1929年に発表されたエドナ・ファーバーの小説”Cimarron”を基に製作された作品。 開拓者魂を貫く男の生き様と反発しながらもそれを支えた妻の半生を描く、製作、監督ウェズリー・ラッグルズ、主演リチャード・ディックス、アイリーン・ダン、エステル・テイラー他共演のドラマ。 |
・西部劇
■ スタッフ キャスト ■
監督:ウェズリー・ラッグルズ
製作
ウィリアム・ルバロン
ウェズリー・ラッグルズ
原作:エドナ・ファーバー”Cimarron”
脚本:ハワード・エスタブルック
撮影:エドワード・クロンジェガー
編集:ウィリアム・ハミルトン
美術・装置:マックス・リー
音楽:マックス・スタイナー
出演
ヤンシー”シマロン”クラヴァット:リチャード・ディックス
セイブラ・クラヴァット:アイリーン・ダン
ディクシー・リー:エステル・テイラー
トレイシー・ワイアット:エドナ・メイ・オリバー
ジェシー・リッキー:ロスコー・エイツ
ソル・レヴィー:ジョージ・E・ストーン
ロン・ヤンティス:スタンリー・フィールズ
ルイス・ヘフナー:ロバート・マクウェイド
フェリス・ヴェナブル:ナンス・オニール
ドナ・クラヴァット:ジュディス・バーレット
キッド:ウィリアム・コリアーJr.
アイザイア:ユージン・ジャクソン
アメリカ 映画
配給 RKO
1931年製作 124分
公開
北米:1931年1月26日
日本:1932年12月
製作費 $1,433,000
北米興行収入 $1,383,000
■ アカデミー賞 ■
第4回アカデミー賞
・受賞
作品・脚色・美術賞
・ノミネート
監督
主演男優(リチャード・ディックス)
主演女優(アイリーン・ダン)
撮影賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1889年4月22日、オクラホマ準州。
政府により解放された土地の入植地競争が行われ、ヤンシー・クラヴァット(リチャード・ディックス)は、参加者のディクシー・リー(エステル・テイラー)に声をかけられる。
合図と共に人々は一斉に馬や馬車を走らせ、順調に狙っていた土地に向かうヤンシーは、落馬したディクシー・リーを助ける。
ディキシー・リーに怪我をした馬を楽にさせることを頼まれたヤンシーだったが、その隙に自分の土地を彼女に奪われてしまう。
家族の元に戻ったヤンシーはその件を伝え、妻セイブラ(アイリーン・ダン)の母親フェリス・ヴェナブル(ナンス・オニール)は、妻を置き去りにして好き勝手をする義理の息子を批判する。
ヤンシーは新しい土地に住むことを諦めず、セイブラと息子シム”シマロン”を連れて旅立つことを決意する。 フェリスはその考えに断固として反対するが、新聞社を始める計画があるヤンシーと彼に同行すると言うセイブラの考えは変わらない。 幌馬車二台で出発したヤンシーは、奴隷の少年アイザイア(ユージン・ジャクソン)が忍びこんでいることに気づく。 同行したいと言うアイザイアが役に立つだろうと考えたヤンシーは、それを認める。 数日後、野営をしていたヤンシーらは男達に襲われるが、それは旧知の仲のキッド(ウィリアム・コリアーJr.)だった。 銀行を襲い追われていたキッドが立ち去る際、ヤンシーは、自分達が向かうオセージには来ないようにと警告する。 オセージ。 とりあえずホテルの部屋をとったヤンシーは、子供を育てるような土地でないと言い出し動揺するセイブラを落ち着かせる。 その後、家具屋と葬儀屋を同時に営むルイス・ヘフナー(ロバート・マクウェイド)と再会したヤンシーは、町の将来についてを語る。 ヤンシーは、新聞社の前編集長を背後から撃った疑いのある無法者ロン・ヤンティス(スタンリー・フィールズ)に気づき牽制する。 翌朝、セイブラを連れて通りを歩くヤンシーは、雑貨の行商ソル・レヴィー(ジョージ・E・ストーン)に声をかける。 町の女性達は、見慣れないセイブラのドレスを見て苦笑するが、ヤンシーは気にすることはないと彼女に伝える。 ヤンティスにからかわれ銃撃で帽子を飛ばされたヤンシーは、彼の耳を撃って逆に脅しをかける。 セイブラはヤンティスに言い寄り追い払うものの、女に助けられたという噂が立つことを嫌うヤンシーはそれを制止し、遊びのようなものだと言い切る。 その後、新聞社”オクラホマ・ウィグワム”を設立したヤンシーは、セイブラと植字士として雇ったジェシー・リッキー(ロスコー・エイツ)と共に準備を始める。 編集長殺害の件で情報を掴んだヤンシーは、それを最初の記事にすることを考える。 ヤンティスらにからかわれていたソルを助けたヤンシーは、編集長の件が記事になることをヤンティスに伝える。 ヤンシーに脅されたヤンティスは、必ず痛い目に遭わすと仲間に語る。 セイブラは、編集長殺害の件に執着するヤンシーに意見するが、彼は、それを人々に知らせることは義務であり、解決しなければ自分が殺されると言って妻を納得させる。 神について考える場が必要だと言う人々から、牧師の代わりとして話をすることを求められたヤンシーは、それを受けることにする。 日曜日。 ヤンシーは、集会場にヤンティスがいることを確認して壇上に向かう。 セイブラは、トレイシー・ワイアット(エドナ・メイ・オリバー)に声をかけられる。 その場にディクシー・リーが現れ、セイブラは、彼女がふしだらな女だとトレイシーから知らされる。 ヤンシーは、最前列に座ったソルに出席の許可を求められ、最後までいてほしいことを伝える。 説教を始めたヤンシーは、あらゆる宗教やどんな職に就いている者も受け入れることを伝え、オルガンを買うために献金を求めて皆で歌う。 133ドル55セントの献金が集まッたことを発表したヤンシーは、その後、聖書の一説を読み始める。 ヤンシーはそれを引用しながら、ヤンティスの行った罪を話し、銃撃してきた彼を射殺する。 混乱する人々を鎮めたヤンシーは、葬儀屋のヘフナーにヤンティスの死体を片付けるよう指示する。 ヘフナーは、ヤンシーが正当防衛であることを主張する。 ヤンシーは説教を延期して、出席者と共に祈りを捧げ集会は終わる。 ディクシー・リーに声をかけられたヤンシーは、彼女が例の土地から追い出されたことを知らされる。 家に戻ったセイブラは、悪い噂のディクシー・リーと親しげだったことでヤンシーを問い詰める。 ヤンシーがディクシー・リーは苦労したと言って同情したため、セイブラは呆れてしまう。 1890年。 そんな時、キッド一味が現れて銀行を襲い、それを知ったヤンシーは銃を手にして現場に向かう。 セイブラは息子シムがいないことに気づき、アイザイアが捜しに行き撃たれてしまう。 ヤンシーは銃弾を受けながらもキッドを倒し、各方面から賞金が出ることを知らされるものの、旧友を失い思いは複雑だった。 瀕死のアイザイアは、通り過ぎるヤンシーに声をかけるものの、気づいてもらえないまま息絶える。 賞金で生活が一変すると言うセイブラに、友人を殺して心を痛めるヤンシーは、金は送り返す考えを伝える。 ソルがアイザイアの遺体を運んで現れ、ヤンシーはその死を悲しむ。 1893年。 婦人会活動などを積極的に行っていたセイブラは、新天地での再出発を望むヤンシーの考えを聞き驚く。 ヤンシーは、同行を望まないセイブラと子供達に迎えに来ると言い残し、男達と共に旅立ってしまう。 1898年。 様々な噂が流れていたヤンシーは、死んだという説もあった。 新聞社を続けていたセイブラは、裁判にかけられるディクシー・リーを必ず有罪にすると息巻くが、彼女が善人だと知るソルは擁護する。 セイブラは、編集発行人のヤンシーの名前を変えないことをソルに問われるが答えを返せない。 子供達と共に食事をするセイブラは、再び家族が暮らせることを祈る。 そこにヤンシーが戻り、人々に歓迎された彼はセイブラと再会する。 セイブラは、米西戦争のためヤンシーが従軍していたことを知る。 子供達との再会も喜ぶヤンシーは、新聞社を支えてくれたリッキーと酒を酌み交す。 新聞の原稿を見たヤンシーは、ディクシー・リーが裁判にかけられることを知り、その件をセイブラに確かめる。 ディクシー・リーに弁護人がいないことを知ったヤンシーは、セイブラの制止も聞かずに法廷に向かう。 裁判は始まり、ヤンシーは辛い人生を送るディクシー・リーの気持ちを陪審員に訴える。 ディクシー・リーを証言台に座らせたヤンシーは、彼女に歩んできた過去を語らせる。 様々な職業を経験したディクシー・リーは、その先々で虐げられたことを語り証言台を下り、その苦しみを理解するべきだとヤンシーは主張する。 判決は下りディクシー・リーは無罪となるが、セイブラはヤンシーが嘘をついたと言って批判する。 しかし、法廷での話が疑いのない真実だと知ったセイブラは、ディクシー・リーに対する思いを改め、自分の心を開かせてくれたヤンシーに感謝して永遠の愛を誓う。 1907年。 所有地から石油がでた先住民は豊かになり、生活が変わらない事で、ヤンシーの娘ドナは母セイブラに不満を訴える。 息子シムが使用人だった先住民と結婚する考えを、ヤンシーが承諾したことを知ったセイブラは驚く。 知事候補となっていたヤンシーは、先住民を騙して石油の利権を奪おうとする政治家を言論で叩こうとする。 それが命取りになると忠告するセイブラは、新聞に関しての実権は自分にあると主張する。 ヤンシーは、編集発行人の名前を”セイブラ”にするようにと言って迫り、それができなければ新聞社は自分のものだと伝える。 1929年。 発行人がヤンシーのまま、オクラホマ・ウィグワムは40周年を迎える。 ヤンシーから連絡もないセイブラは、記念号に、1907年の先住民の市民権獲得の記事を社説に載せる考えをリッキーに伝える。 1930年。 セイブラは、ヘフナー夫人となっていた娘ドナ(ジュディス・バーレット)と息子シマロンと妻、そしてその子供達を紹介する。 この場にいないヤンシーの事も語ったセイブラは、これからは女性の時代になるということと、オクラホマの人々及び出席者に感謝して話を締めくくる。 ヤンシーのことを想い涙するセイブラはソルに励まされ、ドナとも抱き合う。 油田に向かったセイブラは、その場の事故に遭遇し、身を投げ出して作業員を助けた老人が重傷を負ったことを知る。 その人物がヤンシーであることに気づいたセイブラは、彼に駆け寄る。 ヤンシーはセイブラに語り掛けるが、彼女の腕の中で息を引き取る。 そして、オクラホマの開拓者の代表として、ヤンシーの銅像の除幕式が行われる。
...全てを見る(結末あり)
6週間で人口が1万人となっていた町に到着したヤンシーは、その活気に驚く。
賭博場を会場にして集会は開かれることになり、ヤンシーは、身なりを整えてその場に向かおうとするアイザイアに、留守の家を守るよう指示して銃を渡す。
娘ドナが産まれたヤンシーとセイブラは幸せを実感し、オクラホマ・ウィグワムも創刊1周年を迎えていた。
政府がチェロキー族の土地を解放することを発表して町は活気づくが、ヤンシーはあることを考える。
ヤンシーから連絡がないまま5年が過ぎ、米西戦争が勃発する。
セオドア・ルーズベルト大統領の署名で、オクラホマは州となる。
開拓時代は終わり放浪癖が出たヤンシーは家を離れ、セイブラは仕事を続けていた。
オクラホマ開拓の歴史を称えるパーティーが開かれ、州では女性初の下院議員となったセイブラも招かれ、大富豪となっていた旧友ヘフナーからスピーチを受け継ぐ。
1960年に、監督アンソニー・マン、主演グレン・フォードでリメイクされた。
・「シマロン」
*(簡略ストー リー)
1889年、オクラホマ準州。
政府により解放された土地の入植地競争が行われるが、ヤンシー・クラヴァットは狙っていた土地をディクシー・リーに奪われてしまう。
妻セイブラの元に戻ったヤンシーは、再び開拓地に向かうことを決心し妻子と共に旅立つ。
活気づく町オセージに着いたヤンシーは、新聞社の前編集長を殺害した疑いのある無法者ヤンティスを牽制する。
新聞社を設立したヤンシーは、編集長殺害事件解明に拘り、集会でヤンティスの罪を語り彼を射殺する。
1893年、政府がチェロキー族の土地を解放したことを知ったヤンシーは考えを巡らせる。
そして、再び開拓者魂が甦ったヤンシーは、セイブラと子供達を残して新天地に向かってしまう・・・。
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未開の地から発展していく町と共に、開拓者としての心を忘れない放浪癖のある夫の行動に翻弄されつつ、その地を離れずに時代の流れを見つめ家族を支える妻の物語を、製作も兼ねるウェズリー・ラッグルズが、一大叙事詩として重厚に描く作品となっている。
西部劇に分類されてはいる作品で、大筋は開拓民一家を描くドラマであり、同じエドナ・ファーバー原作の「ジャイアンツ」(1956)を彷彿させる内容だ。
第4回アカデミー賞では、作品、脚色、美術賞を受賞した。
・ノミネート
監督
主演男優(リチャード・ディックス)
主演女優(アイリーン・ダン)
撮影賞
西部劇として分類される初めてのアカデミー作品賞とは言われるものの、まだその賞自体が黎明期であり、あまりそれに拘る必要はない。
その後に、西部劇作品として「ダンス・ウィズ・ウルブズ」(1990)、「許されざる者」(1992)が約60年振りに同賞を受賞した。
中盤までは、周囲から信頼される主人公の人物像が強烈に描かれるが、彼が家族を残して旅立ってしまう後半は、その後を支える妻を中心とした女性のドラマとして展開する。
アメリカの近代史を加えたことで深みのあるドラマとなったと言う考えもあるが、個人的な意見としてはその逆で、雰囲気も変わってしまう後半は今一受け入れ難い内容だ。
アカデミー作品賞を受賞した割には、批評家、観客共に評価が低く、1960年のリメイク作品もそれは同じだった。
開拓者魂を体全体で表現し、逞しく頼れる存在としてその存在感は他を圧倒する、主人公を熱演するリチャード・ディックス、彼に反発する場面もあるが妻として家族を支え、後半の主人公とも言える役を好演するアイリーン・ダン、主人公だけが味方する、悪い噂だけが流れる幸薄い女性エステル・テイラー、主人公家族と親交を深める夫人エドナ・メイ・オリバー、創設から新聞社を支えるロスコー・エイツ、雑貨の行商人から成功する主人公と友好関係にあるジョージ・E・ストーン、無法者ジョージ・E・ストーン、大富豪となる住人ロバート・マクウェイド、ヒロインの母親ナンス・オニール、主人公の娘ジュディス・バーレット、主人公の旧友である無法者ウィリアム・コリアーJr.、主人公の使用人である少年ユージン・ジャクソンなどが共演している。