喜劇王チャールズ・チャップリンの自伝などを基に栄光と苦悩を描く、製作、監督リチャード・アッテンボロー、主演ロバート・ダウニーJr.、ジェラルディン・チャップリン、ダン・エイクロイド、アンソニー・ホプキンス、ケヴィン・クライン、ダイアン・レイン、ジェームズ・ウッズ他共演のヒューマン・ドラマ。 |
・ロバート・ダウニーJr. / Robert Downey Jr. 作品一覧
■ スタッフ キャスト ■
監督:リチャード・アッテンボロー
製作
リチャード・アッテンボロー
マリオ・カサール
原作
チャールズ・チャップリン
デヴィッド・ロビンソン
原案:ダイアナ・ホーキンス
脚本
ウィリアム・ボイド
ブライアン・フォーブス
ウィリアム・ゴールドマン
撮影:スヴェン・ニクヴィスト
編集:アン・V・コーツ
美術・装置
スチュアート・クレイグ
クリス・A・バトラー
音楽:ジョン・バリー
出演
チャールズ・チャップリン:ロバート・ダウニーJr.
ハンナ・チャップリン:ジェラルディン・チャップリン
マック・セネット:ダン・エイクロイド
ウーナ・オニール/ヘティ・ケリー:モイラ・ケリー
ジョージ・ヘイデン:アンソニー・ホプキンス
ダグラス・フェアバンクス:ケヴィン・クライン
ポーレット・ゴダード:ダイアン・レイン
ジョーン・バリー:ナンシー・トラヴィス
ジョセフ・スコット:ジェームズ・ウッズ
ジョン・エドガー・フーヴァー:ケヴィン・ダン
ミルドレッド・ハリス:ミラ・ジョヴォヴィッチ
リタ・グレイ:デボラ・ムーア
エドナ・パーヴァイアンス:ペネロープ・アン・ミラー
シドニー・チャップリン:ポール・リス
フレッド・カルノー:ジョン・ソウ
メイベル・ノーマンド:マリサ・トメイ
ローランド・トザロー:デイヴィッド・ドゥカヴニー
メアリー・ピックフォード:マリア・ピティロ
スタン・ローレル:マシュー・コットル
イギリス/アメリカ 映画
配給 トライスター・ピクチャーズ
1992年製作 144分
公開
北米:1992年12月25日
日本:1993年4月
製作費 $31,000,000
北米興行収入 $9,493,260
■ アカデミー賞 ■
第65回アカデミー賞
・ノミネート
主演男優(ロバート・ダウニーJr.)
作曲・美術賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1894年、イングランド、オールダーショット。
舞台小屋の歌手ハンナ・チャップリン(ジェラルディン・チャップリン)は、ステージで声が出なくなりクビになる。
それを見て、母親の代わりにステージに立った5歳の少年チャールズ・チャップリンは、その愛らしい歌声で大喝采を浴びる。
貧しい生活を続けていたハンナは、チャールズと異父兄シドニーを育てられず二人を施設に預けることになる。
7年後。
施設から出て、ハンナと暮していたチャップリンは、彼女が精神に異常を来たしたため病院に預け、母親と別れることになる。
2年後。
チャップリン(ロバート・ダウニーJr.)は、兄のシドニー(ポール・リス)の勧めで興行主のフレッド・カルノー(ジョン・ソウ)に紹介され、喜劇役者となる。
1909年、ロンドン、”ハックニー・エンパイア”。 その後チャップリンは、アメリカ巡業を前にへティに求婚するが、それを断られてしまう。 1963年、スイス、ヴェヴェイ。 その後ヘイデンは、チャップリンが母ハンナを病院に入れた後の記憶の曖昧さを指摘するが、彼は、思い出したくないからだと答える。 ヘティに、アメリカ巡業が成功するに違いないと励まされたチャップリンは、彼女に別れを告げて旅立つ。 1913年、モンタナ州、ビュート。 その後、カリフォルニアから、週150ドルの仕事の依頼を受けたチャップリンは、マック・セネット(ダン・エイクロイド)を訪ねる。 ”キーストン・スタジオ” そして、チャップリンは新しい産業の映画の世界に身を投じ、撮影技師ローランド・トザロー(デイヴィッド・ドゥカヴニー)らと共に仕事をすることになる。 1963年 雇われてから1ヶ月が経った頃、チャップリンは、衣裳部屋で自分を”呼んでいた”帽子やステッキに身を包み、ちょび髭をつけてカメラの前に現れる。 セネットはチャップリンの芸を絶賛するが、監督のメイベル・ノーマンド(マリサ・トメイ)は、自分の指示に従わない彼を毛嫌いする。 チャップリンは、年下のノーマンドに指示されるのが気に食わずに、その後セネットに監督を任され、映画を次々と作製する。 やがて、シドニーをマネージャーにするため、アメリカに呼び寄せたチャップリンは、母ハンナのことを気にかける。 そして、チャップリンは便りのなかったヘティが、結婚したことを知り落胆する。 その後チャップリンは、セネットに法外な週給1000ドルを要求し、さらに映画の製作全てを仕切ることを望む。 1915年。 年間100万ドルを稼ぐスターになったチャップリンの映画製作に、政治色が見え隠れしてきたのを兄シドニーは警戒する。 やがてチャップリンは、トップスター、ダグラス・フェアバンクス(ケヴィン・クライン)、彼に恋焦がれるメアリー・ピックフォード(マリア・ピティロ)と親交を深める。 チャップリンはあるパーティーで、ピックフォードに忠告されながらも、子役で未成年のミルドレッド・ハリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)を誘ってしまう。 1918年、ハリウッド、ラ・ブレア・アヴェニュー。 全てを手に入れたチャップリンは、フェアバンクスの意見も聞かずに、ミルドレッド・ハリスと結婚してしまう。 第一次大戦終結を祝うパーティーで、チャップリンは、司法省のジョン・エドガー・フーヴァー(ケヴィン・ダン)が、左翼思想の脅威を熱弁する席上で、 彼の語る映画業界が発する影響を茶化してしまう。 1963年。 1920年。 ユタ州、ソルトレイクシティ。 1921年。 しかし、チャップリンは、戦争で疲弊しきった市民から、その間、楽に暮していたことで心無い言葉も浴びせられ、故郷を失ったと判断し、その後のアメリカでの生活を選ぶ。 1924年、ワシントンD.C.、DOI(FBIの前身)。 チャップリンは、またしても未成年の女優リタ・グレイ(デボラ・ムーア)と結婚し、その後、彼が「黄金狂時代」を撮影していた頃、彼女は二人の息子を産む。 「街の灯」の撮影で、ヒロインの盲目の花売り娘(ヴァージニア・チェリル)に、”放浪者”が金持ちだと分からせるアイデアが浮かばないチャップリンは苦悩する。 シドニーは、既にトーキーの時代、言葉を入れれば問題は解決すると提案するが、 英語圏が少ない世界を理由に、チャップリンはそれを拒絶する。 そんな時、チャップリンは車のドアが閉まることで、それを聞いたヒロインが、”放浪者”を金持ちだと思い込むアイデアが浮かぶ。 1932年、マリブ・ビーチ。 大恐慌の危機も逃れていたチャップリンは、世の中の人々の困窮した生活を目の当たりにして、自分の無力さを恥じる。 その後チャップリンは、ポーレットの言葉が耳に入らないほど、「モダン・タイムス」の製作に没頭する。 盟友フェアバンクスの、心臓の病気が悪化したことを心配するチャップリンは、妻となっていたポーレットが、「風と共に去りぬ」の”スカーレット・オハラ”役のカメラテストを受けることを知る。 ナチス・ドイツやファシズムを正当化するような意見が出てくる中、それに対し、チャップリンはあからさまに敵意を見せる。 1963年。 政治色どころではなく、チャップリンの身の危険も心配するシドニーは、当然「独裁者」の製作に反対する。 しかしチャップリンは、自分と4日しか誕生日が離れていない、主人公のモデルとなるヒトラーのことが理解できることと、信念を貫くことをシドニーに伝える。 「独裁者」を見たFBI長官のフーヴァーは、チャップリンのメッセージはアメリカに向けられていると非難する。 1941年、ビバリーヒルズ。 1942年10月。 その後、ウーナと付き合い始めていたチャップリンだったが、バリーが彼の子を妊娠するという事件が起きる。 チャップリンは血液検査に応じ、フーヴァーはそこにつけこもうとする。 検査の結果、バリーのお腹の子はチャップリンの子ではないことが分かりウーナは喜ぶ。 しかし、弁護士ジョセフ・スコット(ジェームズ・ウッズ)による訴えでチャップリンは有罪となり、生まれた子供の養育義務を負うことになる。 反共産主義ムードが高まる中、チャップリンは”赤狩り”の対象になる。 1952年9月。 1963年。 1972年4月10日、チャップリン、83歳の誕生日の6日前。 ウーナと共に準備を整えたチャップリンは、アカデミー協会会長ダニエル・タラダッシュの自分を称える言葉を聞いても、不安を隠せないでいた。 そして、自分の作品が大スクリーンに映し出されるステージに上がったチャップリンは、ウーナに見守られながら、それを見て涙する。
見事な芸で観客を笑わせたチャップリンは、同じ舞台に立つ踊り子ヘティ・ケリー(モイラ・ケリー)に心を寄せるようになる。
...全てを見る(結末あり)
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チャップリンの自伝の編集者ジョージ・ヘイデン(アンソニー・ホプキンス)は、彼がヘティにキスさえもしなかったことを確認する。
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2度目のアメリカ巡業となったチャップリンは、初めて見た活動写真に魅せられてしまう。
チャップリンが酔いどれの老人だと思っていたセネットは、彼が突然始めた寸劇で本人だと認める。
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チャップリンは、その”映画”を恐れていて、”放浪者”を生み出さなければ、セネットに追い出されていただろうということをヘイデンに語る。
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チャップリンは、週給1250ドルで”エッサネイ・スタジオ”に参加した新人女優エドナ・パーヴァイアンス(ペネロープ・アン・ミラー)を発掘する。
世界一の有名人になったチャップリンは、20代にして自分のスタジオを持つ。
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それによってチャップリンは、フーヴァーから共産主義者のレッテルを貼られ、異父兄シドニーの影響でユダヤ人とも疑われたことをヘイデンに話す。
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フェアバンクス、ピックフォード、監督のD・W・グリフィスらと共に、”ユナイテッド・アーティスツ”を設立したチャップリンは、ミルドレッドと離婚することになるが、彼女に財産としてフィルムを奪われそうになる。
チャップリンは、シドニーやトザローらとホテルに閉じこもり、新作「キッド」の編集を急ぐ。
イギリスを訪れたチャップリンはカルノーに再会し、ロンドンに向かう列車の中でヘティの死を知らされ落胆するが、駅で出迎えるファンに笑顔で応える。
フーヴァーはチャップリンらに、いかにして共産主義の危険性を分からせるかを思案する。
既にリタと別れていたチャップリンは、若い女優ポーレット・ゴダード(ダイアン・レイン)と知り合う。
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フェアバンクスの早過ぎる死を今でも哀しく思い、彼から同じ年齢のヒトラーに似ていると言われていたチャップリンは、初めてのトーキー作品「独裁者」の撮影を1938年に始めたことをヘイデンに語る。
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女優ジョーン・バリー(ナンシー・トラヴィス)と愛人関係にあったチャップリンだったが、トラブルばかり起こす彼女とは別れ、結婚はしなかった。
そんな時チャップリンは、作家ユージン・オニールの娘で、ヘティを想わせる女優志望のウーナ・オニール(モイラ・ケリー)に出会う。
「ライムライト」を完成させたチャップリンと家族は、ロンドンでのプレミアのためニューヨークを旅立つが、その途中で彼は国外追放命令を受ける。
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今ならばビザが下りるはずではあるが、チャップリンは自らの意思でアメリカに向かう気はなかった。
カリフォルニアから連絡を受けたチャップリンは、第44回アカデミー賞授賞式に招待される。
*(簡略ストー リー)
19世紀末。
少年チャールズ・チャップリンは、母ハンナと異父兄のシドニーと共に極貧生活を送っていた。
ハンナは精神を患い、母を病院に入れたチャップリンは、その後、シドニーの紹介で喜劇役者となり才能を開花させる。
アメリカに渡ったチャップリンは、黎明期の映画産業に惹かれ、マック・セネットにその才能を見出され大活躍を始める。
やがて、マネージャーとしてシドニーをアメリカに呼び寄せたチャップリンは、知名度と人気で一躍トップスターとなるが、親子ほど年の違う女優達と次々に浮名を流し始める。
やがてチャップリンは、映画製作の全てを仕切り、さらにその内容の自己主張が政治的危険性をはらんでくる・・・。
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物語は、チャールズ・チャップリンの自伝の編集者による彼の生涯の記憶の確認と、その記憶を回想していくという構成で進行して行く。
かなり事実に忠実に作られた作品で、チャップリンに関わる登場人物の多彩なところなども興味深く、その著名人らを再確認していくことが出来る面白味のある展開が”歴史”を感じさせてくれる作品でもある。
しかし、チャップリンのスタイルが確立し、アメリカで成功するまでは楽しめるものの、その後は単純な事実の描写でしかない内容で、さらにはそれほどの盛り上がりもない終盤といい、平凡な作品に終わっている。
本物嗜好のリチャード・アッテンボローの意欲作ではあるが、主人公のチャップリンを演ずるロバート・ダウニーJr.の好演以外は特筆するところもはない。
第65回アカデミー賞では、主演男優(ロバート・ダウニーJr.)、作曲、美術賞にノミネートされた。
興行的にも失敗作であり、北米で約900万ドルの結果に終わってしまった。
素顔は全くチャップリンに似ていないロバート・ダウニーJr だが、”放浪者”としての芸を演じているシーンなど、そのキャラクター作りの努力が窺える、見事なパフォーマンスを見せてくれる。
生前を知らない、自分自身の祖母であるハンナを演ずる、チャップリンの実娘ジェラルディン・チャップリン、マック・セネットのダン・エイクロイド、自伝編集者役アンソニー・ホプキンス、最後の妻ウーナ・オニールと初恋の相手二役を演ずるモイラ・ケリー、盟友である大スターダグラス・フェアバンクスのケヴィン・クライン、3番目の妻ポーレット・ゴダード役ダイアン・レイン、悩まされる愛人役ジョーン・バリーのナンシー・トラヴィス、その弁護士ジョセフ・スコットのジェームズ・ウッズ、FBI長官ジョン・エドガー・フーヴァーのケヴィン・ダン、最初の妻であるミルドレッド・ハリス役のミラ・ジョヴォヴィッチ、2番目の妻リタ・グレイ役のデボラ・ムーア、チャップリンのサイレント作品には欠かせない女優エドナ・パーヴァイアンス役のペネロープ・アン・ミラー、兄のシドニー役ポール・リス、興行主のフレッド・カルノーのジョン・ソウ、対立する女流監督メイベル・ノーマンドのマリサ・トメイ、撮影技師のローランド・トザロー役のデイヴィッド・ドゥカヴニー、フェアバンクス夫人でチャップリンの良き理解者のメアリー・ピックフォードのマリア・ピティロ、スタン・ローレルのマシュー・コットルなどが共演している。