フランス人劇作家ヤスミナ・レザによる戯曲”God of Carnage”を基にした、監督、脚本ロマン・ポランスキーによる演技派スター豪華競演で製作された作品。 子供の喧嘩の対処で和解しようとした両親同士が壮絶なバトルを繰り広げる・・・。 ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリー共演のシニカル・コメディ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロマン・ポランスキー
製作:サイード・ベン・サイード
原作:ヤスミナ・レザ”God of Carnage”
脚本
ヤスミナ・レザ
ロマン・ポランスキー
撮影:パヴェル・エデルマン
編集:エルヴェ・ド・ルーズ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演
ペネロピ・ロングストリート:ジョディ・フォスター
ナンシー・カウワン:ケイト・ウィンスレット
アラン・カウワン:クリストフ・ヴァルツ
マイケル・ロングストリート:ジョン・C・ライリー
フランス・ドイツ・ポーランド・スペイン 映画
配給 ソニー・ピクチャーズ・クラシックス
2011年製作 80分
公開
北米:2011年12月16日
日本:2012年2月18日
製作費 $25,000,000
北米興行収入 $2,547,050
世界 $27,603,070
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク、ブルックリン・ブリッジ公園。
11歳のザカリー・カウワンは、公園で同級生のイーサン・ロングストリートを棒で殴り、上唇を切り前歯を2本折る怪我を負わせる。
被害者の両親ペネロピ・ロングストリート(ジョディ・フォスター)とマイケル(ジョン・C・ライリー)は、加害者の両親アラン・カウワン(クリストフ・ヴァルツ)と妻ナンシー(ケイト・ウィンスレット)を呼び出し、供述書を作成して渡し、友好的に事をすませようとする。
日用品の店を経営するマイケルは、ペネロピが作家だと、弁護士のアランと投資ブローカーのナンシーに伝える。
帰ろうとしたアランとナンシーだったが、マイケルにお茶に誘われて、ペネロペ自慢のコブラーを振舞われる。 ザカリーが謝罪するかや、マイケルが娘のハムスターを捨てたこなどの話をしながら、ナンシーは、客であるにもかかわらず、仕事の電話に対応するアランを気にする。 その後ナンシーは、穏やかに事が済んだことを感謝しながら、アランと共に帰ろうとする。 ペネロピは、ザカリーが今回のことをどう考えているのかもう一度尋ね、顔を変形させたという彼女の言葉が気に障ったアランは、誠意は見せるという態度を示しただけでオフィスに戻ろうとする。 冷静さを失い始めたペネロピは苛立ち、温厚そうに見えるなマイケルは穏やかに話し、ナンシーは、その夜に自宅で話し合うことを約束する。 しかし、マイケルが、被害者の家にナンシーらが来るべきだと反論して、その時、アランが再び仕事の電話を受ける。 その夜、子供を連れて話し合うことにしよとした両者だったが、ペネロピが、ザカリーの責任能力について触れたため、アランが気分を害する。 マイケルがその場を鎮め、もう一度、二人をコーヒーに誘い、アランとナンシーは部屋に戻る。 冷静さを取り戻した両者だったが、ペネロピがザカリーと話をすると言ったことに対し、アランが皮肉で対応したため、ナンシーは席を立ち帰ろうとする。 そこで再びアランが電話を受け、今度はマイケルが、彼の”奇妙”な仕事について意見する。 ナンシーは気分が悪くなり、息子の罰については自分達で方法を考えたいことをペネロピに伝える。 携帯電話を切ろうとしないアランに憤慨したナンシーは興奮し、親の無関心が招いた事件だと言われた彼女は、動揺して吐いてしまう。 アランはトイレを借りてズボンや靴の汚れを落とし、吐いたのは、まずいコブラーのせいだと、彼はナンシーに不満を言う。 絶版の美術書を汚されたペネロピは嫌味を言い、それをアランに聞かれ、戻ったナンシーとは共に謝罪し合う。 ところが子供の話に戻り、再び両者は対立し、アランとナンシーは帰ろうとする。 しかし、ハムスターを捨てたことなどを蒸し返されたマイケルはキレてしまい、ペネロピまで責める。 ナンシーとペネロピもスコッチを口にし、アランとは気が合わないが、平凡をこの上なく望むマイケルよりもましだと言ってペネロピは悔し涙を流す。 4人の話は人生の問題などに発展し、四六時中携帯電話に振り回されるアランに、ナンシーは幻滅していることを話す。 自分達が問題を抱えながら、マイケルと結婚の危機だとアランに言われたペネロピは呆れてしまう。 そんなことも子供の喧嘩も取るに足らないことだとアランは言い放ち、マイケルにまで嫌味を返されたペネロピは憤慨する。 ナンシーは、それでも携帯電を使い続けるアランに腹を立てて、それを奪い花瓶の水の中に落としてしまう。 アランは、電話が全人生だと言って取り乱し、マイケルが電話をドライヤーで乾かすが、それを見たペネロピとナンシーは爆笑する。 アランに同情したマイケルは、とっておきの葉巻を彼に渡そうとするが、子供が喘息だと言ってペネロピに取り上げられてしまう。 何度もかかる母からの電話にうんざりするマイケルは、彼女が飲もうとしている薬の、製造元を訴えようとしているアランと電話を代わり、彼は適当に対処する。 結論をだすべきだというナンシーが、両者が悪かったと言い出したためにペネロピがそれに噛みつき、彼女のバッグを放り投げてしまう。 ペネロピは、被害者と加害者の立場をはっきりさせようとするが、うんざりしたマイケルがそれに意見し、二人は言争いになる。 二人に呆れたナンシーは酔って愚痴をこぼし、彼女を庇うわけでもないアランは、ペネロピとマイケルを淡々と非難する。 ペネロピは激怒して、ナンシーはアランと共に帰ろうとする。 その時、壊れたと思われたアランの携帯電話に受信があり、バイブレーターが作動する。 マイケルが捨てたハムスターは、公園で生きていた。 その場では、ザカリーとイーサンが、すでに和解をしていた。
...全てを見る(結末あり)
話合いの場を持ったことを後悔するペネロピは嘆き、開き直ったマイケルは、アランとスコッチを飲み始め、それがうまいということで彼と意見が一致する。
*(簡略ストー リー)
ニューヨーク、ブルックリン。
11歳の少年同士が喧嘩をして、傷を負った子供の両親マイケル・ロングストリートと妻ペネロピは、相手方の両親アラン・カウワンと妻ナンシーを呼び和解しようとする。
良識ある両者は、大人同士の話合いの末に事を解決しようとする。
しかし、些細なことがきっかけで、その場で一定の結論を出そうとするペネロピと相手側で、意見の食い違いが生ずる。
冷静なマイケルは、帰ろうとしていたアランとナンシーにお茶を出し、双方は話し合うことになる。
ところが、弁護士のアランは、仕事を優先して携帯電話を使い続け、ナンシーは夫の無礼に呆れ、ペネロピは苛立ち始めて、マイケルは、アランの”奇妙”な仕事に意見し、その場は険悪な状態となる・・・。
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殆ど密室の中での、ワン・シチュエーション・コメディであり、ドラマ内の経過時間と上映時間を一致させる、1時間強の間に起きる出来事を、ユーモアや怒りを交え見事な脚本で表現する皮肉を込めたロマン・ポランスキーの絶妙な演出は”調和”を感じさせる。
衰えを知らない彼の職人芸が楽しめる、異色作に仕上がっている。
大人達の、滑稽とも言える喧嘩を皮肉る象徴としてラストに登場する捨てられたハムスター、そして、その後方では、何事もなかったかのように和解して遊び始める当事者の少年達の描写も気の利いた演出だ。
登場人物の三人はアカデミー賞受賞者であり、4人の論戦は、下手なアクション映画などより遥かに見応えがある。
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ジョン・C・ライリーはノミネートのみ。
社会活動や美術に興味を示す、当初から一触即発的なところもある、被害者の母親ジョディ・フォスター、その夫で、日用品店の経営者という設定でいかにも平凡な人物風なのだが、後半に個性を発揮するジョン・C・ライリー、吐いたり酔ったり取り乱したりと、不安定な時間を過ごす加害者の母親ケイト・ウィンスレット、癖のある弁護士として、強烈なインパクトを感じさせる人物クリストフ・ヴァルツ、それぞれの確かな演技を堪能できる。