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1845年に発表された、プロスペル・メリメの中編小説”カルメン”を基に製作された作品。 男を手玉に取るジプシーの女カルメンと彼女に翻弄される男達を描く、製作、監督セシル・B・デミル、主演ジェラルディン・ファーラー、ウォーレス・リード、ペドロ・デ・コルドバ共演のドラマであるサイレント映画。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:セシル・B・デミル
製作:セシル・B・デミル
原作:プロスペル・メリメ”カルメン”
脚本:ウィリアム・C・デミル
撮影:アルヴィン・ウィコッフ
編集
セシル・B・デミル
アン・ボウチェンス
音楽
ヒューゴ・リーゼンフェルド
サミュエル・ロキシー・ローサンフェル
出演
カルメン:ジェラルディン・ファーラー
ドン・ホセ:ウォーレス・リード
エスカミーリョ:ペドロ・デ・コルドバ
パスティア:ホレイス・B・カーペンター
モラレス:ウィリアム・エルマー
ジプシーの少女:ジャニー・マクファーソン
ジプシーの少女:アニタ・キング
ガルシア:ミルトン・ブラウン
アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1915年製作 65分
公開
北米:1915年10月31日
日本:1922年
製作費 $23,429
北米興行収入 $147,600
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
スペイン。
酒場の主人である密輸団の一員パスティア(ホレイス・B・カーペンター)は、海岸に到着した仲間達を迎える。
竜騎兵の新任の伍長ドン・ホセ(ウォーレス・リード)をうまく丸め込もうとしたパスティアは、密輸団を見逃してくれれば賄賂を渡すことを彼に約束する。
それを断ったドン・ホセは、密輸は絶対に許さないと言ってパスティアに警告する。
それを仲間に伝えたパスティアは、とりあえず荷物を山に運ぶことにする。
密輸団のアジト。
ジプシーの女カルメン(ジェラルディン・ファーラー)は、ドン・ホセを買収できないまま荷物を運んできたパスティアらを嘲り笑う。
...全てを見る(結末あり)
金で動かないドン・ホセでも自分なら落せると言って、カルメンは自信があることを男達に伝える。
パスティアの酒場。
その場に現れたカルメンは、早速、兵士達の注目の的となり、彼女はパスティアに、ドン・ホセがいる場所へと案内させる。
カルメンはドン・ホセと対面し、二人を接近させるために、パスティアはカルメンをタバコ工場で働かせるよう段取る。
仕事を終えたカルメンは兵士達の元に向い、言い寄る士官にパスティアの酒場で踊ることを伝える。
酒場。
カルメンに心を寄せる闘牛士エスカミーリョ(ペドロ・デ・コルドバ)は、自分にも運が向き始め、セビリアの闘牛に出場することを彼女に伝える。
パスティアは、カルメンに言い寄るエスカミーリョを引き離し、ドン・ホセの気を引くよう彼女に指示する。
ドン・ホセに近づいたカルメンは、自分をダンスに誘わないのかを問い、彼のテーブルに上がり踊り始める。
エスカミーリョはその様子を気にして、ドン・ホセはカルメンを抱き寄せるのだが、招集ラッパが鳴り響く。
カルメンと離れようとしないドン・ホセはキスしようとするが、彼女はじらしてドアを閉めてしまう。
思い通りになったカルメンは、ドン・ホセが自分のことしか考えていないことをパスティアに伝え、密輸を許可させるなら今夜しかないと考える。
マンティラを振るのが合図だとパスティアに伝えたカルメンは、山の荷物を運ぶ準備をさせようとする。
そんなカルメンは、苛立つエスカミーリョの機嫌を窺う。
カルメンが手引きをすることを知らされた密輸団は、荷物を運び出そうとする。
セビリアに一緒に行くことをカルメンに提案するエスカミーリョは、スペインの全てと彼女も手に入れることを伝える。
パスティアに促されたカルメンは、マンティラを被りドン・ホセの元に向かう。
カルメンが現れたためにドン・ホセは驚き、二人きりになる。
愛を語りドン・ホセと抱き合うカルメンは、マンティラを振り合図を送る。
密輸団はその間に荷物を運び、ドン・ホセはそれに気づくものの、カルメンは自分の仲間なので見逃してほしいと伝える。
迷うドン・ホセは欲望に勝てず、カルメンの唇を奪う。
翌日。
報酬を要求するカルメンに金を渡したパスティアは、ドン・ホセに疑われるので工場の仕事に向かうよう指示する。
遅れて仕事場に現れたカルメンは、女工にからかわれて諍いになり相手を痛めつける。
それを知らされて間に入ったドン・ホセは、カルメンを落ち着かせて酒場に送る。
カルメンが牢屋に入れられると言うので、士官のモラレス(ウィリアム・エルマー)は、鍵はドン・ホセが持つのかと彼をからかう。
憤慨したドン・ホセはモラレスに襲いかかり、二人は剣を交えながら格闘になる。
ドン・ホセはモラレスを殺害してしまい、それを確認したカルメンは、全て思い通りになったと彼に伝えて山に戻る。
騒ぎに気づいた兵士達が押入ろうとするため、パスティアはドン・ホセを山に連れて行くよう仲間に指示する。
乱入した兵士達はモラレスが死んでいることに気づき、その件をパスティアに問うが、彼は白を切る。
仲間達の元に戻ったカルメンはセビリアに行くよう言われ、エスカミーリョを呼び寄せる。
その場に着いたドン・ホセは、出くわしたカルメンを非難しようとするが、それを気にしない彼女は立ち去る。
カルメンを追ったドン・ホセは、愛を手に入れるために大きな代償を払ったことを伝える。
自分が誰のものでもないと言うカルメンを、力ずくで従わせようとしたドン・ホセは、ナイフを手にして彼女を脅す。
酒場にいたエスカミーリョは、カルメンが呼んでいると言われて山に向かう。
トランプ占い。
自分が死ぬという占いに気を落すカルメンは、再び出た死のカードを投げ捨ててしまう。
カルメンは、現れたエスカミーリョと共にセビリアに行く決心をする。
夜の山中。
目覚めたドン・ホセは、自分もセビリアに向かうと言い残してその場を去る。
セビリアに着いたドン・ホセは、市民に歓迎されるエスカミーリョと共に現れたカルメンの姿を見て苛立つ。
カルメンはエスカミーリョを闘牛場へと送り出す。
エスカミーリョの勇姿を見守っていたカルメンは、ドン・ホセが入り口で待っていることを知らされる。
仕方なくその場に向かったカルメンは、待っていたドン・ホセから、自分のために国を裏切り殺人まで犯したと言われる。
誰の指示も受けないと答えたカルメンは、場内の歓声を聞き、ドン・ホセを相手にせずにエスカミーリョの元に向かおうとする。
憤慨したドン・ホセは誰にも渡さないと言ってナイフを手にし、逃げようとして抵抗するカルメンを刺す。
殺されても自分は自由だと言い残し、カルメンは息を引き取る。
そしてドン・ホセは、生きる希望を失い自分の胸を刺す。
エスカミーリョは、息絶えたカルメンの姿を見て驚く。
瀕死のドン・ホセは、カルメンに寄り添いながらキスして息を引き取る。
*(簡略ストー リー)
ジプシーの女カルメンは、密輸団の一員である酒場の主人パスティアが、竜騎兵の新任伍長ドン・ホセを買収できなかったことを知る。
自分なら落とせると自信を見せるカルメンは、ドン・ホセに近づくためにタバコ工場で働くようになる。
仕事を終え夜になり、酒場でドン・ホセを誘惑するカルメンは、彼を自分の虜にすることに成功する。
カルメンに心を寄せる闘牛士エスカミーリョは、二人を気にしながら苛立つ。
密輸を許可させるチャンスと考えたカルメンは、密輸団に合図を送ることを伝えてドン・ホセを誘惑するのだが・・・。
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前年にデビューし、同年(1915年)も合わせて25本もの作品を監督することになる若きセシル・B・デミルによるサイレント映画で、この時期は紛失する作品もあるため貴重な映像とも言える。
1世紀前の作品なのだが、30代半ばのセシル・B・デミルをはじめ、作品に関わる人々の映画製作への情熱と意欲が窺える力強い映像は必見だ。
リアリズムを追及するデミルは、クライマックスの闘牛場のシーンでは、ロサンゼルスで2000人のエキストラを使い実際の闘牛を行った。
有名なソプラノ歌手であったジェラルディン・ファーラーが主人公のカルメンを演じ、サイレント映画ということもあるが、表現を誇張するそのパワフルな演技は見もので、大スターの貫禄十分だ。
女同士の喧嘩のシーンなどは凄まじい迫力で、演技とは思えない本当の争いのようにも思える。
映画出演が舞台のキャリアの妨げになると考えられていた時代、ジェラルディン・ファーラーは、最初に映画で成功した舞台人としても知られ、14作中6作がセシル・B・デミル作品でもある。
主人公カルメンに翻弄される竜騎兵の新任伍長ドン・ホセを演ずるウォーレス・リード、カルメンに心を寄せる闘牛士エスカミーリョのペドロ・デ・コルドバ、酒場の主人である密輸団の一員パスティア役のホレイス・B・カーペンター、士官モラレスのウィリアム・エルマー、ジプシーの少女ジャニー・マクファーソンなどが共演している。