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街の灯 City Lights (1931)

トーキーの波が押し寄せる中、あくまでサイレントにこだわるチャールズ・チャップリン製作、監督、脚本、編集、共演ヴァージニア・チェリルによる、大恐慌時代の世情を反映した哀しみと希望を併せ持つコメディ・ドラマである珠玉の名作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(コメディ)


スタッフ キャスト ■
監督:チャールズ・チャップリン

製作:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
撮影
ゴードン・ポロック

ローランド・トセロー
編集:チャールズ・チャップリン
音楽
チャールズ・チャップリン

ホセ・パディラ/花売り娘のテーマ
アーサー・ジョンソン

アルフレッド・ニューマン

出演
放浪者:チャールズ・チャップリン
盲目の花売り娘:ヴァージニア・チェリル

花売り娘の祖母:フローレンス・リー
富豪:ハリー・マイヤーズ

ジェームズ/富豪の執事:アル・アーネスト・ガルシア
市長/花売り娘の部屋の階下の隣人:ヘンリー・バーグマン
ボクサー:ハンク・マン

清掃夫/泥棒:アルバート・オースチン
レフェリー:エディ・ベイカー
新聞売りの少年:ロバート・パリッシュ

レストラン・シーンのエキストラ:ジーン・ハーロウ

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ

1931年製作 86分
公開
北米:1931年1月30日
日本:1934年1月20日
製作費 $1,500,000
北米興行収入 $19,180


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ある都市で、”平和と繁栄”の記念碑の除幕式が行われる。

しかし、記念碑で放浪者(チャールズ・チャップリン)が眠っていたため騒動となり、彼は退去させられる。

その日の午後。
放浪者は、並んで駐車されていた高級車を通り抜ける。

街角で花を売る娘(ヴァージニア・チェリル)は、高級車から降りてきた男性(放浪者)を富豪と思い込み花を売ろうとする。

若くて美しい花売り娘が盲目だと知った放浪者は、彼女から一輪の花を買う。

そこに、戻ってきた富豪が車に戻り走り去るが、娘は、お釣りを渡し損ねたと思い込む。
...全てを見る(結末あり)

それを見ていた放浪者は、娘のことが気になりその場に留まるが、自分がいることに気づかない彼女に、鉢の水をかけられてその場を立ち去る。

その夜。
放浪者は、酔って自殺しようとしている富豪(ハリー・マイヤーズ)を、何度も川に落ちながらも励まして助ける。

富豪に気にいられた放浪者は屋敷に案内され、執事のジェームズ(アル・アーネスト・ガルシア)に迷惑がられる。

しかし、放浪者は富豪と酒を酌み交わし、再び思い余って拳銃を取り出した彼を制止して説得する。

生きる希望を取り戻した富豪は、放浪者を連れて街に向かう。

酔っている二人は、レストランで騒動を起こしながらも、楽しい夜を過ごす。

翌朝、酔いも醒めぬうちに屋敷に戻った二人だったが、放浪者はジェームズに追い払われる。

その後、放浪者は屋敷の前で、花売りに向かう娘を見守るが富豪に呼び戻される。

富豪に花を買う提案をした放浪者は金を受け取り、娘の花を買い占めてジェームズに渡す。

放浪者は、富豪の”ロールス・ロイス”で、娘を家まで送り届ける。

再会を約束して富豪と別れた娘は、淡い恋心を抱く。

意気揚々と屋敷に戻った放浪者だったが、正気に戻った富豪は、誰にも会わないことをジェームズに告げて、放浪者を無視して車で走り去る。

その日の午後。
放浪者は酔った富豪に再会して歓迎され、パーティーを屋敷で開くと言われる。

パーティーで。
誤って笛を飲み込んでしまった放浪者は、表に出て、笛に誘われた何匹もの犬を引き連れて戻る。

翌朝。
ベッドに寝ている放浪者に気づき、彼を屋敷から追い出すようジェームズに命じた富豪は、ヨーロッパ行きの準備を始める。

屋敷で夜を明かしたパーティー客に挨拶した放浪者は、ジェームズに追い出される。

いつもの場所に花売り娘がいないことに気づいた放浪者は、彼女の家に向かう。

娘が病気だと知った放浪者は心を痛め、彼女を助けようと仕事を見つけて街の清掃夫になる。

娘の祖母(フローレンス・リー)は、家賃22ドルを催促され、翌日までに払わない場合は、立ち退きを要求される。

容態がよくなった娘は、富豪(放浪者)が現れる日だと言って胸躍らせるが、祖母の頬の涙に気づく。

娘を悲しませたくない祖母は、何も言わずに花売りに出かける。

昼休み。
富豪と縁を切られたため、苦労しながら金持ちに扮する放浪者は娘の家を訪ねる。

食材を買い求めてきたことを娘に伝えた放浪者は、盲目の治療に成功したウィーンの医師が、貧しい者には無報酬で治療をするという、新聞記事を彼女に知らせる。

その後、放浪者は、家賃の催促状を見つけて読んでしまい、彼女は祖母の涙の理由を知り悲しむ。

娘と祖母を気の毒に思う放浪者は、自分がそれを払うことを約束してその場を去るが、職場の仕事に遅刻してしまう。

仕事をクビになった放浪者は、ボクシングの試合に誘われる。

その夜。
それほど強そうでなかった対戦相手が逃げてしまい、代わりの男(ハンク・マン)が対戦相手となる。

放浪者は、ほどほどに戦い賞金50ドルを山分けをすることを提案するが、男はそれを拒み、前の試合の勝者を控室で殴り倒してしまう。

試合は始り、劣性の放浪者は、ダウン寸前で1ラウンドを終える。

花売り娘を想いながら、その後も必死に戦う放浪者だったが、ノックアウト負けしてしまう。

娘のために、諦めずに何んとか金を都合しようとした放浪者は街をさまよう。

放浪者は、帰国していた富豪に再会し、彼が酔っていたために歓迎されて屋敷に招かれる。

娘のことは面倒みると言われた放浪者は、彼から1000ドルを渡される。

しかし、屋敷に忍び込んでいた泥棒(アルバート・オースチン)に富豪が殴られ、放浪者が抵抗して警察に通報して屋敷を飛び出す。

通りがかった警官に事情を話すものの、屋敷に戻った放浪者は、強盗に遭ったと言うジェームズの言葉で所持品を調べられる。

1000ドルを持っていた放浪者は、意識の戻った富豪に、それを受け取ったことを確かめるが、彼は目の前の男を知らないと言い張る。

焦った放浪者は、現金を奪いその場から逃走し、翌朝、花売り娘の家を訪れる。

家賃と目の治療時だと言って、手元に少し残し、現金を娘に渡した放浪者は彼女に感謝され、手に口づけされたために全額渡してしまう。

娘に再会できるかを問われ、放浪者は、永遠の別れも考えながら、旅に出ると言ってその場を去る。

街角で警官に捕まった放浪者は、刑務所送りとなり、時は流れる。

秋。
視力が回復し、祖母と共に花屋を開業した娘は、忙しい毎日を送り、富豪(放浪者)が現れるのを待つ。

出所した放浪者は、街で新聞売りの少年(ロバート・パリッシュ)にからかわれ、花屋の前で、目の治った娘に気づき微笑みかける。

みすぼらしい放浪者に、一輪の花と小銭を渡そうとした娘は彼の手を取る。

娘は、その手の感触で、放浪者が自分達を助けてくれた恩人だと気づく。

放浪者は、娘の目の回復を喜び、彼女は、感謝の気持ちで彼の手を取り、二人は、いつまでもお互いを見つめ合う。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ある日、放浪者は、自分を富豪と間違えた盲目の花売り娘に出会い恋心を抱く。
みすぼらしい生活を続けていた放浪者は、富豪に成りすまして娘に優しく接する。
その後、放浪者は、酔って自殺しようとしていた富豪を助け、彼に気にいられて屋敷に招かれる。
翌日、富豪に花を買う提案をして、花売り娘の花を全て買い占めた放浪者は、彼女を車で家まで送り届け、娘も、優しい富豪(放浪者)に淡い恋心を抱く。
屋敷に戻った放浪者は、正気に戻った富豪に追い出されてしまう。
しかし、その後、放浪者は酔った富豪と再会して歓迎され、屋敷でパーティーまで開いてもらう。
翌日、再び追い出された放浪者は、娘が病気だと知り職を見つけ、彼女の力になろうと考える。
そんな時、放浪者は、家賃を催促され立ち退きするしかない娘と祖母の悲しみを知り、再会した酔った富豪の援助で、何んとか彼女らを助けようとするのだが・・・。
__________

当然のごとく、音響と音楽だけでセリフのない作品ではあるが、何も語らずして、喜びや悲しみ、そして怒りや焦り等を映し出す、チャールズ・チャップリンの天才的手法が凝縮された、彼の多くの作品でも指折りの傑作と言っていい作品。

特に、娘との再会、そして視力の回復を、多くを語らずただ単に、はにかみながら喜ぶ、チャップリンの表情で全てが救われる思いになりながら、娘の将来の幸せとは裏腹に、放浪者のその後も考えてしまうラストは秀逸だ。

計算しつくされた、笑いを誘うパントマイムは、今観ても全く古さを感じさせない。
それを完成させるまでの試行錯誤や努力が窺える、見事なパフォーマンスは素晴らしいの一言だ。

盲目の娘に、放浪者である主人公を、どのようにして富豪と思わせるかで、悩み抜いたシーンは有名だが、サイレントにこだわったチャップリンが奇跡を起こしたとも言える一瞬の名シーンだ。

チャップリン自身も音楽を担当しているが、ホセ・パディラの”花売り娘のテーマ”は、心に残る名曲となり、若きアルフレッド・ニューマンが、オーケストラ演奏を担当している。

心優しい盲目の花売り娘ヴァージニア・チェリル、祖母フローレンス・リー、ほとんど酔っている富豪ハリー・マイヤーズ、その執事アル・アーネスト・ガルシア、市長と娘の隣人役のヘンリー・バーグマン、ボクサー役のハンク・マン、レフェリー役のエディ・ベイカー、清掃夫と泥棒のアルバート・オースチン、新聞売りの少年役のロバート・パリッシュ、そして、レストランのシーンでジーン・ハーロウがエキストラ出演している。


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