セオドア・ドライサーのデビュー作”Sister Carrie”(1900)を基に製作された作品。 貧しい女性と彼女との出会いで心の安らぎを得る中年男性のロマンスの末の悲劇を描く、製作、監督ウィリアム・ワイラー、主演ローレンス・オリヴィエ、ジェニファー・ジョーンズ、ミリアム・ホプキンス、エディ・アルバート他共演のドラマ。 |
・ドラマ
・ジェニファー・ジョーンズ / Jennifer Jones / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ウィリアム・ワイラー
製作:ウィリアム・ワイラー
原作:セオドア・ドライサー”Sister Carrie”
脚本
ルース・グッドマン・ゲーツ
オーガスタ・ゲーツ
撮影:ヴィクター・ミルナー
編集:ロバート・スウィンク
美術
ハル・ペレイラ
ローランド・アンダーソン
エミール・クリ
衣装デザイン:イデス・ヘッド
音楽:デイヴィッド・ラクシン
出演
ジョージ・ハーストウッド:ローレンス・オリヴィエ
キャリー・ミーバー:ジェニファー・ジョーンズ
ジュリー・ハーストウッド:ミリアム・ホプキンス
チャールズ・S・ドルーエ:エディ・アルバート
ジョージ・ハーストウッドJr.:ウィリアム・レイノルズ
ジェシカ・ハーストウッド:メアリー・マーフィ
フィッツジェラルド:ベイジル・ルイスデール
アレン:レイ・ティール
アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1952年製作 122分
公開
北米:1952年7月17日
日本:1953年10月
■ アカデミー賞 ■
第25回アカデミー賞
・ノミネート
美術(白黒)・衣装デザイン賞(白黒)
ミズーリ州、コロンビア。
田舎育ちのキャリー・ミーバー(ジェニファー・ジョーンズ)は、姉を頼り大都会シカゴに向かう。
途中、汽車の中でキャリーは、セールスマンのチャールズ・S・ドルーエ(エディ・アルバート)と知り合い会話を交わす。
チャールズと別れ、姉の家に世話になり靴工場で働いていたキャリーだったが、ある日、怪我をして解雇されてしまう。
その後、職探しに歩き回ったキャリーは、名刺をもらっていたチャールズを頼り、彼から10ドルを受け取りその夜、待ち合わせをすることになる。
姉にそのことで注意されたキャリーは、チャールズに10ドルを返そうと、待ち合わせ場所の高級レストラン”フィッツジェラルド”に向かう。
場違いな雰囲気に戸惑うキャリーだったが、支配人ジョージ・ハーストウッド(ローレンス・オリヴィエ)が、彼女に優しく接する。 そこにチャールズが現れ、ハーストウッドは2人を上席に案内する。 チャールズは、10ドルを受け取らずに食事を済ませ、姉の世話になれなくなったキャリーに、部屋を貸すと言ってアパートに誘う。 警戒するキャリーだったが、チャールズは旅に出ると言ってその場を立ち去る。 キャリーは姉にもこれ以上世話になれず、チャールズにすがるしかない状況で、仕方なく結婚を前提に同棲を始める。 ある日、チャールズはハーストウッドと出くわし、彼をアパートに招待してキャリーと共に楽しいひと時を過ごす。 帰宅したハーストウッドは、口やかましく冷酷な妻ジュリー(ミリアム・ホプキンス)の小言にうんざりしてしまう。 そんなハーストウッドは、純真な心の持ち主であるキャリーに心を寄せるようになる。 そして、キャリーを観劇に誘ったハーストウッドは、彼女を求めて愛を告げる。 公園でキャリーと待ち合わせをしたハーストウッドは、数日後にシカゴを発つことを告げ、彼女もそれに同行しようとする。 その後、チャールズとキャリーは、”フィッツジェラルド”で食事することになる。 チャールズは、キャリーとハーストウッドのことに気づき、彼が既婚者で子供もいることを告げる。 キャリーはショックを受けて店を飛び出すが、ジュリーが入れ替わりで店に現れる。 ジュリーはキャリーのことでハーストウッドを責め、脅しをかけて店を出る。 店の外の馬車にいたキャリーは、ハーストウッドを呼び出し、妻子のことを問質す。 それが真実だと知ったキャリーは、失意のままその場を立ち去ってしまう。 ハーストウッドは、ジュリーがキャリーに全てを話したと思い込み、家に帰り彼女に言い寄る。 ジュリーはキャリーには会っていないと言うが、ハーストウッドは離婚することを彼女に伝え店に戻る。 ハーストウッドを待っていたチャールズは、キャリーと明日にでも結婚すると言って立ち去る。 帰宅したハーストウッドは、店のオーナーのフィッツジェラルド(ベイジル・ルイスデール)がいることに気づく。 ハーストウッドは誤って金庫を閉めてしまい、フィッツジェラルドの現金を持ち帰ってしまったため、それを彼に渡そうとする。 フィッツジェラルドは、一流店に必要な品位をハーストウッドに問い、彼は現金を渡しそびれてしまう。 キャリーが、金目当ての女だと決め付けるフィッツジェラルドとジュリーの考えに絶望し、ハーストウッドはその場を走り去る。 放心状態のハーストウッドは、渡し忘れた現金に気づくのだが、そのままキャリーの元に向かい、チャールズが怪我をしたと嘘をついて、彼女を誘い出しユニオン駅に向かう。 汽車に乗った2人だったが、キャリーはチャールズの怪我が嘘だと知り、次の駅で降りようとする。 ハーストウッドは、妻子のことを隠していたことは謝罪し、妻とは離婚することをキャリーに告げ、彼女は思い止まる。 そして、2人は愛を確かめ合い、ニューヨークに向かう。 結婚して幸せな生活を送っていたハーストウッドとキャリーだったが、そこに、保険会社のアレン(レイ・ティール)が現れる。 ハーストウッドは、フィッツジェラルドの1万ドルを借金と考えていたが、キャリーに知られたくない彼は、9000ドル余りを仕方なくアレンに渡す。 アレンは、関係者にこの件を連絡することをハーストウッドに伝え、彼は一文無しの上に、職を得ることもできなくなってしまう。 身分を隠して働いていたハーストウッドだったが、たちまち素性が知られて解雇されてしまう。 子供が生まれることを知ったハーストウッドは、喜びの反面、何もかもうまくいかずに絶望してしまう。 そんな時、ジュリーがハーストウッドのアパートを訪ね、二人の共有財産の譲渡書にサインを求める。 財産の半分を求めるハーストウッドだったが、ジュリーは夫を重婚罪で訴えると言い出す。 それを聞いたキャリーはショックを受け、彼女の気持ちを察したハーストウッドは、離婚に応じてくれれば何もいらないと言って取引を成立させる。 その後、キャリーは流産してしまうが、まだ若い彼女は女優の道に挑戦して、やがて役がつくようになる。 ハーストウッドは、息子のジョージ(ウィリアム・レイノルズ)が結婚したことを知り、キャリーに勧められて彼に会おうとする。 惨めさに耐えながら、シカゴに向かったハーストウッドだったが、彼は息子に声をかけることができずに自宅に戻る。 そしてハーストウッドは、息子との幸せな生活を祈り身を引いた、キャリーの置手紙を見つけて愕然とする。 数年後、”キャリー・マデンダ”の芸名でスターとなったキャリーは、楽屋を訪ねて来たチャールズから、ハーストウッドが自分とシカゴを発つ際、現金を横領していた事実を知らされる。 キャリーは、ハーストウッドがそのせいで回状までだされ、援助も仕事も得られなかったことを知る。 かつて住んでいたアパートに向かったキャリーは、隣部屋に住んでいた住人に、ハーストウッドが浮浪者になったと聞かされる。 簡易宿泊施設を追い出されたハーストウッドは、空腹に耐えることができず、劇場の楽屋口でキャリーに声をかける。 キャリーは、ずっと捜していたことをハーストウッドに告げ、彼を楽屋に連れて行く。 全てが自分のせいだと考えるキャリーは、ハーストウッドのために、かつての愛を取り戻そうとする。 しかし、ハーストウッドは、過去は戻らないと言って、キャリーに愛する人を探すよう伝える。 できるだけ多くの金を渡そうとするキャリーは、ハーストウッドに食事を用意することを伝え、翌日、洋服も買いに行くことを約束をして、笑顔で事務所に向かう。 ハーストウッドは、キャリーの財布から25セント硬貨を一枚だけ取り、鏡で自分の姿を確認する。 キャリーが沸かしていたお湯のガス・バーナーを消し、もう一度ガスを出したハーストウッドは一瞬考え込むが、それを止めて部屋を出て行く。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
田舎町から大都会シカゴに出てきた貧しい娘キャリー・ミーバーは、厳しい現実に直面して、本位ではなかったがセールスマンのチャールズの元に身を寄せる。
2人が食事をする、高級レストランの支配人ジョージ・ハーストウッドは、妻との不仲から家庭での幸せを得られず、キャリーに心を寄せるようになる。
ハーストウッドは、その気持ちをキャリーに伝えるが、彼女に妻子持ちだと知られてしまう。
ショックを受けたキャリーにハーストウッドは、離婚を決意したことを告げ、彼女を連れてニューヨークに向かおうとする。
しかし、ハーストウッドは、持ち出す気ではなかった、店のオーナーの現金を返金せずに旅立ってしまう。
その後、ハーストウッドとキャリーは結婚して幸せを掴んだかに見えたが、彼は横領した金を返済し無一文となり、回状を回され援助やまともな職にも就けなくなってしまう。
転落の人生を辿るハーストウッドに、さらに追い討ちをかけるように、キャリーの流産、妻からの重婚罪を盾にした財産の没収など、彼には二重三重の苦難が襲い掛かる・・・。
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「アメリカの悲劇」(1925)で知られる、セオドア・ドライサーのデビュー作の”Sister Carrie”(1900)を基に製作された作品。
物語を知らなければ、主人公がラストで救われる感動のエンディングをどなたでも期待するだろうが、それを裏切る絶望の結末は衝撃的でもある。
紙幣の束の脇の小銭を一枚手にし惨めな自分を確認した主人公が、自殺を予感させるガス・バーナーの栓をいじるラストは、その直前に、ヒロインが、作品中で見せる最高の笑顔とはあまりにも対照的で、涙なくして見られない。
ウィリアム・ワイラーの、丹念で繊細な人物描写の見事さは言うまでもなく”重厚”な悲劇に仕上がっている。
第25回アカデミー賞では、美術(白黒)・衣装デザイン賞(白黒)にノミネートされた。
人間として、ただ単純に心の安らぎを求めた結果、地位や財産など、全てを奪われて絶望し気力も失う主人公を、ローレンス・オリヴィエが迫真の演技で演じている。
大都会の雰囲気に全くそぐわない、世間を知らない田舎娘から、苦難を乗り越え演劇界のスターになるジェファー・ジョーンズは、実に表情豊かでモノクロの画面でも美しさが際立っている。
冷酷な主人公の妻ミリアム・ホプキンス、田舎娘を手玉に取ろうとする男を個性豊かに好演するエディ・アルバート、レストランのオーナー、ベイジル・ルイスデール、主人公の息子ウィリアム・レイノルズ、娘メアリー・マーフィ、保険会社の調査員レイ・ティールなどが共演している。