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市民ケーン Citizen Kane (1941)

弱冠26歳のオーソン・ウェルズが製作、監督、脚本、主演した、メディア王の波乱の生涯を描くドラマ。
ジョゼフ・コットンルース・ウォリック他共演によるハリウッド映画史上に残る傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ

オーソン・ウェルズ / Orson Welles / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:オーソン・ウェルズ
製作:オーソン・ウェルズ

脚本
オーソン・ウェルズ
ハーマン・J・マンキーウィッツ
撮影:グレッグ・トーランド
編集:ロバート・ワイズ
美術
ヴァン・ネスト・ポルグレイス
ペリー・ファーガソン
特撮:ヴァーノン・L・ウォーカー
音楽:バーナード・ハーマン

出演
オーソン・ウェルズ:チャールズ・フォスター・ケーン
ジョゼフ・コットン:ジェデダイア・リーランド
ルース・ウォリック:エミリー・モンロー・ノートン・ケーン
ドロシー・カミンゴア:スーザン・アレキサンダー
エヴェレット・スローン:バーンスティン
ウィリアム・アランド:ジェリー・トンプソン
レイ・コリンズ:ジェームズ・W・ゲティス
アグネス・ムーアヘッド:メアリー・ケーン
ジョージ・コーロリス:ウォルター・パークス・サッチャー
ポール・スチュアート:レイモンド
アースキン・サンフォード:ハーバート・カーター
ハリー・シャノン:ジム・ケーン
フィリップ・ヴァン・ツァント:ロールストン

アメリカ 映画
配給 RKO
1941年製作 119分
公開
北米:1941年5月1日
日本:1966年6月4日
製作費 $686,030
北米興行収入 $1,585,630


アカデミー賞 ■
第14回アカデミー賞

・受賞
脚本賞
・ノミネート
作品・監督
主演男優(オーソン・ウェルズ
編集・作曲・撮影(白黒)・録音・美術賞(白黒)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1941年、フロリダ
未完のままの大邸宅”ザナドゥー”で、雪景色の飾りのガラス玉を握りながら、“バラのつぼみ”という言葉を残し、メディア王チャールズ・フォスター・ケーン(オーソン・ウェルズ)が生涯を終える。

ケーンの死後、彼の生涯をまとめた記録映画を企画するプロデューサーのロールストン(フィリップ・ヴァン・ツァント)は、他に類を見ないケーンの人物像の謎を解く鍵が、”バラのつぼみ”という言葉に隠されていることを確信する。

ロールストンは、ニュース記者のジェリー・トンプソン(ウィリアム・アランド)に、ケーンのマネージャーであるバーンスティン(エヴェレット・スローン)や、二度目の妻スーザン・アレキサンダー(ドロシー・ カミンゴア)に会い、真相を解明するよう指示を出す。
...全てを見る(結末あり)

トンプソンは、最初にスーザンに会うが、彼女は落ちぶれたクラブ歌手でしかなく、その場から追い払われる。

その後トンプソンは、ケーンの後見人だった、ウォルター・パークス・サッチャー(ジョージ・コーロリス)が建てた図書館で、彼の手記を閲覧する。
__________

1871年、ケーンの幼少期。
下宿屋を営むケーンの母親メアリー(アグネス・ムーアヘッド)が、下宿代の肩代わりに受け取った権利書で思わぬ財産が入る。

メアリーは、ケーン自身が、サッチャーの銀行の管理下で養育されることに同意するが、父親ジム(ハリー・シャノン)は、息子が両親から引き離されることに反対する。

自分一人だけが旅立つと聞いたケーンは嫌がるが、メアリーは財産目当てでなく、実は息子を虐待する父ジムから彼を遠ざけるために、已む無くしたことだった。

25歳になり、後見人サッチャーから財産を受け継ぎ、世界で6番目の富豪になった青年ケーンは、以前から興味を持っていた、新聞業界に進出しようとする。

そしてケーンは、”ニューヨーク・インクワイアラー”という弱小新聞社を買取る。

ケーンは、親友の演劇評論家ジェデダイア・リーランド(ジョゼフ・コットン)やバーンスティン(エヴェレット・スローン)と共に、精力的に活動を始め、過激な言動や強引な手法でみるみる部数を増やす。

サッチャーは、ケーンの暴走に苦言を呈するが、彼は聞く耳を持たず、信念に向かって突き進んで行った。

1929年、冬。
しかし、大恐慌の影響もあり、ケーンは破産し全ての事業を放棄することになる。
__________

閲覧の制限時間となり、図書館を出たトンプソンは、バーンスティンのオフィスに向かう。

トンプソンは、バーンスティンも”バラのつぼみ”が何かは分からないことを確認し、彼にリーランドに会うことを勧められながら、新聞社を立ち上げた当時の話を聞く。
__________

”ニューヨーク・インクワイアラー”に乗り込んだケーンらは、編集長のハーバート・カーター(アースキン・サンフォード)に迎えられ、彼のオフィスで寝泊りして仕事を始めることになる。

6年後。
ライバル社の記者を全て引き抜くなど、形振りかまわぬ戦略で、ケーンは新聞業界に革命をもたらし、驚異的な勢いで部数を増やす。

その後ケーンは、報道業界全てを牛耳るメディアの帝王に君臨することになる。

やがて、ヨーロッパ旅行から帰ったケーンは、大統領の姪のエミリー・モンロー・ ノートン(ルース・ウォリック)と結婚する。
__________

バーンスティンは、その後うまくいかなかったエミリーが、”バラのつぼみ”でないだろうかということを、トンプソンに伝える。

その後トンプソンは、老いのため病院にいるリーランドを訪ね、ケーンとエミリーの結婚生活が壊れていく様を彼から聞く。

そしてリーランドは、ケーンとスーザンとの出会いをトンプソンに話し始める。

街角で、馬車の刎ねた泥水を浴びてしまったケーンは、歯痛に悩むスーザンに笑われてしまう。

スーザンは、泥だらけのケーンを気の毒に思い、自宅に招き入れる。

ケーンは、スーザンの歯痛を忘れさせようと、彼女を笑わせて楽しいひと時を過ごす。

スーザンは、堅物だと思っていた有名人のケーンが、人間味に溢れ、自分の夢などに興味を持ってくれることを嬉しく思う。

その後ケーンは、スーザンとの時間で心の安らぎを得るようになる。

やがてケーンは、知事選に出馬を決め、政界に進出しようとする。

ケーンは、ライバルのジェームズ・W・ゲティス(レイ・コリンズ)を容赦なく攻撃し、選挙戦を優位に進める。

しかし、オペラ歌手としてケーンが援助していたスーザンとの関係を、ゲティスに知られ脅迫されてしまう。

ゲティスは、ケーンとスーザンとのスキャンダルを報じられたくなければ、出馬を撤回するよう彼に迫る。

その場に同行したエミリーは、息子のために出馬を断念するよう、ケーンを説得して帰ろうとする。

しかし、ケーンはそれを拒否し、戦うことをエミリーとゲティスに告げる。

そして、エミリーはケーンの元を去り、スキャンダルは暴露され、選挙を諦めなかったケーンは、結局、落選してしまう。

さすがのリーランドも、自らを愛し自分のルールだけで行動するケーンを批判し、シカゴ支局への移動を申し出る。

その後ケーンは、初めて味わう屈辱を晴らすかのように、スーザンと結婚し、彼女に全てを捧げる。

ケーンは、スーザンのために劇場まで建設して、彼女を歌手として大成させようとする。

しかし、彼女の評判は一向に上がらず、ケーンの自己満足にしか過ぎなかった。

リーランドが酔いつぶれながら書いた、スーザンを酷評した原稿を見たケーンは、その続きを自分で書きながら彼をクビにする。
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看護師を呼んだリーランドと別れたトンプソンは、再びスーザンの元に向かい、今度は質問に応じてもらえる。
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”インクワイアラー”までが、自分の歌を酷評したことに激怒したスーザンは、舞台を降りることをケーンに告げるが、彼は自分のプライドのためにそれを許さない。

ケーンは、”インクワイアラー”の紙面上で、スーザンの各地での公演を絶賛し、彼女は、その期待への重圧で自殺未遂を起こしてしまう。

そしてケーンは、スーザンのために”ザナドゥー”を建設し、二人だけの生活を始める。

しかし、愛もないケーンの言いなりの生活に絶望したスーザンは、彼の元を去っていく。
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その後は財産もなくしたというスーザンは、”ザナドゥー”に行くと言うトンプソンに、ケーンの執事だったレイモンド(ポール・スチュアート)に会うよう言われる。

後日、”ザナドゥー”でレイモンドに会ったトンプソンは、”バラのつぼみ”についての心当たりを、彼から聞かされる。
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スーザンが去り、失意のケーンは部屋の装飾品を破壊してしまう。

しかしケーンは、雪景色のガラス玉を見つけて、”バラのつぼみ”・・・とつぶやき、涙しながらそれを持ち去る。

そしてケーンは、1941年に孤独な死を遂げる。
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結局、手がかりは見つからず、トンプソンはザナドゥーを去ろうとする。

屋敷では、大量の美術品の山や、不用品の処分が行われていた。

使用人が、焼却炉でガラクタを燃やしている時、ケーンが両親と暮らしていた頃に遊んでいた、木のソリが投げ込まれる。

そして、燃える炎の中、ソリから”バラのつぼみ”の文字が浮かび上がる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
メディア王チャールズ・ケーンが、”バラのつぼみ”という謎の言葉を残しその生涯を閉じる。
彼の記録映画の記者トンプソンは、ケーンが残した言葉の秘密を追う・・・。
幼いケーンの母親メアリーは、下宿屋を営んでいたのだが、下宿代の肩代わりに受け取った権利書で、思わぬ財産が入ることになる。
巨万の富を引き継いだケーンは、親元から引き離され、後見人の銀行家サッチャーに育てられる。
25歳になったケーンは、財産を自由に使う権利を得て新聞業界に進出する。
劇評家リーランドとマネージャーのバーンスティンと共に、過激な言動などで部数を伸ばす、弱小新聞社”NY・インクワイアラー”は、やがて業界に革命をもたらし、ケーン自身は、メディア界を牛耳る帝王に君臨することなる。
その間、大統領の姪エミリーと結婚したケーンだったが、彼は安らぎを求め、街角で出会ったオペラ歌手を目指すスーザンと関係を持つ。
それがスキャンダルとなり、知事選に敗れたケーンだったが、彼は自分のプライドを懸けて、スーザンを大成させようとする・・・。
トンプソンは、関係者からケーンの人生を聞かされるのだが、依然、”バラのつぼみ”の謎は解けずにいた・・・。
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第14回アカデミー賞では作品賞以下9部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(オーソン・ウェルズ
編集・作曲・撮影(白黒)・録音・美術賞(白黒)

1989年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
日本での公開は、作品製作後、四半世紀も後の1966年。

観客の目や商業的成功を無視し、新たな撮影技術や、映画ならではの表現方法を駆使した革命的作品。

特にその撮影は秀逸で、ディープフォーカスを多用した白黒映像の濃淡や逆光など、照明技術での感情表現やロングショットを生かした、ダイナミックな画面構成なども素晴らしい。
*パンフォーカスは和製英語

ディープフォーカスの素晴らしさの象徴的場面は、ケーンが両親から引き離されることになり、母親が契約書にサインしていると、奥の窓で、無邪気に遊ぶケーンがボケずにはっきり見える。
母親の脇の銀行家と、やや左奥にいる父親も同じショットの中に映り、全ての状況が把握できるというわけだ。
通常なら数カットに分ける場面を、ワンカットで処理しているところはやはり画期的だ。

このシーンを、初めて見た時の驚きは、今でも忘れない。

この手法は、スーザンが自殺未遂をする場面でも生かされている。

本作は、新聞王ウイリアム・ランドルフ・ハーストがモデルだと言われ、オーソン・ウェルズに多大なる圧力がかかったのも事実だ。

批評家の評価とは裏腹に、話題性を重視して公開したRKOの思惑は外れ、興行的には大失敗に終わった。

それが原因でもないだろうが、結局、オーソン・ウェルズは、本作の評価でハリウッドの名声は勝ち取ったものの、これで全ての才能を使い果たしたのか、その後に注目作はあるものの、これ以上の脚光を浴びる功績が残せなかったのは残念だ。

ケーンの本質を知る最も身近な人物、劇評家のジョゼフ・コットン、マネージャーのエヴェレット・スローン、最初の妻ルース・ウォリック、二度目の妻ドロシー・カミンゴア、主人公の母親アグネス・ムーアヘッド、父親ハリー・シャノン、後見人の銀行家ジョージ・コーロリス、記録映画の記者ウィリアム・アランド、知事選のライバル、レイ・コリンズ、主人公の執事ポール・スチュアート、新聞社編集長アースキン・サンフォード、記録映画のプロデューサー、フィリップ・ヴァン・ツァントなどが共演している。


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