第二次大戦下、戦火を逃れるための拠点であったカサブランカを舞台に描く、監督マイケル・カーティス、ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、ポール・ヘンリード、クロード・レインズ共演のラブ・ロマンスの傑作。 |
・ハンフリー・ボガート / Humphrey Bogart / Pinterest
・イングリッド・バーグマン / Ingrid Bergman / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:マイケル・カーティス
製作総指揮:ジャック・L・ワーナー
製作:ハル・B・ウォリス
原作
マレイ・バーネット
ジョアン・アリスン
”Everybody Comes to Rick’s”
脚本
ハワード・コッチ
ジュリアス・J・エプスタイン
フィリップ・G・エプスタイン
編集:オーウェン・マークス
撮影:アーサー・エディソン
音楽:マックス・スタイナー
出演
ハンフリー・ボガート:リック・ブレイン
イングリッド・バーグマン:イルザ・ラント
ポール・ヘンリード:ヴィクター・ラズロ
クロード・レインズ:ルイ・ルノー
コンラート・ファイト:ハインリッヒ・シュトラッサー少佐
ドーリー・ウィルソン:サム
シドニー・グリーンストリート:フェラーリ
ピーター・ローレ:ウガーテ
レオニード・キンスキー:サーシャ
S・Z・サカール・カール
マデリーン・ルボー:イヴォンヌ
ジョイ・ページ:アニーナ・ブランデル
ヘルムート・ダンティン:ヤン・ブランデル
ジョン・クゥオーレン:ベルゲル
ノーマ・ヴァルデン:イギリス人婦人
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1942年製作 102分
公開
北米:1942年11月26日
日本:1946年6月20日
製作費 $950,000
北米興行収入 $1,719,910
■ アカデミー賞 ■
第16回アカデミー賞
・受賞
作品・監督・脚本賞
・ノミネート
主演男優(ハンフリー・ボガート)
助演男優(クロード・レインズ)
編集・撮影・音楽賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1941年12月。
第二次大戦中、フランス領モロッコ、 カサブランカ。
ナチス・ドイツ占領下のこの地は、ヨーロッパ人がナチスから逃れ、リスボン経由でアメリカに渡るために、通過しなければならない拠点だった。
ドイツ軍現の地司令官ハインリッヒ・シュトラッサー少佐(コンラート・ファイト)は、地元警察のフランス人署長ルイ・ルノー(クロード・レインズ)に迎えられて赴任し、直ちに不法出国者の取り締まりを始める。
アメリカ人のリック・ブレイン(ハンフリー・ボガート)が経営するクラブ”リックス・カフェ・アメリカン”には、亡命者達がたむろし、リスボン行きを待ち望んでいた。
そんな時、ドイツの連絡員が殺されて犯人が子の地に向かい、それを検挙して奪われた書類を回収するよう警察署に連絡が入る。
その後、フランスの地下活動家が逃亡しようとして殺され、警察の捜査が強化される。 その夜リックは、これで足を洗うという、通行証を闇で売買するウガーテ(ピーター・ローレ)から、高額で売れる通行証を預かる。 リックは、ウガーテが、昼間殺されたドイツ人から通行証を盗んだことを見抜く。 ルノーは、リックとの不思議な友情を保ち、裏で、通行証などを売りさばかないことを信じながらある情報を流す。 意外に情け深いリックが、通行証を求めて現れるチェコ人のレジスタンスで、ナチス抵抗運動の指導者を助けるのではないかと、ルノーは探りを入れる。 その男は、収容所から脱出して、アメリカ逃亡をもくろむヴィクター・ラズロ(ポール・ヘンリード)だった。 やがて、シュトラッサー少佐がリックの店に現れ、その直後、ウガーテが警察に捕らえられて連行される。 その後、リックの店に、ラズロと連れのノルウェー人女性イルザ・ランド(イングリッド・バーグマン)が現れる。 クラブのピアニストのサム(ドーリー・ウィルソン)は、イルザの姿を見て驚く。 そしてラズロに、ノルウェーの地下活動家ベルゲル(ジョン・クゥオーレン)が接触する。 ルノーはラズロの席に向かい、その後シュトラッサーも彼を牽制し、翌日、二人は警察で会うことになる。 バーにいたベルゲルと話したラズロは、協力者であるはずのウガーテが、逮捕されてしまったことを知らされる。 サムは、イルザがリックに干渉することを嫌い、その曲も演奏を拒もうとするが、彼女がそれを口ずさんだために仕方なく歌い始める。 そこにリックが現れ、サムに演奏を止めさせようとするが、イルザに気づいたリックは言葉を失ってしまう。 ラズロに紹介されたリックは、多くを語らず、席を立つ彼らを見送る。 その夜、酔いながら再びイルザが現れるのを待つリックは、サムに、”As Time Goes By”を弾かせて回想する。 陥落前のパリで、リックはイルザと愛し合っていたのだが、ナチス・ドイツのフランス侵攻に伴い、情勢に暗雲がたちこめる。 そして、ドイツ軍の砲撃を聞きながら、サムのいた店で、二人は国外逃亡を計画し、駅で待ち合わせる。 しかし、リックは、姿を現さないイルザからの手紙を受け取り、サムと二人だけでパリを脱出する。 そこに思惑通りイルザが現れ、彼女は、パリでリックの元から姿を消した理由を話すが、彼は酔った勢いでイルザを侮辱してしまい、彼女は涙して立ち去る。 翌日、警察署にいたシュトラッサーは、ウガーテの通行証がリックの元にあるだろうと、ルノーにそれを探らせようとする。 そこに、ラズロとイルザが現れ、シュトラッサーとルノーは、二人をカサブランカから旅立たせないことを率直に伝える。 さらにシュトラッサーは、ラズロに、抵抗組織の指導者の名前を吐かせようとする。 しかし、収容所の拷問にも耐えたラズロは、同志を裏切るはずもなかった。 その後、ラズロはウガーテが死んだことを知らされ、その場を引き揚げる。 闇市を仕切る大物フェラーリ(シドニー・グリーンストリート)は、現れたリックに通行証のことで探りを入れるが、 彼は白を切って立ち去る。 フェラーリの元を訪れたラズロは、リックと入れ替わりで現れ、彼は通りにいたイルザを見つけ、昨夜の無礼を謝罪する。 パリの頃と人が変わってしまったリックに対し、イルザは素っ気無い態度で、ラズロが夫だといことを伝え、それがパリ時代からだったことも知らせる。 フェラーリは、イルザだけなら彼女の通行証で脱出は可能だということを伝える。 しかし、ラズロが旅立てる可能性はないため、イルザは、彼と行動を共にしようとする。 それをフェラーリに伝えた二人は、ウガーテが所持していたという通行証を、リックが預かっているはずだと知らせる。 その夜リックは、ブルガリアから逃れてきた新妻アニーナ・ブランデル(ジョイ・ページ)から、これ以上の逃亡資金がないことを相談される。 リックは、アニーナに国に帰るようにと助言をして、カジノのルーレットで、逃亡資金を作ろうとする彼女の夫ヤン(ヘルムート・ダンティン)に勝たせる。 アニーナはリックに感謝するが、彼は夫のヤンが運が良かったとだけ答える。 それを見ていたウエイターのカール(S・Z・サカール)は、バーテンダーのサーシャ(レオニード・キンスキー)にそのことを知らせ、二人はボスのリックの男気を称える。 リックはルノーに、情が深いことを皮肉られ、その後、ラズロから通行証に大金を払うと持ちかけられるがそれを断る。 何か訳でもあるのかというラズロに対し、リックは、妻に聞けば理由が分かると言い放つ。 その直後、クラブでは、シュトラッサーをはじめドイツ兵が合唱を始めたため、ラズロは”ラ・マルセイエーズ”を歌おうとする。 それを見たリックは、バンドに演奏を許可して、ラズロやフランス人は立ち上がって祖国の国家を歌い、ドイツ兵を圧倒する。 リックの気を引けない恋人イヴォンヌ(マデリーン・ルボー)は、彼への当て付けにドイツ兵と同伴していたが、彼女も涙を流しながら歌い始める。 憤慨したシュトラッサーは、扇動したラズロの危険性をルノーに指摘し、店を閉鎖させてしまう。 シュトラッサーは、イルザにラズロの出すぎた行動を控えさせ、フランスに戻るよう半ば脅迫する。 ホテルに戻ったラズロは、イルザにリックに言われたことを尋ねるが、何も語らない彼女を信じ、同志との集会に向かう。 その後、イルザはリックの元に向かうが、彼は通行証を必要とする彼女の気持ちを受け入れない。 イルザはリックに銃を向けるが、彼女は引き金を引ける訳もなく泣き崩れる。 そんなイルザを抱いたリックは、彼女が自分を今でも愛し続けていることを知る。 そしてイルザは、ラズロが死んだと聞かされた時にリックと出会い、パリを出る直前に、実は夫が生きていたことを知らされたことを話す。 リックに危険が及ぶことを恐れたイルザは、彼には何も語らず姿を消したのだった。 ラズロは逃がしたいが、自分はリックなしでは生きられないことをイルザは彼に伝える。 そこに、集会で警察に捕らえられそうになり、怪我をしたラズロがカールと現れる。 リックは、ラズロに知られぬよう、カールにイルザを送らせ、ラズロから、自分とイルザの関係に気づいていたことを知らされる。 それを追求する気のないラズロは、イルザだけでも逃がしてほしいことをリックに伝え、現れた警官に連行される。 リックは、通行証は自分とイルザが使うことをルノーに告げて、彼を欺くため、ラズロを二人で強制収容所送りにすることを提案する。 巧みな説得でラズロを釈放させたリックは、店をフェラーリに売る。 店で、ラズロとイルザを待ち伏せたかに見せかけたリックだったが、ルノーがラズロを逮捕しようとする。 リックはルノーに銃を向けて空港に電話させるが、彼は知られぬように、シュトラッサーに連絡を入れる。 シュトラッサーは空港に向かい、その場に着いたリックは、イルザをラズロと共に飛行機に乗せようとする。 それに同意できないイルザだったが、自分達にはパリの想い出を残し、ラズロとの人生を歩むよう、リックに説得される。 リックは、ラズロにイルザとの愛は偽りだと告げて通行証を渡し、二人を見送る。 ルノーはリックを逮捕しようとするが、そこにシュトラッサーが現れ、ラズロ達の脱出を阻止しようとする。 リックはシュトラッサーを射殺し、ルノーは駆けつけた部下達に、逃亡したと言って犯人を追わせる。 愛国心を取り戻したルノーはリックと共に、ラズロとイルザの乗った飛行機が飛び立つのを確認する。 ルノーは、自らを犠牲にしてラズロ達を助けたリックを逮捕することなく、彼の逃亡を手助けすることも約束する。 そしてリックとルノーは、”美しい友情”を確認して、その場を立ち去る。
...全てを見る(結末あり)
シュトラッサーと同席したリックは、ラズロ逮捕の協力を要請されるが、彼は傍観者としての立場を明確にして席を立つ。
イルザは、見覚えのあるサムに気づき、彼を呼び寄せてリックのことを尋ねて、想い出の曲”As Time Goes By”をリクエストする。
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*(簡略ストー リー)
ナチス・ドイツ占領下、ヨーロッパ各国の人々は、アメリカに逃れるためカサブランカに集まる。
そこでは、闇商人が売りさばく通行証に、脱出を待つ人々が群がっていた。
クラブを経営するアメリカ人のリック・ブレインは、殺されたドイツ人から奪ったと思われる通行証を闇商人ウガーテから預かる。
その後、ウガーテは逮捕されて死亡するのだが、リックが通行証を預かったと察した、地元の警察署長ルノーや統治司令官シュトラッサー少佐は彼に探りを入れる。
同じ頃、ナチス抵抗運動活動家の指導者ラズロと連れのイルザが姿を現す。
ルノーやシュトラッサーは、彼らに通行証が渡ることを阻止しようとする。
リックは、現れたイルザに気づき、かつて愛し合っていた彼女の出現に、不穏な空気を感じ始める・・・。
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英語教師マレイ・バーネットとジョアン・アリスンの、上演されることのなかった戯曲”Everybody Comes to Rick’s”を基に製作された作品。
実は本作は、ヨーロッパでの戦況が激しくなる中、戦争プロパガンダ的作品として作られたものの、その後の思いもよらぬ大反響で、ハリウッド映画史上に残る傑作となってしまった。
連合軍による、北アフリカ上陸作戦(トーチ作戦)直後に公開されたというところも、政治的意図が窺える。
よって公開時の期待は低く、日が経つにつれて評価が高まったということになる。
第16回アカデミー賞では、作品、監督、脚本賞を受賞した。
・ノミネート
主演男優(ハンフリー・ボガート)
助演男優(クロード・レインズ)
編集・撮影・音楽賞
1989年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
多くを語る必要もない、主演ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンの、映画史上に残る名場面やセリフの数々、そして名曲なども心に残る。
当時、撮影が開始されても脚本が未完成のままで、俳優や監督も、どんな場面を撮影しているのか分からない状態が続いたらしい。
そんな作品に、主演のイングリッド・バーグマンは、興味を示さずに駄作だと思い、30年後に傑作だと気付いたという逸話は有名だ。
ハンフリー・ボガートについては、個人的な意見で、「黄金」(1948)や「アフリカの女王」(1951)、または「俺たちは天使じゃない」(1955)の時のような、汚れ役の方が好みの作品でもある。
世間で言われる、”世紀の傑作”というほど好きな作品ではないが、やはり、その時代背景などを考えると、本作の世の中に与えた影響は大きい。
多国籍の脇役人が注目でもあり、闇商人ピーター・ローレやシドニー・グリーンストリート、ピアニストのドーリー・ウィルソン、クラブのスタッフのレオニード・キンスキーやS・Z・サカールなど、多彩な登場人物それぞれが、非常に印象に残るよう丁寧に描写され、手を抜いたプロパガンダ作品のような仕上がりとはなっていないことが分かる。
そんな、監督マイケル・カーティスのプライドを感じさせる演出は見事だ。
隙のない反ナチス活動家のポール・ヘンリード、中立よりややナチス寄りだが、クライマックスで、”ヴィシー政権”を軽蔑する態度を見せ、友情をとる警察署長のクロード・レインズ、統治司令官コンラート・ファイト、リック(H・ボガート)の恋人役マデリーン・ルボー、ブルガリア人の新妻ジョイ・ページ、その夫ヘルムート・ダンティン、ジョン・フォード一家の一員で、こんな作品にも出演していたのかと、得した気分になれた地下活動家のジョン・クゥオーレン、そして、イギリス婦人の端役でノーマ・ヴァルデンなども出演している。