1999年に発表された、イギリスの作家ジョアン・ハリスの同名小説を基に製作された作品。 人々の心を開かせる”秘薬”(チョコレート)を伝えるため”北風”と共に旅する母娘の奮闘を描く、監督ラッセ・ハルストレム、主演ジュリエット・ビノシュ、ヴィクトワール・ティヴィソル、ジョニー・デップ、アルフレッド・モリーナ、ジュディ・デンチ、キャリー=アン・モス、レナ・オリン、ピーター・ストーメア、レスリー・キャロン共演のファンタジー・コメディ・ドラマの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ラッセ・ハルストレム
製作総指揮
アラン・C・ブロンクィスト
メリル・ポスター
ボブ・ワインスタイン
ハーヴェイ・ワインスタイン
製作
デヴィッド・ブラウン
キット・ゴールデン
レスリー・ホレラン
原作:ジョアン・ハリス
脚本:ロバート・ネルソン・ジェイコブス
撮影:ロジャー・プラット
編集:アンドルー・モンドシェイン
音楽:レイチェル・ポートマン
出演
ヴィアンヌ・ロシェ:ジュリエット・ビノシュ
アヌーク・ロシェ:ヴィクトワール・ティヴィソル
ルー:ジョニー・デップ
ポール・レノー伯爵:アルフレッド・モリーナ
アルマンド・ヴォジン:ジュディ・デンチ
カロリーヌ・クレルモン:キャリー=アン・モス
ジョゼフィーヌ・マスキャ:レナ・オリン
セルジュ・マスキャ:ピーター・ストーメア
アンリ神父:ヒュー・オコナー
オデル:レスリー・キャロン
ギョーム・ブレロー:ジョン・ウッド
ルーク・クレルモン:オーレリアン・ベアレント・ケーニング
イギリス/アメリカ映画
配給 ミラマックス
2000年製作 121分
公開
イギリス:2001年3月1日
北米:2000年12月15日
日本:2001年4月28日
製作費 $25,000,000
北米興行収入 $71,309,800
世界 $152,699,950
■ アカデミー賞 ■
第73回アカデミー賞
・ノミネート
作品
主演女優(ジュリエット・ビノシュ)
助演女優(ジュディ・デンチ)
脚色・作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1959年、フランスの小さな村。
人々が伝統と規律そして”静けさ”を求め、淡々とした生活を送っていたある日、”いたずらな北風”が吹く。
ヴィアンヌ・ロシェ(ジュリエット・ビノシュ)とアヌーク(ヴィクトワール・ティヴィソル)母娘が、アルマンド・ヴォジン(ジュディ・デンチ)の元を訪れ、お菓子屋を始める住居付き物件を借りる。
村長であるポール・レノー伯爵(アルフレッド・モリーナ)がヴィアンヌを訪ね、彼女に日曜のミサに出席するよ伝える。
しかし、ヴィアンヌはそれを断り、村人が断食中にも拘らず店を開くことをレノーに知らせる。
未婚の母だとも言い切るヴィアンヌを、レノーは怪訝そうな表情で見つめその場を立ち去る。 そして、村人の注目を集めながら、ヴィアンヌのショコラ(チョコレート)の店”マヤ”はオープンする。 レノーの秘書カロリーヌ・クレルモン(キャリー=アン・モス)と息子ルーク(オーレリアン・ベアレント・ケーニング)を、店に招き入れたヴィアンヌだったが、彼女は試食を遠慮する。 翌日、村人に変わり者だと言われているジョゼフィーヌ・マスキャ(レナ・オリン)が、ヴィアンヌの店に現れ万引きして帰っていく。 その後、犬を連れた老人ギョーム・ブレロー(ジョン・ウッド)に、ヴィアンヌは、未亡人オデル(レスリー・キャロン)へのプレゼントを勧める。 ヴィアンヌのことが気になるレノーは、村の女性達に彼女が未婚であり不道徳だと語り、流行もの好きな若いアンリ神父(ヒュー・オコナー)に苦言を呈する。 アルマンドが店に現れ、偏屈で頑固者の彼女はヴィアンヌが入れた特製のココアの味に笑みを浮かべる。 その後ヴィアンヌに心を開いたアルマンドは、娘カロリーヌが、孫のルークに会わせてくれないのを嘆く。 ジョゼフィーヌに会い、彼女にチョコレートを渡したヴィアンヌは、レノーが、自分の悪い噂を村の人々に言いふらしていることを聞かされる。 ルークに声をかけたヴィアンヌは、彼からもレノーのことを言わる。 憤慨したヴィアンヌは、レノーの元に向かい猛烈に抗議するが、彼もヴィアンヌを追い出すと言い返す。 店に戻ったヴィアンヌは、ジョゼフィーヌが万引きの代金を払いに来たため、心が落ち着き彼女と心を通わせる。 そして、村の仕来りや伝統に押し潰されそうな、苦しい胸の内をヴィアンヌはジョゼフィーヌから聞かされる。 ヴィアンヌは、カカオと唐辛子を混ぜた、潜在的な願望を沸き立たせる古代マヤの秘薬を伝えるため、”北風”と共に旅した自分と母のことを、アヌークにせがまれて話し始める。 そんなヴィアンヌは、母親の遺灰を旅に持参していた。 その後、アルマンドはヴィアンヌの店で孫のルークに会うことができて、彼に詩集を贈る。 その夜、”変化”を求めたジョゼフィーヌが、彼女の全てだった夫セルジュ(ピーター・ストーメア)を見限り、ヴィアンヌの家に転がり込む。 セルジュに相談されたレノーは、ヴィアンヌの元に向かうが、彼がジョゼフィーヌを傷つけたことを知る。 その傷を見たレノーはセルジュを懲らしめるために、アンリ神父の前で懺悔させて改心させる。 時は流れ、ヴィアンヌはジョゼフィーヌを助手にして共に働き、理解者も増え店は繁盛するようになる。 伯爵の名に懸けてセルジュを紳士にしようとしたレノーだったが、それだけでは村人の混乱を鎮められないことを悟り、さらに大きな”問題”を解決し、自らの力を示そうとしていた。 そんな時、船に乗り川を下る放浪者のジプシー(ロマ)達が村に現れる。 ヴィアンヌはアヌークを連れて彼らの元に向かい、リーダーの若い青年ルー(ジョニー・デップ)と出会う。 気さくなルーは、ヴィアンヌに自分達に近づくと人々から嫌われると警告し、レノーをはじめ村人は、彼らを追い払う手段を考える。 その頃、セルジュがジョゼフィーヌを訪ね、彼は紳士的に彼女に接するが、ジョゼフィーヌはそれを受け入れられなかった。 その夜、セルジュがヴィアンヌの家に酔って押し入るが、ジョゼフィーヌが彼をフライパンで殴り倒す。 ヴィアンヌの店に通い詰めるようになったアルマンドの元に、孫のルークも顔を出すが、それが母親カロリーヌに見つかってしまう。 カロリーヌは、糖尿病の母親を老人施設に入れようと考えていたが、そんな身でありながら、チョコレートに手を出している彼女を理解できず、ルークを連れて立ち去る。 レノーの発案で、村には不道徳者をボイコットするビラが貼られる。 セルジュの店に入店拒否されたルーと少女を、ヴィアンヌは歓迎し彼に仕事まで与える。 レノーはそれを知り、自分が書いたジプシーやヴィアンヌを批判する説教の原稿を、ミサでアンリ神父に読ませる。 人々は、ヴィアンヌに対して急に余所余所しくなり、アヌークも心ない言葉をかけられ傷ついてしまう。 ヴィアンヌはアルマンドに相談に行き、彼女は主催者を秘密にしてパーティーを開くことを提案する。 アルマンドの70歳の誕生日、パーティーが終了後に老人施設に入ることを、彼女はヴィアンヌに告げる。 ヴィアンヌはルーも招待し、ジョゼフィーヌと共にパーティーの準備を始めるが、そこに”いたずらな北風”が吹く。 パーティーの当日、招待客はルーが出席しているのを知り、驚きながら食事を始め、ルークは肖像画を祖母アルマンドにプレゼントする。 招待客は、ヴィアンヌとジョゼフィーヌの作った料理を堪能し、デザートのあるルーの船に向かうことになる。 カロリーヌはルークがいないことに気づき、彼らがジプシー達と楽しんでいることを知り、それをレノーに伝える。 レノーもそれを確認するが、同行したセルジュは、別人のような美しい妻ジョゼフィーヌに見とれてしまう。 仕事を終えたヴィアンヌは、ルーとボートで川に出て旅を続けることなどを語り合い、そして二人は愛し合う。 しかし、何者かがジプシーの船に火を放ち、ヴィアンヌとルーは船に戻り、彼女はアヌークの無事を知り安堵する。 ルークは祖母アルマンドを連れ帰宅していたが、彼女が亡くなっていることに気づき母カロリーヌの元に向かう。 居場所を失ったルーはヴィアンヌに別れを告げ、アルマンドの葬儀を終えた彼女は、川の桟橋にたたずむ。 そして”北風”が吹き、ヴィアンヌは村を見限り旅立つことを決意し、それを知ったジョゼフィーヌはショックを受ける。 船に火をつけたセルジュは、それを後悔してレノーにそのことを知らせ、彼の言葉で行動を起こしたことを伝える。 レノーは激怒し、罪深きセルジュを村から追放してしまう。 嫌がるアヌークを連れて村を出ようとしたヴィアンヌだったが、ジョゼフィーヌがカロリーヌに相談し、何人かの村人達とチョコレート作りに励んでいた。 カロリーヌまでがヴィアンヌの店に通い詰めるようになり、レノーは夜中に店に侵入する。 レノーはチョコレートで出来た像などを壊してしまうが、彼はその甘味に魅了され、自分の行いを後悔し泣き崩れる。 ”復活祭”の朝、店のショーウインドーで、チョコレートに囲まれて夜を明かしてしまったレノーを見て、アンリ神父は驚くが、ヴィアンヌは優しく声をかける。 レノーは、自分の考えを説教の原稿にしようとしてたのを忘れるが、アンリ神父が、”思いやりや寛容”についてをミサで話す。 そして、村の人々は”受け入れる”ことを学び、開放感を満喫する。 同じ気持ちのレノーは、半年かけてカロリーヌを食事に誘い、夫ジョセフの店を引き継いだジョゼフィーヌは、店名を”カフェ・アルマンド”にする。 ”北風”に、まだ見ぬ土地と人々のことを語られたヴィアンヌだったが、彼女はそれを誰かに任せることを決め、母親の遺灰を風に向かって撒く。 そして、夏の南風と共に、ルーがヴィアンヌとアヌークの元に現れる。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ある日、伝統を重んじる保守的な村に、”北風”と共にヴィアンヌ・ロシェとアヌークの母娘がやって来る。
村長のレノー伯爵が目を光らせる中、ヴィアンヌは、なんと断食の時期にも拘らずチョコレート店を開店してしまう。
やがてレノーは、神父の説教を利用して悪い噂を広げ、ヴィアンヌを村から追い出そうとする。
しかし、ヴィアンヌが作るチョコレートを食べた村人達は、目覚めたように心の変化を感じて幸せな気分を味わう。
そんな時、村にジプシーの集団が現れて、そのリーダーのルーとヴィアンヌは心通わせるようになる。
そしてレノーは、またしてもジプシーを利用して、ヴィアンヌを追放する方法を考える・・・。
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ユーモアとファンタジックな要素を絡めた、人間ドラマとしても見応え十分な作品。
1950年代のフランスの村が舞台だが、突然出現するチョコレート店の、色彩感覚も素晴らしいシンプルな店構えとそのセンスの良さ、そして美味しそうなチョコレートの数々、それが出来るまでの、手抜きのない映像表現なども見事だ。
前作「サイダーハウス・ルール」(1999)とは異なる、ヨーロッパの落ち着いた雰囲気も実に心地よく、魅力的なキャラクターそれぞれの個性を生かした、ラッセ・ハルストレムの、コミカルで軽快な演出も素晴らしい。
北米で約7100万ドル、全世界では1億5000万ドルを超す興行収入を上げるヒットとなった。
第73回アカデミー賞では、作品、主演女優(ジュリエット・ビノシュ)、助演女優(ジュディ・デンチ)、脚色、作曲賞にノミネートされた。
レイチェル・ポートマンの、リズミカルな音楽も印象的だ。
屈託のない笑顔、母親との旅に秘められた想い、幸せを運ぶ妖精のような美しさの、ジュリエット・ビノシュの熱演が光る。
ステップアップの1990年代から、ギアチェンジしていよいよハリウッドの頂点を極めようとしていたジョニー・デップの、スマートな魅力も楽しめる。
村全体を保守思想に扇動する村長、主役に匹敵する存在感を示すアルフレッド・モリーナ、主人公の娘ヴィクトワール・ティヴィソル、偏屈で頑固な老女を好演するジュディ・デンチ、不仲のその娘キャリー=アン・モス、息子オーレリアン・ベアレント・ケーニング、ラッセ・ハルストレム夫人、主人公との出会いで変貌する、感情移入したくなる、人間味溢れる女性レナ・オリン、その夫ピーター・ストーメア、人生経験が浅いにも拘らず、確かな考えを持つ神父ヒュー・オコナー、往年の名女優、戦争未亡人レスリー・キャロン、彼女に惹かれるジョン・ウッドなどが共演している。