したローラは、ドクのアルコール依存症のことを話してしまう。

郵便配達が帰った後、いつも楽しんでいるラジオ番組を聴いていたローラは、タークを伴いマリーが帰ってことに気づく。

体育祭のポスターを描くマリーが、タークにモデルになってもらうことを知ったローラは、槍の代わりになるホウキを彼に渡す。

体育着の自分を見つめるローラが気になるタークは、彼女が飲み物を取りに行っている間に、ローラの様子がおかしいことをマリーに伝える。

男を招いたのは初めてなのかと訊くタークに迫られてマリーは、ランチに戻ってきたドクに彼を紹介する。

裸のような体育着姿のタークが気になるドクは、握手しようとする彼を無視してキッチンに向かう。

ローラから事情を聞いたドクだったが、マリーがするべきことではないと伝える。

ドクの態度が気になるタークは、マリーから、子供がいないので自分に世話を焼きたがると伝える。

ドクが自分に気があると言われたマリーは、病気なので神経質なだけだと言いながらポスターを描く。

故郷のブルースと婚約の話もあるマリーを気にするドクは納得できず、いちゃつくマリーとタークを無視して2階に向かい、ウィスキーの瓶のふたを開けて香りを嗅ぐ。

数日後、タークが体育祭で優勝した記事を見ながら、彼からかかってきた電話をマリーに知らせる。

マリーはタークの祝賀会に行くことになり、自分も人気者だったとドクに伝えたローラは、音楽に合わせて踊り始める。

学生時代の話をするローラは、楽しそうでないドクに、結婚したことを後悔しているか尋ねる。

後悔しているはずはないと言うドクに、ローラは、”義務”で結婚したことを悔やんでいるか再び尋ねる。

それは言わないはずだとローラに伝えたドクは、外に出て考え込む。

ローラから、子供の父親は自分しかいない、幸せになれたはずなのになぜこうなったのかと訊かれたドクは、世間の風習は簡単には破れないと答える。

誰にも知られなかったと言うローラに、ドクは、子供が生まれていれば知られたと伝える。

流産したので結婚することはなかったと伝えたローラは、済んだことだと言うドクに、自分を養うために大学をやめたことを後悔しているはずだと伝える。

そこに、車のクラクションを派手に鳴らしてタークが現れ、マリーを乗せて走り去る。

子供が生きていればマリーの年頃だと言うローラに、ドクは、過去を捨てて生きなくてはダメだと伝える。

自分も親の遺産を飲み代に使わなければ大学を卒業できたと言うドクは、豊かな生活と安らぎを得て、養子を取ることもできたただろうとローラに伝える。

何もできなかったからといって、過ちを悔い人生を諦めるべきではないと言うドクは、ローラを納得させて、断酒会の活動のために迎えに来たエドとエルモと共に出かける。

ドクを見送ったローラは道路を見つめながら、シバに帰ってきてほしいと思う。

ドクらは、依存症の男性がいる精神病院に向かう。

翌日、ブルースが訪ねて来ることをローラから知らされたドクは、彼女に誘われ、ラジオの音楽に合わせて踊る。

そこにタークと共にマリーが戻り、二人が居間で勉強することになったために、ドクは外出すると言って出かけようとする。

タークが嫌いだと言うドクは、マリーに相応しい相手ではないので追い出すとローラに伝える。

ローラに制止され、いつも見ているが真面目な交際だと言う言葉が気になったドクは、彼女が二人を覗いていることを知る。

二人を見ていると若返ると言うローラに、タークは下品過ぎると伝えたドクは、父親のように注意することを提案される。

無理だと言うドクに、ブルースが来ればタークは寄り付かなくなると伝えたローラは、出かける彼を見送る。

マリーに声をかけられたドクは、返事はするものの、憮然とした態度でその場を去る。

ドクに嫌われていると思い苛立つタークは、嫉妬していると考え、彼は君に気があるとマリーに伝える。

誤解だと言うマリーはタークに迫られ、それを拒み話をしようとしたため、彼は帰ろうとする。

タークを引き留めたマリーは彼に寄り添い、キッチンのドアの隙間からその様子を見るローラは微笑む。

これから外で楽しみ、ドクとローラが眠った頃に戻ることを、マリーはタークに提案する。

バーでマリーとダンスをするタークは、自分を見つめている女子学生が気になる。

その後、離れた場所に車を止めて家に向かったタークは、マリーが鍵を忘れたために、窓から侵入して彼女を入り口から入れる。

その直前に戻っていたドクは、二人が抱き合いキスする姿を見てしまい、二階に向かう。

マリーには故郷に求婚された相手がいることを知ったタークは、苛立ちながら彼女に強引に迫る。

拒まれたタークは憤慨し窓から出てその場を去り、マリーは動揺する。

考え込むドクは、キッチンに向かい戸棚にあるウィスキーの瓶を手にする。

思い留まったドクは、寝室に戻りベッドに入るものの、眠ることができなかった。

翌朝、ローラはマリーと共にブルースを迎える準備を始め、気分がすぐれないドクは、ウィスキーの瓶をレインコートに隠して出かけようとする。

ローラとキスしたドクは、ブルースが来るので早めに帰ってほしいと言われる。

一緒に行くと言うマリーに急ぐと伝えたドクは、一人で出掛ける。

ローラは、晴天にも拘らず、ドクがレインコートを持って出掛けたことが気になる。

夕方になりローラは、食卓の飾りつけなどを見て感心するコーフマン夫人に、借りた磨き粉を返す。

ドレスを着たマリーがブルースとの結婚を決めたことを知ったローラは、タークのことを気にするものの、人気者だから大丈夫だと言われる。

ブルースが到着し、彼を歓迎したローラはカクテルを作ろうとするが、戸棚にウィスキーがないことに気づく。

動揺するローラは、ドクを待たずに先に食事にすることをマリーに提案し、彼女とブルースを食卓に座らせてキッチンに向かう。

エドに電話をしたローラは、今朝、出掛けたままドクが戻らないことを伝える。

客がいるにも拘わらずドクが戻らず、キッチンのウィスキーがなくなっていることを伝えたローラは、対処すると言うエドに感謝する。

酒の代わりにトマトジュースを出したローラは、乾杯するマリーとブルースのために音楽を流す。

食事後にマリーとブルースは出掛けて、ソファーで眠ってしまったローラは早朝に目覚め、エドに電話をする。

ドクが戻らないために不安だとエドに伝えたローラは、電話を切る。

酔って戻ったドクは、買ってきたウィスキーの瓶を戸棚に置き二階に向かおうとする。

ローラに呼び止められたドクは、新聞を持ってくるようにと指示するが、もう取っていないと言われる。

酔っていると思われたドクは新聞を要求し、それを渡したローラからどこに行っていたか訊かれ、関係ないと答える。

ローラを迷惑に思いながら、ブルースを歓迎したしたことを知らされたドクは、彼と結婚するマリーは出掛けたと言われたために、自分たちと同じように、妊娠させたから結婚すると伝える。

マリーと共にローラを侮辱するドクは、朝食も作れず掃除もしない彼女を批判する。

ブルースが来ると知り、”バッキンガム宮殿”のように飾り立てるバカな女に使われてたまるかと言うドクは苛立ち、キッチンに向かいウィスキーを飲み始める。

ローラがエドに電話をして助けを求めたため、憤慨したドクは、ナイフを手にして彼女を罵倒する。

マリーとカークのことでもローラを批判するドクは、正気を失い彼女に襲い掛かり首を絞める。

ドクは気を失って床に倒れ、物音に気づいたコーフマン夫人が様子を見に来る。

そこに現れたエドとエルモは、意識のないドクを起こして私立病院に連れて行こうとする。

それを拒むドクが酒を欲しがったために、酔っている状態なら飲ませても問題ないと判断したエドは、グラスに酒を注ぐ。

酒を飲み干したドクは出かけようとするが、取り乱してローラに助けを求める。

ドクを気の毒に思うローラは一緒に行こうとするが、コーフマン夫人に制止される。

コーフマン夫人から、忙しくして嫌なことは忘れるようにと言われたローラは、かかってきた電話に出てもらう。

電話は、マリーとブルースが今夜、結婚するという電報の連絡だったのだが、その間にローラは出掛けてしまう。

病院に向かったローラは、エドとエルモが入院の手続きを済ませたことを知り、ドクに会おうとする。

自殺しようとしたために拘束されているドクの元に案内されたローラは、彼がうわ言で自分の名前を呼んでいたことを知る。

エドとエルモに家まで送ってもらったローラは、疎遠だった母に電話をして、ドクが病気になったことを伝える。

父が許さないことを承知で、ローラは、数日でいいので戻りたいと母に伝える。

自分が来ると言う母に、その時は電話をすると伝えたローラは電話を切る。

その後、退院したドクは、家に送ってくれたエドとエルモに感謝する。

買い物から戻ったローラは、帰宅したドクを気遣いながら、マリーがブルースと結婚したことを伝える。

ブルースのことを訊かれたローラは好青年だと答え、マリーからの手紙に、ドクがタークから自分を守ってくれたと書かれていたことを話す。

二人の幸せを祈ると言うドクに、ローラは、自分たちも幸せになりたいと伝える。

自分を見捨てないでほしいと言うドクは、何をしたか覚えていないが、許してほしいとローラに伝える。

見捨てるはずがない、あなたは自分のすべてだと言うローラは、ドクを抱きしめる。

朝食を作ると言うローラは調理を始め、ドクに様子が変わったと言われたために、これからは掃除もすると伝える。

夢を見た話をするローラは、シバの夢かと訊くドクに、いろんなことだと言って、マリーやターク、父、そしてドクも登場するその内容を話しながら料理を作る。

突然の雨でシバの姿が見えなむなり、迎えに来たドクと泥の中を歩き、運動場で息絶えていたシバを見つけたとローラは話す。

悲しくていつまでも泣いたが、ドクに引き留められ、前に進むために、ここにいてはダメだと言われたと話すローラは、不思議だと伝える。

ドクから夢は不思議なものだと言われたローラは、シバはもう戻らない、名前も呼ばないと伝える。

呼ぶ必要はないと言うドクを抱きしめたローラは、ベーコンを焼くフライパンに卵を落とす。

ドクから”家にいれて良かった”と言われたローラは、彼を見つめながら微笑む。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
学生時代の過ちから結婚して医学を諦めた”ドク”デレイニーは、妻のローラと共に平凡な日々を送っていた。
子供が流産したことで絶望したドクは酒に溺れ、何とか克服して断酒会に通っていた。
そんな彼らの家に、女学生のマリーが部屋を借りに来る。
体の状態が気になり断ろうとしたドクだったが、マリーの姿に学生時代のローラを投影し、彼女に部屋を貸すことにする。
その後、マリーが、相応しい相手とは思えない学生タークとの交際を始めたために、彼女を心配するドクは次第に心が乱れ始める・・・。
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ダニエル・マン自身が演出した、ウィリアム・インジの舞台劇”Come Back, Little Sheba”の映画化であり、舞台でも”ローラ・デレイニー”を演じトニー賞を受賞したシャーリー・ブースが同役を演じ、二人にとっては映画デビュー作となった。

絶望を克服しようとする人間の制御できない苦悩を切実に描く、舞台劇らしい役者の演技のぶつかり合いが見どころの作品。

第25回アカデミー賞では主演女優賞(シャーリー・ブース)を受賞した。
ノミネート
助演女優(テリー・ムーア
編集賞

まだ30代のバート・ランカスターは、老けたメイクで50歳過ぎのシャーリー・ブースとの夫婦役を演じているが、どうも釣り合いが取れない雰囲気がある。

パラマウントは若手期待のバート・ランカスターを起用したのだが、シャーリー・ブースと共にドク役でトニー賞を受賞した、彼女と同年代のシドニー・ブラックマーに映画でも演じてほしかったというのが正直な意見だ。

実力派女優シャーリー・ブースは、舞台と同じく本作の演技も絶賛され、映画初出演で見事にアカデミー主演賞を、ゴールデングローブ賞他でも同賞を受賞した。

主人公夫妻の家に下宿する女学生を好演するテリー・ムーア、彼女に言い寄り主人公に嫌われる男子学生のリチャード・ジャッケル、主人公を支える断酒会のリーダー、フィリップ・オバー、同じくエドウィン・マックス、主人公の隣人リザ・ゴルム、マリー(テリー・ムーア)の恋人ウォルター・ケリーなどが共演している。


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